リザードブレイドとの戦闘開始
「リザードブレイド……上位個体って事は、あれが全部そうなんだ」
「多分、そうね。あれだけの魔法攻撃を受けて、無事な数の方が多いのはそうとしか考えられないわ」
モニカさんによると、近接戦闘というか、身体能力自体は元のリザードマンと大きく変わらないらしいけど、魔法を織り交ぜて戦い、統率力も上がっているため集団に一体いるだけで討伐難易度が上がるんだそうだ。
特徴として、見た目もほとんどリザードマンと変わらないけど、体表の鱗の色が青から水色のように薄くなっているとか……まんま、今俺達が見下ろしているリザードマンそのものだね。
いや、リザードブレイドか。
「魔法……ね。ブレイドって事は刃のように斬る魔法を使うのかな?」
多分、剣などの刃物を使って斬る、という事ではないと思う。
身体能力が大きく変わらないのなら、魔法さえなければ通常のリザードマンと同じだろうし。
「……来るわ!」
モニカさんの声に合わせてというわけではないだろうが、リザードブレイドの集団、そのうちの一体が大きく吠えるような動きをした。
生憎と、距離があるせいもあってこちらまで声は届かなかったけど、それで一斉にリザードブレイドが空にいるワイバーン達、というか俺達を見上げるのが見えた。
おそらく、あれが集団の中でのリーダーみたいなものなんだろう。
そして次の瞬間、それぞれのリザードブレイドが腕を振り上げ、その先に三日月型の塊が無数に出現……一体辺り、五個前後だろうか。
それが勢いよく空にいる俺達に向かって、発射された。
「各自散会!!」
おそらく、魔法攻撃で思った成果が出なかった事で警戒していたんだろう、三日月の塊が発射されるとほぼ同時に、隊長さんからの号令が響き渡る。
各ワイバーン、リーバーも含めて隊列を崩し、地上から迫る三日月の塊を避けるよう動いた。
「……水の塊? いや、刃か」
それなりの速さ……多分至近距離なら避けるのも難しい程の速度でうち放たれた三日月の塊。
リーバーが避けてすぐ近くを通り過ぎていくそれを見てみると、水が凝縮されてその形を取っているようだった。
距離がある時はよく見えなかったけど、三日月の弦の部分と言えばいいんだろうか、そこは刀を彷彿とさせる程薄く鋭かった。
かなり凝縮された水の塊なのと、勢いもあって、対象物を簡単に斬り割く様子がまざまざと想像できる……成る程、だからブレイドね。
「これが、リザードブレイドと呼ばれる所以らしいわ。その水の刃は、樹木くらいなら斬り裂くそうよ」
「成る程ね……リーバー、大丈夫そうかい?」
「ガァゥ。ガァガァ」
見る限り、直撃はしていないようだけど一応リーバーに聞くと、問題ないというように鳴いて頷いた。
視線を巡らせると、散会したワイバーン達も特に水の刃……水刃に当たったのはいないようだ。
さすが、空を自由に飛べるワイバーン達だね。
まぁリザードマンと思っていたのもあって、奇襲を仕掛けたはずのこちらが逆に奇襲をされたようでもあり、組んでいた編隊を崩されてしまったけど。
「次が来るわ!」
「……連続で打てるの!?」
モニカさんの声にハッとなって、考えを止めて地上を見ると、再びリザードブレイドの上に無数の水刃が作られているところだった。
一度打ってから、次はもう少し猶予があると勝手に考えていたけど、それなりの連射もできるみたいだ……結構厄介だな。
確かにこの頻度で撃たれたら、統率云々を差し引いても討伐難易度は上がるだろう。
「魔法を織り交ぜて戦う、というのは単発で終わるわけじゃないって事ね……」
「リーバー!」
「ガァ!」
モニカさんの声を聞きながら、リーバに呼びかけると強い遠心力を感じる勢いで大きく旋回。
眼下から迫る水刃を避けてくれた。
距離がそれなりにあるおかげだろうとは思うけど、空を自由に動けるリーバー達にとっては、水刃を避けるくらいはなんともないみたいだね。
「距離があるから避けるのは問題なくても、それだけだとなぁ……うーん、モニカさん。リザードブレイドは近付いて戦うのはどうなんだろう?」
「私も直に戦った事がないから、何とも言えないけど。単純な戦闘力では通常のリザードマンとそう変わらないと聞いているわ。ただ、魔法を織り交ぜて戦うから……」
「危険度はリザードマンよりもさらに上って事だね」
「えぇ。魔法が使えなくなるくらい、消費させてからって手もあるにはあると思うけど」
このまま避ける事を優先させれば、いかに魔物とはいっても魔力が尽きるのは間違いない。
まぁ、ずっとこちらに向かって魔法を使い続けたら、の話だけど。
そうすれば、通常のリザードマンとそう変わらない強さになるのなら、消耗を待ってから近付いて戦うという方法もあるんだろう。
けど消耗戦になると、空を飛んでいるワイバーン達が疲れる可能性もあるし……そもそも、いつまでかかるかもわからない。
「とりあえず、強行して地上に降りて戦うのはなしとして……」
兵士さん達やワイバーン達が危険になる可能性もあるから、なんの考えもなく突撃をさせるわけにもいかない。
こちらのワイバーンも魔法が使えれば、多少は何か考え付くのかもしれないけど……まぁ、多少の怪我くらいなら再生するしむしろ喜ぶという特殊な性質をしているのは、考えないとして。
……皮を剥ぐのを喜んで受け入れるとか、王城で採取しているなどは今考えないでおこう。
「ガァゥ! ガァガァ!」
「リーバー? 何か考えがあるの?」
「ガァ!」
考え込む俺の様子を見てか、というよりモニカさんと話しているのを聞いていたんだろう。
何やら自信ありげに鳴くリーバー。
「じゃあ、任せてみるよ。元々今回はリーバー達ワイバーンの運用を考える機会なわけだしね」
「ガァゥ。ガァァァァ!!」
そう言って、リーバーのツルツルな体を優しく撫でると、嬉しそうにひと鳴き。
次の瞬間、他のワイバーン達に号令を出すように大きく吠えた。
「おおう、華麗に避けてるね。さすがワイバーン」
「それだけじゃないわ。避ける事に専念した数体のワイバーンが、リザードブレイドに空から近付いて挑発もしているみたいね」
「ガァガァ」
「向こうも統率されているのかもしれないけど、こちらも統率されているし、その強みってところかな?」
リーバーが吠えた後、同じ高度で飛んでいたワイバーンが数体ずつに別れ、それぞれリザードブレイドを挑発。
地上から迫る水刃を避ける事に専念するのと、攻撃の機会を窺うように悠々と飛んでいるワイバーン達とで別れた。
後者も、数体ずつに別れているのでそれぞれに何かしらの役割があるのかもしれない。
ともあれ徴発されたリザードブレイドは、高度を下げた数体のワイバーンに全ての狙いを定めているようだけど、放たれる水刃がワイバーンに当たる様子は一切ない。
リザードブレイドは統率力に優れているらしいけど、こちらはさらに通常のワイバーンより進化? しているようなリーバーだ。
戦術を考えるなりの知恵比べでは、完全にリーバーへと軍配が上がっているね。
まぁ、空にいるという圧倒的なアドバンテージがあるのも大きいだろうけど――。
リーバーはちゃんとワイバーン達を統率するリーダーとしての役割ができるようです。
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