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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1903/1949

獣人の二人が落ち込み模様



「……今のように、リクの訓練は参考になる部分がある……かもしれないが、あまり自分達と比べない方がいい。実力的には、私達と同等かそれ以上の人もいるように思う。各自、これからも訓練を怠らないように――」


 などなど、まとめの言葉を発してようやく冒険者さん達が我に返った。

 というよりかは、引き戻されたような感じかな?

 その後は、何故か感動した様子の冒険者さん達に俺が囲まれたり、エアラハールさんが訓練に励めば生き残る確率が上がるだけでなく、さらに強くなれるだろうと言っていたのも、かなり効いたようだ。

 ほとんどが、今後の訓練への意気込みを強くしていたみたいだしね。


 ……俺の訓練、必要だったかな? いや俺にとっては必要だったけど、あまり他の人の参考にならないんだったら、いまする必要があったのかどうか。

 というかだ、やり過ぎないように注意をしようと思っていたのに、むしろさらに厳しい訓練を求めるような空気になっている気がする。

 うーむ、訓練場の様子見は失敗したかもしれない――。



「――とまぁ、こんなところじゃの」


 一応解散になり、残る人は残ってそれぞれのグループごとの訓練や、せっかく集まっているからと言うのもあってか、これまで関わらなかったグループ間、パーティ間での合同訓練などが始まったのを横目に、訓練場の端に集まってエアラハールさん達から報告を受ける。

 訓練自体、結果はともかくクラン員となった冒険者さん達の実力を見るというのもあったから、それが主だ。


 ちなみにユノとロジーナは、訓練には直接参加しないという注意をしておいて、監督役として全体を見てもらっている。

 レッタさんはまぁ、とりあえずロジーナの近くにいたいからそっちに行っているけど。


「成る程。できれば、覚えきれないので後でまとめておいて欲しいんですけど……」


 訓練に参加した冒険者さん達は多く、さすがに口頭で報告されて一度に全てを覚えられない。

 多少印象に残った人などはいるけど……まぁ俺が全て把握しておく必要があるのかは疑問だ。

 訓練方針などは、エアラハールさん達に任せているからね。

 とはいえ、一応知っておかないといけない部分もあるだろう。


「それなら、私がやりましょう。早々にユノ様に脱落させられたので、ある程度俯瞰して見られましたので」


 フィネさんがすぐに記録を残す作業に入った、ありがたい。


「うーん、訓練の際に記録をする係とか必要かしら? 今回はフィネさんに任せるとしても、毎回とはいかないし」

「確かに訓練の方針などを考えるなら必要かもしれないが、担当するよりも訓練をと言うのが多そうだぞ? 訓練後だと、疲れ果ててそれどころではなさそうだしな」

「そうだね。それじゃあ、エアラハールさん達訓練を担当した人達の話と、参加した人がお互いでまとめ合うってのがいいかな?」


 後々になれば、記録担当を任せる人を決めるのもありだろうけど、今すぐは難しい。

 なので、訓練に参加した人達が、個人にしろパーティにしろ、それぞれでまとめてもらう事にする。

 ただし自己申告ではなく、訓練に参加した人同士でまとめ合うという感じかな……自己申告だと、主観が入りそうだし。

 例えば、Aの人とBの人が訓練して互いに剣を交えたら、Bの人がAの人の訓練成果を、Aの人はBの人の訓練成果をまとめる。


 さらにエアラハールさんなど、訓練を監督し指導する人からの評価や意見なども交えつつだ。

 そうすれば、欠点なども含めて客観視したまとめになるだろうと思う。


「多少、事務的にやるという注意が必要そうではあるな。とりあえず今は、リクの案でやってみよう」

「うん、お願いするよ。エアラハールさんも、嫌な顔をせずに……」

「ただ訓練を課すだけでなく、まとめるのは面倒じゃからのう。その場その場でそれらしい事を言う方が、よっぽど楽じゃし。じゃが、仕方ないか。ワシがまとめるんじゃったら、断っておったわい」


 溜め息混じりのエアラハールさん。

 感覚派というわけではないけど、わざわざまとめるというのはやっぱり面倒な作業なんだろう。

 それでも、納得はしてくれたようで一安心だ。


「それじゃあ俺は、戻るよ。まだというか、そろそろまた追加の仕事が来ているだろうからね」


 訓練場に様子を見には来たけど、クラン開始直後の仕事が全て終わったわけじゃない。

 差しあたって、急いでやらなければいけない事などは終わっているけど、執務室に戻ったら追加の仕事が加わっているに違いない。

 ちょっと様子見と注意をするって言って出て来ただけだし、ナラテリアさんからはできるだけ早く戻ってきて下さいって言われていたからね。

 ……予想以上に訓練で時間を使ってしまったから、戻ったら怒られるかもしれない。


「あ、なら私も行くわ。まだまだやらなきゃいけない事もあるしね」

「私やフィネも、創設パーティの一員だからな。一緒に行こう」

「私は一応客員みたいなものではあるんですけどね……」


 ほとんど同じパーティの一員としての扱いになっていたけど、そういえばフィネさんは同行者ってだけなんだよね。

 一緒に訓練したり、俺やモニカさん達とずっと一緒にいてくれるから、仲間なのは間違いないけども。


「なんじゃ、忙しないのう」

「ははは、始まったばかりですからね。仕方ないですよ。ここは、エアラハールさんに任せますね」

「うむ。まぁ適度にやっていくわい。先程まで立てなかった者達じゃからの、今は気力ややる気で頑張っておるようじゃろうから、あまり激しくしすぎても良くないじゃろうし、ユノ達が張り切っておるからワシはあまり必要ないじゃろうが」

「まぁ、ユノ達がやり過ぎないようには、見ておいて下さい」


 疲れは確実に溜まっているだろうから、今頑張っている冒険者さん達も長く訓練を続けないだろうけど、ユノ達が遊び感覚でやっちゃう可能性はあるからね。

 下手すると怪我をする可能性もあるし、監督役は必要だ。

 とにかく訓練場の方はエアラハールさんに任せ、俺はモニカさん達と一緒に執務室へ……行く前に、まずは汗を流してから向かう事にした。

 建物内には王城のように大浴場はないけど、一応男女別々で汗を流すための場所があるからね。


 ちなみに汗を流す時、十か所以上赤く打ち身になっている場所を見て、一人で訓練の反省をした。

 アマリーラさんの一撃を受けたわき腹は、幸いにもあざにまではなっていなかったけど、しばらくズキズキとした痛みが引きそうになかった。

 次は、なとしてでも直撃しないようにしないと。

 当たり前だけど痛いのは嫌だからね――。



「はぁ~……終わった終わった」

「ようやくなのだわ。暇だったのだわ~」

「だったら、王城で待ってても良かったんじゃない?」


 日が暮れ、クランの執務室を出て体を伸ばす俺に、頭にくっ付いているエルサ。

 エルサは俺とは別に王城でミスリルの矢の作成などの仕事をやっているけど、夕方あたりに今日の分を終えてこちらに来ていた。

 王城からクランまでそれなりに離れているけど、エルサとは契約の繋がりがあるため特に迷う事はないらしい。


「あっちも暇なのだわ。キューを貪るくらいしかやる事がないのだわ」

「貪るのはどうかと思うけど……キューがあるならこっちよりマシじゃない?」

「食べ過ぎも良くないのだわ。また、キューが不足するのも考えられるのだわ」

「どれだけ貪るつもりなんだ……」

「リクの近くにいれば、使った魔力も補充できるのだわ。だから、なにもなくともこっちにいた方がいいのだわ」

「まぁ、エルサがそれでいいならいいんだけど、暇なのはどちらも変わらないだろうし」


 とはいえ、クランに来てからのエルサは基本的に俺の頭にくっ付いて、ほぼ寝ているくらいだからね。

 暇とぼやいていても、実際には魔力を補充するのも含めてエルサにとって休憩になっているんだろう。

 俺も、書類の確認とかが多かったし、エルサのモフモフを撫でて癒されたりもしているし。


「……なんなのだわ。急に撫でて」

「いや、相変わらずエルサのモフモフは極上だなって確認だよ」

「当然なのだわ。自慢の毛並みなのだわ」

「ドラゴンが毛並みを自慢するって、こちらの世界に来るまでは考えられなかったんだけどね」


 ドラゴンと言えば、リーバーのようなワイバーンの方が近いイメージだったしね。

 こちらの世界では、あくまで創造神のユノが世界を見守るために創ったのがドラゴンってだけで、まぁ名称が同じだけの存在と考えておけばいいんだろうけども。


「……お腹も空いたし、さっさと王城に帰ろうか。モニカさん達も待たせているし」


 そう呟いて、エルサを撫でる手を止めて、クランのホールへと向かった。

 昼はカーリンさんの作ってくれた昼食を頂いたけど、今日は王城に戻る予定だから夕食はそっちだ。

 姉さんやマティルデさんに、クランについての報告とかもあるしね。

 モニカさん達もそうだけど、俺にもクランでは部屋があるけど……そちらを使う予定は今のところない。


 色々落ち着いたら、もしくはもっと忙しくなったらそちらに泊まる事もあるんだろうけど。

 モニカさん達は、ずっと王城にいるのはと感じてはいるようで、自分達が寝泊まりなど自由にできる部屋がある事に喜んではいたけどそこはそれ、しばらくは俺と同じく王城との往復になりそうだ。


「お待たせ……って、どうしたの?」


 階段を下りると、モニカさん達が待っていてくれたのは想像通りなんだけど……何故かアマリーラさんとリネルトさんが落ち込み気味というか、表情が暗く、尻尾も耳も垂らして項垂れている様子だった。


「……リクさんとの模擬戦で、色々と考えちゃったみたいなのよ」

「私達も、アマリーラさん達もリクだから……という理屈である程度納得はしているはずで、しかも私達は長くリクを見て、実際に何度も模擬戦をしてはいる。だが実際に初めて模擬戦に、しかも数で有利なはずなのにあの結果というのは、堪えているみたいだ」

「先程から励ましているのですが、ずっとこの調子で。エアラハールさんは早々に見切りを付けて、町へ繰り出しましたけど」

「エアラハールさんは、また酒場かな? まぁ、あっちはいいとして……」


 話を聞いてみると、どうやら俺との模擬戦での事を踏まえて、落ち込んでいるみたいだ。

 その模擬戦に同じく参加というか、メインだったはずのユノとロジーナは、ホールの柱を使ってかくれんぼみたいな事をして遊んでいた。

 レッタさんが鬼役らしいけど、何をしているんだか……まぁ、待つ間退屈だったからだろう。


「……リク様。元々、リク様の足元にも及ばない事はわかっていましたが……それでもふがいない姿を見せてしまい、申し訳ございません」

「私も、ユノ様達の動きから二連撃などができるようにはなりましたけどぉ、それでもリク様には簡単に防がれてしまいましたぁ」

「あーえーっと……」


 獣人特有の耳と尻尾を力なく垂れさせたままの二人。

 アマリーラさんは猫っぽく、リネルトさんは牛っぽい特徴を持つけど、どちらもピンと立つ耳だったのが萎れている様子は、地面に付きそうなほど垂れている尻尾以上に落ち込んでいる様子を感じさせる。

 表情や声にも元気がないし……模擬戦後の訓練場では、あまりそんな様子は見られなかったのに、あとになって色々考えてしまったのだろうか?


「俺の足元にも、って程卑下する必要はないと思いますけど……」

「ですが、リク様は軽々と防いで見せました。渾身の力を込めたはずなのに、です」

「私は元々、リク様が二連撃を防いでいる様子は見ていましたが、必勝のタイミングと場所を狙ったはずなのにですぅ」


 確かにアマリーラさんが全力で振るった大きな木剣は受け止めたし、リネルトさんの二連撃は狙いが防ぎにくい場所とタイミングだったけど、避けたり弾いたりもした。

 でも十分に凄い攻撃だったと思うし、あれが木剣でなく、そして模擬戦でもない実戦だったら俺も結構危なかったと思う。

 次善の一手などの魔力を込めていたら、アマリーラさんの一撃は受ける武器ごと破壊……粉砕する威力があったと思うし、リネルトさんの方は二連撃を完全に止められたか怪しい。

 というかアマリーラさん、模擬戦なんだから渾身の力は込めないで欲しいです。


「うーん……」


 どうしたものかと、二人の様子を見ながら考える俺にモニカさん達からの助け舟はない。

 というより、俺が来るまで励ましていたようだし、もうかける言葉とかがないんだろう。

 あと、俺が元気付ける言葉をかけてみたいな期待の視線や身振りをしていた……むぅ。


「えーっとですね、アマリーラさんはその……一撃の威力は申し分なかったと思います。俺だから防げましたけど、多分他の人なら……少なくともユノとロジーナ以外なら、木剣ごと破壊していたんじゃないかなって」

「それは……もうすでにやっていましたが」


 やってたんかい。

 もしかしなくても、俺が様子見に行った時に立てなかった冒険者さん達の中には、アマリーラさんの一撃にやられてしまった人もいるのかもしれない。

 そういえば、折れた木剣などもそこらにあったような気がする。

 俺も模擬戦の時に何度か自分のも相手のも折っているから何も言えないけど、木剣って丈夫に作ってあるから実はそこらの量産された金属の剣よりも、折れにくかったりするんだけど……。


 とりあえず、明日カヤさん達には訓練用の木製武器の追加予算と発注について話しておいた方が良さそうだ。

 あれで、安価な物ではあるけど数が増えればそれなりのお値段になってしまうからね。

 ちなみに今日クランで使っていた木剣は王城からのお下がりや、冒険者さん達が自前で持っていた物だけど、すぐに足りなくなりそうだなぁ。


「アマリーラさんの攻撃は、一撃がものすごい重いですけど、それでいて力任せではなくちゃんとした技術も備わっていると感じます。まだまだ未熟な俺が言うのもなんですけど」


 リネルトさん程じゃないけど、アマリーラさんは力任せに見えて狙いは正確で、フェイントなども織り交ぜた動きをしていた。

 まぁユノやロジーナが凄すぎて、そのせいで霞んでしまうし、いつも模擬戦をしていたおかげで受け止められていたんだけどね。


「いえ、リク様が未熟などとは……」

「実際にそうですから。俺には、あんなに力強く、でも繊細な動きや狙いはできません。ですから、アマリーラさんはそのまま……一撃の重さと動きの上手さで強くれるんじゃないかって思います」


 エアラハールさんのようなベテランでもない俺だから、このくらいの事しか言えない。

 言っている事も間違っている可能性もあるし、あまり自信もないんだけどね。


「まだまだ、アマリーラさんは強くなっていけると思います。それは、一撃を受けた俺だからわかる気がするんです」

「リク様……そのようなお言葉をリク様から賜るとは。望外の喜び! そのお言葉を胸に、これまで以上に励む所存です」


 いちいち大袈裟な気がするけど、まぁ元気になった……かな?

 なんというか、色々とやり過ぎないか心配だけど。

 とりあえずは、萎れていた耳や尻尾も元気を取り戻したようで、忙しなく動いているから良しだ。

 うぅむ、モフモフしていて触り心地が良さそうなのがあんなに揺れて……。




モフモフはリクの目を引く一番の方法のようです。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

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