予算問題と値引き交渉
ワイバーンの素材は元々は貴重な素材らしいけど、いずれは値崩れするにしても数が多いから、その売却先は国か冒険者ギルドに限られるし、俺自身そのどちらかと考えていた。
人と一緒に生活するなら、定期的な収入は必要だと思うしね……兵士さんなどを乗せて戦ってくれるだけでも、十分生活のための収入をもらえる働きと言えるかもだけど。
まぁ、他にも個人で買い取ってくれる人なども探せばいるだろうけど、この国や冒険者ギルドなら信頼できるしちゃんと役立ててくれる可能性が高いからね。
……冒険者ギルドなら、一般の人にも届きやすいように使ってくれるだろうし、国なら軍の兵士さんとかの装備かな?
ともかく、大きな取引先で最有力な候補だ。
「りっくん達が持ち帰った物だけじゃなくて、さらに増えているのよね。すぐにとはいかないけど、急がせれば多くの兵士達に質のいい装備が配備できるかもしれないわ」
「質のいい装備になるのは、皆喜ぶだろうしいいと思うけど……さらに増えているって?」
ワイバーンから皮の採取はセンテでカイツさんが研究を兼ねてやっていただけで、かなりの量を持ち帰ったけど……現状では新しく剥いだりはしていないと思っていたんだけど。
「それが、カイツだったかしら? りっくんと一緒に来たエルフが、夜な夜な気分転換と称してワイバーン達の所で剥ぎ取っているらしいのよ。最初は、それを見た見張りの者達が止めようとしたんだけど、むしろワイバーンに止められてね。傷つけようとした相手を止めようとした人を止められて、傷つける人を庇うなんてよくわからない状況で最初の現場は少し混乱したそうよ……」
「ははは……」
姉さんの溜め息混じりの言葉に、苦笑しかできない。
カイツさんの事を見知っているモニカさんや、ソフィー達も俺と同じく苦笑しているようだ。
というかカイツさん、夜な夜なって本当にもう……爆発する人間を調べるための魔法具研究というか開発に忙しいはずなのになぁ。
姉さんが言っているように、本当に気分転換なのかもしれないし、ワイバーン達も日課のようになって喜んでいるのかもしれないけども。
でもそれなら、ゆっくり寝て休んだ方がいい気がする。
フィリーナが見てくれているとはいえ、あまり寝ずにひたすら研究開発に打ち込んでそうだから。
「さらにそれを聞いた他の研究者、エルフも人間も両方なんだけど。その研究者達も、一緒にやっているみたいなのよ。貴重な素材を大量に手に入れられるとか、ワイバーンという魔物の研究だとかね。ちょっと抑えるのが大変だけど、行き過ぎないようには見張るよう言ってあるわ」
「それはなんというか……ありがたいかな」
いくら一瞬で再生する能力を持っていても、やり過ぎは良くないからね。
限界がどれくらいで来るのかとかはわからないけど……行き過ぎると止められなくなりそうだし。
ワイバーンの特殊な感性とか、研究者さん達の探究心とか色々とね。
危険な域に達する前に止めておかないと、そのうちおかしな事になりそうだから。
「まぁそれはともかくよ。数が多くてね……ちょっと困っているのよ」
「数が多くて……多すぎて持て余すとか? 加工するにも手間がかかるから、それが間に合わないってのもあるか……」
「それもあるんだけど、そうじゃなくてね。はっきり言うと、予算の問題よ」
「予算……?」
「現状、帝国に対しての準備を着々と進めているのだけど……本当、私が言っちゃいけないかもだし、ここでしか言えない事だけど、戦争ってお金がかかるのよ。莫大なね。これまで貯めていた国のお金が簡単に吹っ飛ぶくらいに」
「それは……まぁ、そうだろうねとしか」
戦争のためのお金、つまり戦費がとんでもなくかかるというのは簡単に想像できる。
実際にどれくらいかまでは想像できなくても、とにかく大量にお金が必要だって事くらいはね。
例えば地球だと、戦車の砲弾が数十万から百万円なんて何かでやっていたのを見た事があるけど……戦争となるとそれが大量に使われるわけだ。
まぁこの世界には戦車なんてないし、規模など何から何まで違うから比べられる物かわからないけども。
でも武具や、弓矢などだけでなく大量に食糧とかもいるわけで……それを考えるだけで気の遠くなる程のお金が要るのは間違いない。
シュットラウルさんとか、侯爵軍と俺との演習で矢を大量に消費した事を、執事さんにチクチクと言われたらしいしね。
「それで、大量のワイバーンの皮。できれば全部買い取りたいくらいなんだけど……そうもいっていられないお財布事情なわけよ。そこでりっくんとの相談ってわけ」
「えーと、つまりワイバーンの皮を買い取る値段を下げて欲しい、とかそういう相談って事かな?」
ワイバーンの皮が、そもそもにどれくらいの値段が付いているのか、詳細まではよくわからない。
以前も、大量に冒険者ギルドと国に納品しただけで、後は大雑把に報酬をもらったくらいだ。
どんぶり勘定なうえ、ほとんど相手の言い値で売ったようなものと言えるかも。
「端的に言えばそうね。ただの値切り交渉というわけじゃなくて、大量に購入するからその分値引いてほしいとか、そう言う相談よ」
「成る程、まとめ買いするからって事だね」
えーっとなんだっけ……こういうのをボリュームディスカウントって言うんだったかな?
姉さんというか国を相手で、信頼度は特別。
さらに今後の事を考えると、必要性はかなり高いわけで……値引きと言わず、むしろ無償提供したいくらいではあるんだけど……。
ただこれは俺のための収入とかではなく、ワイバーンのための収入になるし、単純にタダでというのも今後に差し支えそうな気がする。
「ほとんど無限とも言えるくらいだし、すぐに値崩れするだろうと思っていたから、値引きとかそう言うのは構わないと思うんだけど……どうしようか。そもそも俺、単価とかよくわからないからなぁ」
俺の勉強不足なのは間違いないが、ワイバーンの皮がどれだけでどれくらいの値段になるかとかよくわからない。
だからどれくらいの値引きをすればいいのかが、全然わからない。
心情的にはかなり安くしてもいいとは思っていてもだ。
「モニカさん達に任せる……ってわけにもいかないか」
チラリとモニカさん……だけでなく、ソフィーやフィネさんにも視線を向けると、全員が首を横に振っていた。
モニカさんは商売というか獅子亭で働いていたから、ある程度の素地はあるにしても、ワイバーンの素材などの値段交渉は難しいと考えているようだ。
なんとなく、姉さんというか女王陛下相手に値段交渉をするのは畏れ多い……みたいな雰囲気を、特にフィネさんから感じたりはするけども。
この部屋でリラックスモードの姉さんを見て話して、結構慣れたと思っていたんだけど、それはそれ、やっぱり地位としてはちゃんと女王様って事かもしれない。
俺も、喋り方とか雰囲気とかは以前とあまり変わらないんだけど、やっぱり見た目が全然変わっているから、ちょっと違和感というか変な感じがしたりするからね。
……これは、女王様だとかは関係なかったか――。
値引き交渉は任せるべき人が見つからないようです。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。






