魔力を感じるための復習
魔力放出のため皆から数メートル離れ、自分の体を覆う魔力を思いっきり放出、体内から滲み出る魔力をできるだけ外に出さないようにもする、一時的にだけど。
滲み出る魔力は、俺の体に収まらない量を逃すためでもあるから、頑張って出さないようにしてもいずれ滲み出ちゃうんだよね……。
ともあれ今は戦闘中じゃないし、攻撃されないから多めに放出しておいてもいいかな、っと……。
「「「っ!!」」」
「ふぅ……お待たせ。って、どうしたの皆?」
「いえ、魔力を放出って、あんなに凄いものだとは思わなくて……」
「あぁ。もう少し、離れていてくれた方が良かった」
「あれがリク様の魔力……さすがとしか言いようがありません」
魔力を放出して戻ると、驚いて目を見開いていたモニカさん達。
何やら、汗もかいている様子だった……俺は放出するだけなのでよくわからないけど、濃く多い魔力を放出すると、近くにいる人は何かしらの影響が出てしまうのか……。
「はぁ……リク様の魔力。素晴らしい、素晴らしすぎます……!」
「アマリーラさん、そこまで行くとただの変た……変人になりかねませんよぉ。お止め下さいねぇ」
さらに離れた場所では、アマリーラさんとリネルトさんが何やら話していたけど、まぁあっちは放っておいても良さそうだ。
ちなみにエアラハールさんとレッタさんは、口を揃えて「相変わらずの馬鹿魔力」と呟いていたけど、こちらもスルー。
もう言われ慣れかけているし、自分でも自覚しているから……うぅ。
「と、とりあえず、ちょっと集中してみるよ。えっと……」
目を閉じて、対オーガの時にやったみたいに自分の外側の魔力へと意識を向ける。
体を覆う魔力がほとんどなくなったおかげで、邪魔するものがなく、オーガの時と同様に自分の者ではない魔力らしき気配のようなものを感覚で捉える。
相変わらず薄い膜のような、おぼろげではあるけど、それを逃さないように深く集中。
オーガと戦っている最中にも感じた、どこか安心するような感覚。
それが俺の前に並んでいる、モニカさん、ソフィー、フィネさんの三人の魔力なんだろう。
塊でありつつも、少しずつ外へと流れているのは……体からほんの少し魔力が出ているからか。
いや多分、呼吸かな? そんなリズムだ。
その他にも、離れたところに熱さを感じるようなのが一つ、冷たさを感じるのも一つ……多分これは、アマリーラさんとリネルトさんだろう。
「……っ!?」
「どうしたの、リクさん?」
「いや、うん……なんでもないよ」
目を閉じたまま、息を飲む俺に声をかけて来るのはモニカさん。
それに首を振って、再び深く集中しつつ自分を落ち着かせる。
意識を外に向ける事で、おぼろげながら感知しているそれが魔力であるなら、異質なのが三つあった。
アマリーラさんとリネルトさんのものと思われる魔力の近くに、モニカさん達のものと似た魔力はおそらくエアラハールさんだろう……これは特に問題ないというか、異質ではない。
それとは別……まず一つは、おぼろげなはずなのに大きくはっきりと感じる魔力。
グルグル、グルグルと常に動いて、時に反発し合い、時に混ざり合っているような二種類の魔力を持つ人。
多分これはレッタさんか。
他の人達に比べて異質なうえ、大きくはっきりと感じる魔力は人によっては恐ろしさを感じるかもしれない……クズ皇帝による魔力貸与を受け、二つの魔力を混ぜて増幅されているからなんだろう。
ただ、それだけなら驚く程ではないかな? さらに奥に、もっと大きくてはっきりした、でも自分の魔力と似たのを感じるから。
こっちはエルサだろう、俺の魔力と似ているのは契約でエルサに魔力が流れている事と、エルサの使う魔力に俺の魔力があるからだと思う。
そして俺が驚いて息を飲んだのは、大きいとか小さいとかの感覚ではない……二つのぽっかりと空間に穴があいたような部分だ。
自然の魔力なんだろう、誰かの魔力以外に薄く広がっている魔力も、その二つの場所だけは何もなくただただ何も感じない。
目で見るのとは違うからなんとも言えないけど、視覚情報で例えればそこだけ光すら吸い込まれ、何も隔てる物はないのにぽっかりとした空間部分だけ、暗く昏く何もなくなっていると言ったところだろうか。
まるで、魔力だけでなく光すら極小のブラックホールにでも吸い込まれているようだ。
「あぁ、私とユノの事は気にしないで。そういうものだから」
じっとりとした汗がこめかみを流れる俺の様子を見て察したのか、ロジーナの声でそう言われた。
やっぱりこれは、ロジーナとユノなのか……場所的に、そうじゃないかと思ていたけど。
もしかすると、神様の魔力は人には感じられないとかそんな話なのかな? 高次元魔力とかいうのと何か関係があるのかもしれないけど。
まぁ、気にしないでと言われたんだから、気にするのはやめておこう。
なんとなく、触れてはいけないような気がしたから。
破壊神として俺の前に現れた時のロジーナ以上に、そのぽっかりと開いた魔力の空白……色とかはよくわからないけど、空いた空間は何かとてつもないものを内包しているように思えた。
恐怖とかそんな簡単な言葉で片付けていい事じゃないのは確かだけど……。
「え、えーっと……とりあえず、皆の魔力と思われるのはなんとなく掴んだけど?」
ロジーナやユノの事は気にしないようにして、けど確かにそこにあり、こちらを除かれている気がしてしまい、少し声が上ずりながらも目を逸らし、声を発する。
目は開いていないけど、感覚としてできるだけ意識をそちらに向けないようにする事で、蛇に睨まれた蛙状態にはならずに済んでいるようなものだねこれ。
「じゃあその中から、並んでいる三人の魔力に意識と感覚を集中させなさい。少しだけ、違うのがわかるはずよ」
「違う……三人とも、それぞれ似ているけど違う魔力っていうのとは、また違う話なんだよね?」
「そうよ。個性とも言うべきかしら? 似てはいるけど人も魔物も、木々でさえ細かく言えば少しだけ違いがあるわ。それは、リクもわかているでしょう?」
「まぁ一応は? ただ、人以外で同じ種族の魔物や、木々など自然はさすがに違いってよくわからないけどね」
人間だから、モニカさん達の魔力はかなり似ている……けどよくよく感覚を研ぎ澄ませてみるとやっぱり違いはある。
それは多分、俺が探知魔法で魔力の反応を情報として扱っていたからだ。
ちなみに、アマリーラさんとリネルトさんは感じる熱量みたいなものに大きな違いはあるけど、それでもやっぱり同じ獣人だからか魔力全体で見るとやっぱり似ている。
「うーん……ん?」
ともあれ、ロジーナに言われた通り個人差での違いとは別の違いとやらを探すため、さらに深く集中していく。
すると、感覚で捉えるのに慣れたおかげか、少しだけモニカさん達の魔力が人型になって言っているような気がした。
これは別にモニカさん達が魔力を奏したとかではなくて、最初から人の形で持っていた魔力を、俺が形としてようやく捉えられたからだろう。
魔力は体内を循環しているから、それを感じられれば人の形になるのは当然とも言えるけど――。
リクは段々と、感覚を掴み始めているようです。
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