援軍の到着
「倒れるぞー!」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
誰かの叫びと共に大きな音を立て、燃え崩れる建物。
火が付いたままの木材なども混じっており、巻き込まれたらひとたまりもないだろうというのは一目見てわかる。
しかしその崩れる建物が落ちる先に、人が二人、動けずに落ちて来る物を見上げて悲鳴を上げていた。
誰がどう見ても、あのままでは巻き込まれて命が危ない!
「くっそぉ!」
頭で考えるよりも早く、悲鳴を上げる人へと向かって走る。
頭上では、メキメキなのかズガガガなのか、判別もつかない様々な音を大きく立てて崩れて来る建物。
落ちて来る火の粉に構ってなんていられず、そのまま落ちて来る燃え崩れる建物の落下地点へ向かい、駆け抜ける!
「ふぅっ! はぁっ、はぁっ!」
「あ、あぁ……」
「な、なにが……」
背後で、凄まじい轟音と共に建物が崩れ落ちる音が響いた。
咄嗟の事で、近くで激しく燃えている事もあり、足りない酸素を求めて強く呼吸。
両手にはそれぞれ、助け出した女性が二人……襟首をつかんで引き摺っていた。
「リク様!」
「アマリーラさん、この二人をお願いします!」
「はっ!」
俺が飛び込んだのを見て駆けつけてくれたのか、助け出された状況がわからず、呆然とする女性二人をアマリーラさんに渡す。
助け出す時、多少地面でこすれたのか、女性二人の着ている服があちこち破れてしまっているけど、それは許してほしい、と心の中で謝りながらアマリーラさんが連れて行くのを見送る。
「なんとかあの二人は助けられたけど……エルサ、もう少し水を多くできないか!」
「なんとかやっているのだわ! けど、範囲が広すぎるのだわ!」
「くっそ!」
空を飛んでいるエルサに叫ぶが、これ以上広範囲に水を撒く量を増やすのは難しそうだ。
お願い通りエルサは、俺が救出作業を開始してから水を撒いてくているんだけど、焼け石に水のような状況だ。
かろうじて、火の勢いが弱まった場所や燃え広がらないのには貢献しているようではあるけど……。
やっぱり、火の強い場所に集中して水をかけて、順番に消化した方が良かったんだろうか?
なんて考えつつも、とにかく助かられる人を助ける作業を続けようと、息を整えて煙を強く吸わないよう気を付けながら、動き出そうとすると……。
「リク様! お待たせしました!」
「中隊長さん!」
遅れてこちらに向かっていた中隊長さんが、数十人の兵士さんを従えて登場。
美味しい所を持っていくなぁ、なんて考える余裕はないし、むしろ救いの手が差し伸べられた気分になる。
「申し訳ありません、ここへと向かう途中に別の者から状況を教えられまして。至急駆け付けられる者を集めて参りました!」
「助かります!」
他からも、もしくは状況を把握して兵士さん達が別の場所から向かってくれていたのか、途中でこの場所の現状を知った中隊長さんが、とにかくすぐ動ける人を集めて来てくれたらしい。
おそらくさらにもっと多くの人が、駆け付けてくれるよう準備をしていると思われる。
「リク様はこのまま救助を! 我々は目についた者を救助しつつ、消化と建物解体に当たります!」
「はい、お願いします!」
中隊長さんの叫びに答え、各兵士さんに細かな指示を飛ばすのを見ながら俺は、別の場所へ。
足りないと思っていた人の手も加わったし、これでさらに多くの人を助けられる!
そう思って、少しだけ気持ちが楽になるのを感じながら、救助作業を続ける。
「ふぅ……!」
数分程度だと思うけど、ある程度救助を続けて大きく息を吐く。
消火作業は、火の勢いが強すぎたためあまり進んでいないが、それでも駆けつけてくれた兵士さんの内数人が水の魔法でエルサの援護をしてくれているため、大分マシだ。
さらに、燃え移りそうな場所にある建物は、兵士さん達の手で壊して燃え広がらないようにしているおかげで、少しずつではあっても収束している実感があった。
「誰か、誰かお願いします!」
「ん?」
そんな中、怪我人など動けない人の回収を続けていると、どこからか叫びが聞こえた。
声のした方を見てみると、数人に取り押さえられている女性が叫んでいるようだ。
一体何が……?
「あの中に、まだ私の子供が……! 子供が取り残されているんです!! お願いです、助けて下さい!!」
「っ!?」
悲痛な叫び、涙を流しながら激しく燃えている建物へと手を伸ばす女性。
取り押さえられていなければ、今にも飛び込んでしまいそうだ。
とりあえず女性の方は、飛び込まないようにされているから大丈夫そうだけど……取り残された子供か……。
燃え盛る炎に包まれた建物を見る。
そこが女性の家だったのかもしれないけど、見る影もなく、ただ外壁が燃えているだけでなく、窓という窓から外に向かって火が噴き出している程だ。
爆発後、撒き散らされた爆炎による火災発生から、体感で数十分程度……。
女性には悪いけど、もう手遅れなんじゃ……という思いが湧いて来る。
「でも、それでも……助けられる命があるのなら……!」
拳を握り締め、突入を決意する。
俺ならきっと、魔力を纏っている影響で簡単には燃えない……着ている服はわからないけど。
ヒュドラーの撒き散らす炎だって、服がちょっと焦げたくらいで火傷はしなかったくらいだ!
……直接当たったりはしていないけど、それでもヒュドラーの炎の方が燃え盛っている家よりも、火の勢いが強い!
大丈夫、なんとかできる……と自分に言い聞かせ、空へと顔を上げる。
「エルサ!」
「はいはいなのだわ!」
「水をばら撒いているところすまないけど、あの家の中に取り残された子供がいるらしいんだ。探せる?」
魔法でスプリンクラーのように上空から水をばら撒いているエルサを呼ぶ。
ふわふわと降りて来たエルサに、家の中にいる子供の捜索を頼んだ。
「それくらいなら、お安い御用なのだわ! リクはドラゴン使いが荒いから、後でたっぷりキューを要求するのだわ!」
「もちろん、落ち着いたらお腹いっぱいキューを食べさせるよ!」
一人でも多くの命が救えるなら、キューをお腹いっぱい食べさせるくらいお安い御用だ!
「その言葉を忘れるなだわー!」
すぐさま探知魔法で燃える家の中を捜索してくれるエルサ……本当は、俺が使えれば一番良かったんだけど。
「ふむむ……だわ。かなり奥に、二つの人間の反応があるのだわ」
取り残された子供が一人だと思っていたんだけど、違ったらしい。
「二つ……? 一人じゃないのか……反応があるなら、まだ生きているって事だよね。場所は?!」
「生きている反応なのは間違いないのだわ。場所はだわ……」
一人でも二人でも、とにかくあれだけ凄まじい炎の勢いの中で、まだ生きてくれているのがわかったのは僥倖だ!
ともかく、考えている時間はないのでエルサに大まかな位置を聞いて、飛び込む準備だね。
「エルサはまた、広範囲に水をばら撒く作業を続けてくれ! あとは俺がなんとかする!」
「了解したのだわ! はぁ、ドラゴン使いが荒いリクと一緒にいると、大変なのだわ!」
やれやれ、というような口調のエルサだけど、なんとなく頼られて嬉しそうなニュアンスも感じる。
再び空へと向かうエルサには引き続き水を撒いてもらうとして、俺は……。
取り残された子供に対して、リクは助けに行く気満々のようです。
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