素材の一部は鍛冶場の借り賃に
「本職である鞄ではない依頼なので、多めにと考えています。あと、素材の持ち込みと言っても、アルケニーの足だけですから。他の物はララさんに集めてもらう必要もありますし」
アルケニーの足だけで、調理道具が全て作れるわけじゃないもんな。
さっきララさんが配合と言っていたように、鉄やらなにやらと混ぜて作る事になるわけだ。
何がどれだけ必要かもわからないので、他の素材代と集めてもらう手間賃も入っている。
「はぁ……リク君からの信頼が怖いくらいよ。この大量の素材を見たら逆に怖気づいてしまう子もいると思うわよ?」
「そうですかね……」
大量に欲しい素材が手に入るんだから、喜ぶ人の方が多い気がするけど……。
あぁでも、逆に目の前に数えるのも億劫なくらいの大金が積まれたら、喜ぶより先に怖くなるって事もなくはない、かな?
「でもこれは使えるわね……リク君、このワイバーンの皮。それとアルケニーの足もそうだけど……使い方は自由なのよね? 当然だけど、アルケニーの方は調理道具を作った後にもし余ったら、の場合だけど」
「はい。これらは全部ララさんにお預けしますので、使い方は自由です。それこそ、換金するのもララさん次第って事で」
調理道具さえ作ってもらえれば、俺達にとってはそれでいいからな。
報酬となるワイバーンの皮も、調理道具を作った後に余ったアルケニーの足も、どう使うかはララさん次第で構わない。
「だったら、なんとかなるかしら……?」
人差し指を顎に当てて、天井を見ながらそう言うララさん。
何か使う当てがあるようだけど……?
「なんとかなるっていうのは、どういう事ですか?」
「リク君からの制作依頼を、優先的にやるためってとこね。なんにせよ、鍛冶場を借りなきゃつくれないでしょ?」
「それは、まぁ確かに……でも、借りるために必要なんですか?」
調理道具は金物だし、魔物の素材を扱うのでどんな環境が必要なのか詳しくは知らないけど、それでも普段生活するような場所では作れないという事くらいはわかる。
だから鍛冶場を借りると言うのはわかるんだけど……借りるのにワイバーンの素材などを使わなきゃいけない程なんだろうか?
借り賃がかかるとしても、希少な素材を使わなきゃいけないとは思えないんだけどなぁ。
「普段なら、私がちょっと言えば格安で借りられるわ。鞄の制作でも、使う事があるのよ。でも今は立て込んでいるようだから、ちょっとだけ借りるというわけにはいかないの。だから、そのためにリク君から預かったこれらの素材が使えるだろうってわけよ」
「成る程、そう言う事ですか」
そう言えばさっき、鍛冶師が多くの制作依頼を受けて忙しいって話をされたっけ。
鍛冶師さんが忙しいということはつまり、鍛冶場を使う事であって、使われてない場所が少ないかまったくない状況なんだろう。
だから、お金の代わりに素材を提供する事で優先的に借りようって事か。
「もちろん、いいわよね?」
「はい。できるだけ早く作って欲しいとは思っていましたから。さっきも言ったように、渡した素材は全部ララさんが好きに使ってください。俺達は、カーリンさんが納得できる調理道具を作ってもらえればそれで」
「承知したわ。早く欲しいのならそうね……何をどれくらい作ればいいのかしら?」
「あ、そうですね。それも話しておかないと。って言ってもそこは俺ではなくカーリンさんとの話になりますけど。――カーリンさん、お願いできますか?」
「もちろんです!――えぇっと、ララさんでしたね。欲しい調理道具は……」
「ふむふむ。特殊な加工が必要なものもあるのね」
「難しいでしょうか? それなら、もう少し変えて……」
「全然平気よぉ。私に任せなさい。だからあなたは、自分が欲しいと思う全てを教えなさい」
「は、はい!」
どんな調理道具を作るかは、俺にはわからない事も多いからカーリンさんにお任せだ。
早速とばかりに相談を始めるカーリンさんとララさん。
俺も、平均的な調理道具を使ってちょっとした料理くらいはできる……腕の方はさておいて。
けど話をちょっとだけ聞いた限りでは、専門用語なのか俺の知らない言葉がいくつか交わされていた。
どんな調理道具ができるのか楽しみではあるけど、俺達がここにいると二人の相談の邪魔になってしまいそうだね。
そう思い、ララさんに断ってお店の方で商品を見させて時間を潰させてもらう事にした。
何かを買うとは決まっていないけど、いい物があれば買ってもいいかもね。
ララさんのお店に貢献できるし、使い勝手がいい物ならあって損はないだろうから。
「リク様、先程は本当に申し訳ありませんでした。匂いと見た目の差異などから、本能が刺激されてしまい……」
商品を見るため、ララさんとカーリンさんを置いて商品が陳列されているスペースに出ると、すぐにアマリーラさんが深く頭を下げて謝罪。
「ちょっと驚きましたけど、なんとなく気持ちはわかるので。気にしないでいいですとは言えませんが、これからは気を付けてくださいね?」
会う人会う人、全員にアマリーラさんが威嚇するようだと、話が進まない事もあるからなぁ。
「はっ! 申し訳ありません! リク様に忠実にあるため、以後気を付けます!」
反省している様子のアマリーラさん。
とりあえず、これからは誰彼構わず威嚇するような事は減ってくれるだろうと思う。
まぁ獣人の本能というのが理由みたいだし、どうなるかはわからないけど……リネルトさんはそうでもなかったみたいだから、大丈夫かな?
あと、別に俺に忠実とまでならなくてもいいんだけどなぁ、できれば友人としてであってくれると嬉しいんだけど、今言っても聞き入れてくれそうにないな。
「あと少し気になったんですけど……あくまで、さっきの威嚇はララさんの見た目などに惑わされた結果で、ララさんに何かあるというわけではないんですよね?」
ララさんの事は信じているけど、どこに帝国の手先が入り込んでいるかわからないため、一応聞いておく。
もしかしたら、そういうのを敏感に察知してアマリーラさんが威嚇したのでは? とちょっとだけ思ってしまったから。
獣人だから、人間にはわからない気配とかを感じられたりとか……俺の考えすぎかもしれないけど。
「は、怪しいのは間違いありませんが、そのような事はないかと。リク様と話している際のあの者は、嘘を言っているような気配は微塵もありませんでした」
「嘘を言っていない、というのはわかるんですね」
「なんといいますか、嗅覚がそれを証明してくれると言ったところでしょうか。実際には、匂いだけでなく目や耳などあらゆる感覚で、感じ取るのですが」
「成る程……まぁララさんは信用できるので間違いないと安心しました、ありがとうございます」
「いえ、リク様のお役に立つはずが、あのように威嚇してしまい……ご迷惑をおかけしてしまいました……」
何はともあれ、ララさんはずっとうそを言ったりはしていないというのがわかっただけでも、安心できる。
それはそれで、ちょっと問題がないわけでもないけど……偽らなければいけない事がないと言うだけでもね。
……あの口調などが、ララさんの本心で偽りではないっていうのは、深く考えないでおこうと思う――。
ララさんのリクへの言葉は冗談が多少混じっていても、ほとんど本気だったという事に……。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。






