良さそうな収納鞄を発見
「それにしても、相変わらず整理されているのかされていないのか、よくわからないお店だなぁ」
「そうねぇ。私が来なかった間にも、色々と商品が入れ替わっているみたいだし」
反省してしょんぼりしているアマリーラさんはともかく、ララさんが作ったと思われる鞄。
それらが陳列されている空間は、以前来た時と大差なく雑多な印象を受ける。
商品自体は、見覚えのないものが多くてアメリさんが言うように色々と入れ替わっているんだろう。
目玉商品のつもりなのか、一番目が行きそうな場所に目を引く鞄が置かれているけど、それは本当に目を引く派手物でパッと見実用性がなさそうだったりする物だ。
……ララさんの事だから、実際に使えば実用性もちゃんと考えられているとわかるのかもしれないけど、カラフルな三角形の鞄とか、どうやれば実用性が出るのかわからない。
かと思えば、一般的にも使われているようなデザインが重視されていないっぽい鞄などの多くは、お店の隅の方にまとめて、規則性もなく積み上げられていたりしている。
ワゴンセールみたいなものなのか、値引きシールならぬ値引きの木札もあった。
ただ積み上がっているだけで、商品かどうかも怪しいのもあるけど。
商売っ気があるのかないのか、どう判断すればいいのか困るお店なのは相変わらずだ。
ただまぁ、そこでユノやエルサがお気に入りになった掘り出し物の鞄を見つけたんだから、侮れない。
「ん~、見た目が奇抜で使えるのか本当にわからないうえ、持っていたら注目されそうなのもありますけどぉ、意外と考えられて作られていますねぇ」
キョロキョロとあちこちを見つつも、鞄一つ一つをしっかり確かめつつそう評するリネルトさん。
尻尾が高い位置でゆらゆらと揺れている様子は、なんだか上機嫌なように見えるから、こういうショッピングみたいな事が好きなのかもしれない。
「さっき初めて知りましたけど、ララさんは元冒険者らしいですし、その経験を生かしてちゃんと使える物にしているんでしょうね。――エルサも、見てみるか?」
あまり広いとは言えない店内を見て回っている、アメリさんやリネルトさんのようにエルサも見るかな? と思って聞いてみる。
「別にいいのだわ。私には今使っているのがあるから、他のものはいらないのだわ」
「意外と、一つの物を大事にするタイプなんだな……」
「失礼なのだわ。私はちゃんと物を大事にするのだわ。だから、大きくなる必要があるなら、鞄を使わないようにしているのだわ」
「そういえば、最初に言い出したのはエルサからだったっけ」
ドラゴンがそうなのか、エルサがそういう個性なのかはわからないけど、とにかく物は大切にするタイプらしい。
俺達を背中に乗せて飛んだりと、体を大きくする必要がある時には鞄を背負っていないんだけど、それも最初はエルサから壊れないようにって注意されたんだった。
言われて気付き、背中に背負っていた鞄を外してやったり、そもそも背負わせずに俺が持っていたりだな。
「お、これは結構良さそうかな……?」
エルサと話しつつ、目を引いて興味を持ったのはやっぱり雑多に積み上げられた鞄の中の一つ。
派手な見た目とか、持っているだけで衆目を集めそうなのは、あまり得意じゃないからな……それでなくても、エルサを頭にくっつけているだけで目立つし。
それはともかく、目を引いて手に取ったのは特に奇抜なデザインや色合いが使われている物ではなく、紺色の細長い鞄だ。
特殊な素材なんかは使われていなさそうだけど、丈夫にできていて多少荒っぽく扱っても破れそうにない。
その細長い鞄は、中でいくつか仕切りのような物があり、棒状の物が数本入るようになっている。
口部分と中程から太めの、こちらも丈夫な紐が出ていて色んな持ち運び方ができそうだ……一番やりやすいのは、背中に括り付けてとかかな? それと手が塞がらないだろうし。
「あんまり、物は入りそうにないのだわ。そもそも、細長いのはどうするのだわ?」
「ララさんがどういう想定をして作ったのかはわからないけど、これには剣とかを入れられそうだと思ってね」
細長い鞄は、長さが大体二メートル前後くらいある物で、特別な長物でなければすっぽり入るだろう。
槍とか、形状が棒状とは異なる斧などは難しいだろうけど、剣なら大体の物は入るはずだ。
「剣を入れたら、取り出しにくいのだわ?」
「まぁ、腰に下げているよりはね。柄をのぞかせていたとしても、背中に背負っていたら抜けないだろうし。けど、持ち運ぶにはこっちの方がいいかなって」
「ふーんなのだわ」
質問を投げかけてきたのはそっちなのに、興味なさそうな相槌を打つエルサ。
まぁエルサは剣とか使わないし、仕方ないか。
とにかく、この鞄があれば剣を腰に下げておく必要はない。
いつも使っている鞄に入れるとしても、半分くらい顔を覗かせてしまうしなぁ。
剣を鞄に収めて運ぶ利点としては、これ見よがしに剣を下げていないように見える事と、複数の剣を下げると動いた時にガチャガチャと音がするから、それを防ぐ事ができる。
もちろん剣は抜き身ではなく鞘に納めているけど、その鞘同士がこすれて結構な音がするんだよね。
別に隠密というか、音がしないようにして密かに動かなければいけない事なんて今のところないんだけど、でも俺自身がちょっとうるさいと感じてしまう事も多々あったから。
必要かどうかはさておき、表面上は武器を持っていないというカモフラージュもできるしね。
……長い鞄を背中に背負っている時点で、そこに剣などが入っていると簡単に想像されるかもしれないけども。
「うん、中の仕切りみたいなのも丈夫そうだし、複数を持ち運ぶのに便利そうだ。これは買っておこうかなぁ」
中を覗き込んでみると、革製でしっかりとした作りの仕切りがあって、体に括り付けていれば剣を複数入れておいても邪魔になったり、大きな音が出なさそうだった。
金属製の物は使われていないようだし、値段を見ても高いとは思えない程度なので、購入予定としておこう……内側にちゃんと、剣を固定させるような仕組みもあったしね。
遠出する時、外を出歩く時なんかに重宝しそうだ。
それから、俺だけでなく他の皆もじっくり商品の鞄を見て回り、カーリンさんとの話が終わるのを待つ。
アメリさんは何度も来ているからか、特に買う物はなかったみたいだけど、アマリーラさんとリネルトさんはそれぞれ小さめの小物入れに使えそうな鞄を買っていた。
機能性は似たような物だけど、見た目はそれぞれで違うデザインのようだ。
ただアマリーラさんは最初、俺と同じものを欲しがって剣を入れられるような鞄を探していたけど、ララさんのお店には同じ物を複数作って売る事はほぼしないようで、見つからなかった。
似たようなデザインの物はあっても、よく見ると用途が違うようになっていたり、対になっている物だったりだ。
完全に同じ物となると、二、三種類くらいしかなさそうだ。
ララさんの方針なのかもだけど、デザインを重視しているような物を作っているんだから、そういうものと言えるのかもしれない――。
一品物の鞄が多いお店みたいです。
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