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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1908/1948

クラン冒険者の選別



 ――せっせと、というわけでもなく割と文句を言いながらも、ミスリルの矢などを作っていたエルサを回収し、クランに移動。

 その途中で、王城敷地内の簡易支部に寄ってマティルデさんとも話す。

 俺が姉さん達と話している間に状況は伝えられていたらしく、クランに緊急依頼を出す事を急遽決定してくれていた。


「それじゃあ、パーティ単位とはいきませんけど、よろしくお願いします」

「「「「はいっ!!」」」」


 クランとしての緊急依頼の処理をナラテリアさん達に任せて、冒険者さん達を訓練場に招集して状況説明。

 その中から、希望も含めて獣王国へ魔物討伐などの参加者を決める。

 全員が行けるわけではないし、姉さんからの提案で兵士さんも連れて行く事になったため、パーティ単位ではなくある程度絞っての条件付きとなった。

 俺達を含めて総勢十五名、半分くらいはセンテでの戦闘経験のある人達で、パーティのリーダーを含む特に実力のある人達が選別される。


 まぁ、集まった人のほとんどが希望したので、実力を把握しているエアラハールさんやユノ達が選んだんだけども。

 メンバーの中には、センテで知り合ったトレジウスさんもいる。

 リリーフラワーからは、アンリさんが参加だ。

 ルギネさんも希望したんだけど、グリンデさんとミームさんが選別から漏れたのもあって辞退した。


 二人を放っておくと色々と危ない、みたいな感じらしい。

 まぁグリンデさんとか、ルギネさんと離れるのが嫌で泣いてたからね、仕方ない。

 その他、ソフィーとフィネさんは訓練のために残るという事だ、

 フィネさんからは、ルジナウム方面を通る時にフランク子爵……まだ正式に陞爵式などが済んでいないけど、伯爵相当みたいだからフランク伯爵か。


 もしフランク伯爵に会う事があればと、手紙を受け取った。

 近況報告みたいな内容なので、会う事がなければ無理に渡す必要はないらしい、一応フィネさんの方でも定期的なやり取りはしているみたいだ。

 それ以外には、まだ経験は浅いけど冒険者になったばかりのミラルカさん、癖が強いところで言うと鞭使いの姉さんとは違う意味での女王様風な人などだね。

 まぁパーティメンバーの下僕的な人達はお留守番だけども。


「えーと、リク様、モニカ様、ユノ様、ロジーナ様、レッタ様。それから、トレジウスさん、アンリさん、ラウリアさん、フラムさん、フラッドさん、ロルフさん、ホーエンさん、ハンレットさん、エーベルさん、ヴィータさん。この十五名ですね」

「はい、手続きの方は任せました」

「畏まりました」


 訓練場に一緒に来てもらっていた、カヤさんが選別された人達を確認。

 ちなみにラウリアさんというのは、以前センテとヘルサルの間にある森での魔物掃討で、戻って来なかった冒険者パーティのリーダーさんだ。

 確か、「華麗なる一輪の花」パーティだったね。

 それとフラムさんというのが、鞭を持った女王様風の女性で「女王様と下僕」というそのまんまなパーティ名のリーダーさん。


 ラウリアさんは少し小柄なショートカットの黒髪で、真面目そうな剣使い。

 フラムさんは長い鞭を持った釣り目で、燃えるような赤い髪が腰まで届いていて、パッと見はものすごい厳しそうな女性……だけど、俺だけでなくパーティメンバー以外の人と話す時は、ものすごい穏やかに話す人だったりする。

 見た目通りというか、パーティ名のまま女王様になるのは、パーティメンバーの男性に向けてと、魔物や戦闘相手に対してだけらしい。

 あまり聞きたくなかったけど、パーティメンバーの男性達の掛け声が「ブヒィー!」だった知った時は、クランに参加してもらった事を後悔しかけた。


 その他、ハンレットさん、ロルフさん、ホーエンさん、フラッドさんは男性で、エーベルさん、ヴィータさんは女性、それぞれパーティのリーダーなり、パーティ内で一番の実力者だったりする。

 それらの人達を引き連れて、獣王国を襲う魔物討伐だ。


「ハンレッドさん、準備の方は……」


 選抜したメンバーのうち、皆のまとめ役になりかけている男性、ハンレッドさんに声をかける。

 ハンレッドさんは、ヴェンツェルさんやマックスさんに近い筋骨隆々とした大柄な年嵩の男性で、粗々しい冒険者というイメージを体現しているような人だ。

 酒場などで、ジョッキではなく豪快に樽ごとお酒を飲んでそうなタイプだ、見た目だけは。

 お酒、苦手らしいから完全に見た目詐欺だけど。


 フィネさんと同じBランク冒険者で、刺々しい棍棒を主体に戦う人。

 その棍棒を振り回した破壊力はすさまじい……けど、それを棒術だと言い張るのは少し納得がいかなかったりする。

 パーティ「むくつけき男達の宴」という大柄な男性五人のパーティは、人によっては、いやエルサは実際にそうだったけど、目を逸らしたり距離を取ったりとむさくるしさ全開のパーティを率いていて、クランに参加してもらった冒険者の中ではパーティメンバーも含めて年齢も高く、経験も豊富なのでまとめ役のように頼りにされているらしい。


「冒険者は常在戦場、とまでは申しませんが、いつでも戦える準備はできているものです。依頼などで、いつ遠出するかもわかりませんからな。マスターのご指示があれば、いつでも出発できます」


 見た目通りの低い声でそういうハンレッドさんに、他の人達も頷く。

 ランクが高く、冒険者としての経験が長い程、いつでも出られる準備はしているか。

 まぁ、依頼で突発的に日帰りできそうにない場所に行く事だってあるし、クランだと割り振られた依頼を承諾して、すぐに向かうなんて事もあり得るからね。


 ちなみに、マスターと呼ばれたのはもちろん俺で、クランマスターだからという事らしい。

 リク様、のように畏まった呼び方よりはマシなので、そのままにしている。


「わかりました。では、王国側の準備も進んでいますので、合流次第出発しましょう。王城の、ワイバーン達がよくいる場所……はわかりますか?」

「はい。簡易的に用意された冒険者ギルド支部へ行く際、遠目に見ていましたので」


 すぐ隣、という程ではないけど遮るものはほとんどないから、王城の敷地内に用意された冒険者ギルド支部から、ワイバーン達のいる場所は見て知っているか。

 豪快そうな見た目にそぐわず真面目な性格がにじみ出ているハンレッドさんに、そりゃ頼りにされてまとめ役になるよなぁと思いながら、こちらも頷く。


「なら案内はなくて良さそうですね。そこに全員で集合して下さい」

「了解しました。――おい、お前ら! マスターが仰られた通りだ! 遅れるな!」

「「「「はい!」」」」


 後ろを振り返り、他のメンバーに向けて叫ぶハンレッドさん。

 なんというか、統率力的な意味で俺よりクランマスターに向いている気がするなぁ。

 迫力としても、俺なんかよりよっぽどあるし……。


「あとは……ソフィー、フィネさん。それからエアラハールさん。こちらの事は任せます。細かい事はナラテリアさん達にも言ってありますので、何かあればそちらと相談して。できるだけ早く戻ってきますから」

「あぁ、わかった」

「はい。依頼の割り振りや、メンバーの割り振りも訓練を通してある程度の実力がわかっていますので、そちらお任せ下さい」

「訓練程度ではあるが、やらせておくよ。戻って来るまでに、全員Aランクに片足を突っ込むくらいには鍛え上げておくかのう……」

「……程々にして下さいね?」


 頷いてくれるソフィー達はいいとして、エアラハールさんの言葉に数人どころか残るメンバーのほとんどが顔を青くしているからね。

 訓練はいいけど、やり過ぎて再起不能とかいざという時動けないなんて事がないようにお願いしたい。


「あ、リク様!」

「カーリンさん。……その荷物は?」

「料理、かしら? いい匂いがするわ」


 訓練場を出て、王城の方に急ごうと思った俺に声がかかる。

 振り返ると、大きな荷物を背負ったカーリンさんがそこにいた。


「はい、ニルヌカニアさんから聞きました。遠くへ向かう依頼が舞い込んだのだと」


 クラン内でもあるからだろうけど、情報が早い。

 一応ナラテリアさんには獣王国での事は多少伝えてるんだけど、それをやんわりと依頼とだけ伝えるようにしてくれているみたいだ。


「ですので、邪魔にならなければこちらを持って行ってもらえればと思いまして」

「それは……案る程、ありがとう。もちろん邪魔になんてならないから、ありがたく。他の人達も喜ぶと思うよ」


 カーリンさんが背負っていた荷物の中には、美味しそうなバゲットサンドが入っていて、それぞれお手頃な大きさの箱に詰められている、要はお弁当が入っていた。

 急遽遠くへ向かわなくてはいけない俺達のために、用意してくれたようだ。

 食事は大事だし、そう言えばそちらの事をあまり考えていなかったっけ。

 エルサに乗って移動すると言っても、一瞬で到着なんてするわけないからね。


 途中でお腹がすくだろうし、それがカーリンさんの作った美味しいお弁当なら皆も嬉しいだろう。

 お礼を言ってカーリンさんからそれを受け取る……結構ずっしり来るね。

 俺は力が有り余っているくらいだから平気だけど、細腕のカーリンさんが簡単そうに持っていたのに。

 ……いや、そうか、そういえばヴェンツェルさんの姪っ子さんだったっけ。


「助かるわ。今回は私達だけじゃないし、いっぱい食べる人ばかりだから」

「いえ、これくらいの事でしたらいつでもお申し付けください」


 俺が血筋的な部分に納得している間に、カーリンさんと話すモニカさん。

 俺は人並みだと思うけど、ユノやロジーナはその小さい体のどこに入るんだ? と首を傾げずにはいられないくらい食べるし、冒険者さん達も体が資本というのもあってよく食べる人が多いからね。


「美味しそうな匂いで、もうすぐにでも食べたいくらいだよ。ありがとう」


 受け取った荷物、お弁当の入った袋を背負いながらもう一度お礼。

 背中から、食欲が刺激される匂いが漂っているけど、我慢しないとね。


「リクー! こっちは準備できたのだわー!」

「おっと。エルサ、ありがとう」


 カーリンさんと別れてクランを出て、王城に戻ってくると顔にかぶさるように飛びついてくるエルサ。

 エルサには既に事情を話してあり、ミスリルの矢など魔物相手に使うための準備をお願いしておいたけど、それが終わったらしい。


「よっと」

「むふー。やっぱりここが一番落ち着くのだわ」

「ふふ、エルサちゃんとリクさんがそうしているのが、もう自然と言えるくらいね。最近はエルサちゃんが離れている事が多かったから、少し寂しく感じていたわ」

「確かにね。もうこの頭にエルサがくっ付いている重さが、ちょうどいいというかあるのが当然になっているかも。あ、そうだエルサ、あとで魔力を別けておくね」

「重くないのだわ! でも、魔力はお願いするのだわ!」


 ちょっと失言。

 女の子なエルサに重いと言ったのを講義するように、ポフポフと頭を叩かれながら、苦笑しつつ王城内の部屋に向かった。


「リク様、こちら準備が整っております」

「ありがとうございます。俺がしなくてはいけないのに、こんなことまで任せてしまって」

「リク様にはリク様のやる事がありますように、これも私の役目でございますから」


 部屋では、既にヒルダさんが俺の荷物……だけでなくモニカさんやユノ達の荷物をまとめて準備万端、さらにお茶の用意までしてくれているという、万全な状態で待っていてくれた。

 ヒルダさんにはクランに行く前に話を伝えてもらっていて、俺達の出発準備を整えてもらっていた。

 まぁそうは言っても、多少の着替えとかそれくらいで最低限の荷物なんだけども。

 傍らにはヴァルニアさん達、モニカさん達のお世話をしてくれている人達も一緒なので、手伝ってくれたんだろう。


「ふぅ。おかげで人心地付けました。ちょっと忙しなかったから」

「いえ、私どもでできる事がありましたら、何なりとお申し付けください」


 モニカさんとソファーに座り、淹れてくれていたお茶を飲んで一息。

 ヒルダさんの言葉に他の人達も頷くのを見ながら、もう一口お茶を頂く。

 姉さんに呼ばれて……いや、今日は一つ帝国の工作拠点を潰したからそれからか。


 俺が決めた事だけど、ちょっとどころじゃなく忙しなかったからようやく落ち着けた感じだ。

 ヒルダさんも、あれこれと動く俺を察して用意してくれていたんだろうね、ありがたい。


「モニカさんもごめん、勝手に獣王国に行く事を決めてしまって」

「リクさんならそうするだろうな、とは話を聞いていた時から考えていたから、気にしなくていいわ。リクさんには、できる限りついて行くと決めているんだから」


 そう言ってほほ笑むモニカさんを見て、心の中で大きな感謝の気持ちが湧くと共に、少し照れる。

 顔がちょっと熱くなるのを自覚する、赤くなってなければいいけど。


「さすがに、即日出発するのは急ぎすぎかなぁとは思うんだけどね」

「でも、できるだけ早い方がいいわよね? その後にも影響が出るだろうし、協力してくれる獣王国の人達の被害を減らそうってのが、リクさんの考えなわけだし」

「まぁ、そうなんだけどね」


 既に魔物に襲われているわけだから、向かうならできる限り早い方がいいのは間違いない。

 一応、向こうもこちらからの要請に答えるだけの余裕はあるみたいだけども。

 とはいえ、翌日とかではなく即日出発というのはやり過ぎかなぁと思ったけど、モニカさんも同じ考えなら悩むのはもうやめた方がいいかな。

 多くの人を動かしているからか、クランが始まる前後からそうだったけどこれでいいのか、もっといい考えがあるんじゃないか、という迷いみたいなものが頭の中にあるけど……。


 でも、モニカさんを始めとして、俺の周囲には頼りになる人が沢山いるんだから、間違っていたら教えてくれるだろうし考えすぎも良くないよね。

 なんて思いながら、熱くなった顔を誤魔化しつつしばらくお茶を飲みながら話す。


「……失礼します」


 話しをしつつ休んでいると、兵士さんが部屋に来た。

 兵士さん側の準備などができた事を伝えに来てくれたらしい。


「それじゃ、行こうか。ハンレッドさん達も待っているだろうし」

「えぇ」


 兵士さんにワイバーン達がいる運動場に合流してらうよう伝え、俺はモニカさんを伴って部屋を出た。

 後ろからは、荷物を持ってヒルダさん達も付いて来ている。

 自分で荷物を持つ、と言ったんだけどこれくらいはさせて欲しいというヒルダさんやヴァルニアさん達の要望で、みなと合流する場所まで持ってもらう事になった。


「あぁ、りっくん……じゃなかった、リク。今から出発か」

「ね……陛下。はい」


 途中で、姉さんに声をかけられて足を止める。

 思わず俺をりっくんと呼んだけど、部屋の中ではない事を思い出して言い直した。

 咄嗟に間違いそうになるのは、俺もそうだから気を付けないとね。

 今更何か邪推する人はいないかもしれないけど、どこから変な噂とか姉さんのリラックスモードがバレて幻滅されるかわからないしね――。




評判のいい女王陛下の外面は保っておく方が良さそうです。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


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