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部屋で姉さんとくつろぎの時間


「仕事は片付けて来たから大丈夫よ。それに、可愛い弟の様子を見るのも姉としての務めでしょ?」

「……それが姉としての務めかどうかはわからないけど……、仕事が無いのなら良いんだ。どうなんですか、ヒルダさん?」

「私じゃなくてヒルダに聞くの?」

「……陛下は本日の公務、明日の会議に向けての調整は終えていると聞き及んでおります」

「ヒルダさんの方が真面目そうだからね。ありがとうございます、ヒルダさん」

「弟からの信頼が薄い……」


 仕事を終えたと言う姉さんが嘘を言っていないか、一応ヒルダさんに確認を取る。

 俺の部屋に来るのは良いけど、それで仕事が滞ったりしちゃいけないからね……姉さんは女王様だから、色んな人に迷惑がかかってしまう。

 自分より、ヒルダさんの方が信頼されてるように考えた姉さんは膨れ気味だが、それも仕方ないと思う。

 きっちり侍女として真面目に従事している人と、ソファーにだらしなく座ってくつろいでいる人とでは、説得力が違うからね。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


 ヒルダさんがお茶を用意してくれたので、お礼を言いながら俺もソファーへと座る。

 姉さんの対面に座る形だ。


「隣には来ないの?」

「この方が話しやすいじゃないか」

「……弟が反抗期……」

「いや、この年になって姉さんにべったりというのもどうかと思うよ? しかも、話し方や雰囲気は記憶にある通りの姉さんだけど、見た目は全然違うんだから」

「……照れてるの?」

「……はぁ……そんなんじゃないって……」


 照れてるわけじゃないけど、18にもなって姉さんの横に座ってべったりというのもなぁ。

 記憶にある以前の姉さんも美人だったけど、今も違う方向で美人だ。

 まだ再会して日も浅いから、見た目に慣れないのもあるしね。


「昔はあんなに可愛かったのになぁ」

「男に可愛いは誉め言葉じゃないと思うけど」

「そぉ?」


 姉さんとは年が離れてたから、覚えてる限りでは凄く可愛がってもらってたと思う。

 でも、今はもうあの頃とは違うからね……小さい子供を可愛がるようなやり方は俺が困る。


「今日は城下町に出てたようだけど、どうだった?」

「んー、昨日の魔物達の影響で、大通りが見れなかったのが残念かなぁ」

「それは仕方ないわね。報告は聞いてるけど……数日は復旧作業の必要があると思うわ。それ以外は?」

「モニカさん達に色々案内してもらったよ」

「達……という事は、エルフのフィリーナや、同じ冒険者のソフィーって人達と?」


 ところ変わっても、姉さんからすると俺は弟で保護者のような気分になるのかもしれない。

 親が子供に学校でどんな事があったのか聞くような雰囲気で、今日の出来事を聞かれた。

 昔から、俺が何をしてたのか聞きたがる節があったなぁ、そういえば。


「いや、フィリーナやソフィー達とは別行動だったよ。姉さんはあった事無いけど、モニカさんの両親……マックスさんとマリーさんっていう、俺がこの世界に来て一番お世話になった人達だね」

「りっくんがお世話になった人……それを早く言いなさいよ!」

「……どうしたの、姉さん?」

「りっくんがお世話になったんでしょう? 姉として挨拶しないといけないじゃない!」

「……そういう感覚は日本人のままなんだ……何か安心したよ。けど、今の姉さんが挨拶するのはちょっと……」

「どうして?」


 マックスさんやマリーさんには本当にお世話になっている……感謝してもしきれないくらいだ。

 姉さんが、姉として挨拶をするという日本人的な感覚は良い事だと思うけど、今の姉さんは女王だ。

 そんな人が、元冒険者で今は食べ物屋をやってるマックスさん達に、個人的に挨拶をするというのはいかがな物か……。


「陛下……陛下はこの国の王なのですよ? そんな方が貴族でも無い一般の民にそのような事をされるのは……」


 ヒルダさんも同じような事を考えたようで、姉さんをとがめる。

 一般の民という意味では、俺やモニカさんも同じなのだけど……まぁ、色々と特例なんだろう。


「……そういえばそうね……りっくんの姉としての矜持が先走ってしまったわ……」

「姉としての矜持って一体何なんだ……?」

「それはそれとして、この王都にいるんでしょ? それなら一回くらいは会っておきたいわ」

「まぁ、会うくらいなら問題ないと思うけど……」


 ヒルダさんの言葉で、自分の立場を思い出した姉さんは意味のわからない事を呟いていた。

 それに突っ込んだ俺の言葉を無視して、姉さんはそれでもマックスさん達に会いたいようだ。

 変に挨拶とかじゃなく、単に会うだけなら問題はない……のかもなぁ。

 一応、マックスさん達も最初にこの部屋に来た事もあるしね。


「それで、他には城下町で何をしたの?」

「急に話を戻すね……後は……そうだな、冒険者ギルドに行って来たよ」

「冒険者ギルド? ……そういえば、りっくんは冒険者になってたんだったわね」


 マックスさん達への興味から、すぐに俺の今日の出来事へと意識を移した姉さんに、冒険者ギルドであった事を話す。

 統括ギルドマスターのマティルデさんの事も含めて、Aランクに昇格した事もね。


「りっくんがAランクねぇ……むしろ今までBランクだった事の方が驚きよ。昨日の戦いを見てればね」

「そんなもんかな?」

「昨日のリク様は、陛下を救い、ワイバーンの侵入を防ぎ、さらに押し寄せる魔物をも退けました。まさしく英雄という呼び方に相応しいご活躍だったと思われます」

「そうねぇ。助かった貴族の者達も多いし……城内はりっくんの話で持ちきりよ?」

「そんなに? 俺は皆を助けたいだけだったんだけどなぁ」

「……りっくんはそれで良いのかもね」

「無自覚ゆえに、驕りも無く……素晴らしい人格者だと再認識致しました」


 姉さんにとっては、俺が今までBランクだった事の方に疑問を感じたみたいだ。

 だけど、俺が冒険者になって日が浅いから、それも仕方ない事だろう。

 むしろ今日Aランクになるなんて、凄い勢いでランク昇格しているから、俺の方が置いて行かれる気分だ。

 姉さんやヒルダさんは俺を仰々しく褒めてるけど……いまいちよくわからない。

 まぁ、それで良いと言われてるんだから、このままでいよう。


「りっくんがSランクにまで上がると、姉としても鼻が高くなるわね」

「さすがにSランクになんてなれないって」

「……冒険者ギルドか……独自の組織形態を持っているから、国として働きかける事も出来ないのよね……」

「いや、権力を使ってランクを上げちゃいけないでしょ」

「そうですよ陛下。そんな事をしなくとも、リク様ならいずれSランクになる事でしょう」

「……それもそうね」


 姉さんは俺にSランクになって欲しいようだけど、さすがにそこまではなぁ。

 ヒルダさんは俺がSランクになる事が決定してるように考えているし、姉さんもそれに頷いているんだけど……。

 ランクの事は置いておいて、ギルドを出た後の事、王都城下町の地理等を教えてもらった事を話した。

 姉さんは、出来事を聞く事を嬉しそうにしていた。

 きっと、久しぶりにゆっくりと話せている事が嬉しいんだろうと思う。

 以前はよくこうして、俺が学校であった事なんかを話してたからね……俺も懐かしい感覚だ。




空いた時間で、ゆっくりと姉弟として話す二人は、空白の時間を埋めているようです。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方ブックマークを是非お願い致します。


作品を続ける上で重要なモチベーションアップになりますので、どうかよろしくお願い致します。

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