アクリスに翻弄されるリク
段々と察知能力が付いてきたのか、少しくらいなら体を魔力が分厚く覆っている状態でも、外の魔力を感知できるようにはなって来たけど、やっぱり戦闘状態ではっきり感知するにはまだまだ邪魔だ。
なので、まずは準備として魔力を放出して体を覆う魔力を薄くする必要がある。
ついでに、その魔力放出でアクリスを威圧……というより俺を敵認定してもう。
無視されたら悲しい、というだけでなくそのまま畑の方に行くかもしれないからね。
「よしよし、ちゃんと気付いたみたいだ。うーん、さすがにあれだけの数が一度にこちらを注視するのは、気圧される感じはあるけど……」
俺の魔力放出を受けてか、ひたすら真っ直ぐ走っていたアクリスが速度を緩め、一斉に俺へと目を向けた。
敵としてか邪魔者としてか、とにかく俺を認識した様子だ。
「まずは……一体目っ!!」
こちらを窺うようなアクリスに対し、先制攻撃として走り込み、肉薄するついでに眉間へと剣を突き刺した。
さすがにすんなり抵抗もなく深々と突き刺せる、なんて事はないからそれなりの硬い感触を感じながらも、剣身の半ばまでアクリスの眉間に食い込んだ。
剣を突き刺したアクリスは、一瞬だけ体を大きく跳ねさせたがすぐに目から光を失い、俺が剣を引き抜くとズシンという音と共に倒れて動かなくなった。
錆びた剣は、固い角に当てたり斬り裂くのには向いていないけど、突き刺すくらいならある程度できる事は、オーガ戦で実践済みだからね。
それに魔力を感知する必要もなくわかりやすい急所だ。
体が大きいとはいえ四足歩行であるために姿勢が低く、顔の位置も低いので狙いやすい。
白い剣のように、どんな物でもバターかのようにすんなり突き刺せるのとは違って、感触は手応えとして感じられるから、これはこれで悪くない……できればもう少しまともな剣を使いたいと思わないくはないけど。
「うぉっと! げっ! リネルトさんが言っていたのはこれ……か!」
さて次は……と、突進などを警戒しつつ、周囲の魔力を調べつつ次の動きを考えていると、魔力感知範囲の内外から飛来する魔力の塊……いや、魔法。
土を固めた矢のような、鋭い切っ先が全て俺へと向いている。
それを後ろに飛んで避け……た先にも数本の土の矢が迫り、左手で撃ち落とし、右手の剣で払いのける。
さらに凌いだ、と安心する間もなく十を超える土の塊が飛来。
今度はもっと大きく後ろに飛んで、全てやり過ごした。
これが群れとなったアクリスの連携って事か……確実に、敵と認識した俺に明確な攻撃意思を持っている。
三度目の土の塊に関しては、おそらく速度を重視して矢のようなものではく、とにかく当てるために放った物だろう。
それを、瞬時に理解してそれぞれのアクリスが一斉に放つのは、成る程群れになると脅威度が跳ね上がる理由がわかるね。
「なんて納得している場合じゃないね……こっちからも……とぁっ!?」
土の塊を避ける際に後ろに大きく飛んだため、離れてしまったアクリスとの距離を詰めようと、構えた瞬間だった。
正面から一体のアクリスが突進。
移動するときの走りと、突進では違うのか、弾丸……とまでは言わないけど、かなりの速度でぶつかる。
なんとか、足に力を入れて体ごとというか頭から突っ込んできたアクリスを、両腕を交差させて受け止めた。
「ぐっ……くっ……思った以上に力がある……ねっ!」
角には当たらなかったのはラッキーだったのか、それともアクリスがそれを狙っていなかったからなのか……それはわからないけど、俺の体ごと押し切ろうとするアクリス。
そっちがその気ならと、体の力を一瞬だけ抜いてわざと後ろの上半身を押させる。
同時にバク宙の要領で足を上げ、アクリスの顎だか口だかを蹴り上げた。
「よしうまくい……ふげっ!」
日本にいた時からだけど、バク宙なんてアクロバティックな動きをした事がないから、回転しつつ着地に成功……とか甘い事はなく、回転力が足りなくてそのままベタンと仰向け状態で地面に落ちた。
うーん、アクリスからは逃れたけど思い付きで動いたらこういうしっぺ返しがなぁ。
一応、両手が使えたらバク転くらいはできただろうけど、アクリスを抑えていたうえに剣を持っているからバク宙を選んだけど。
……とりあえず、慣れない動きを思い付きでするもんじゃないね。
「いてて……魔力開放をしたから、ただ地面に落ちただけでも結構痛みがあるなぁ。っと、あぶっ! ない! よ! っと!」
顔面から何から、地面に強く打った部分からの痛みに顔をしかめつつ立ち上がった瞬間、追撃するように降り注ぐ土の塊、または土の槍。
体を覆う魔力がかなり少なくなっているのもあって、受けて耐えるのはできそうにないため、焦りりながらも避ける。
横に飛び、体勢を整える間にもまた飛んで来る土の魔法をさらに避け、その先を見越して再び突進してくる複数のアクリス。
さすがにこれ以上受け止めていられないと、走って突進から逃げる……追いかけっこの始まりだ。
「ひ~。これがアクリスの連携かぁ……! 最初以外、こちらから攻撃する隙がなかなかないよ!」
魔法で狙われ、後ろや横からはアクリスの突進……大きく円を描くようにひたすら走る。
足を止めたらその瞬間、魔法か突進のどちらかにつかまってしまうだろう。
とはいえこのまま逃げ続けるだけというわけにもいかないし、チラッと見えたユノやロジーナは助けてくれる気配がない。
まぁ実戦訓練だし、手を出すのは本当に危ない時だけだよね……。
「……ま、俺もただ逃げ回っているだけじゃ……ないんだけどねっ!」
逃げつつ、アクリスの動きを観察。
少し早めに走って、追いかけるアクリスがさらに突進の速度を上げたのを見計らい、横に飛ぶ。
つい数舜前まで俺がいた場所を通り過ぎるアクリス……車、じゃなくて突進中のアクリスは、突然止まれないし曲がれない。
なんとなく、円を描くように走って逃げていて、角度が付いた時のアクリスの突進の勢いが弱まっていたのに気付いた。
「俺を追い抜いたアクリスは、こうだ!」
俺を追い抜いてしまい、急ブレーキをかけようとするアクリスに対して後ろから走って追いつき、体の真ん中より少し後ろ、アクリスの急所と思われる場所に剣を突き込んだ。
短い悲鳴と共に、体から力が抜けて倒れるアクリス。
最初に眉間を貫いた時よりも、反応が顕著というより絶命するのがほんの一瞬だけ早い気がする。
心臓、もしくはそれに相当する急所がそこにあり、ちゃんと貫けたからだろう。
「走りながらも、ちゃんと魔力察知していた甲斐があったね! っと!」
とはいえ、足を止めてもいられない。
次なるアクリスが俺へと向かってきていたし、他のアクリスは魔法を降り注がせて来る。
再び走り始める俺は、魔力察知を続けながら先程と同じように、アクリスから捕捉されないために逃げ回る。
俺が横に避けるのを警戒してだろう、別のアクリスがそうさせないよう俺にとって動きづらい位置取りをしようと動いていたので、今度はまっすぐ上に飛ぶ。
数メートル程飛んで着地した時には、後ろから追いかけてきていたアクリスは再び俺を追い抜き、急ブレーキをしようとしていた――。
リクはただただ走って逃げ回っているだけではなく、反撃の機会を窺っていたようです。
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