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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1853/1950

アマリーラさんの手紙



 なんだろう、手紙を持って相談を持ち掛けてきた宰相さんの様子は……あぁ、そうだ。

 さっき打ち身の痛みで思い出した、昔の姉さんの雰囲気に似ているんだ。

 なんていうのかな、困っている風ではあるんだけど仕方ないと思っているというか……やれやれ感?

 微笑ましいと思うけど、できればなんとかならないかと考えているような、複雑な心境って感じだろうか。


「アマリーラ殿の直情的な性格が出ていて、好ましい文面ではあるのですが……相談というのは後半。お渡しした物の最後の紙に書かれている内容です」

「最後……これですね」


 さすがにこの場で、王城の廊下で立ったまま全部を読み切る事はできなかったので、数枚にわたる紙に所狭しと文章が連なっている半分も読めていなかった。

 そのため後半は全然読めていなかったんだけど……宰相さんに言われて重なった紙の一番最後になっていた部分を見てみる……と。


「……うぇ!? え、えーっとこれは……正気ですか?」

「どうしたのだわ? ふむ、ふむふむ。……これは確かに、正気かと疑う内容なのだわ」


 思わず驚き、正気かなんて疑う言葉が出てきてしまったけど……俺の頭の上から覗き込んだエルサも、似たような反応だったから俺が間違っているわけじゃないと思う。

 いやまぁ、ある意味というか全力でアマリーラさんらしいと言えばらしいと思うけども……。


「相談というのはそれでして。いえ、リク様を称賛するのは間違っていないと思うのですが……いささか過剰に思えますので、陛下も私もどうしたものかと」

「それで、俺に相談ですか……」


 書かれていたのは、俺がいかに素晴らしいかとかそんな内容だ。

 宰相さんが言っている通り称賛している文章だけど、それはいいのかという疑問はもう何を言っても響かなさそうだからスルーするとして。

 とにかく、俺が世界の頂点だとか、獣王国にとって俺に従う事こそが務めだとか……まぁさすがに直接そう書かれているわけではないけど、そう読み取れる内容の文章がひたすら書かれていた。

 しかも、他の部分と違ってその紙の隙間すら許さないくらい、細かに文字が書かれているのでなんというかアマリーラさんの執念のようなものを感じなくもない。


 ……思慮深いとも書かれているけど、思慮深いと思えるような事、俺やったっけ? なんて思ってしまったりもする。

 結構、その場の思い付きで動いている事もあるんだけどなぁ。


「……この最後の部分だけ抜いて、というわけにはいきませんか?」


 こういった手紙の内容はどういったのが正しいのかわからないけど、俺から見る限りでは大きな問題がないように思えた。

 アテトリア王国の内情に関してなどは、姉さん達が精査してくれるだろうし、すこし砕けた部分が多くて、娘と父親の関係性がわかるくらいかな? と思う程度だ。

 手紙としても、俺に関する部分がなくても十分通用する内容のようだし、そこをなくしても良さそうに思える。


「いえ、リク様の事を正しく伝えるというのは重要なのです。獣王国は力を尊重し、力に従うが摂理とされています。ですので、アマリーラ殿が従っても良いと思える程の人物がいるというのは、獣王国との関係上我々にとっても最重要と言えるでしょう」

「つ、つまり……?」

「人間同士の国であれば、前半部分が重要となりますが、獣王国とのやり取りであれば最後の部分がなければ成立しません」

「さ、さすがにそれは言い過ぎ、では?」

「そうですな……単純に互いの国の友好を深める。親書や国同士の交流や物の取引などではまた少々から変わるでしょうし、リク様の想像するものと大きく変わらないかと存じます。ですが、事は戦争……つまり武力を行使する内容に繋がります。力を尊重し従う獣王国であれば、その力を示すために言葉を尽くすのは、当然の事なのです」

「な、成る程……?」


 理解できたようなできないような……。

 ともかく、俺がいる……アマリーラさん程の人でも敵わないような強力な力を持った、それも学問などの頭の良さとかではなく単純な武力という意味合いでの力がある人というのは、協力を取り付けるうえで重要なのだろう。

 特に今回は話し合いをするだけとかではなく、援軍を……つまり戦力を貸してくれというお願いでもあるわけだから、武力が重要視されるというわけか。

 ある意味単純明快だけど、ある意味面倒くさいような……なんて考えたら、獣人の国に対して失礼かもしれないけど。


「必ずしもそうである、とまでは言いませんが……獣王国と友好関係を結ぶだけでなく、戦力を借りる、協力して何かをなす場合は、力を示さねばらならないのです。その何か、によって示す力というのも変わるのですが」

「そうなんですね。だとしたら、最後の部分は……」

「いささか私情が入っているため、少々の修正は必要でしょう。ですが、大きく変える、または一切を切り捨てるわけにはいかないわけですな」


 私情……いささかどころか入りまくっている内容のように読めたけど、獣人だという事を加味すればそうでもないのか。

 文化の違い、考え方の違い、みたいなものという事でとりあえず納得しておこう。


「それじゃあ、俺に相談というのは? アマリーラさんに直接話した方がいいんじゃないでしょうか? もしくはリネルトさんに……」

「いえ、既に相談し、過剰な部分を修正してもらっているのです」

「そ、それでこれなんですね……」


 すでに宰相さん方から、アマリーラさん達に相談していたのか。


「元々は、今の数倍……数枚に及ぶ物でしたが、なんとか一枚の紙で済ませられるまでにはなりました。ただその、人間と獣人の価値観の違いのようなものを感じまして、もう少し修正した方が良いと感じはしますがどこをどう変えた物かと悩むようになってしまいました。アマリーラ殿と直接話をしていた事も影響しているのでしょうが……」

「つまり、客観的に見る事が難しいような状態になったってわけですね?」


 多分だけど、これまでの経験などもありどこか間違っているというか、もう少し抑えるように修正した方が相手側にも伝わりやすくなるだろうという感覚がある。

 けどアマリーラさんと直接話、書かれた内容を細部まで読み込んだ結果、洗脳されるのに近い形でよくわからなくなってしまったってところだろう。

 ゲシュタルト崩壊じゃないけど、深く考えすぎている状態なのかもしれない。


「はい。そのため、リク様には申し訳ありませんが精査していただければと……」


 自分を称賛する内容の修正をするなんて、どんな罰ゲームなのかと思わなくもないけど、深刻ではなくても宰相さんは本気で困っているようだから、なんとかしないといけない。

 獣人の国の協力は、帝国に対するため、そしてこちらの被害を数鳴くし圧倒するために絶対必要だと思うし……。


「わかりました。そうですね……」

「ふむふむ。いやしかしそこは……」

「アマリーラさんに毒されている、と言ったらあれですけど、もう少し客観的に見るとここは……」

「言われてみるとそうですな。うぅむ……」


 等々、廊下である事を忘れて宰相さんとアマリーラさんの獣王国国王陛下に出す手紙の内容を、相談する――。



自分への称讃内容を自分で改変していくシュールさ……?


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


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