リクの考えを伝える決意
帝国が利用した魔物は、俺も冒険者として散々魔物討伐をしてきたから、あまり言えないかもしれないけど……多くの人を犠牲にして、なんとも思っていないらしいあのクズ皇帝が治める帝国には、絶対に負けられない。
もしアテトリア王国が占領されれば、姉さんを始めこれまで関わって来た多くの人達、優しくしてくれた人達などもどうなるかわからないからね。
そう自分の中で考え、言い訳のようにつらつらと並べているけど……結局のところ、あのクズ皇帝、そして帝国の思い通りにさせたくない、という自分の想いが強くなっているからだ。
色々あったけど、帝国が引き起こす事件や魔物と戦っていくうちに、だんだんと強くなっていった想いでもある。
特に、ブハギムノングやルジナウムあたりから、少しずつ募っていったと言ってもいいだろう。
「……」
「リク、どうしたのだ?」
急に押し黙った俺に対して、姉さんから声をかけられる
口調は女王様モードのままだけど、俺を見る気遣うような視線は部屋にいるリラックスモードになった姉さんに近い。
「も、申し訳ありませんリク様! わ、私が失礼な事を申してしまったばかりに!」
続いて、先程姉さんに窘められた大臣さんが、慌てて立ち上がり謝罪。
俺が黙り込んでいるのを、何か気に障ったと勘違いしちゃったらしい。
ただ、自分の考えに没頭していただけなんだけど……ちょっと申し訳ない事をしてしまったね。
「あ、いえそう言うわけじゃないんです……ちょっと、考えていた事がありまして」
「考えていた事? ここで話せる事か?」
大臣さんはホッとして着席したけど、姉さんは女王様モードからリラックスモードに近い声音になっている。
ユノやロジーナなど、大っぴらに話せるか微妙な事もあるし、そういった事を考えての事だろう。
多分、何かあるなら部屋で聞くと言外に伝えようとしてくれているのかもしれない。
けどまぁ、別に隠す事でもないし誰に聞かれて困るわけでもない……いやまぁ、いるかどうかわからないけど、帝国側のスパイなんかには聞かれたくはないかな?
「大丈夫です。なんというか、私自身の決意や決心と言いますか」
ここで話していて、それなりに自分の事を「私」と言うのに少しだけ慣れたなぁ。
まだ少しだけ、口に出す時に変な感覚があるけど。
「決意や決心? 参戦に迷いがあるのか?」
そういえば姉さんは、個人としては俺に戦争の参加をして欲しくない、と言っていたっけ。
だから、今更決意だとか決心って言われて、俺が悩んでいると思ったのかもしれない。
「いえ参戦に関しては間違いなく。覚悟もしています。それとは別で、なんと言いますか……アマリーラさん、リネルトさん。さっき王城に戻る前に言った事ですけど、皆にはまた後で。まずはここで話をしておこうと思います」
「リク様がお考えになられたのでしたら、私はそれに従うのみです」
「私も同じくですぅ」
「ありがとうございます。――えっと……陛下。ここからは私自身、まだまとまっていない事もあって、多少言葉が乱れるかもしれませんが、お許し下さい」
「……構わん。そもそもリクはこの国を何度も救っている英雄だ。国への貢献という意味ではこの場の誰よりもしている。なんなら、丁寧な言葉遣いすら必要ないくらいだ。リクはそれをしないだろうがな」
アマリーラさん達に声をかけ、返答を聞いて頷きつつ姉さん達に伝える事を決める。
そんな俺に、陛下と呼ばれたからか女王様モードで受け答えする姉さん……最後に少しだけ、リラックスモードで仕方ない子ね、見たいに言われている気がしたけど、それはともかく。
一応、できるだけ丁寧な言葉遣いをするのは目上の人達が相手だから、というのもあるけど一種の線引きみたいなものでもある。
まぁそこは今関係ないけど。
「それでは……まず、すみません先に聞きますけど……皆さんは今回の戦争、帝国との戦争ですが、色々と想定していると思います。率直に、どちらが勝つと思いますか? いえ、アテトリア王国が勝つ、としか言えない立場なのだから、そうじゃなくて……そうですね、どれだけの戦いになるか、被害の大きさなどはどう考えていますか?」
俺の決意や決心を、と言っておきながら質問をするのはどうかと思うけど、一応確認しておきたかった。
「ふむ、戦争被害の想定か。そうだな……」
俺からの視線と質問を受けて、姉さんが考えつつチラリと宰相さんを見る。
「現状で想定するのは難しいのですが……帝国がどれほどの魔物を使うか、また他にも隠している何かがあるのか、などがありますし。ですが、我が国と帝国。国の大きさから想定するのであれば、一割から二割と言ったところでしょうか。魔物など、帝国の企みを考えなければとなりますが……こちらに負ける要素はありません」
単純に、これまでの帝国であればという事か。
アテトリア王国軍と帝国軍とが衝突するだけであれば、兵士の損耗、それから戦場になる場所にもよるけど、物資などの消費、作物や一般の人への被害など、それぞれか全部ひっくるめて一割から二割が想定されると。
アテトリア王国は広い国土と豊かな土地で、人口も含めて帝国と比べても大国と言って差し支えないらしいからね。
国力の差は歴然と言ったところだろう。
だからこそ、帝国側は魔物を利用するなどの手段でそれを覆そうとしているとも考えられるけど。
ともかく、その一割から二割の被害が戦争でと考えるなら、かなり少ないと言える。
もちろんないに越した事はないし、漠然と俺が考えるよりは少なかった。
「ただ、リク様もご存じの通り帝国は魔物を使います。人間を爆発させるなどの、国としてだけでなく人としての禁忌すら犯しており、それを含めて考えると現状では……」
続けて、宰相さんが魔物なども含めて考えうる可能性を勘案して出したのは、三割から四割という被害予想。
五、六割を越えれば、どちらも引かない総力戦とかでない限りほぼ敗北と言っていい状況だろうから、かなり苦しい戦いになると想定しているようだ。
魔物に人間爆弾、さらに改良された魔物……再生の高いワイバーンみたいな魔物が、他にもたくさんいるとしたら脅威だからね。
何をしてくるかわからない恐怖もあるけど、とにかく少なくない被害がでるのは既に想定されているという事だ。
確か、前線部隊の五割を失えば全滅に近い扱いと、どこかで聞いた事がある。
姉さんが女王になっているからっていうのもあるのかもしれないけど、聞いてみるとその考え方は、アテトリア王国でも近い認識として周知されているらしい。
つまり、想定している被害の最大で四割以上が実際に損なわれた場合、半壊以上みたいなものだろう。
それだけ、帝国との戦争が想定を超える何かが来る可能性を予想され、厳しいものになると考えられている事でもある。
あくまでも、勝つ事を前提とした予想ではあるけど。
もしこちらの想像以上の何かが帝国にあって、負ける可能性というのもないとは言えない。
レッタさんはもう核はないと言っていたけど、ヒュドラーとかレムレースの例があるからね。
その物じゃなくても、匹敵する魔物が投入される可能性もあるわけだし――。
何をやって来るかわからない部分があるため、想定はしづらいようです。
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