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合同訓練決定



「ふむ……そうだな……それなら、城の兵士達もある程度参加させよう。外の人間を見る事も訓練になるだろうからな」

「リクの思い付きだろうが……まぁ、それも良さそうだ。兵士の練度が上がるのは歓迎する事だからな」


 何やら城の兵士達も参加して、合同訓練の様相になってしまうようだけど……まぁ、これはこれで良いか。

 姉さんの方も、兵士達が訓練する事には賛成なようだ。

 魔物達の襲撃なんかがあって、兵士が強くなるのは備えとして良い事だという考えなんだろうね。


「それではリク殿、私は兵士達へ伝達して来る。明日に備えて鍛錬をしておかねばらなんしな」

「……今から鍛錬しても明日には間に合わないだろう」

「今から体を調整しておくのも重要な事ですよ。では、これで失礼します、陛下」

「うむ」

「明日、お願いします。ヴェンツェルさん」


 兵士達に明日の合同訓練の事を伝えるため、部屋から退室するヴェンツェルさんを見送った。

 残った俺と姉さんは、ソファーに座っていつの間にか新しく淹れなおしてあったお茶を飲んで一息吐く。


「何というか……気安い人なんだけど、結構な熱量のある人だったね」

「ヴェンツェルはねぇ……戦う事が好きすぎで……一種の戦闘狂ね。それ以外は優秀でしっかり軍をまとめてくれてるんだけど……」

「力のヴェンツェル様、知略のハーロルト様と、現在の軍部はバランスが取れてるのでしょう」

「まぁ、ハーロルトばかりに苦労を掛けてしまっているけどね」


 城の中でも、ヴェンツェルさんは力というか戦闘の部分で申し分なく、ハーロルトさんが色々考えて制御する事で、バランスが保たれているようだね。


「しかし姉さん、俺もそうだけど……ヴェンツェルさんが会議に参加しなくても良いの? 帝国の事も含めた重要な会議なんだよね?」

「まぁ、外聞的には参加した方が良いのはもちろんね。でも、ヴェンツェルがそう言った事に役に立ちそうにない……というのは本人も言ってた通りよ。貴族達もその事は知っているから、文句も出ないと思うわ」

「ヴェンツェル様は、豪放磊落な性格で信頼を得ていますからね。世話になってる者も多いようです。さほど問題にはならないでしょう」

「そんなもんなんだね」


 将軍という高い地位にいるんだから、国の重要な会議には絶対参加しないといけないものだと思っていたけど、そう言う事もあるのかもしれないね。

 ヴェンツェルさんのように、他の人達から信頼されていないといけないんだろうけど。


「それよりりっくん……」

「何、姉さん?」

「そんなに会議に出るのは嫌なの? りっくんがいれば貴族達との話し合いもスムーズにいくと思うんだけど」

「んー、どうしても出なきゃならないのなら仕方がないけど……出来れば避けたいかな。貴族なんてお偉い人達が集まる場所で、何を言って良いかわからないしね」

「貴族達はりっくんに救われて感謝しているから、何も言われないだろうけど……貴族より偉い女王の私には普通に話してるのはどうなの?」

「姉さんは姉さんだからね。どれだけ偉くなっても他の人達とは違うよ」


 俺は冒険者として、手の届く範囲で人を助けたりするだけで良い。

 貴族とかとは出来るだけ関わりたくないのが本音だ。

 ……何か、偏見なんだろうけど、貴族とかってしがらみとか多そうで面倒だからね。

 姉さんは女王様で、生まれ変わって見た目が変わったとしても、雰囲気とか話し方は昔と変わらないから、特別だね。


「もう、りっくんたら。そんな嬉しい事を言ってお姉ちゃんを喜ばせるなんて!」

「ちょ、姉さん!?」


 特別な事は言ってないと思うんだけど、何故か感極まった様子の姉さんに抱き着かれた。

 一瞬で机を飛び越えて、向かいに座ってた俺に飛んで来るとは……姉さんの動きも侮れない……。

 さっきは、姉さんの隣にいる事に照れたりしないと考えたけど……抱き着かれるとさすがに照れ臭いな。

 見た目も変わってるし、俺も以前の小さい頃とは違う……それに、わりと柔らかい感触が……。


「何なのだわ!? 暑苦しいのがいなくなったと思ったら、何が起こったのだわ!?」

「エルサ?」

「あら、ごめんなさいエルサちゃん」


 ヴェンツェルさんが来ていた間も、俺の頭の上で寝ていたはずのエルサが、姉さんに抱き着かれた拍子にソファーの上に落ちてしまった。

 それに驚いた様子で起きたエルサだけど……もしかして、ヴェンツェルさんが暑苦しくて関わりたくないからと、寝たふりをしてたな……?

 ヴェンツェルさんがいなくなってようやくゆっくり寝ようとしたら、落とされたって事か。


「まったく、ゆっくり寝られやしないのだわ」

「昼を食べた後から、今までずっと俺の頭で寝てただろうに……」

「本当にエルサちゃんは、りっくんの頭が好きなのねぇ」

「ここは私だけの居場所なのだわ」


 落ちたソファーで起き上がり、姉さんが俺から体を離すのを見るとすぐまた、ふわりと飛んで俺の頭にドッキングした。

 姉さんの言葉にも、この場所は渡さないとばかりにしがみ付いている……あまり力を入れると、頭が締め付けられて少し痛いんだけど……。


「そういえば、ヴェンツェルさんはエルサの事を注目しなかったね」

「りっくんと手合わせする事しか考えてないみたいだったからね。戦う事を考えると、他の事は見えなくなる困った性格なのよ」


 俺の頭にずっとくっ付いていたエルサの事が全く気にならない程、ヴェンツェルさんは俺と手合わせがしたいみたいだ。

 将軍の地位にある人がそこまで思ってくれて、光栄と思えば良いのか、それとも暑苦しいと思えば良いのか……。

 見た目と熱量としては、やっぱり暑苦しいだね、うん。


「陛下、リク様。そろそろ夕食の時間でございます。本日はどちらでお召し上がりになりますか?」

「俺はここで食べさせてもらいます。城の中に慣れていないから、他の場所で食べると落ち着かなさそうですからね」

「食堂とか、結構広くて楽しいわよ? まぁ、りっくんがここで食べるなら、私もここで食べようかしら。今日はもう私も予定は無いはずよね、ヒルダ?」

「現在私はリク様のお世話役なので、陛下の予定を全て覚えているわけではありませんが……確認して参ります」

「食べ物なのだわ? キューもお願いするのだわ!」

「そちらのご用意も、抜かりなく」


 そう言って、ヒルダさんは退室して行った。

 姉さんは俺やエルサと一緒にこの部屋で食べたいようだけど、良いのかな?


「良いの、姉さん?」

「久しぶりにりっくんと一緒に食事をしたいわ」


 という事で、姉さんの要望により一緒に食事をする事になった。

 姉さんの予定を確認して来たヒルダさんによると、明日朝までは特に予定はないとの事。

 俺がいない場合は、姉さんの侍女をしているヒルダさんや、他の侍女さん達が姉さんの予定を把握しているようだけど、今回は俺の世話に集中するため、ヒルダさんは覚えていなかったらしい。

 ……侍女というより、秘書にも近いのかもしれないね……この世界に秘書という役職があるのかは知らないけれど。



ヒルダさんは優秀な秘書のような風格です。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はブックマークを是非お願い致します。


作品を続ける上で重要なモチベーションアップになりますので、どうかよろしくお願い致します。

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