外部からの魔力のみを取り除く方法
「まぁあくまで可能性だがな。リクの言うような可能性もないわけじゃない。詳しく調べればまだ何か分かるだろうが……ふむ」
「調べるにしても、触れたら危険だからね……やっぱり難しいかな?」
「いや、フィリーナの目があればもっと調べられるだろうし、方法がないわけじゃない」
フィリーナの目は、森の神とも言えるアルセイス様からの特別製。
視線が届く場所でなら、という条件はあるけど魔力を視るという事に関しては、俺やエルサの探知魔法ちより精度が高いからね。
直に目で見ている、というのもあるんだろうけど……探知魔法はあくまで、返って来る魔力の反応を感知するだけだから。
「フィリーナに見てもらうのはわかるけど、他の方法があるの?」
フィリーナに見てもらえば多くの事がわかるかも、というのはともかく、アルネには別の方法があるとようだ。
「簡単な事だ。外部からの魔力が体内に入り込んでせめぎ合っているのなら、その魔力を取り除けばいい。いや、完全に取り除けば状態が改善される可能性が高いから、減らすという方法になるか」
「外部の魔力の方を減らすってわけだね。まぁそれなら確かにできる、のかな?」
つまりは、元々持っている魔力の優勢にしてせめぎ合っている状態を解消するって方法なんだろう。
外部からの魔力が減れば、拮抗して臨界点とも言える状態のバランスを崩す事ができるうえ、元からある魔力なのだから、それが爆発に作用する事はない……んだと思う。
「でもその魔力を取り除くって難しくないかな? 体内にある魔力なわけだから……」
魔力誘導という、特殊な能力を持つレッタさんならできるかもしれないけど。
でもアルネは話に聞いているかもしれないけど、レッタさんと直接会っていないし……魔力誘導がどういうものか詳しく知らない可能性の方が高いしなぁ。
「方法は、リクも関わっている事だが……クォンツァイタを使う」
「クォンツァイタ?」
「あぁ。あれは周囲にある魔力を少しずつ蓄積している性質で、改良して注ぎ込む事も可能にしている。それを再び少しだけ改良すれば、吸収という形で体内の魔力を取り除けるはずだ。まぁすぐにというわけではないだろうが」
「成る程……?」
つまりクォンツァイタの魔力蓄積する性質を利用して、さらに周囲の魔力を集めるようにすれば、不審者の体内にある魔力を吸い取る事で取り除く作業ができるってわけか。
でも……。
「それじゃ体内の魔力は取り除くのは難しいような……? 周囲から吸収するにしても、体内にある魔力を吸い取れる気がしないし。できるにしても、体内には本人が最初から持っている魔力もあるわけで……」
体内にあるという事は内側にあるという事。
壁の向こう側の魔力を吸収させるようなもので、クォンツァイタが魔力を吸収するように仕向けても、空気中にある自然の魔力を吸収するばかりで、体内の魔力は吸収してくれそうにない。
それに、クォンツァイタは魔力の種類や質を選別する事はできないわけで、体内の魔力を吸収できてもせめぎ合っている二種類の魔力のどちらかだけをというわけにはいかないと思う。
「魔力というのは、リクが顕著ではあるが……体内を循環する過程で、ほんの少しずつ外に漏れ出しているんだ。そうしなければ、常に生まれ続ける魔力が行き場を失くしただただ体内に溜まるだけになってしまうからな。魔法を使って発散という手もあるだろうが、人間は使えない者もいる」
「それはまぁ……」
魔力は魂が作り出すという話をユノやロジーナから聞いたけど、常に作り出されている魔力が、一切外に出ずため込むだけだったら、いずれいっぱいになってしまう。
体は、魔力の受容体……要はコップみたいなものだからね。
魔法を使えば魔力が消費されるけど、それができない人は発散もできないから……。
「だから、外に漏れだした魔力を吸収するってわけか」
「そういう事だ」
納得する俺に頷くアルネ。
ちなみにだけど、外部から入り込んだ魔力でも魂は一旦内側に入り込んだ魔力であれば、それを複製、作り出す能力があるのだと、後でロジーナ達に聞いた。
外部から魔力を注ぎ込むのは、魔力をため込むための器を無理矢理広げる作業でもあり、そして外部からの魔力が適合すれば、大きくなった器に合わせて混ざり合った大量の魔力が作り出される……というのが、レッタさんやクラウリアさん、それからツヴァイなどの人なのだとか。
適合するかなどに関しては、レッタさんの魔力誘導があったからこそ反発せずに収める事ができる、というかその可能性を上げられるという事らしい。
目の前にいる不審者はつまり、適合はしないが無理矢理外部から何者かの魔力を注入されて、何らかの方法、研究成果によってせめぎ合わせる事で大きな爆発を起こすんだろう、という仕組みみたいだね。
元々研究されていたような事は、エクスブロジオンオーガなどで見ていたし、研究者の一人であるモリーツさんが言っていた。
それに加えて、レッタさんが帝国を離れていたから不審者に施された爆発の研究が進んだのかもしれない。
「あと、外部からの魔力を取り除く方法だが……開発中の魔法具を使う。まぁ完成させてからの話だけどな」
「魔法具を?」
「あれは、本来持っている魔力と別の魔力。混ざった魔力などがないかを調べる事ができる代物……になる予定だ。それを使えば……」
予定として断言しなかったのは、まだ完成していないからだろう。
ともかく、アルネの話によると……体内を循環している魔力はその過程で、少量が体外に漏れ出す。
そして魔法具を使う事で外部からの魔力を判定、その場所の近くにクォンツァイタを設置する事で、目的の魔力だけを取り除くことができるだろうとの事だ。
漏れ出すついでに、クォンツァイタの吸収能力でさらに少量ながらも、体内から半ば強制で魔力を引き出す効果も期待しての事だとか。
せめぎ合っているうちは、少なくとも外部の魔力は体内でほとんど生成されないはずだから、少量ずつでも吸い出して行けばバランスを変える事ができるだろうと。
外部の魔力がほとんど生成されないなら、不審者が元々持っている魔力が生成され、上回るのを待てばバランスも変わるのでは? と思ったけど、半死半生状態で元の魔力生成もかなり少ないだろうからと言われた。
待てばいずれバランスが変わる事もあるかもしれないけど、気の長い話になるだろうとの事だ。
要は、こちらが働きかけてバランスを替え、通常に近い状態で爆発の危険を減らそうという試みだね。
「とはいっても、こちらも徐々にという事になるだろうから……早くても数日はかかるだろうな」
少量ずつで、しかも漏れ出した魔力からさらに引き出すとしても、しばらくしたらまた体内循環と共に位置が変わるため、ずっと一定の場所からクォンツァイタで吸収する事はできないらしい。
だから、魔法具で判定してクォンツァイタを設置、しばらくしたら離して再び魔法具で調べる……という作業を繰り返すため、結構な時間がかかるとの事だ。
クォンツァイタが、一気に魔力を吸収するよう改良すればとは思うけど、そうすること自体が難しいうえ、やったらやったで自然の魔力や近くの他の人物の魔力すら吸収してしまう可能性があるため、それはそれで危険なのだとか。
色々と面倒だけど、できるだけ危険がないようにしないとね――。
慎重に爆発しないようにしなければいけないため、それなりに時間がかかてしまうようです。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。






