ワイバーン運用の許可
ブックマーク登録をしてくれた方々、評価を下さった方々、本当にありがとうございます。
「さて、リクから有効な手立てをいくつか提案されたが、今度はこちらから提案させて欲しい。どちらかと言うと、お願いになるのだがな」
「なんですか?」
今考えうる事は話したし、ヴェンツェルさん達の報告の途中だっただろうしで、そろそろ退散しようと思っていたんだけど、今度は姉さんの方から俺に何かあるらしい。
お願いって事は俺が何かやるようにってところかな?
「ワイバーンの事だ。素材の買い取り、王都周辺の魔物討伐への助力など、大きく助かっているのだが、遠くへの連絡用にワイバーンを使わせてもらえないかとな」
「それくらいなら全然構いませんけど……というか、俺に許可を取る必要は……」
どんなお願いかと思って身構えていたから、ちょっと拍子抜けだった。
俺じゃなくて、ワイバーンを動かすためのお願いだったらしい。
ワイバーン達が頷いてくれるなら、別に俺に許可を取らなくてもいいと思うんだけど……騎竜隊も含めて、ワイバーンに関してはほぼ任せている状態だしね。
「その、わざわざ俺にお願いしなくても、ワイバーンが嫌がったりしない事ならそちらで決めてもいいと思うんですけど……」
個人的にならもしかしたらあるかもしれないが、国として魔物に協力してもらう、という事はこの国でも初めての事だし、何があるかわからない部分はもちろんある。
もしワイバーンが嫌がって暴れたり……なんて事件が発生しないよう基本的には、嫌がらない事を頼むという方向になっているはずだからね。
「あくまでも、ワイバーンはリクから預かっているとなっているからな。魔物とは言え生き物相手だからこういう事は言いたくないが、所有権ははっきりさせておかないといけないのだ」
「つまり、ワイバーンは俺の所有になるから、何かをするにも俺の許可がいるって事ですか?」
「そうなる。もちろん、緊急時などリクに許可を取れない場合もあるだろうから、その場合は事後承諾にはなるだろうがな。当然だが、基本方針としてワイバーンを粗末に扱う事はない」
「思っていた以上に、ワイバーンは兵士達に受け入れられており、ワイバーンも人を襲うような素振りは全くないようです。ですから、協力者として確かな扱いをお約束いたします」
「それはありがたいですけど……そうですか。わかりました」
だったらもっとわかりやすく、俺もあまりこういう表現はしたくないけど、所有権を姉さんとかに譲って、そちらで判断してもらった方が手っ取り早いのでは……。
なんて思ったけど、なんとなく姉さんが視線で訴えかけている気がしたので、とりあえず頷いておくことにした。
多分だけど、ワイバーンという有力な存在を国が所有する事の危うさとか、所有権の奪い合いとか色々とあるんだ……みたいな事を、視線に込めているような気がする。
……勘違いかもしれないけど。
あとまぁ、リーバーがどう思うかってのもあるし、ここで俺が気軽に譲るとか言っていい事でもないな、と思ったのもあるけどね。
リーバーは俺やモニカさんに特に懐いているから、何か問題が発生する可能性もあるし……。
いや、近くに俺やエルサがいれば、暴れるとか反乱みたいな事はそうそうないだろうけども。
あと魔物であるワイバーンからしたら、創造神とも言えるロジーナもいるしね。
「えーっと、連絡用という事ですけど……どこへ向かわせるんですか? まだ、王都周辺の魔物は全部討伐したと言えないですし……」
「そちらは、数日中には片付く見込みだが、とりあえずはティアラティア獣王国と、センテにだな」
「獣王国とセンテですか」
センテは多分、今俺から魔導鎧の話を聞いてって事だろう。
使うにしろ使わないにしろ、検討する時点でシュットラウルさんとは連絡を取り合わないといけないだろうしね。
馬だと、急いでも往復するだけで結構日数がかかるだろうし……それは、獣王国だともっとだろう。
「獣王国の方には既に、アマリーラ殿の手紙を持たせた使者を早馬で向かわせております。ですが、やはり日数がかかりますので……」
アマリーラさんの手紙、ちゃんと送れる物に仕上がったんだね……。
なんとなく宰相さんが疲れているように見えるのは、俺が相談に乗ったからだろうか。
「向こうが協力してくれるとなっても、間に合わない可能性もあるわけだ。そのため、できるだけ早く連絡を取り合いたいというのが我々の考えだな」
「成る程」
いつ戦争が開始するかわからない状況ってのもあるし、獣王国との連絡を取るだけでも結構な日数を要するだろうからね。
協力してくれる事になったとしても、当然向こうでは軍の編成などの準備があるだろうし……それで結局間に合わないとなったら意味がなくなってしまう。
そのため、相互の連絡だけでも早く済ませるようにワイバーンを使いたいんだろう。
同じ事がセンテの方でもいえると思う。
「でも、ワイバーンが急に向こうの国に入ったら、驚かれませんか? それこそ、攻撃されたりとか……」
あくまでワイバーンは魔物だからね。
獣王国でどういう扱いかはわからないけど、基本的には討伐するべき魔物という認識になっていても不思議じゃない。
というか大体そうだと思うし。
「獣王国には味方だと示す合図があるらしくてな。それと、アマリエーレ王女殿下から、獣王国に示す照明となる物を預かっている。もちろん、飛んで国境を抜けるのではなく、必ず降りて話を通すようにしなければならないだろうが、おそらく問題には発展しないだろうと、リネルト殿とも相談した」
「リネルトさんにですか」
そこでアマリーラさんじゃないのは、リネルトさんの方が冷静に考えてくれるからだろうか?
まぁ、あまり深くは気にしないでおこう。
アマリーラさんが話を聞いていないって事はないだろうし。
「既に使者は獣王国へと向かっているが、リクの許可が出次第ワイバーンを合流させて、引き継ぐ予定だ」
俺の許可が出るかどうかを待たずに、先に出発させておいたんだろう。
もし許可されなかったらそのまま、早馬で使者の人が向かう必要があるし、できるだけ迅速に動き始める必要があったのか。
「わかりました。ワイバーン達にも話をする必要がありますが、連絡用として使って下さい」
まぁ元々、空を飛ぶ利点としてワイバーン達にはそういう役割を期待していた部分もあったからね。
王都周辺に点在していたの魔物の集団騒動が落ち着いたのなら、その役を任せるのを拒否する理由は一切ない。
「ありがたい。すぐに騎竜隊の方へ報せよう。センテの方は少し後回しになりそうだが、魔物の討伐も落ち着いてきている。一体か二体は騎竜隊から出せそうだしな」
「はい。一応俺の方からも、そういう役目を任せられるワイバーンを選ぶよう、リーバーの方には話しておきます」
「ワイバーン達をまとめているリーダーだな。助かる」
「いえ」
騎竜隊の方も、魔物の集団騒動が落ち着きつつあるため、ワイバーンを分けて出撃させるようにしているらしく、今日はリーバーはお留守番しつつ、他のワイバーンが活躍する予定、というのを聞いているからね。
ついでだし、クランの建物を見に行く前にリーバーと話しておこう――。
当初の予定通りワイバーンは連絡役にもなるようです。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。






