異様な爆発現場
ハーロルトさんの幼馴染とはいえ、知らされていないのなら俺達が教えるわけにもいかないので、アメリさんには申し訳ないけどこのままにしておく事にする。
俺が話していい事でもないし、教えてショックを与えるのもどうかと思うしね。
……もしかしたら、人間がと公表すれば町の人達がいつ誰がそうなるかとか、疑心暗鬼になってしまう可能性も考えられているのかな?
できるだけ外出しないようにさせるのにも、公表しない方が良かったのかもしれない。
なんにせよ、俺にはどちらがいいのかなどの判断はできないので、姉さん達の考えを信じて、とりあえず大きな荷物を持ったまま中央冒険者ギルドへと向かった――。
「これは……なんとも」
「ただ爆発して、建物が壊れたと聞いていただけなのでぇ、こうだとは全然想像していませんでしたよぉ」
「ちょっと……怖いわね」
「……単なる爆発、というだけではないみたいですね」
到着した中央冒険者ギルド……その跡地と言うべきだろうか。
そこでは、爆発して建物が破壊されていたという言葉から想像していたよりも、大分違う光景が広がっていた。
大きく存在感を示し、地球のどこかで見た事のあるような独特な宮殿のような建物……その二階部分付近から上部が扇状にぽっかりとなくなっていたからだ。
爆発、という言葉を示すように、確かに周辺にもその影響があったらしく、地面が抉れたりと周辺一帯が爆風で吹っ飛んだ感はある。
ある程度片付けなどが進んでいるようで、兵士さんや冒険者ギルドの職員さんと思われる人が作業をしていたり、俺を見て礼をしたりしてはいるけど。
でも異様なのは、破壊された建物の一階部分は多少壁が崩れたりしてはいるけど、完全に破壊されているという程じゃない事だ。
爆発というは当然、爆心地から放射状に衝撃などが広がるはずだけど……これはまるで、指向性を持たせて下から建物の中心に向かって衝撃を放ったようでもある。
目撃者や周囲の様子から、確かに爆発はしたんだろうけど、通常の爆発やそれこそエクスブロジオンオーガのような爆発とは、別物なのかもしれない。
「見たから何があるとか、知ってどうにかなるものでもないですけど……見に来て良かったかもしれません」
見なかったら、ここまで特殊なものだとはわからず、ただ爆発してその衝撃で周囲一帯が吹き飛んだ、とかそんな風に考えていただろうからね。
「リク様、私から見ると建物に向けて爆発の衝撃その物を放った、というように見えるのですが……間違っているのでしょうか?」
「いえ、アマリーラさんはおそらく間違っていないと思います。方法とか、色々と疑問ではありますけど……見る限りでは、完全に建物を狙っていたという事でしょう」
「そうなら、これは考えていたよりも脅威になるかもしれませんねぇ。これが、建物ではなく人や集団に向けられたらと思うと、ゾッとします……」
アマリーラさんの問いかけに答え、リネルトさんからはいつもの間延びした口調が、少しだけ薄くなった。
よく見れば、二人共尻尾が垂れ下がっている……想像していなかった光景を見て、リネルトさんの言葉通りにゾッとして恐怖を感じているのかもしれない。
指向性を持たせた爆発、周囲に何も影響が出ないわけではないけど、それでもこれが人や集団に向けられたら……。
特に他より頑丈に作られているはずの、冒険者ギルドの建物がこんな風に破壊される程の威力だ、人の集団なんてひとたまりもないだろう。
実際には威力などを見ていないのではっきりとは言えないけど、薄めの結界なら破ってしまいそうでもある。
これはもう爆発ではなく、爆砲と呼ぶ方がしっくりくるくらいだ……。
「ここに来るまでにも、二か所ほど爆発が起きた現場を通りましたが……ここまでの異様な光景ではなかったのですが……」
「他は単純に爆発した、という感じでしたよね……」
俺達と同じく、初めて建物が破壊されている様子を見て言葉を失くしているアメリさんを、少し離れさせつつ、アマリーラさんの言葉に頷く。
ここに来るまでに、他にも破壊された場所を通って来たのはその言葉通りだけど、そちらはこの場所のような異様さはなかった。
いやまぁ、爆発して複数の建物が吹き飛ばされているという状況そのものが異様なんだけど、それはともかく。
他の場所では、単純に爆心地から周囲に衝撃などが発生し、それで破壊が行われるという一般的なものだった。
……爆発に一般的も何もないけど、とにかく爆発と聞いて思い浮かべられる範囲での事だと思えた。
けどここは、中央冒険者ギルドの建物の破壊痕は、どう見ても通常の爆発には思えない。
それこそ本当に爆砲という言い方が正しいと思える程、建物を狙った別の何かのようにすら思えてしまう。
そもそも、一階部分と同じ高さの外で爆発したにも関わらず、二階部分より上部がほとんど吹き飛んでいるっていうのがおかしい。
一階部分も当然無事ではないけど、完全に吹き飛んだわけではなく建物としての形はかろうじて保っている。
その天井部分にあたる二階より上は完全に失くなっていて、建物としての機能はなくなっているけども。
「この事を、姉さ……陛下やマティルデさん達は知っている……のは間違いないけど、異様さは感じなかったんだろうか……?」
「これを見て、異様さ、不自然さを感じない者はそう居ないかと思いますが……おそらく隠していたとかではなく、どう話せばいいのかわからず、ともあれ爆発が起こった事が原因で建物が崩壊したのは間違いないので、その事だけをリク様に伝えたのではないでしょうか?」
「……そうかもしれないですね」
ほぼ崩壊している建物を見ながら呟いた俺の言葉に、応えてくれるアマリーラさん。
理由はともあれ、特に隠していたとかそういうわけではないんだろう……片付けを進めているとはいえ、野ざらしになっているんだから隠しようもないし。
何はともあれ、人が爆発したという確かな情報もあるので、破壊された事に対する異様さは薄れていたとも考えられるかな。
「……ふぅ。驚きましたけど、少し落ち着きました。ありがとうございます、アマリーラさん」
誰かといなければ、どうしてこんな事がなんて一人で考え込んで、しばらく混乱や驚きが続いてしまっていたかもしれない。
その点は、一緒について来てくれたアマリーラさん達に感謝だ。
「いえ、私などは大した事も言えず……申し訳ありません」
「一人だったら、ぐるぐると考え込んでいたかもしれませんから」
「リク一人じゃないのだわ、私もいるのだわ」
「おっとそうだった。エルサもいてくれるね」
頭の上からの主張に、内心でホッとしながらエルサのモフモフを撫でる。
人と話す事だけじゃなく、こうしてエルサがいてくれる事、それと極上のモフモフは俺の心を癒してくれるなぁ。
「しかし、こうなると他の爆発場所もどうなのか気になるなぁ。特に、中央冒険者ギルドがこうなら、同じく冒険者ギルドのもう一つ破壊された方とか……」
エルサのモフモフは、リクにとって心の支えになっているのかもしれません。
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