アマリーラさんの事と決意表明
「とりあえず、爆発の事は魔法具の開発や調査次第って事でいいとして。あとは……」
他に話す事はあったかな? と考えてそういえば姉さん達の前で話した、俺の決意の事を思い出す。
もう話した事だから、俺一人で少し吐き出してスッキリした気分になっていたけど、まだモニカさんやソフィー達には伝えていないんだよね。
火事現場から王城に戻る時、アマリーラさんとリネルトさんに後で話が……と言っていたのはその事でもあり、こうやって皆が部屋に集まった時に話そうとしていたわけなんだけど。
あの時は、姉さんへの報告はともかく、執務室であぁやって話をするとは思っていなかったからなぁ。
とにかく、皆にも話しておかないと……と思って口を開いた瞬間、アマリーラさんが真剣な表情で立ち上がった。
「リク様には既に伝えたが、皆に話しておかないといけない事がある」
「アマリーラさん?」
「一体、どうしたのだ?」
いつもと違うアマリーラさんの様子に、モニカさんやソフィー達が不思議そうにそちらを見る。
俺にはというのはあれの事だろう、ティアラティア獣王国の第四王女ってやつ。
今日の出来事などを話す際に、俺から伝えるのもどうかと思って話していなかったんだけど……アマリーラさんは、皆にもはなしておく必要があると考えたみたいだ。
まぁ、これから獣人の国……獣王国に協力要請をして援軍が送られて来る可能性が高いわけで、そこらの繋がりを皆も知っておいた方がいいのかもしれない。
「私は獣人の国と呼ばれている、このアテトリア王国北東に位置するティアラティア獣王国、獣王が第十子、第四王女アマリエーレ・カッツェ・ティアラティアだ。アマリーラというのはこの国で傭兵となる際に使っている偽名で……」
姉さんのいた執務室で、俺に話してくれた事と同じ話を皆にする……タイミングがいいというべきなのか、退室していたヒルダさんも戻ってきたので、そちらにもだね。
王女だとか身分や偽名など、特に関係ないというか気にしていないユノやロジーナは、「ふ~ん」と言った感じだったけど、モニカさん達は大いに驚いていた。
そりゃそうだよね、行動を共にしている人が王女様だったなんて驚くに決まっている。
特にフィネさんはフランクさんの領地である、ハーゼンクレーヴァ領出身でそこの騎士でもあるからね。
ハーゼンクレーヴァ子爵領……伯爵になるらしいから、そろそろ伯爵領と呼んでいた方がいいかもしれないけど、その領地はアテトリア王国の北東にある。
隣接しているわけじゃないみたいだけど、距離が近いのもあってその獣王国の王女様と言われたらね……。
ただ、驚きは当然あるものとして、それだけでなく意外とすんなり皆には受け入れられた……まぁ、アマリエーレ様とか、アマリエーレ王女殿下と呼んだ方が? みたいな話はあったけど。
とりあえずこれまで通り、俺と同じくアマリーラさんと呼ぶ事になったのはともかくとして、姉さんもチラッと言っていたけど、時折所作が綺麗だったりと育ちの良さが滲み出ている部分があったらしい。
俺は全然気づかなかったんだけど……まぁ、所作が綺麗とか、育ちの良さとかわからないからしかたないけどね。
ともかく、リネルトさんが親衛隊だという事も含めて、皆に話して一応受け入れられていた。
扱いに関しては、これまで通りあくまで傭兵兼冒険者で、俺の護衛というか従者としてとアマリーラさんが強く希望した……壁ドンする勢いでそれぞれの人に詰め寄ってもいたので、頷かざるを得なかっ多様だ。
俺としては、王女様相手に畏れ多いというのは考えないようにしても、友人や仲間としてで従者っていうのは考えてないんだけどなぁ。
「それにしても、アテトリア王国とリク。それに獣王国ね……帝国はもうどう抗おうと勝ち目がないわね」
「獣王国と言えば、軍の規模は大国のアテトリア王国と比べれば小さいと聞きますが、個人個人の力が優れているとも聞きます。見方によってはアテトリア王国との戦力差は同等という人もいるくらいで素からね」
「大国と獣王国、二大勢力が帝国にと考えたら……まともに考えればどちらが勝つかは明らかよね」
「そのうえこちらにはリクがいるからな。一人で戦況をひっくり返しても驚かない。それが、さらに有利な方に付いているわけだ」
なんて、アマリーラさんの話が終わった後、レッタさんを筆頭に話している。
レッタさんはむしろほくそ笑んでいるくらいだけど、モニカさん達は帝国に少し同乗しているようでもあった。
まぁ、俺やクズ皇帝みたいなイレギュラーがいなければ、単純な戦力差で考えるとどう考えても帝国に勝ち目がないからね。
アテトリア王国だけでも圧倒できるくらいみたいだし……ただその戦力差を覆すために、帝国は魔物を利用したり人間を爆弾にして工作を仕掛けてきているわけだけど。
「戦力差とか、有利って話になったから改めて皆にも話しておこうと思うんだけど……」
話の流れ的にもちょうどいいし、俺の決意なども話しておこうと思い、皆に伝えた。
なんとなく、俺が色々とあ一人で考えていたのをモニカさんは察していたらしく、ソフィー達も含めて全力で、完膚なきまでに、絶対的な有利を持って帝国を打倒する事の協力を約束してくれた。
皆も、魔物を利用する事もそうだけど、人間が爆発するなんていう工作が腹に据えかねていたらしい。
それだけでなく、これまでにも多くの人が犠牲になっている事も、多分影響していると思われる。
センテで、俺がロジーナに隔離されている間、魔物に囲まれても必死に戦い、その中でもやられていく味方を見ているから、というのもあるか。
「リク様、リク様のお話と多少繋がりがあると思いますが……クランの作成とその目的について、僭越ながら私の方からミラルカ、ナラテリア、カヤの三名に伝えておきました」
「ありがとうございます、ヒルダさん。それで、三人はどうでしたか?」
話の終えた俺に、ヒルダさんが進み出て報告してくれる。
クランを作るのは主に帝国に対するため、という話とそのクランに所属してもらう予定の三人だけど、そちらへの説明はヒルダさんに任せてあった。
何か変な事を言っていないか、と姉さんとかだったら心配するけど、ヒルダさんだから大丈夫だと安心しての事だ。
「三人とも、最近の爆発騒ぎも含め、王国で起こっている騒動の多くが帝国によるものだとわかり、クランへの所属を自ら望むほどでした。自分達が攫われたのも、元を正せば帝国の関与があったのも大きかったのでしょう」
ミラルカさん達を攫った野盗は、帝国に売り飛ばすつもりだったらしいからね。
帝国がなければ起こらなかった事、と考えたのかもしれない。
実際、もし帝国が攫ってきた人を買うなんて事をしていなければ、野盗もミラルカさん達を攫っていなかったかもしれないし。
野盗だからなぁ……絶対とは言えないけども。
「じゃあ三人とも、帝国との戦争に参加するとしてもクランに付いてくれるって事でいいんですね?」
「はい」
頷くヒルダさんを見て、断られなかった事に安心した――。
クラン所属予定の三人が、確定になったようです。
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