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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1892/1950

冒険者ギルドを出て現場に急行



「まぁ、あの陛下の考えの一端がわかったわ。巻き込んでしまえ、というのは私の事も言っているはずね」

「そうなんですか?」

「あの女王陛下ならそう考えるだろう、との予想からだけどね。ここは冒険者ギルド、冒険者が集まる場所よ? その中枢にリク君がいて、報告と要請をその場で聞かされたなら、私達が動かないわけにもいかないわ。冒険者ギルドとしても、人間が使われた工作に対して無関係ではないんだから。直接建物を破壊された恨みもあるから」

「確かに、そうかもしれません」


 巻き込んでしまえ、というのは俺の事だけでなく冒険者ギルト、というかマティルデさんに対しての事なのかもしれない。

 というかおそらくマティルデさんも言っているように、そうなんだろう。

 全く姉さんは……まぁ、冒険者ギルドとしてもギルドの建物を二つ破壊されているし、犠牲者も出ているから聞かされたら何もしないではいられない、というのは俺でもわかるからね。


「わかりました、陛下にはあとで俺の方で話をしますけど……とにかく今は、その拠点に向かおうと思います」

「はっ! リク様のご協力に感謝いたします!」

「ははは、まだ協力する前ですよ。それで、その拠点の場所というのは?」

「はい、王都内の……」


 とりあえず、その拠点とやらに向かうことを決めて、兵士さんに場所を聞く。

 その場所は、王都のはずれというか外壁に近い場所らしい。

 特に意味のある場所には思えなかったけど、中心にある王城から離れる程目が行き届きにくいとか、そういう理由で底を拠点にしたのかもしれない。

 王都を出入りするための門からも、距離があるようだし、それに兵士さんやマティルデさんが言うには、人気の少ない場所でもあるらしいから、隠れるにはもってこいだったのかも。


 ただまぁ、それが逆に取り押さえた人の出入りや過去の動きを追跡しやすくしてくれた可能性もあるみたいだけど。

 木を隠すなら森の中みたいに、人通りが多い場所であれば、特定にはもう少しかかったかもしれないとの事だった。


「それでは、私はこれで!」

「はい、ありがとうございました。すぐに俺達も現場に向かいますね」

「はっ!」


 報告等々を終えた兵士さんは、部屋にいる俺達に敬礼をして退室していく。

 俺への連絡などを終えたとの報告をしに戻った後は、拠点に向かうらしい。

 ともあれ、その拠点らしき場所へ向かうため、マティルデさんやモニカさんと一緒に部屋を出る。

 簡易的な支部ではあるけど、一応受付などがある場所へきてマティルデさんが足を止めた。


「皆、よく聞いて欲しい! 我らが冒険者ギルド、その建物を破壊し、今もなお王都で破壊工作を企んでいる者達の拠点を突き止めたとの報告があった! これより、我が冒険者ギルドは軍兵士と協力しその拠点へと乗り込む!」


 大きく身振りも加えながら、突然の演説。

 冒険者さんは驚いている様子が多く見られるけど、職員さんはむしろ「おぉ、ついに!」という声が上がっている。

 実際に建物が破壊された時、その場にいた人などもいる可能性も高いし、爆発騒ぎに対して色々と思うところがあったんだろうから、この反応も当然なのかもしれないね。


「ついては、選りすぐりの冒険者を派遣する! ついては、緊急の依頼を出す! 報酬は特別高く、ランク評価にも大きく加味するのを約束する! 一部はこちらからの指名とさせてもらうが、参加を希望する冒険者は受付へ向かえ!」


 瞬間、ピタッと空気が止まった気がした。

 けどほんの数秒も経たないうちに簡易的とはいえそれなりの広さがある冒険者ギルド内が、熱気に包まれた。


「……こんなに盛り上がるとは思いませんでした」

「まぁそれだけ、破壊工作によって王都内に包まれている雰囲気に、嫌気がさしている者が多いという事よ。あと、リク君が私の隣にいるのが大きいわね。まぁ、報酬やランク評価の部分に食い付いている冒険者も多いでしょうけどね」

「……俺ですか?」

「えぇ。こうして皆の注目を集めて、大々的に言えばそこにリク君も参加すると思うでしょ? クランの話もあるし、近付こうと思う冒険者っていうのは結構多いのよ」

「要は釣り餌みたいなものですか……ねえさ……陛下といいマティルデさんといい……まぁいいですけど。それにしても、いいんですか? こんなに大々的に拠点を発見したって宣言しても」


 潜入捜査とかそういうものではなく、強行突入するような話を兵士さんから聞いていたから、こっそり動く程ではないかもしれないけど……。

 それでも、これだけ大きく喧伝したら向こう側にも伝わってしまう可能性もある。


「それでいいのよ。一応、陛下とは既に算段は付けていたし、職員達にも通達済みよ。ほら見て?」

「……どこかに行きましたけど、あれは?」


 マティルデさんに示されて見てみると、受付のあるカウンターの奥にいた職員さん数名が、裏の扉を使って出て行くのが見えた。

 受付には冒険者さんが殺到していて、対応に追われているからむしろ職員さんが抜けるのは厳しそうなんだけど……どういう事だろう?


「あぶり出しよ。今私がこうして大きく伝えた事で、怪しい動きをする冒険者がいないか、ね。こちらでも動いて、王都にいる冒険者はその経歴から何から調べているけれど、それでも完全じゃないわ。すり抜けた物がいるかもしれないし、これで行動を見て判断する材料にするわけね」

「それも、陛下と打ち合わせ済みですか……」


 元々、姉さんとマティルデさんの間で、こうして決定的な何かがあった時は身内とも言える冒険者、その内部的な調査をするために利用する話をしていたって事だろう。

 つまり、今しがた出て行った職員さんは、冒険者さん達がどう動くかなどの観察に出たってわけだ。

 受付の方でも、ある程度精査しているんだろうし……俺じゃここまでの事は考えられないなぁ。


「でも、今受付に殺到している人達に紛れて……という人もいるんじゃないですか?」

「依頼とは無関係を装う、興味がないように見せるのは信頼できる者、まぁさっきも言った指名の冒険者が担当するわ。そして、依頼を受ける冒険者に紛れようとしているかどうかは、また別の方法でね……ふふふ……」

「……あー」

「これは、触れない方が良さそうねリクさん」

「うん、そうだね……」


 別の方法、というのを明かさず笑うマティルデさんは、年齢不肖な妖艶さをこれまで以上に漂わせていた。

 笑う、というよりも、嗤う、といった方がピッタリかもしれない。

 モニカさんと顔を見合わせて、その方法を聞き出すのはやめた方がいいと判断した。


「さて、冒険者が受付に殺到するのは予想していたけど、さばけていないわね……ミルダがいないとこうも手間取るのかしら……これは後で指導してあげないといけないかしら? まぁいいわ。私はあちらをなんとかするから……」

「はい、俺達は現場……拠点と思われる場所へ急ぎます」

「……冒険者は後詰めでできるだけ早く向かわせるわ」

「お願いします」


 まぁ、兵士さん達も現場には集まっているようだし、冒険者さんが後詰めできても人が多すぎるんじゃないかな? と思うけどあまり深く考えない。

 どちらかというと、マティルデさんとしてはこの機会に帝国と何かしら繋がりを持って、それを隠している人をあぶり出すのが一番の目的っぽいからね。


「じゃあモニカさん、急ごう」

「えぇ」


 マティルデさんが受付に向かうのとは別に、俺はモニカさんを伴って、受付へ殺到している冒険者さん達の流れに逆らい、外へ。

 そして、走って先程現場へと向かった――。



 ――王都内を走って少し、現場近くの場所でソフィーやフィネさんと合流、さらにフィリーナがエルサを連れてこちらも合流。

 エルサはミスリルの矢制作をしていたけど、緊急案件というか俺が動くから何かあった時のために、こちらに向かうように頼まれたんだとか。

 破壊工作を仕掛ける拠点だし、何があるかわからない……それこそ、中で実際に大きな爆発なんて起こる可能性も考えられるし、咄嗟に結界を張って周囲を守れるエルサは適任だろうしね。

 なんて思っていたら、俺が周囲の建物を薙ぎ払うとか、爆発よりも俺が暴れてそれ以上の被害が出ないようにとの事だった……というのは、エルサの言葉で姉さん達がそう考えているわけではないようだけど。


 ……そんな、なんでもかんでも破壊するような事はさすがにやらないのになぁ、今は魔法も使えないし。

 まぁ、結界などが使えてあらゆる状況に対応できるエルサが来てくれたのは心強いし、爆発関連でもあるからフィリーナもいてくれるのはありがたい。

 モニカさんだけでなくソフィーやフィネさんもいるしね……ユノ達はいないけど。

 ともあれ皆と合流しながらも、潜伏拠点と思われる場所に到着した。


「おぉ、リク殿。待っていたぞ」

「ヴェンツェルさん。ヴェンツェルさんもここにきていたんですね」

「まぁ巷を騒がせている爆発騒動……私は騒動が収まった後の現場しか見ていないが、その拠点らしき場所だからな。こちらに大打撃は今のところ与えられてはいないが、今後もそうだとは限らんし、それを防ぐためにも私が出てきている。陛下の命もあるし、リク殿と共に動いた事のある私が適任だろうともな」

「俺が全部やるわけでもないんですけど……まぁいいか」


 現場では、兵士さん数名に何やら指示を出していた大柄な人……ヴェンツェルさんがいた。

 どうやらこの場の指揮はヴェンツェルさんに任せられているらしい。

 わざわざ軍のトップであるヴェンツェルさんが出て来るのはと思うけど、それだけ姉さん含め国側は早くこの爆発騒ぎを収めたいんだろう。

 王都内の人でとか賑わいにも関わっているからね。


「それで、ヴェンツェル様。状況は?」


 軽くそれぞれが挨拶というか、会釈程度だけど、そのすぐ後にフィネさんが問いかけた。

 こういう時、ピリッと緊張感のある雰囲気になってくれるのはさすがフィネさん……俺やエルサに緊張感がなさすぎるだけかもしれないけど。


「うむ。現在は兵達に拠点と見られる建物を大きく囲み、それを狭めている段階だ」

「……向こうにこちらの動きは?」

「気付いているそぶりは見せていないし、建物を出入りする者も今のところいないな。だが、誰一人逃がすつもりはない」

「そのための包囲、ですね」

「あぁ、リク殿の言う通りだ」


 裏口やらなにやら、工作を仕掛けてくる相手なんだからもしもの時に逃げる手段は考えているだろう。

 簡単に思いつく限りでは、正面の出入り口から突入したら、建物の裏や別の場所に隠された出入り口があり、そこから逃げ出すとかかな。

 ただそれに備えて、兵士さん達が包囲しているため、建物自体から逃げてもすぐにつかまるようにという事だろう。


「だが、もしかしたらこちらの動きに気付いて様子を見ているのかもしれん。その辺りは中に入ってみないとなんとも言えんな。包囲するのも狭めるのも、兵の動きは当然目立つ。潜伏するようにすればそれは穴を開けてしまいかねない」

「成る程……」

「では、包囲を狭め終わった段階で突入でしょうか?」


 納得する俺に、フィネさんがさらに質問を投げかける。


「そうだな。とはいえ突入と言ってもあの通り、建物自体はそこそこの大きさだが、出入り口は狭い」

「確かにそうですね……」


 ヴェンツェルさんに促されて、俺達がいる場所……十メートル程度離れた場所の建物の影だけど、そこから覗く。

 見た先には、二階建ての少し大きめの家が一軒あった。

 外観としては特に違和感があるわけではなく、王都の風景に溶け込んでいるただの民家のようだけど……。

 特に家の外に誰かがいたり、見張りがいるなどの事もなく、言われないとあの建物が怪しいなんて一切考えなかっただろう。


 ちなみにその家を囲む外壁には、複数人の兵士さん達がいて、出入り口含め建物に対して警戒をしている。

 こちらからははっきりとその様子が見えるけど、建物の中からは見えないようにしているみたいだね。

 そしてその出入口は、家に対しても少し小さめで人が二人並んで通るのもきつそうなくらいだ。


「あれに大勢で一気に突入というのはなかなか難しい。まぁ建物を破壊するつもりでならやりようはあるが……そこでだ、リク殿」

「なんでしょう? なんとなく、言いたい事がわかる気がしますけど……」


 これまで顔を引き締めていたヴェンツェルさんだけど、俺に呼び掛ける時だけはニヤリと口角を上げていた。

 狭い入り口、兵士さん達がなだれ込むには不十分……少数で順番に入るしかないわけだけど、そう考えるとヴェンツェルさんが言いたい事はなんとなくわかる。


「私と一緒に、先陣を切っての突入組になってくれないか?」

「そうなりますよね。まぁ、元々突入とか荒事になるかもっていうのは予想していましたし、構いません。ね……陛下が俺に伝えたのもそのためもあるんでしょうし」

「さすが、話しが早いなリク殿は」

「俺だって、爆発騒ぎは早くどうにかしたいと思っていましたからね。というか、ヴェンツェルさんも一緒なんですか? ここの指揮とか……」


 予想通りだったけど、ヴェンツェルさんもというのはいいんだろうか?

 俺達の周囲にもそれなりに武装して警戒態勢の兵士さん達がおり、さらに包囲を狭めていたりと、指揮をする人は必要だろう。

 というか、シュットラウルさんもそうだったし、ヴェンツェルさんも含めて、どうしてこうこの国の一部の偉い人は自分が先陣を切って戦いに向かおうとするのか……。


 いや、一部だけで限定的なのかもしれないし、後ろでふんぞり返るだけよりは好感が持てるけどね。

 ……偶然、俺の知っているのが血の気の多い人ばかりって可能性もあるけど。


「私がいて直接指揮をとらねばならん程、我が軍の者達はたるんではおらんよ。ある程度の指示はしてあるし、それぞれが考えて動くだろう」 

「それならいいんですけど。わかりました」


 周囲にいる兵士さん達は、全員がワイバーンの鎧を身に着けているから多少何かあっても大丈夫だろうし、ヴェンツェルさんがそう言うなら大丈夫なんだろう。

 指揮系統がはっきりしているのは当然ながら、トップがいないと末端は命令に従うだけという俺の勝手な軍のイメージとアテトリア王国軍は違うみたいだ。

 全てがそうなのかはわからないけど……そういえば、シュットラウルさんの侯爵軍も魔物と戦う時の動きなどは良かったように思う。

 あちらは俺との演習やら、アマリーラさん達に鍛えられているからっぽくもあるけど。


「よし、これであの地下研究所を急襲した際のように、リク殿と再び暴れられるな!」

「さすがに、あそこまでの事にはならないと思いますけど……あと、あまり暴れないで下さい。俺も気を付けますから」


 ツヴァイのいた地下に作られていた研究所、復元された魔物が多くいたから、ヴェンツェルさんと一緒に突入して暴れたのは間違いないけど……。

 とはいえ今見ている拠点らしき建物は、魔物を復元するような施設じゃない。

 あれは多少なりとも整備された施設がないとできないようだし、魔物はほぼいないと見ていいだろう……絶対と思えないのは、帝国への嫌な信頼感とも言えるかもしれないけど。

 地下があるかわからないし、もしかしたら掘って何かしている可能性は否定できないけど、でも建物の中が外観通りならヴェンツェルさんの望むような暴れる展開というのはそうそうないと思う。


 というか、ヴェンツェルさんは以前使っていた大剣を持っていないし、それを振り回せる空間があるとも思えないしね。

 っとそうだ、地下で思い出したけど、王都の地下って……。




王都の地下といえば、リクは何度かお世話になった事のあるあれがあるのを思い出したようです。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

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