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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1923/1951

再びリク達の戦場



「やっぱり、私の魔法の方が精度が良かったようね。多く当たっていたし、アラクネにも効果があったわ」

「効果があるのは火が弱点だからだろうが! よく見ろ、俺の方が多く当たっていたぞ!」


 火の弾は数が多かったが、全てがアラクネに当たったわけじゃない。

 一つ一つの狙いを定めるなんて現実的じゃないかららしいが……マスターとかエルサ様ならできるか?

 それはともかく、外れた火の弾は地面に当たって消えたり、さらに奥の魔物へと向かったりしたのもある。

 アラクネ以外の魔物にも多少は被害を与えているのだから、どちらが多く当たって外れたか、なんてどうでもいい事だと思うんだが。


 いがみ合う、張り合うか? そんな二人には関係ないのかもしれない。

 ちなみにアラクネは斬撃が効きづらい硬い皮膚を持つが、火には弱い。

 そのためアラクネを発見したら、森の中など延焼する危険などを考える必要はあるが、基本的には火の魔法を使うのが推奨されている。

 アラクネが出す糸も火に弱くよく燃えるしな。


 それもあってか、アラクネは火のある所には近付こうとしないらしいが……明らかに魔法の準備で無数の火の弾を出現させていたハンレットとヴィータ。

 その二人を見ても一切構う様子がなかった事が、アラクネ達の敗因だが、またそれが異常さを証明している。

 魔物達の本能というよりは、大群全体が強制力と言うべきか、何かの命令に従って動いているようにも思えた。


「いよっし、アラクネは倒した! 次だ次!」

「ロルフ、俺達は一歩引いた位置にいなければならない、魔物に突っ込もうとはするな」

「お、おう。それくらいわかってらい!」


 完全に沈黙し、黒々と焦げて動かなくなったアラクネ達を見て、勇んで突撃しようとするロルフをホーエンが止めた。

 お互いが槍使いという事もあって、尊重し合っている二人だが、特にホーエンが冷静なおかげで熱くなりやすいロルフを抑えてくれるし、息も合っている。

 ハンレットとヴィータもこの二人を見習って欲しいものだが。


「もうアラクネは嫌よ……剣が通らないなんて、悪夢でしかないわ。気持ち悪いし」

「これで、アルケニーなんて出てきたら最悪だな」

「トレジウス、なんて事を言うの! そんな事を言って、本当に出てきたらどうするの!?」

「いやぁははは……エルサ様に乗って上から見た限りでは、アルケニーらしき姿はなかったから、大丈夫だって」


 辟易とした様子のラウリアと、冗談を言うトレジウスとそれを咎めるエーベル。

 アラクネがいなくなって、俺と同じく安心したんだろうが……油断はするんじゃないぞ。

 迫る魔物の対処はできているから、大丈夫だろうが。


「そういえばぁ、アルケニーで思い出したけど……私、センテから王都に行く時リク君と一緒だったのね?」


 トレジウスが言ったアルケニー、という魔物に反応して思い出したのか、唐突にアンリが話し始めた。

 ちなみに、マスターの事を「リク君」と呼んだのに対し、フラムが眉をひそめたが呼び方は自由となっているから誰かが咎める事もない。

 これはマスター本人が、様を付けて呼ばれたくないという理由で君でもさんでも、俺が呼ぶようなマスターでもいいから、と許可した結果だったりする。

 まぁアンリはクラン創設以前からマスターと知り合いだから、というのもあるだろうが。


「その途中でアルケニーの集団と遭遇したのよねぇ」


 その話は聞いている。

 王都周辺に魔物が点在していた話の一つで、確かマスターとモニカ殿達が多くの魔物を倒して回ったとか。

 冒険者や国の兵士も協力はしたようだが、討伐数などでは到底マスター達にかなうものではなかったとか。

 俺は王都の到着が遅れたから参加はできなかったが、先に到着していたクラン参加の冒険者からきいたな。


「アルケニーって、アラクネと同じように火が弱点でぇ、硬くて斬りづらいでしょ?」

「硬いどころか、アルケニーは足自体が鎌のようになっているし、そこらの金属じゃ絶対に斬れないって言われているわよ」


 アルケニーは多少アラクネから変化している部分はあるが、単純にアラクネをさらに強化した魔物だ。

 討伐難易度を示すランクはアラクネがC、アルケニーがBになっているが、洞窟などの限定されている場所ではさらに難易度が跳ね上がり、もし火が使えないような場所であればランクAだろうとも言われている。


「そんなアルケニーをねぇ、リクさんったら簡単にバラバラにしたり、投げたり潰したりしていたわぁ。アルケニーより、むしろリクさんの戦いに巻き込まれないようにする方が、周囲の皆は必死だったわねぇ」

「「「「……」」」」


 先程のアラクネでも、集団で現れたら絶望する者も多い。

 俺達でも、あれだけの火の魔法を使えるハンレットとヴィータがいたから良かったが、いなかったら逃げるしかできなかっただろう。

 ましてや、アラクネだけを相手にしていればいい状況でもなかったしな。

 それなのに、マスターはそれ以上のアルケニーの集団を一人で蹂躙したのか。


 魔物との戦闘中ではあるのに、よく通る声のアンリの話に耳を傾けていた俺……いや、アンリ以外の全員が思わず頬を引き攣らせて無言になる。

 センテでの事もあり、比べてはいけないとわかっていてもマスターの成果はとんでもないな……。

 それなりの疲れを全身に感じ始めていたし、適うわけはないとわかっていたが、それでもマスターに恥じない成果を上げるため、目の前の襲い来る魔物へと集中した。


 他の皆も同じだったようで、途中途中で挟む無駄話しをする事なく、ハンレットとヴィータが言い合いをする事すらなくなり、静かに、そして異様な気迫を纏って魔物の注意を引き付ける。

 ……という名目の魔物討伐戦が進んでいった。

 全ての冒険者がそうではないが、一定以上のランクになっている冒険者の多くは負けず嫌いで、自分がもしくは自分のパーティが一番だと思っている。

 そうでないと続けられないあれこれがあったりするのだが……いや、マスターの偉業にかなうとはおそらく誰も思ってはいない。


 だが目標として、決して超えられない壁として立ちはだかっていると思えるのは、冒険者にとってありがたい事なのかもしれない。

 無謀な事、無茶な事をしすぎなければだが。

 とにかく、俺達はこの目の前にいる大量の魔物を相手に、できる限りの戦果を挙げたうえで、戻ったら筋肉を鍛えなおさなければと決意を新たに挑むだけだ――。


――――――――――


「っ……ぜぇ、はぁっ!」


 モニカさんの息が荒い。

 エルサとヴァルドさん達弓隊の援護……だけでなく、おそらくフラッドさん達の奮闘もあるんだろうけど、そのおかげで魔物達の勢いや圧は弱まった。

 けどさすがに、延々と戦い続け、不慣れな後退しながらの戦いは確実にモニカさんの体力を削っていた。

 俺も息はそこまで乱れていなくても、汗だくになっているくらいだ。


 モニカさんに至っては、玉のような汗を大量に流し、息を整えるのも難しくなっている。

 当然ながら、動きも精彩を欠いて鈍くなってきていた。

 後ろのユノ達は、相変わらず派手な音を立てて魔物を吹っ飛ばしているようではあるけど、あっちは暴れながら進めばいいだけだからなぁ。

 もう少し、もう少しだけと内心少し焦りながら、モニカさんのフォローをしつつ魔物と戦い続ける……と。


「よし! 魔力が戻ってきた! モニカさん、そろそろ休んで!」

「わ、わかったわ……ごめんなさい、もう少し戦い続けられると思ったのだけど」

「仕方ないよ。前進しながらとか、その場でってのは慣れていても、後退しながらの戦いは初めてだから」


 フレイムフォグもいたし、対処は基本的に俺が魔物を投げてぶつけたり、上空からの援護があったけど、完全にできたわけじゃないからね。

 慣れない戦い方と慣れない魔物の対処などもあって、モニカさんの疲労は考えているよりもずっと大きいだろう。

 けど、それもここまでだ。

 エルサから飛び降りてすぐに放出した魔力が戻り、全身にみなぎるような力を感じる。


 ……戻るとはいっても、実際には回復に近いんだけどそれはともかく。

 モニカさん達が近くにいるため、もう一度放出するとその際の余波に巻き込まれる可能性があるので難しいけど、俺一人で戦うにはちょうどいい。

 全身を覆う魔力が厚いから、フレイムフォグが至近距離で爆発したとしても、ちょっと痛みを感じるかどうかってくらいだろうし。

 これで、モニカさん達を巻き込まないようにではあるけど、全力で動く事ができる!


「レッタさん、モニカさんを頼みます! はぁぁぁぁぁっ!!」


 後ろを見る事なく、それだけを言って魔物へと向かう!

 まずはオルトス! 大きな体と二つの頭、蛇の尻尾で実際には一番モニカさんを疲れさせた元凶!

 二つの頭の間から蛇の尻尾に達するまで、オルトスの全身を完全に二つに断ち斬る!

 オルトスの体の後ろから、続いては体を翻してモニカさんやレッタさんのほうに向かおうとしているオーガ数体、一体を上から、次の一体は振り上げて下から、さらに横薙ぎで残っていた他のオーガを屠る。 


「状況に応じて、白い剣の扱いにもだいぶ慣れてきた……!」


 必要ならば細く長く、または太く短く、俺自身の魔力と魔力吸収モードで蓄えた魔力を適宜てきぎ魔力放出モードで使いつつ、魔物達を薙ぎ払う!

 その際、ユノ達の戦いっぷりが目に入ったけど、あちらは見なかった事にしよう……魔物でトスとアタックでバレーをしているように見えるのは、きっと気のせいだ。

 それはともかく、モニカさんと一緒に戦っていた時も、もちろん全力だったし、お互いをフォローし合う戦い方は楽しく感じる部分も多かった。

 けど、魔力が充実している状況での戦いは、なんの遠慮もなく力を奮うのは爽快感に近い何かを感じる。


 いや言葉通りの爽快感なのかもしれないけど。

 とはいえ、完全に力任せに暴れるのではなく、ちゃんとモニカさん達を巻き込まないように注意はしているけど。

 今のところ上手くいっているのは、鍛錬の成果が出ているんだと思う。

 魔力を放出した時程じゃないけど、微かに魔物の魔力を感じて挙動が伝わってくる。


 自惚れるつもりはないし、そうならないように気を付けてはいるけど、今の俺ならほんの少しの挙動、魔物が動き出す初動がわかるだけでも簡単に対処が可能だ。

 オルトスはいるけど、ほとんどの魔物が高くてもCランクの魔物なのが大きな理由だろうけどね。

 さすがに、Aランクの魔物ばかりだとこうはいかなかったと思う。


「……邪魔! せやぁぁぁぁぁぁっ!」


 空から飛来する魔法は、フレイムフォグと同じように近くにあった魔物の残骸を投げつけて壁にする。

 オルトスやオーガは体が大きく強靭だから、掴んで投げやすいし、壁にもちょうどいいね。

 逆にアダンラダやアラクネはちょっと不向きかな?


「リクさん、下がるわ!」

「わかった!」


 俺が暴れ……いや、魔物を蹴散らしていると、いつの間にかモニカさん達と少し距離が開いていたようだったので、声に従って俺も下がる。

 モニカさんと戦っている時には、囲んでいる魔物との距離は目測だけど大体二メートルあるかどうかくらい。

 それが、十メートル以上の何もない空間が俺とモニカさん達の間にできていた。

 モニカさんとレッタさんを中心に、魔物の大群の中にいるのが信じられない程の空間……もちろん、門側はユノ達が暴れているからだけど。


 上空からの援護のおかげもあるだろうけど、なんとなく魔物達が二の足を踏むというか、怖気づいているような雰囲気を感じる。

 魔物とはいえ、恐怖を感じる事はあるんだろうけど……もしかしてこれ、俺が恐れられている?

 レッタさんの魔力誘導のおかげもあるのかな? と思ったけど、俺の魔力が戻った後は状況次第だけど、魔力誘導に全力を注がずモニカさんと休む事を優先してくれとは言ってあるから違うか。

 チラッと目の端に映ったレッタさんは、さらにロジーナを見て興奮している様子だったし……あれを見て興奮できるレッタさんのぶれなさは凄い。


「それならそれで、楽に戦えていいかもね……!」


 魔物に恐れられるというのはいい事なのか悪い事なのかわからないけど、現状では悪い事ではないはずだ。

 おかげで、レッタさんやモニカさんに向かう魔物も減って、守るのが楽になったし二人を危険にさせず休んでもらう事ができる。

 とにかく迫る魔物、怖気づいたのか動きが鈍った魔物をこちらから倒しに向かう事もあるけど、モニカさん達と距離が離れすぎないように気を付けつつ、白い剣を振るう。


 時には巨大化させて数十体の魔物を一度に薙ぎ払い、時には小回りが利くように小さく細くしてオークノ体を細切れにしたり……。

 一瞬、オークって食肉にもされているから、焼いて食べたら――なんて考えが頭をよぎったけど、余計な事は考えず、魔物を倒すことに集中……。


「……いや、違う! 集中しすぎたらダメだ!」


 戦う事に集中するのはもちろん大事だ。

 けど俺の場合、集中しすぎるというか、戦う事に没頭してしまうとユノが命名したバーサーカーモードとやらになってしまう可能性が高い。

 そうなると、戦う事、剣を振るう事、魔物や向かってくる何かを屠る事だけしか考えられなくなってしまう。


 気を付けないといけない事もあるのに、それはいけない。

 魂が傷ついた状態で作る結界と同じように、集中しつつもしすぎてはいけないというのはなかなか難儀だけど、でもやるしかない!


「多少、自分の気が逸れるような事でも考えた方がいいのかな?」


 なんて呟きつつ、アラクネの足を全て斬り、別の魔物にダーツというか槍投げの要領で投げつけて突き刺す。

 アラクネの体の方は、オーガとか程大きくないけどとりあえず頭上に投げて飛来する魔法の壁にしておく。


「歌でも……はさすがに行き過ぎか。何か目に見える範囲で……うん、あれはやめておこう」


 魔物を斬り倒すついでにそちらに体が向いたため目に入ったけど、何故かロジーナがオーガの体を蹴ってアラクネの足を数本まとめたユノがフルスイングで打ち返してホームランならぬ、魔物へぶつけていた。

 あそこだけ別の何かをしているような……なんなの、ユノとロジーナは異種格闘技じゃない、異種スポーツでもしているの?

 ともかく、あちらは気にしない事にして、別の方法を探さないと……。


「ん……?」


 魔物を数体一度に斬り倒して、軽く振り返ってみると、モニカさんと目が合った。

 じっとこちらを見ているモニカさんだけど、どうしたんだろう? 何かを伝えたい、とかではなさそうだけど……。


「……不真面目とか、誰かから怒られそうだけど……こういう時だからむしろいいのかな?」


 モニカさんの視線は気になるけど、戦闘中だから話を聞きに行くのもちょっと難しい。

 だけど、そのおかげでモニカさんの事を考えながら動けばいいんだと気づいた。

 命の奪い合いをしている状況でそれが適切と言えるかわからないけど、俺にとっては戦闘に集中しすぎないという点でちょうど良さそうだ。

 心の中から湧き上がるものはあるけど、そちらはとりあえず今は無視するとして……戦闘にもモニカさんの事にも集中しすぎないなんて、我ながら難儀な事をしているとは思ったけども――。




リクが単独戦闘に集中しすぎると、作戦とかよりも襲い来る魔物を倒すだけになっていしまいそうです。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


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