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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1921/1948

リク以外の戦いの場では



「気を付けるのだわー」

「はい、ありがとうございます、エルサ様!」


 リク達が私の背中から飛び降りた後、他の人間達を降ろすために魔物達が列をなしている場所から、少しだけ離れた所に一旦降りたのだわ。

 そこで、背中から半分くらいの人間が降りて見送るのだわ。

 リクの作戦として、人間達が横から――西側から当たる事で、魔物達の列を乱すのが目的なのだわ。

 自分から囲まれに行った物好きなリク達と、壊れた門に殺到する魔物の進攻速度を落とすのが一番の目的なのだわ。


「ではエルサ様、私達は」

「だわ。空から援護射撃だわ。リクはともかく、今降ろした人間達は魔物の注意が集中すればひとたまりもないのだわ。私の背中に、これでもかと乗せているミスリルの矢を全部使う勢いで行くのだわー!」

「はっ、手筈通りに!」


 リク命名のミスリルの矢、せっかく私がつくったのにここで多くを消費するなんて、だわ。

 しかもリクは気にしていなかったけど、一つ一つが凝縮された土でもあるから重いのだわ。

 具体的に言うとだわ、人間くらいの大きさの岩を人間の拳の半分くらいまで凝縮しているのだわ。

 それが無数に複数の木箱に入れられているのだから、背中に乗せている私はたまったものじゃないのだわ……後で、絶対リクにキューをたんまりもらわないとだわ。


「まったくリクは……いくら私でも重い物は重いのだわ……」


 呟きながら、魔力の翼を広げて離陸するのだわ。

 ミスリルの矢をばらまくのはどこがいいか……これはリクが私に任せた事だから、場所は自由なのだけどだわ……。

 私の役目は、空からミスリルの矢をばらまいて魔物達の注意を引き付ける、または混乱させる事。

 空を飛ぶ魔物はいるようだけどだわ、私の飛ぶ高さまで来れるのはいないうえ、無防備な空から攻撃されたら魔物達の多くは混乱するはずなのだわ。


 射掛けて仕留めた魔物が邪魔になり、空から攻撃された事に気付いて足を止めた魔物が他の魔物の進攻を邪魔する。

 そうする事で、リクや西に降ろした人間達、それに門へと向かう魔物達の速度も緩まるのだわ。


「この辺りがいいのだわ。でも、厄介なのがいるのだわ」

「エルサ様、厄介なのというのは?」

「赤い霧みたいなのがいるのだわ。よく見るのだわー」

「……微かに、赤い何かがあるのは確認できますが」


 そうだったのだわ、人間は私みたいに遠くを見る事ができなかったのだわ。

 赤い霧の魔物は、面倒な事に魔力を使って爆発する魔物。

 最近人間やら魔物やらを爆発するように仕向けられているけど、それとは違って生粋の爆発狂。

 自分だけでなく他の魔物やらなにやらも関係なく、目標を定めたら一直線で爆発しにいく面倒な魔物なのだわ。


 もしかしたら、破壊されていた門はあの魔物が数体……数十だわ? が突撃したからなのかもしれないのだわ。

 他の魔物と戦いつつ、飛んでくるあの魔物を全て叩き落すのは人間、じゃなかったのだわ、獣人にも難しいはずなのだわ。


「まぁ、私達は気にしないでいいのだわ。こちらに来ても防ぐのだわ」

「は、承知いたしました」


 人間達が気にする必要もなかったのだわ。

 高くてもお構いなしに突撃してくる魔物だけれどだわ、それも途中でミスリルの矢を当てるなりで迎撃すればいいのだわ。

 もし漏れても、結界があれば問題ないのだわー。

 リクならあの程度の魔物の爆発じゃ、酷くても小さな火傷をするくらいのはずなのだわ。


 問題は、西で降ろした人間達の方に行った場合だけどだわ……少し、注意を引く必要がありそうだわ。

 幸い、あの魔物達はリクが戦っている場所に向かっているから、西の人間達に多くが向かう事はなさそうなのだわ。

 少しくらいなら自分達で防ぐだろうし、だわ。


「予定より広範囲に注意を引く必要があるのだわ。三つに分けるのだわ」

「部隊を、でしょうか。しかし数が……」

「一射一体以上を仕留めれば、数を減らしてもいいのだわ。それより、こちらに注意を引き付ける必要があるのだわ」


 今回の作戦立案はリクなのだし、人間達にもしもがあれば多分リクが落ち込むのだわ。

 そうさせないためには、予定よりもさらに広く混乱をばらまいて、強く注意を引き付けなければならないのだわ。


「エルサ様、私ヴァルド以下十五名の弓隊、均等に三つに分けました」

「それでいいのだわ。一つは真下、もう二つは左右に分かれて射掛けるのだわ!」


 ヴァルドとかいう、今背中に乗っている人間のリーダーに指示を出しつつ、魔法を展開するのだわ。

 私の体の横、左右には円形、通過直後に直下へと加速しつつ進行し、魔物の魔力めがけて追尾する。

 これで空中に浮いて一番近い場所にいる赤い霧の魔物は、真っ先に捕捉されるはずなのだわ。

 さらに、ミスリルの矢が十分な加速を得たら散布するように散らばる性質も付け加えたのだわ。


 そして体の真下には、こちらも同じく円形、リク達が戦っている周囲に対し雨のように降り注ぐよう設定。

 背中から体の下に射掛けるため、円形の魔法を通過できるようこちらは大きく展開。

 私の体の倍以上の大きさで……完了したのだわ。

 三つの魔法を同時に展開するのは、少し骨が折れるのだわー……リクに要求するキューを追加しておくのだわ。


「配置完了しました! いつでも行けます!」

「何も考えず、ただひたすら射掛け続けるのだわー!」

「はっ! 総員、放てぇっ!!」


 左右、そして真下に放たれたミスリルの矢。

 それらは展開した円形の魔法を通過し、狙い通り地上の魔物へと殺到する。

 左右から連続で放たれるミスリルの矢は、遠くまでその軌道を伸ばしながら、そして確実に赤い霧の魔物を射抜いて空中で爆発させていく。

 真下の魔法を通過したミスリルの矢は、リク達が戦っている場所を覆うように、それでいて少し南側を多めに狙うように殺到。


 リク達への魔物の圧力を少しだけ減らせるはずなのだわ。

 気を遣ったのだから、後でリクにご褒美のキューを追加させるのだわ~。

 北側の門へは、すでに暴れているユノと駄破壊神がいるため、ほとんど進攻が止まっている状態に近いから、リクの方を厚めに援護したまでなのだけどだわ。


「あ……」

「エルサ様、どうかされたので?」

「な、なんでもないのだわ。気にせず、もっともっとミスリルの矢を放つのだわー!」

「は、はっ!」


 一つだけ、ミスリルの矢がリクの近くに吸い込まれるように飛んで行ったのだわ。

 背中の人間達からは見えなかったみたいだけどだわ、私からはバッチリ見えてしまったのだわ。

 ミスリルの矢に私の魔法が加わって、リクでも大怪我をしそうな威力になっているはずだけど……多分当っていないはずなのだわ。

 さすがに私でも、リクをはっきり見えるわけじゃないけどだわ、リクに近付いた魔物に当たった気がするから大丈夫なはずなのだわ、というか大丈夫って事にするのだわー。


「……怒られたら、追加分のキューで相殺するのだわ」


 なんて呟きながら、展開している魔法の維持と、もしもの際の結界に集中する事にしたのだわ――。



――――――――――



「お前ら、準備はいいか!?」

「「「「「オォォォォ!!」」」」


 エルサ様から降り、飛び立つのを見送ってからその場にいる全員を見渡す。

 俺も含めてリク様のクラン員は士気が高く、全員が頼もしい意気込みと共に雄叫びを上げるような叫び声。

 ……少し耳が痛いが。


「エルサ様が、ミスリルの矢を使い尽くせば迎えに来られる! それまで、我々は魔物の注意を引く役だ! 油断するなよ!」


 いつの間にか、クランに所属する冒険者達の中でまとめ役にされていた俺だが、リク様……いやマスターという絶対的な存在がいてくれるおかげか、クラン員達は皆協調性が高いので助かっている。

 マスターがそうだから真面目な冒険者が集まった、と言うのもあるかもしれないが、荒くれもの、他人の言う事なんざ聞いていられない、という冒険者も多い中、稀有な状況でもあった。

 俺も参加していたが、センテでヒュドラーやレムレースと言った絶望の存在と、それを打破したマスターを目の当たりにした、というのも大きいのかもしれないな。


「フラッドさん、あの数の魔物を目の前にして油断するような奴、ここにはいませんよ!」

「まぁ、だろうな」


 俺達が向いている先には、無数の魔物がひしめき合っている。

 こちらに気付いている素振りを見せる魔物もいるが、命令のようなものが働いているのか、俺達に襲い掛かってくる様子はない。

 それだけで、この魔物の大群が異常だというのがわかる……通常なら、目先に現れた人間なんぞ踏みつぶす勢いで迫ってくるはずだからな。

 これを見て油断なんてしている奴は、冒険者としてやっていけないだろう。


 通常なら、生きる事を諦めるような光景だ。

 ……もしかしたら、あのマスターならそういう事もあるかもしれないけど、なんせ無数の魔物よりも脅威な魔物を単独で複数倒すくらいだしな。

 とはいえ、俺達はマスターとは違う。

 油断すればひとたまりもない魔物の大群を前に、昂り逸る気持ちを抑え、得物を握りしめる。


「肩に力が入ってるぞ、フラッド」


 ポン、と軽く肩に手を乗せられて声をかけてきたのはトレジウス。

 筋肉が全てを解決するがモットーの俺が率いるパーティとは方向性が違う、別のパーティを率いているリーダーだ。

 センテで知り合った奴だが、優男風のトレジウスのパーティは依頼を丁寧にこなす事で評判。

 双剣のトレジウスと言えば、それなりに名が知られている。


 実力的にはBランクと言えるが、まだCランクのため、広くという程ではないが……そういえば、センテでの戦い以来こいつはランクを上げる事に固執しなくなったんだったか。

 本当の実力者の戦いを目にしたら、ランクなんて些細な事にこだわる気が失せる、とはトレジウスの言葉だが。

 その割に、クランに入る動機がランク上昇に有利だとも言っているのだが。

 実力をつけるため、実力者に師事しようとしたのも確からしいので、センテの戦いを経て考えが変わった部分は確かにあるのだろう。


「トレジウス……すまない、意気込みすぎたようだ」

「まぁ、気持ちはわからんでもないけどな。リク様、いやマスターに作戦を頼まれたうえに、個性的すぎるこいつらをまとめる役目も担っているんだから」

「進んでまとめ役になったわけではないんだがなぁ」


 トレジウスにそう言って、この場にいる冒険者達を見渡す。

 鞭を持って嗜虐的な笑みを魔物へ向けている女、フラムだったか……それ以外にも、自身の持つ剣を見てうっとりしているラウリア。

 フラムは「女王様と下僕」という、俺にはよくわからない趣味で集まったようなパーティのリーダーだが、実力は確かだ。

 パーティメンバーの下僕らしい男達を、よく椅子代わりにしていたり、意味なく踏みつけたりしているため、妙な評判が広まってはいるが。


 ラウリアは「華麗なる一輪の花」というパーティで、全員が剣を武器にする女だけのパーティ。

 基本的には堅実に依頼をこなすようだが、時折調子に乗ってしまう事があり、依頼失敗する事もあるのが玉に瑕と言ったところか。

 この場にいるのは、クランに参加したパーティのリーダー格がほとんどで、あとは特に実力の高い冒険者達だが、その他にも個性的なメンバーになっている。

 マスターはどうしてこんなメンバーを集めたのか……俺も人の事は言えないが。


「筋肉にさえこだわらなければ、フラッドが一番まともだからな。俺は、パーティリーダーくらいならまだしも、別パーティの事まで気を配ってまとめるなんてできないだろう。真面目なのもあるか」

「真面目さでは確かにトレジウスだと首を傾げるが、筋肉はこだわってこそだ。全てを解決するからな。筋肉で選ばれたという事か……」

「そういうわけじゃないんだが……」


 頬をかくトレジウスだが、そんなトレジウスもこのメンバーというか、クランに所属する冒険者の中ではまともな方なのだがな。

 それに、こうして肩に力が入り過ぎていた俺に声をかける程度には、気配りのできる男だし、他の冒険者よりまとめ役には相応しい。

 それでも俺がまとめ役になっているのはやはり、俺の筋肉が細身のトレジウスに勝っているからだろう……と思い、頼りになる上腕二頭筋に力を入れて美しい筋肉が描く曲線に見とれる。


「……それがなければ、もっと良かったんだがなぁ」

「ふん、筋肉の美しさがわからない奴には、一生わからんさ」


 そういえば、アテトリア王国の将軍だったか、センテに後詰めの援軍として指揮をしていた人も、素晴らしい筋肉の持ち主だった。

 それから、センテで貴族軍の一部を指揮し、ヒュドラーの足止めなどもやってのけた元冒険者なども、鍛え抜かれた筋肉をしていたな。

 まだまだ、俺の筋肉は未熟だ……もっと育てなければ!


「なんとなく、おかしな決意をしているような気がするが、そろそろ行こうぜ?」

「む、そうだな」


 ただマスターはトレジウス程ではないが、細身で筋肉を鍛えていない様子なのが気になる……などと、筋肉に関してはつい夢中になってしまうのを、トレジウスが止めた。

 まぁ、マスターは筋肉がなくともとんでもない事をするお方だからな、隠れ筋肉でもあるのだろう、今度聞いてみよう。

 そう心に決めて、皆へと向き合った。


「マスターは、お優しい方だから我々がこの作戦で大きな怪我をする事を嫌う。今後の評価にも関わる事から、怪我には十分気を付け、油断しないよう全力で取り組むぞ!」

「「「「「オォォォォォォォ!!」」」」」

「あれだけの魔物を前にして、怪我に気を付けるなんて生易しい事を言えるのは、ここくらいだよなぁ。っし、俺もマスターに失望されないようにしなきゃな!」


 トレジウスの呟きは、男達……いや、女冒険者も混じってはいるが、その獰猛な雄叫びでかき消された――。



「まず私が一番槍、いや一番剣よ!」


 一斉に魔物へと駆ける俺達の中から、身軽なラウリアが突出する。

 大群の列の端に追いやられていたオークめがけて、剣を振り上げた。

 それはともかく、一番剣ってなんだ? 一番槍の槍を剣に言い換えたんだろうが、そんなに剣にこだわりがあるのか……。

 おっと、余計な事を考えている暇はないな……。


「フラム、ラウリアの援護を! ロルフ、ホーエンはフラムに近付く魔物を排除しろ!」

「わかりましたわ!」

「「はいよ!」」


 突出するラウリアはおそらくオークしか見えていない。

 その奥にはオルトスという強力な魔物もいるのに、だ。

 そのため、ラウリアを援護に回し、さらに槍を使う二人にフラムの周囲を守らせる。


「ハンレット、ヴィータは魔法で牽制を!」


 さすがに魔物へ接近すれば向こうも警戒するし、反撃しようとする。

 それに備えるため、魔法の使える二人に指示を飛ばす。


「了解したぜぇ! 合わせろヴィータ! アイスバレットォ!!」

「畏まったわ! ってちょっと、先に勝手に魔法を発動させないで! まったく……テイルウィンド!」


 まったく、後方で魔法を使う役目なのにこの二人はいつも衝突するな……頭が痛くなる。



リクが連れてきた冒険者さん達も、戦闘を開始したようです。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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