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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1887/1950

城下町での騒ぎ



「元々、リク君に色々と頼んでいる時点で遠慮をするつもりはなかったけど、そう言った気遣いは本当に無用だったようね。推測が正しければ……いえ、話しを聞いていてそうだと思うしかできない状況だけれど、つまり明確に冒険者ギルドを狙ったわけなんだから」


 中央冒険者ギルドで起こった爆発、そして建物の破壊のされ方を見る限り、確実に狙いを定めていたのは間違いないと思う。

 偶然巻き込まれた、という言い訳が聞かない程に。

 だからこそ、それをよく知っている……というかその爆発に巻き込まれたマティルデさんは、腹に据えかねる思いなんだろう。

 表情は笑っているけど、レッタさんがあのクズ皇帝の事を話している時のような、昏い笑いと雰囲気が似ていて、背中から不穏なオーラが滲み出しているようでもあった。


「ふふふ、いいわ。今回の事だけでなく、帝国に協力している冒険者、裏ギルドには手心なんて加える必要はないようね。ふふ、ふふふふふふふ……」


 不適に笑うマティルデさん。

 ちょっとどころではなく怖くて、俺とモニカさんが少しだけ距離を取る。

 発端は俺の推測からだけど、こういう時はあまり近付いたり変に声を駆けてはいけない事を学んだ。


 というか、下手すると俺が巻き込まれそうというか……何かさせられそうだしね。

 今は、クランの事だけで手いっぱいだからこれ以上はさすがに……なんて考えるていると、俺達のいる場所から離れた方、民家が立ち並ぶ方から騒がしい声が聞こえた。


「離せ! 俺は、俺は何もしていない!」

「暴れるな! 言い訳をしようとも、結果は明らかだ。おとなしくしていれば悪いようにはしない!」

「リクさん、あれは……」

「うーん、なんだろうね?」


 騒がしい声、そちらの方から聞こえる叫びと共に、ちょっとだけ人だかりができていた。

 皆あまり外に出ないだけで、城下町にはちゃんと人が多く住んでいると思える光景でもあるんだけど……それはともかく。

 叫んでいるのは、それなりに歳を取った痩せ型の男。

 そしてそれを怒鳴り付けておとなしくさせようとしているのは、男を左右から掴んでいる男性二人……だと思う。


 はっきり男性と言えないのは、声からそうだと思った事だけでなく、全身を青い鎧に包まれているからだ。

 あれって、ワイバーンの素材を使った鎧だよね? だとしたら、男を掴んでおとなしくさせようと……というより連行しようとしている二人は、軍の兵士さんだろう。

 あの鎧はさらに量産されつつあるようだけど、まだ全体に行き渡ってはいないようで、街の治安を守る衛兵さん達にはまだのはずだしね。


「いつ何があるかわからん。抑え込んだまま、さっさと運ぶぞ!」

「「はっ!」」

「離せ! 離せぇ!」


 暴れる男をおとなしくさせる事をあきらめたのか、もう一人同じく全身を青い鎧に身を包んだ人から指示が飛び、ジタバタする男を二人がかりで運び始めた。

 事情を知らないと、誘拐される場面のように見えるけど……運ぼうとしているのが兵士さんというのはわかるので、あの男が何かしたんだろう。


「……とりあえず、聞いてみようか。何があったのか気になるし」

「そうね。あれを見る限り、軍の関係者でしょうし、リクさんなら話してくれると思うし」

「あまり騒ぎに首を突っ込む物ではないけど、そういうところは冒険者らしいのねリク君は。まぁ私も気になるし、ちょうどいいんだけど」


 いつの間にか、先程までの昏い雰囲気や怪しい笑いを引っ込めて、通常に戻っていたマティルデさん。

 そこはあまりつつかないようにして、モニカさんと顔を見合わせて苦笑しつつ、事情を聴くため兵士さんと思われる全身ワイバーン鎧の人へと近づいた。


「えっと……すみません、ちょっといいですか?」

「む……これはリク様! どうされたので?」


 人込み、という程ではないけど遠巻きに様子を窺っている人の間を抜け、指示を出していた人に話しかける。

 こちらに振り返った人は、俺を一目見てすぐ誰かわかったようなので、王城にいる兵士さんで間違いないだろう。

 エルサという白い毛玉の目印がないと、俺の事を知らない人からは認識されないんだよね……実際に話した事などがある人以外は。

 まぁ身に着けている鎧から、兵士さんだって事は既にわかっていたけども。


「あぁいえ、何か騒ぎになっていたのでどうしたのかと」

「そうでしたか。配備された魔法具を使って検査をしていたところ、怪しい者を見つけましたので取り押さえているところです。人目に触れているので、騒ぎになってしまいましたが……」

「成る程、そういう事ですか」


 つまり、今も兵士さんに左右をがっちり固められて騒いでいる人は、検査に引っかかった人って事か。

 パッと見では怪しい雰囲気とかは見受けられないし、変わった様子はない……俺が発見した人のように、布切れを纏っているだけとかではなく、ちゃんとした服も着ているようだし。

 でもあの人が、爆発する可能性のある人でもあるんだろう。


「仕方ない事だけど、装備が物々しい雰囲気を出しているわね。これでは目立ってしまうわ。何事かと身に出てきてしまうのも頷けるわね」

「まぁ、捕まえられた人も騒いでいますしね……」


 マティルデさんのいう事はわかる。

 ワイバーンの鎧という、青くて目立つ鎧でがっちり固めていてるから物々しい雰囲気というか、ピリピリした感じは周囲の人達、住民に伝わっていしまうだろう。

 けど、カイツさんやアルネの作った魔法具での検査に引っかかった人は、必ずではないかもしれなくとも爆発する可能性がある。

 前に魔力を放出している状態の俺が振れて刺激を与えてはいけない、と注意されたように、いつ何かの作用で爆発するかもしれないから。


 エルサのように探知魔法が使えれば、ある程度予測する事はできるけど……誰でも使えるものではないし、もし爆発したらに備えての鎧なんだろう。

 取り押さえる程の至近距離で爆発した時に耐えられるかはわからないけど、ワイバーンの鎧であれば火にも強いので耐えられる可能性が高いしね。

 目立って城下町の住民に様々な目で見られるとしても、仕方ない事だったんだろうと思う。

 軽装で大きな怪我、下手したら無残に吹き飛ばされるなんて事を割けるのは当然だし。


「まぁ、今は魔法具ができたばかりであまりそういう事は考えて対処できていなかったんでしょう。何か考える必要はあるかもしれませんが……」

「何か対処ができる事を願うわ。このままだと少し不味い事になりかねないから」

「不味い事ですか?」

「危険な人を捕まえるだけですけど、不味い事ってありますか?」


 二、三、兵士さんから話を聞いて、捕まえた人物を隔離場所へと連行するのを見送りつつ、眉を寄せるマティルデさんの話をモニカさんと聞く。


「今すぐどうこうってわけじゃないけど、この国が控えている重大事は国民の協力も当然必要よ。だから……」


 マティルデさんが言いたいのはつまり、このまま目立った状態で住民を調べて捕まえるを繰り返していたら、不信感や不満感が募る可能性があるかも、という事らしい。

 管理されているというか、そこまでひどくないだろうけどマティルデさんの話を聞いた俺の頭には、地球で行われていた中世の魔女狩りが浮かんだ。

 まぁあちらは、冤罪とかあったんだろうし、詳しくないけど有無を言わさず処刑するなんて事も行われていたと聞くからそれと同じにするのはどうかと思うけど。

 でも、雰囲気というかやり方としては一見すると似ている気がしなくもない……いや、魔女を捕まえるのに魔法具なんて物や、本当に鑑定できるような道具はなかったと思うけども。


 そして、その不信感などが募ると、戦争での国民の協力が得られないとまでは言わなくとも、国民感情としては良い方向とは言えず、戦争の勝敗に響くかどうかまではわからないけど、戦時下やその後に悪い影響が出るかもしれない、という予想だ。


「あくまでも、このまま多くの人が魔法具に引っかかって連行される場面を見られたら、だけどね。さっきみたいな騒ぎが頻発するならという仮定でもあるわ」

「検査の仕方を、少し変える必要があるかもしれませんね」

「できれば、人の目に触れない形にするのがいいのでしょうけど……」


 さすがに、数十人……百を越える程の人が爆発する可能性があり、王都に入り込んでいるとは考えにくいけど……希望的観測で楽観的な見方をしているわけにはいかないからね。

 どうすればいいか、なんて考えながら連行される人、そして兵士さん達が去っていったので、騒ぎがほぼ収まった場所をなんとなしに見ながら、考えを巡らせていた。

 その場所では、何事かと集まった人達がまだそれなりに留まっていて、近くの人と何かを話している様子でもあり……なんというか、悪い噂が流れて行く雰囲気みたいなのを感じる。

 いや、皆が皆悪い事ばかり話しているとは限らないけど。


 でも、ただでさえ最近は爆発騒ぎで危険だからと、外に出る人は少なくなっていたための閉塞感みたいなのが王都に漂っていたからね。

 悪い方向に行く可能性というのは十分に感じられた。

 ちなみに、もういなくなったけど、話しを聞いた兵士さんによると検査は王城を中心に区画ごとに人を集め、魔法具に触れてもらって検査をしていたようだ。

 その検査は、簡易的にテーブルや椅子を用意しているくらいで、建物内ですらなく衆人環視にさらされている状況のようだ。


 まぁ、建物内で検査という準備などが整わなかったんだろうし、これから王城より離れた場所に広げて新しく王都に入って来た人なども調べるつもりみたいだ。

 できるだけ多くの人を調べた方が発見できる確率は上がるから、それはいいんだけど……せめて、どこか際限なく人の目に触れるような環境を避けられるようには、した方がいいだろうね――。



 ――マティルデさんやモニカさんと王城の戻った後、冒険者ギルドの職員さんの一部とあれこれ折衝があったらしい、ナラテリアさんやカヤさん、ミラルカさんと合流。

 折衝というより、実際はクランの事で何やら打ち合わせみたいな事があった程度みたいだけどね。

 なんでも冒険者ギルドからクランに出向させる事務方の人と、俺が雇う予定のナラテリアさん達の間での親睦を深めるみたいな感じだったらしい……打ち合わせともちょっと違う気もするけど、ナラテリアさん曰く実のある話もあったようで、ただの親睦会だけではなかったとの事だ。


 ミラルカさんは事務方ではないけど、今後も交流があるだろうからと参加していたらしいけども。

 ともあれその後、合流したナラテリアさん達ともう一度クランの建物まで行って軽く内部を見せてから、もう一度王城に戻って来た。


「まだ準備中ではありますけど、クランとしての仕事は大丈夫そうですか?」

「はい、お任せ下さい! ヒルダさんに仕込まれていますから」

「助けて頂いただけでなく、私達に仕事と居場所も与えてくれたリク様には、感謝の言葉もありません」

「訓練場もありました。あれはリク様が?」

「俺が用意したというより、冒険者さん達がそれぞれ切磋琢磨できるように、という事みたいです。まぁ、魔物と戦うための準備をする場所みたいなものですね」


 ナラテリアさん達は俺の言葉に、それぞれお礼を言いつつ頭を下げたけど、以前話した時よりなんとなく様になっている気がするのは、あれからヒルダさんなど王城の人達に教育されたからなのか。

 その中で、ミラルカさんは冒険者としてなのかクランの建物、その敷地内にあった広い場所に強く関心を持った様子。

 チラッと見ただけだけど、王城内にある訓練場程ちゃんとした場所って程じゃなかった。

 どちらかと言うと、冒険者さんが複数集まって魔物の情報交換や対処法などを考える場所といったところだろうか。


 規模の大きい訓練をするには向いていないけど、ちゃんと武器を持って打ち合いするような広い場所もあったので、そこを見てミラルカさんは訓練場と称したんだろう。

 玄関ホールとは別に、少し多めの人が集まる場所程度の案内だったけど、俺から見たら多目的ホールみたいな印象だったな。

 まぁ訓練でもなんでも、自由に使って欲しいとは思う。


「それにしても、クランを運営するうえでの事務方の仕事とかも、ヒルダさんが教えているんですか?」

「いえ、私はそちらにはあまり明るくないので。そういった部分はまた別の者に担当してもらっています」

「あぁ、成る程」


 なんとなく、なんでもできそうな印象をヒルダさんから受けるけど、さすがに事務的な事は得意ではなかったか。

 ちょっとした事なら教えられていたようだけど、ある程度専門性のある事になると、別の人がナラテリアさん達に教えていたという事らしい。

 それでも、ヒルダさんが厳しく監督していたらしいので、ナラテリアさん達の印象としては、ヒルダさんに教えられていたという感じみたいだけど。


「何故か、ナラテリア達が学ぶ時には私も巻き込まれています。冒険者になったのですから、魔物と戦う術の方をもっと学びたいのですが……」

「まぁ、気持ちはわかりますけど……」

「魔物と戦うだけが、冒険者じゃありませんよミラルカさん」

「モニカ様……?」

「……私に、様付けは不要ですけど……んんっ! とにかく、冒険者とは言っても戦うだけではありません。パーティの資産管理をする事もあるかもしれませんし、それでなくても一人、つまりソロでの活動であれば、自分で考えなければいけない事もあります」


 何やら、モニカさんの火が付いたようで、戦う事以外にも学んだ方がいい事を、モニカさんがあれこれミラルカさんに伝え始めた。

 まぁ金勘定とか色々あるからなぁ……その辺りがちゃんとしていない人だと、Cランクでそれなりの報酬を受け取っていながら、生活はカツカツ、もしくは食べる物に困るなんて人もいたりするし。

 魔物と戦うための装備を整えるとか、パーっとお酒を飲むとかで、散財する人も多いのが冒険者だったりもする。

 俺はお酒をほとんど飲まないというか、この世界に来てからくらいで、しかも酔ったら変な行動をしかねないので控えているし、装備をコロコロ買えたりはしていないうえ、色々と縁があってお金はある方だと思うけど……ある程度は、モニカさんに頼っている部分もあるからね。


 おかげで、俺だけでなくソフィーなども助かっていると言っていた。

 ……ソフィーも、俺達と会うまでは長くソロで冒険者をしていたからある程度できるんだろうけど、あんまり蓄えがある方じゃなかったみたいだし。


「クランに所属していたら、多少はお金に関して疎くても大きな問題にはならないかもしれませんけど、学んでおいた方がいい事というのは多いんです。訓練も大事ですけど、ナラテリアさん達と一緒に学ぶ事は悪い事ではなくて……」


 その後もしばらく、ミラルカさんに対してモニカさんの冒険者にも事務的、というか金勘定などは覚えておいて損はない、という講義に近い話が続いた――。




モニカさんは獅子亭を手伝いながら育ち、元冒険者の両親から色々聞いていたため、金勘定などと冒険者に関して何か思うところがあるのかもしれません。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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