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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1888/1949

エアラハールさんからの試験的指導



「あーそうだ。ミラルカさん?」

「は、はい……なんでしょうかリク様……」


 モニカさんの講義の後、少し落ち込み気味でナラテリアさんとカヤさんに励まされているミラルカさんへ話しかける。

 なんとなく、モニカさんは満足そうにしているけど……どう見ても、俺やモニカさんより年上のミラルカさんをへこませるって、モニカさん凄いな。

 それはともかく……。


「兵士さん達に混じって訓練をしているのは知っていますしよく見ますけど、ミラルカさんが希望するなら、エアラハールさんの訓練に参加してみませんか? もちろん、俺やモニカさんとは別でとなるでしょうけど」

「それは、リク様たちと同様の訓練になるという事でしょうか?」

「うーん、どういう訓練になるかはエアラハールさんとそれを受けるミラルカさんによるでしょうか。厳しいかもしれませんが、冒険者になるなら受けて損はないと思います。他にも思惑というと悪く聞こえるかもしれせんけど、試験的な意味もあります」

「試験的……私はまだ至らない点が多いのは自覚しています。冒険者としては新人ですし、実際に依頼を受けたりもしていませんし……」

「あぁ、すみません。言い方が悪かったですね。ミラルカさんを試験するとかそういう意味ではないんです。どちらかと言うとエアラハールさんに対してで……」


 ミラルカさんは帝国とのあれこれも了承しているし、実際に前線に出るかはともかくとして、冒険者にもなっている。

 これ以上何か試すような事は考えていないからね。

 それとは違って、試験的にと言ったのはエアラハールさんに対してだ。

 これはエアラハールさんも一応、渋々ではあるけど承諾してくれている事で、スケベ心満載なエアラハールさんが試すならとりあえず女性でと指名したからでもある。


 そこにミラルカさんをというのは、初心者を放り込むようで申し訳ないので、ミラルカさんには強制しないし断るようならクランに所属予定の誰かにお願いするつもりだ。

 今日建物前に集まった面々を見てもそうだけど、魔物との戦いとは別の意味で歴戦の女性というか、男のスケベ心も簡単にいなせそうな女性も幾人かいたしね。

 ……あくまで印象としてそうだというだけで、実際は話してみないとわからないけども。


「クランの冒険者さん達も、これからに備える必要がありますよね? 魔物との戦いだけで済むわけではないですし。そこで、まぁ自由参加にしようとは思いますけど、クランに所属する冒険者さん達にもある程度訓練をしてもらおうかなって。エアラハールさんには、結構前から俺達の訓練を見てもらっていますし、これまでにも他の人を教えていたりもしていたようです」


 筋肉に目覚める……いや、筋肉が目覚めるかな? ともかく、そちらに進むまではマックスさんやヴェンツェルさんも、エアラハールさんに訓練を付けてもらっていたようだからな。

 俺はあまり実感がないしともかくとして、モニカさんやソフィー達も日に日に実力を付けているのが傍から見ている俺でもわかるから、エアラハールさんの訓練は確かなものなんだと思う。

 もちろん、実戦訓練と称して魔物と戦っている事や、アマリーラさんとリネルトさんの協力があってこそのな部分はあるだろうけど。


「それで、いきなりクランに所属する冒険者全員をエアラハールさんに任せる、というのも不安というか……エアラハールさん自身が、教えられるかわからないと言っていました」


 兵士さん達に、ユノと協力して次善の一手を教えるくらいはともかく、みっちりと実践的な訓練をというのはまた別だからな。

 しかも、個性がそれなりに尖っているうえ独学的な事がほとんどな冒険者と、均一的で誰かに訓練を課せられる事に慣れている兵士さんとでは全く違うだろうし。

 クランに集まった人達を見ても、それぞれ装備が違うし戦い方も千差万別なんだろうなぁ、という印象を受けたからね。

 鞭とか持っていて姉さんとは別の意味での女王様風の人とかいたし……あれは特殊過ぎるとしても、通常とは異なる形状の武器類を持っている人とかも見かけた。


「なので、まず新人で教えやすいミラルカさんに訓練をしてもらって、どのくらいがいいのかを試したいって事みたいです」


 さすがにエアラハールさんが女性を希望したから、なんて話はミラルカさんにはしないでおく。

 

「私で試すって事ですか……少し不安な気持ちもありますね。リク様からの指示であれば、喜んで受けたいところです。けど、私が訓練を受けてついて行けるのかどうか……訓練場でリク様達の訓練を拝見しましたが、あのような苛烈な訓練はまだ……」

「そこは心配しなくても大丈夫だと思います。あれはちょっと特殊と言いますか、まぁ色々と詰め込んでいるので」


 ミラルカさんが見たのは間違いなく、ここ最近の訓練だからなぁ。

 モニカさん達はアマリーラさんとリネルトさんという、人外に足を突っ込んでいると言われるAランク相当の実力者が相手。

 さらに俺は、人外どころか体は人間でも中身は神様という、正真正銘常識が通用しそうにないユノとロジーナが相手だったりするからなぁ。

 さすがに冒険者になったばかりのミラルカさんに、あれと同じ訓練をしてもらうわけではないし、そこはエアラハールさんわかっているだろう……順調に成長すれば、将来はわからないとエアラハールさんは言っていたけど、それはともかくだ。


「とりあえずはもっと基礎的な、冒険者としてやっていける訓練になると思います。それに、まだ新人だからこそ、ミラルカさんに知識をという側面もあるみたいです」

「そ、それならば……先程のモニカ様の話ではありませんが、私はまだまだ冒険者としての知識も未熟ですし」

「じゃあ、お願いしても?」

「はい。この先冒険者としてやっていく、成功するためには必要な事のような来ますし、お受けいたします」

「エアラハールさんの訓練をしなくても、成功する可能性はもちろんありますけど……ありがとうございます」


 ただ、ミラルカさんは兵士さん達に混じって訓練をしているのが、少し気になっていたから受けてくれてよかった。

 エアラハールさんに言われたんだけど、武器の扱いや体を鍛えるなど、基礎的な部分はそれでもいいんだけど、やっぱり冒険者と兵士では訓練のやり方などが違うらしいしね。

 集団で人との戦いなどを想定する兵士さん達と、一人または少数で色んな種類のいる魔物との戦いを想定する冒険者だからそれは当然か……。

 粗末にするという意味ではなく、時には命を懸けて戦う兵士と、生存する事を第一に考えて戦う冒険者って部分もあるし。


 そういうわけで、ミラルカさんには冒険者としての方の訓練を受けて欲しかったというのもあるから、こうしてお願いしてみたわけだ。

 もちろん、俺がマックスさんから教えられたように、魔物や冒険者としての心得などの知識的な部分も教えてくれるだろうからね。


「それじゃあ、ミラルカさんが訓練をするための授業料。エアラハールさんの指導料の方がわかりやすいかな? それはこちらで払っておきますね」

「そ、そんな! 私のための訓練で、リク様が負担になるような事は……!」


 あ、これは言わない方が良かったみたいだ。

 焦ったというか、モニカさんに色々な話をされていた時や、エアラハールんさんの訓練と聞いて不安そうにしていた時以上に、慌てているミラルカさん。

 うぅむ、わざわざ言ってしまったのは失敗だったなぁ。


「心配しないで下さい。元々、指導員としてエアラハールさんを雇うという話になってましたから。当然、冒険者の皆に教えるだけエアラハールさんには指導料を出す予定でした。今回は、少し早めにミラルカさんだけの開始するってだけの事ですから」

「で、ですが……」

「それに、もしどうしても気になるなら、冒険者として成長した際に何かしらの形で返してもらえばいいですよ。クランに所属するんですから、依頼達成を頑張るとかで」

「わ、わかりました……必ず、与えられた機会を損なわず、いずれリク様のお役に立てるようになります!」

「い、いやそこまで意気込まなくても……もう少し気楽でいいと思いますけど。それと、俺ではなく、クランに貢献すると考えてもらえば……」


 という俺の声も届かないくらい、訓練へ意気込んでいるミラルカさん。

 なんというか、俺が成長の機会を与えてさらに恩を感じるミラルカさんという構図になってしまった。

 そういうつもりはなかったんだけどなぁ……まぁ、エアラハールさんの訓練は俺達の近くで行われるだろうし、無理や無茶をしそうなら止められるよう気を付けていればいいかな。


「あぁそれと、男の俺が言うのもなんですけど……エアラハールさんには一応の注意をしていて下さい」

「注意、ですか?」

「その……なんと言うか、エアラハールさんは油断していると女性に触ろうとするので……」

「あ、あー……はい、存じております。まだリク様とお話しする前の事ですが、王城内ですれ違った際に……触られました……」

「手遅れでしたか……すみません」

「い、いえ! リク様が謝るような事では! その際にはヒルダさんがにらみを利かせたのと、ユノ様がえーとその……」

「……殴り飛ばしたんですね?」

「は、はい……」


 もう恒例になっている気がするけど、最近はそういった事もあまりなくなっていたのかなと思っていたけど、俺が知らない所でエアラハールさんとユノとのやり取りはあったらしい。

 まぁエアラハールさんも、ユノに殴り飛ばされるのを織り込み済みだから、ある程度備えていて派手に吹っ飛ばされてもダメージはほとんどないようだけど。

 というか、殴り飛ばされるのがわかっているのにそれでも続けるエアラハールさんには困ったものだ……。


「俺からもエアラハールさんには注意しておきます。まぁ対処というのはエアラハールさんが本気になったら難しいでしょうけど、注意はしておいてください」

「わかりました。不用意には近付かないように気を付けます」


 俺とミラルカさんがエアラハールさんについて話しているのを聞いているナラテリアさん、それからカヤさんも深く頷いている。

 もしかしなくてもミラルカさんだけでなく、ナラテリアさん達も被害に遭っているのか……。

 この分だと、他の王城の使用人になる予定の女性達、ヴァルニアさん達も知っているんだろうな……下手すると、被害に遭っている可能性もあるか。

 一度強く、エアラハールさんには言っておいた方がいいかもしれない、まぁヒルダさんやユノから言われる方が、俺が言うより効果はあるかもしれないけど。


「リクー! 戻ったのだわー!」

「あぁ、お帰りエルサ」


 エアラハールさんに関する注意や、ちょっとした雑談などをしていると、ミスリルの矢などを作る作業を担当しているエルサが戻って来た。

 勢いよく扉が開いて、白い毛玉……もといエルサが俺の頭に飛び込む、くっ付いて? 来る。

 中々熱烈だけど、俺以外にそれをやったら首が危険だからやらないようになエルサ? ちょっとだけ痛かったぞ。


「疲れたのだわー。ここの人間はドラゴン使いが荒いのだわ」

「まぁまぁ、それだけエルサが頼りにされている証拠だから」


 額辺りにへばりついたエルサが、よじよじと俺の頭を登り、頭頂部に到達したらすぐいそいそと体勢を整え、いつも頭にくっ付いているのと同じような状態になる。

 前足が少し、エルサの主張を強調するように、俺の額辺りをペシペシ叩いているけど……それだけ頑張ったんだから気にしないでおこう、これはあまり痛くないしな。

 ちなみに、人使いならぬドラゴン使いが荒いのは俺のせいだったりする。

 エルサがミスリルの矢などを作る作業に行った後、存分にこき使うように言っていたからね。


 さすがにそのままこき使うと言ったわけじゃないけど、エルサは暇があればキューを要求したり、寝ようとしたりするから……。

 まぁ主に使うのは魔力であって、身体的な疲労が伴う作業じゃないからね。

 エルサが疲れたと言っているのも、魔力を消費したからの事であって体を酷使した疲れではないんだろうし。


「突然とんでもなく硬い壁が現れたようにすら見えるあれや、有効な攻撃手段のための道具が山のように用意されるリクとは違うけど、予想より早く作業は進んでいるわ。エルサ様は頑張っていたのは確かだから、ちゃんと褒めてあげてね」

「そうなのだわ。リクと一緒にしないで欲しいけどだわ、私は頑張ったのだわ! だからキューと魔力を要求するのだわー!」

「はいはい。フィリーナもお疲れ様」


 エルサの後から、部屋に入って来たフィリーナ。

 ミスリルの矢など、魔力などが関係している作業だけに一応様子を見てくれたんだろう。

 フィリーナのフォローじゃないけど、言葉を聞いて頭にくっ付きながらもぞもぞと動くエルサを撫でる。

 多分、誇らしげに体を動かしたんだろうけど、頭の上だからさすがに俺には見えない。


「リク様、それでは私達は……」

「まだリク様の下で働くために、やらねばならない事がありますので」

「あ、はい。わかりました。ナラテリアさん、カヤさん、ミラルカさん、無理はしないようにではありますが、頑張って下さい。期待しています」

「「「はい!」」」


 俺とエルサのやり取りを微笑ましく見ていたらしい、ナラテリアさん達が部屋を辞すらしいので、ヒルダさんに促されて改めて声をかけて見送る。

 期待していますなどは、俺らしくなかったかもしれないけど……前もってそういう言葉の掛け方がいいだろうと、ヒルダさんや姉さんに言われていたからね。

 選ぶそうとするつもりは一切なく、なんとなく不慣れなんだけど、人によってはそういう風に言った方がやる気などに繋がるらしいから。


「……さて、フィリーナが抱えているクォンツァイタを見ればわかるけど、魔力だね」


 部屋を出るナラテリアさん達を見送った後、フィリーナに改めて向き直る。

 部屋に入って来たフィリーナは、大きめの袋を抱えているけどその口からクォンツァイタが覗いていた。


「そうなのだわ。早く魔力をもらわないと私がしぼんでしまうのだわ」


 エルサって魔力がないとしぼむのか……そういえば、俺がセンテで乗っ取られた意識を取り戻した時、今以上に小さくなっていて、モニカさんの手のひらに乗るくらいになっていたっけ。

 手乗りエルサか……。


「まぁそれだけじゃなくて、リクにも隔離した人達に関する報告をと思ってね。クォンツァイタはついでよ」


 おそらく、エルサの魔力補充と一緒にクォンツァイタにもという事だろうけど、報告もあるのか……けどその雰囲気からは、クォンツァイタに魔力を蓄積させる方が本題っぽいけど、どちらも重要って事でいいかな。


「はい、エルサちゃん。リクさんから聞いて、前もって準備していたわ」

「キューなのだわー!」


 俺の頭で落ち着いていたエルサが、モニカさんの取り出したキューに飛びつく。

 このドラゴン、キューがあれば簡単に攫われてしまいそうだけど大丈夫だろうか? いやまぁ、エルサなら攫われそうになっても簡単に抜け出しそうだし、基本的に俺の近くにいるからできないだろうけど――。




キューに簡単に釣られるドラゴン、それがエルサ……というのはもはやわかりきっていた事かもしれません。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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