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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1911/1949

獣王国側の関所は警戒態勢

ブックマーク登録をしてくれた方々、評価を下さった方々、本当にありがとうございます。



 関所には入出国する人のために宿泊施設があるらしいけど、何かあった時のために軍などが駐屯できるようにもできているはずだ。

 友好国だからそれがないわけではなく、今友好的であっても将来はわからないのが国同士の関係だろうしね。

 あとは……友好国で出入りが多いらしいから、俺たち以外にもいる可能性もあるし、宿泊施設があっても空きがあるかどうかかな?


 アマリーラさん達の様子を見るに大丈夫っぽいけど、三十人が泊まれないようなら、アテトリア王国側の関所とで振り分ければいいか。

 エルサに頼めば、ひとっ飛びで行き来できるだろうし。


「じゃあまずは予定通り関所を目指して、その後はそこで一泊の後、王都に向かって翌朝出発ですね」

「はい。ではそのように、皆に周知して参ります」

「あ……行っちゃった。わざわざアマリーラさんが行かなくてもいいのに……」

「アマリーラさんはリク様に提案した手前、自分で動きたかったのでしょうねぇ。私も行って参りますぅ。アマリーラさんに任せて何かあってはいけませんからぁ」

「あ、はい、お願いします」


 さっと身をひるがえして他の人達の方へ向かうアマリーラさんを、さらにリネルトさんが追いかけて行った。

 アマリーラさんが何かするわけではないと思うけど、言葉足らずとは別の意味で衝突の可能性があるから、リネルトさんに任せていれば安心だろう。

 居丈高、という程ではないんだけど俺以外には割と命令口調で話すからなぁ、場合によっては反感を買う可能性とかもあるかもしれない。

 そういう部分は、獣王国の王女様というのがにじみ出ているのかもね……知らなければ、軍人っぽい印象でもあるけど。


「よーし、それじゃあ関所へ向かって出発だ。エルサ」

「了解したのだわー。いっぱいキューを食べて元気いっぱいなのだわー」

「……急ぐわけじゃないから、張り切り過ぎないようになー」


 昼食休憩を終わり、関所で一泊する予定に変更した事が周知され、焚火などの片付けを終えて改めて獣王国へ向かって出発だ。

 再び大きくなったエルサの背中に荷物や人を乗せて浮上。

 キューをお腹いっぱい食べて元気なエルサには、速度を出し過ぎないよう注意しておく。

 皆も多少慣れ始めてきているようだけど、それでも速く飛び過ぎたら恐怖感を与えてしまうかもしれないし。


 関所で一泊する予定だから、さらに急がなくてもよくなったのもある。

 どれだけ急いでも、王都へ向かうのは明日だし……これまでと同じ速度でも、日が完全に落ちるまでには確実に関所に到着するだろうし。


「リクは、また結界の練習なの」

「ちょっとでも、今のうちにやっておいた方がいいわ」

「う、わかった……」


 ただ俺は優雅に空の旅とはいかず、ユノとロジーナに言われて休憩前と同じように、結界の練習。

 焦りではないけど、何やらユノとロジーナが急いでいるようにも感じるなぁ。

 でもまぁ、やっておいても結界が無駄になる事はないと思うので、素直に従って練習を開始。

 ……でもやっぱり、毎回結界を作る時に痛みを感じるのは勘弁して欲しかった――。



 ――結界の練習を続けているうち……大体一時間程度だろうか。

 アテトリア王国側の関所に到着。

 関所はどこもそう変わらないらしいけど、横に長く長城のような形で築かれている、国境を密かに越えるような人を減らすためだろう。

 エルサに乗っている時遠目に見えた、獣王国側の関所も似たような感じだった。

 その長城のような場所の建造物のうち、馬車が数台一度にすれ違えるくらいの幅がある大きな門を構えた部分の左右に、詰所など人が入れる建物があり、宿泊施設もそこにあるんだろう。


 出入りが多いというアマリーラさん達の言葉を証明するように、商人さんと思われる人が露店を開いて、食料をメインに色んな物資が売られてもいた。

 規模が大きいとは言えないけど、ちょっとした市場みたいになっていた。

 ともあれ関所での手続きだけど、こちらでは既にある程度エルサの事が知られているし、兵士さんもいるうえ姉さんの命令書のようなものもあるため、問題なく簡単に出国手続きを終えた。

 元々、アテトリア王国側の関所に寄る予定はなかったんだけど……姉さんを始め王都の権力者の協力で問題にはしないという事だったから。


 ただ今日の内は急ぐ必要がなくなったため、一連の入出国の手続きというのを体験してみようと、寄ってみたわけだ。

 手続きは命令書のようなものがあったから、というのもあるだろうけど、基本的に皆がそれぞれ身分証を見せたくらいだった。

 まぁ、集団の代表である俺には多少形式的な質問みたいなのはあったけど。

 身分証は冒険者なら冒険者ギルドのカード、兵士さんなら所属証とかだね。


 特に問題なく出国の手続きが終わった後は、何故か関所に詰めている人達や、偶然居合わせた旅の人等々、とにかく関所にいる人達が出て来て、大きくなったままのエルサを見上げていた。

 貴重な物を見たい、という好奇心なんだろう。

 噂はここにも届いているようで、エルサに対しておかしなことを考えている人はいなさそうだったけど、平伏して祈り始めた人がいたのは少し驚いた。

 ドラゴンって、一部では崇拝対象だったりするんだろうか?


「それじゃあ、もしあちらでこの人数が受け入れられそうになかったら、もう一度戻ってきます!」

「はっ!」


 関所にいる偉い人らしき兵士さんにそう言って、再びエルサで浮上。

 一応、出国の履歴から現在獣王国側の関所、その宿泊施設に三十人がは入れないという事はないだろう、ってのは聞いているけど念のためこちらでも受け入れてもらう準備はしてもらっている。

 獣王国側から、出国する前に関所で一泊、という人がいないわけでもないからこちら側で把握している以上の人が泊まっている可能性もなくはないからね。

 しかも向こうでは、王都を魔物が襲っているわけだし、避難とかしてきている人とかもいるかも……?


 まぁそれは、王都から国境まではかなり距離があるので、その余波が届いているか次第だろうけど。

 ともあれ、エルサに乗って飛んでから数分程度で、獣王国側の関所にある大きな門の前に到着した。

 緩衝地帯は大体数キロくらいの平原で、徒歩だと結構かかるだろうけど、エルサならすぐ横断できるからね。

 そんなわけで、関所の門近くでエルサに降りてもらったんだけど……。


「えーっと……」


 何やら殺気だった獣人さん達――武装しているから関所に詰めている兵士さんなんだろうけど――その人達がこちらに向かって武器を構えていた。

 数は……ざっと五十人くらいはいるんじゃないかな? こちらより人数が多いのは確実だ。


「警戒、というより戦闘態勢みたいだけど……エルサちゃんに驚いているのかしら?」

「そうだと思う。視線がほとんどエルサに向いているし。一応、アテトリア王国側の関所からこちらに報せを送ってもらったんだけどなぁ」


 出国手続きをしている間に、獣王国側の関所に連絡をしてもらっていた。

 それはもう届いているはずなんだけど……。

 こちらに向かって構えている獣人さん達は、アテトリア王国の兵士さん、つまり人間の武装よりも軽装で金属の部分鎧だ。

 多種多様な尻尾や耳がモフモフしてそうなんだけど、今は警戒を示すようにピンと立っている。


 中には毛が逆立っている人もいるね、問答無用で向かって来ないのは、兵士さんだからというのもあるだろうけど、大きくなったままのエルサを恐れているからかもしれない。

 うーむ、こういう状況じゃなければ、尻尾や耳を見て楽しめたんだろうけども。

 まぁそうなると、手を伸ばすのを我慢するのが辛いかもしれないね。

 獣王国に行くとなった時点で、ある程度覚悟して不用意に手を伸ばさないように、注意しているけど。


「リク様、ここは私が」

「アマリーラさん?」

「獣王国ですのでぇ、アマリーラさんにお任せで大丈夫ですよぉ」


 リネルトさんに言われて、前に出たアマリーラさんに任せる事にする。

 予定変更を皆に伝える際には、アマリーラさん一人に任せられないと言っていたのに、こういう状況なら大丈夫らしい。

 獣王国の人達が相手だし、王女様でもあるからかな? なんて思っていたら、おもむろに自前の大剣を振り上げたアマリーラさんが、全力で地面に振り下ろした!


「ふんっ!!」


 ズガッ! というすさまじい音と共に、地面へとめり込む大剣。

 関所の兵士さん達に向かって、一筋の裂け目が伸びた。

 さらに……。


「しっ!……誰に向かって武器を向けているっ!!」

「へぱっ!?」


 並んでいた獣人兵士さんの中央、一番上等そうな装備をしていた人に向かって一足で間合いを詰め、剣の腹でぶん殴った。

 突然の事に反応できなかったのか、もしくはその前の地面に亀裂を入れた一撃に驚いていたのか、よくわからない声を残して、殴られた人……多分隊長格っぽい垂れ耳の獣人さんは、なすすべもなく吹っ飛んだ。

 ……生きてるかな? あ、立ち上がろうとしているから、生きてるっぽい。


「……完全な敵対行動だと思うんですけど、いいんですか?」


 武器を構えている集団相手に、攻撃行動とか敵対すると言っているのと同じだ。

 獣王国に入る前から戦闘とか考えていなかったし、そもそも助けに来たのにその獣王国相手に喧嘩を売るなんて……。

 と思ったんだけど、リネルトさんは涼しげな表情だ。


「問題ありませんよぉ。アマリーラさんがというのもありますが、兵士相手であれば強制的に格付け……もとい、実力行使でわからせた方が話が早いのでぇ」

「今、格付けって言いましたよね?」


 力のある者が上に立つ、実力主義が獣王国だとは聞いていたけど、それでいいんだろうか?

 聞き返しても、リネルトさんはにこやかに関所側の集団を見ているだけなので、答えは返って来ないっぽいけど。


「ふん。この程度で国境警備が務まると思っているのか?」


 大剣を肩に乗せ、睥睨するように兵士さん達を見るアマリーラさん。

 それに対し、端の方にいる兵士さんの一部が気色ばんで前に出ようとするのを、周囲の兵士さんが押し留めていた。

 さらに、アマリーラさんの近く……剣の腹で殴り飛ばされた人がいた場所の近くでは、「殿下」「殿下だ!」「お戻りになられたのですか殿下!」などなどの声が上がり始めた。


 アマリーラさんの事に気付いたみたいだね。

 格付けなんてしなくとも、アマリーラさんが前に出るだけで良かったんじゃないだろうか? 顔は知られているっぽいし――。


 ――少しして、アマリーラさんが獣王国の王女様であると気付いた兵士さん達が警戒を解く。

 一部、体を震わせて尻尾を足に挟んでいる人もいるけど、アマリーラさんに恐れているだけだよね? エルサの可能性もあるけど、アマリーラさんが声高に俺が出ていれば全員一太刀で真っ二つにされただろう! なんて言ったからじゃないよね?

 いくらなんでも、五十人前後の防具を付けた人達を一太刀でなんてできないし。

 ……いや、白い剣の魔力放出モードで巨大化したら、できるかな? やらないけど。


「リク様、我が国の者達がとんだ失礼を、申し訳ございません」


 ともあれ、兵士さん達を見て満足そうに頷いたアマリーラさんがこちらに戻って来る。

 すぐさま頭を下げるアマリーラさんに、向こうの方で兵士さんが達が「あの殿下が……」とか「殿下の言う事は本当だったんだ」などと言っている声が聞こえて来て、さらに体の震えを強くした獣人さんもいたのは見なかった事にしよう。


「いえ、それはいいんですけど……戦闘になったわけじゃありませんし。攻撃はしましたけど」


 アマリーラさんがね。


「報せが来ていたにもかかわらず、リク様、そしてエルサ様に武器を向けるなど獣王国兵士として恥の極み。力の差というものをわからせるため、私が出ましたが……リク様がお望みであれば、今からでも蹂躙するお姿を見せるのも……」

「いやいや、蹂躙とかしませんから! 話せるならそれでいいんです。穏当に入国できればそれでいいんですから!」


 物騒な事を言うアマリーラさんに焦る。

 横でリネルトさんがうんうんと頷いているのが怖い。

 リネルトさん、穏健派というかこういう時アマリーラさんを止めるストッパーなはずなのに、獣王国の人達相手だと過激になるのかな?


「どうでもいいけど、そろそろ背中の荷物を降ろしてもいいのだわ?」

「あ、あぁ、うん。そうだね。アマリーラさん、大丈夫ですか?」

「はっ、宿泊施設に余裕があるかの確認はこれからですが、荷物などはここで降ろして構わないでしょう」

「わかりました。それじゃ皆、お願いします!」

「「「はい!」」」


 どうなるのか、と見守っていた冒険者さん達や兵士さん達が、俺の号令で一斉に動き出す。

 休憩の時もそうだったから慣れたのか、皆キビキビと動いてくれるのでありがたい。

 まぁ一部、だらけているとアマリーラさんが動き出すとか、睨まれているから、といった声が聞こえたけど。

 アマリーラさん、あまり睨まないで上げて下さい。


「に、入国手続きをさせていただきます。み、身分証明証は何かお持ちでしょうか?」

「はい、冒険者カードになりますけど。あと、こちらがアテトリア王国の親書になります」


 荷物をエルサから降ろしてくれている人達とは別に、俺の方は入国の手続きのため門の横にある詰所へ。

 建物内ではなく、外の窓口で受付する形でアテトリア王国側と同じだ。

 ただ、手続きをしてくれる担当の人が、チラチラと俺の後ろにいるアマリーラさんを見ておどおどしているけど。


「え、Sランク冒険者のカード……し、失礼しました! ただいま手続きを致します! 申し訳ありませんが、少々お待ち頂きたく……!」

「あー、急いでいるわけではありませんので、焦らずゆっくりでいいですよ」

「は、はい! ありがとうございます!」


 ざわっ……と、周囲の関所にいる人達の間でざわめきが広がった。

 入国に際して姉さんから預かった親書、あくまで関所で渡すように言われた物で、獣王国王都ではまた別の物を預かっているけど、それも一緒に渡したんだけど、関心は俺の冒険者カードに注がれているようだ。

 俺の冒険者カードは、既にSランク専用の物に変わっており、白銀色の希少金属を使用したカードだ。

 さすがに俺は試していないけど、大木をなぎ倒す膂力を持つアマリーラさんの全力でもほぼ傷を付けられない程の強固さらしい。


 カードにその強固さは必要なのかな? と思ったけど、荒事が多い冒険者でさらにランクが高いと、強い魔物との戦闘が予想されるので、それくらいの強度がいるらしい。

 まぁAランクのカードの時点で既にそれなりの強度ではあったんだけどね。

 それはともかく。


「それにしても、門の向こうに大勢の人が見えますけど、賑わっているみたいですね。入出国を管理する関所に対して賑わっていると言っていいのかわかりませんけど」


 手続きをしてくれる人とは別に、隣で俺に付いて来てくれている関所の兵士、こちらも当然ながら獣人さんだけど、その人に話しかける。

 先程アマリーラさんに一喝された兵士さん達の一人だけど、見張りというより案内役のようだ――。




アマリーラさんの一括、というより実力行使により、関所での問題は解決したようです。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

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