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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1913/1950

寝不足ながらも獣王国状況確認



「……それにしても、だわ」

「ん?」


 お風呂好きな獣人の話をしているうちにエルサの毛がほぼ乾き、極上で至高、そして究極のモフモフを堪能していると、思い出したかのように声を出すエルサ。

 ベッドにお腹を出して転がっている姿は少し情けないけど、俺を見上げる目は鋭い。


「視線が泳ぎ過ぎなのだわ。獣人の尻尾とか耳とかが揺れるたびにそっちを見ていたのだわ」

「あー、それはまぁ……うん、仕方ないと思うんだ」


 なんだと思ったら、俺が獣人さん達の尻尾や耳を見ていた事だったらしい。

 色んな形や種類の尻尾や耳、お風呂好きだとわかった今なら綺麗好きで手入れを欠かしていないからというのがわかるけど、とにかくどの尻尾も耳も、モフモフそうだったからね。

 意識して手を伸ばさないよう注意していたから、フラフラとそちらに行く事はなかったけど……でも、視線を向けるくらいは仕方ないと思う。


「尻尾とか特に、揺れると視線も揺れていたのだわ。お風呂でもそうだったのだわ」


 お風呂では、念入りに手入れをしている獣人さんがいたけど、濡れてしんなりとした尻尾が小さく見えて面白かったり、水気を飛ばすのに大きく振っていたりとか、人間にはないものが見れたからなぁ。

 エルサに改めて指摘されなくても、視線がそちらにばかり向いていたのは自覚している。

 獣人の女性相手にそういう視線を送ると、アマリーラさんが暴走しそうなので、できるだけ見ないように、または男性獣人の方に向ける努力はしているけども。


「どうせリクの事だから、こうしている間にも別の尻尾とか耳に触れる事を考えているのだわ。私というものがありながら! だわ!」

「いやいや、エルサのモフモフを堪能しながら別の事なんて……それは契約しているからわかるだろう?」

「隠そうとしていたら、さすがにわからないのだわ。まったく、だわ!」


 語気強めなエルサだけど、その言いようは浮気がちな恋人に対して言うセリフのように聞こえるのは気のせいか。

 いや浮気とかしないけど。

 というかエルサは契約しているのもあるけど、相棒とかそういう方向で恋人とは違うんだが……そもそも種族も違うし、エルサもそういう感じではないだろうけど。

 多分、俺の記憶から覚えた言葉を適当に使っているだけな気がするね。


 それより、契約で繋がっていても考えている事って隠せるのか。

 まぁエルサに隠す事はないけど、さすがに全ての考えが流れていっているわけじゃないか。


「まぁまぁ、ついモフモフが動いていると気になってね。ほら、動いている物をみると気になっちゃうでしょ?」


 こういう例を出すのはどうかと思うけど、女性特有の大きな胸部装甲を持つ人が動いて揺れたら、つい見てしまう男性心理というか……。

 多分それと同じだと思う、そういう事にしておこう。

 俺的にそれでいいのかはわからないけど。


「動物の習性って事なのだわ? でも、近くに私がいるのに、他に目移りするのは駄目なのだわ」

「えーっと、うん、そう、そうだよ。目移りとかそういう事じゃないから、な? ほら、もう毛も十分乾いたし、そろそろ眠くなってきたんじゃないかな?」


 エルサは俺の言葉を別の方向で勘違いしたようだ。

 ちょうどいいからそういう事にしておこう、よく考えなくてもエルサは女の子だから、男性心理はわからないだろうし。

 その方が名誉的には良さそうだ……獣人の尻尾や耳に視線を取られていたうえ、こうして怒られている時点で名誉があるのかどうかわからないけど。

 というか今更ながら、エルサは女の子だと主張しているけど俺と一緒に、男湯に入るのはいいのかな? 本当に今更だし、ドラゴンのエルサは人間もエルフも獣人も、人の男性に対しては気にしていないようだけども。


「ふわぁ~、そこそこ、そこなのだわ~……じゃなくてだわ!」

「くっ、今日のエルサは中々強情だな」


 寝かしつけるようにエルサを撫でて、少し効果が出たようだけど、今日のエルサはそれで騙されはしなかったようだ。


「今日という今日は、言わせてもらうのだわ! 大体リクはモフモフに対して節操がなさすぎなのだわ! モフモフが好きというのは長い付き合いになって来たからよく知っているし、契約した時に撫で繰り回されたけどだわ! 誰の、どのモフモフに対しても興味を引かれるのは、失礼極まりないのだわ! そんなだから私はだわ――!」


 そうして、皆が寝静まったであろう時間よりもさらに遅くまで、エルサの説教が続いた。

 明日獣王国の王都で予想される戦闘などに備えてゆっくり寝て、疲れを取ろうと思っていたのにむしろ寝不足になりそうだ――。




「ふわぁ……」

「眠そうね、リクさん」

「うんまぁ。せっかく個室が用意されたんだけど、エルサとちょっとね」


 翌日、アテトリア王国側で休んでいた人達と合流後、改めて獣王国に入国し、関所の獣人兵士さん達にお礼を言って再出発だ。

 避難してきていた獣人さん達も含めて、多くの見物人に見守られる中、荷物と人を乗せたエルサが飛び立つ……よりも少し前。

 現状での獣王国の王都、その状況を関所の隊長さんとアマリーラさん、そしてモニカさんと一部の人を交えて話し合う中つい欠伸をしてしまい、モニカさんに指摘されてしまった。

 エルサの説教、長かったからなぁ……。


 長生きしていると説教も長くなるのかもしれない、ご老人の説教が長いみたいに、というのは偏見か。

 結局寝たのは、そろそろ空が白み始めそうな頃合いだったからな。

 しかも説教をして満足したのと朝食で食べたキューノ効果か、エルサは寝不足でも上機嫌だし。


 こっちは寝不足で、油断すると瞼が降りて来るっていうのに……もしかしたらエルサは、ずっとため込んでいたのかもしれない。

 そう考えると、この機会に言いたい事を俺に言えたのはいい事だったのかも? 寝不足になるのは勘弁して欲しかったけど。


「んっ! ごめん、眠いなんて言っていられないよね。集中する」

「リクさんが大丈夫ならいいのだけど……ゆっくり休んで欲しかったのに」


 そういえば、結界の練習とかで少し消耗していたから、モニカさんにはゆっくり休むように言われていたっけ。

 俺が獣人さんの尻尾や耳に目を取られ過ぎていたからで、自業自得ではあるんだけど、心配してくれているモニカさんには少し申し訳ないな。

 それはともかく、王都の状況に関してだ。

 関所をまとめているらしい隊長さんは、昨日アマリーラさんに剣の腹で殴り飛ばされた獣人さんだけど、怪我などもなく元気そうだ。


 アマリーラさんが近くにいるからか、チラチラとそちらを見ては尻尾を足の間に挟んでいるけど。

 ……おっと、またエルサに説教されてしまうから、あまり見過ぎないように注意しないと。


「――では、王都に押し寄せた魔物は他国から流れてきたのか?」

「は、はい殿下。獣王国で周期的に発生する魔物によるスウォーミングでは、場所こそ特定的ではありませんが、王都付近で突然発生する事は間違いありません。ですが今回の場合、他国から獣王国に流れ、王都を目指して移動したとの情報が入っています。現に、そちら側の関所は壊されたようです」

「そうか……やはり、リク様の読み通り今回は違うのだろうな」

「俺の読みってだけじゃないですけど、状況が違うならそうなんでしょうね」


 獣王国で周期的に起こる魔物大量発生、スウォーミングと呼ばれているらしいけど、ともかくそれは本来王都周辺のどこかで突然発生する事象らしい。

 周期的なので時期を予想して備える事はできるけど、場所が特定されないものだとか。

 ただ王都周辺で起こる事は確実なため、周期が近付いたらとにかく王都の守りを固めて対処するみたいだね。

 そもそも、そんな場所に王都があるのは獣王国の領土を定めた際に、スウォーミングが発生した場合に国を守るためいち早く対処するように王都を発生場所近辺に造ったとか。


 戦えない獣人さんも多くいるとは思うけど、それでも王都となれば常駐する兵士さんなども多く、大きな街であればある程、冒険者も集まる。

 魔物が相手なので冒険者に依頼を出す事もできるし、対処はしやすいってわけなんだろう。


「街や村の被害はどうなっている?」

「魔物共は関所を越えてから王都のみを目指していたようで、途中でぶつかった村などは多少の被害が出ましたが、大きな被害はなく。関所から逃れた者達によってもたらされた情報で、先に避難ができました」

「そうか……」


 少しだけホッとしたような息を吐くアマリーラさん。

 傭兵としてアテトリア王国にいても、やっぱり王女として国の民を思う気持ちはあるんだろう。

 被害が出ている事自体は悲しむべき事だけど、それが少ないというのは朗報と言えるしね。

 それにしても……。


「真っすぐ王都を目指したって行動から、やっぱりこれって」

「はい、リク様。やはりスウォーミングとは違い、意図されての事でしょう」

「そうですよね」


 魔物の動きが、アテトリア王国で帝国に仕掛けられたのと似ている。

 違うのは他国から来ているという部分か……。


「獣王国はアテトリア王国以外とは別の国と面しています。ただ、そちらは帝国とは別方面ですし、そもそも獣王国自体、帝国から離れていますのでどうやったかはわかりませんが」

「まぁそれは後々調べるとして……」


 もしかしたら、帝国は他の国にも何か仕掛けている可能性があるね。

 アテトリア王国は幸いにも大量の魔物の脅威を退けられたけど、壊滅的な被害を被った国とか……いや、姉さん達はそういった情報を得ていなかったから、大きな被害を出すのではなく、魔物を使って脅して協力させたとかかな?

 ともあれ、帝国の方面だけを気にしてはいられない可能性はあるけど、今は獣王国を助ける事だ。


「避難者は、全部こちらに?」

「いえ、各地に散らばるようにしています。ここだけに集まっても、全ての避難民を受け入れられませんから」


 避難者についての話を聞いてみると、魔物が目指した王都から離れるように各地へと散らばらせているようだ。

 まぁ一国の国民全てを、一つの関所で受け入れるのはさすがに厳しいか。

 さらにその中で、避難する際に押し寄せる魔物の群れを見た人も多かったのか、国を出ようとする人なども多くいて対処に困っているところらしい。

 今はエルサに注目が集まっているけど、俺達が来た時関所の門に多く集まっていた人達はそういう事なんだろう。


 ある程度は、アテトリア王国側で受け入れる事はできるだろうけど、さすがに一気に流れ込むと向こうも対応に困るだろうし、俺が決める事でもないか。

 その辺りは国同士や、関所にいる人達同士などで話し合って決める事だろうし。


「肝心の王都の状況はどうなっている?」

「王都が包囲されている程ではありませんが、定期的に送られてくる報せも滞っていますので詳細はあまり。ただ、魔物達は複数の種類、さらに一部は強力で冒険者風に言うとランクの高い魔物もいるらしいとも伝えられました。単一の魔物ではないため、それに対する驚きが広がり、動揺が広がってもいたようです」

「複数種類の魔物、そこもか……強力な魔物もいるとなると、対応にも苦慮するだろう。おそらくこのまま魔物を駆逐するのを待つと被害が大きくなるかのせいは高いな。既にそれなりの被害が出ているとも思う。――リク様、獣王国のみで対処可能だと申しましたが、間違えていたようです。申し訳ありません。我が儘を申してしまいますが、リク様にはこのまま……」

「はい、元々そのつもりでしたから。想定より被害が出ていて、助けが欲しい状況かもしれませんし、協力は惜しみませんよ」

「ありがとうございます」


 深々と俺に頭を下げるアマリーラさん。

 そこまでしなくてもいいんだけど……ほら、王女様であるアマリーラさんがそんな事をするから、隊長さんや他の獣人さん達が驚いているし。

 続いてリネルトさんも、同じように俺に対して頭を下げた事で、他の獣人さん達もそれに習って頭を下げた。

 アマリーラさんは王女様というだけでなく、その力を獣王国の精強な兵士さん達の間でも認められているらしく、さらにリネルトさんも同じくだとか。


 その二人が俺に対して頭を下げた事で、実際に力を示さなくても認めてくれたとかって事らしいとは、あとで聞いた。

 ともあれ、慌てて頭を上げるように言って、魔物への対処のために気を引き締める。


「ヴァルドさん、出発前に伝えていた作戦通りに」


 とりあえず状況などを聞くのはアマリーラさんに任せ、俺は王都へ到着してからの指示や確認だ。

 ヴァルドさんには、姉さんに借りた兵士さん達を使って作戦を考えてある。

 これは、どれだけ獣王国王都の状況が悪くても変わらない。


「はっ。部下達にも全て伝えております。いつでも」


 ヴァルドさんから、だけでなく周囲にいるアテトリア王国から連れてきた兵士さん達も、皆頼もしい頷きを返してくれた。

 こっちは大丈夫そうだ。


「フラッドさん、冒険者は俺と一緒に魔物と直接戦う事になると思います。考えていたより状況が悪そうなので、当初の予定より相対する魔物は多いかもしれません」


 冒険者さんは当初の予定では、まずヴァルドさん達と同じ作戦に参加し、その後魔物の残党を討伐するように考えていた。

 だけどヴァルドさん達の方の作戦は変更なしだけど、こちらは変更させてもらおう。

 王都では、悠長にしているよりも作戦を変更して迅速に対応しなければいけない程、状況が悪い可能性も出てきたから。


「はい、もとよりそのつもりです。あのセンテでの戦い、絶望的な状況を経験したのもいますから、多少状況が悪い程度問題ではありません」

「助かります。ただ、俺と一緒にとは言いましたけど、あまり近付かないよう気を付けて下さい。巻き込んじゃうかもしれませんので」


 手加減というか、周囲の味方を巻き込まないようにする訓練などはしているけど、まだあまり自信がない。

 ついつい力を入れすぎて、吹っ飛ばした魔物が味方に……なんて事も起こりえるからね。


「はは、マスターの近くで戦えるのは、一部の者だと理解しています。あれから訓練もしていますし、任せて下さい! 魔物がどれだけいようと、蹴散らして見せますよ! だよなぁ、お前ら!」

「「「「おぉ!!」」」」


 フラッドさんが他の冒険者さん達に声をかけると、それぞれに気勢を上げた。

 兵士さん達は静かに意気込む仕事人のような雰囲気だとしたら、フラッドさんや冒険者さん達は力の有り余った荒くれ者のような雰囲気。

 だけど今は、その荒々しさが頼もしい。

 センテでの戦いを経験した人も多いからってのもあるけど、実力はエアラハールさんのお墨付きでもあるからね。


 むしろ、魔物と戦うよりも俺に巻き込まれないかという方が心配かもしれない。

 とにかく、フラッドさんを始めとした冒険者さん達には、最初から全力で魔物と直接戦ってもらい、数を減らす事に集中してもらう。

 俺には近づかず、王都で戦っている人達とはまた別方向から魔物の群れにぶち当たってもらい、離脱を繰り返して危険を減らしたうえで、魔物達の気勢を削ぐ役目でもある。

 ……もし危険そうなら、エルサがいてくれるしね――。



大量の魔物相手に心もとない人数ではありますが、リクは事前にある程度の作戦を考えていたようです。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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