夕食直前の騒動
「雰囲気が変わるのが、不満そうに見えるって事?」
「なんとなく、私がそう思うだけだけどね。少し、鳴き声も不満そうに聞こえるのよねぇ……もしかしたら、リクさんに構ってほしいんじゃないかしら」
「俺に、かぁ……確かにリーバーは、以前から俺を乗せて飛ぶ際には喜んでいたと思うけど」
最近、センテから王都に戻る際にはエルサに乗っていたし、リーバーには森での単独魔物捜索の時くらいから乗っていなかったっけ。
なんとなく、リーバーは俺を人間のリーダーみたいに思っている節があって、さらにワイバーン達のリーダーでもあるから、俺を乗せる事が誇らしいとかそういう理由があるのかもしれない。
全部予想だけど。
「わかった。まぁエルサがまたうるさいかもだけど、リーバーの方も一度様子を見てみる事にするよ」
とりあえずそう答えて、そういえば王都に戻って来てからはリーバーをまともに構えてなかったなぁ、と反省しつつ、部屋へと向かう。
なんだか、急にやる事が押し寄せて来る気がするけど……大体は自分が原因だったりもするので、のんびりしたいなぁなんて漏らす事もできなかった。
クランの事なども関係するけど、ずっと考えている事を皆に伝えないといけないし、考える事、やる事がいっぱいだなぁ。
とりあえず差し当たっては、部屋に戻ってヒルダさんにお茶を頼んで、少しくらいはゆっくりできるだろう……。
「なんて思っていた時期が、俺にもありました……」
部屋に戻って中の様子を見る……いや、騒がしい声が耳に入ると思わず口を突いて出た言葉がそれだった。
「お腹が空いたのー」
「お腹が空いたのだわー」
「お腹が空いたのよー」
俺の部屋では、目を覚ましたユノとエルサ、さらに何故か姉さんまでもが一緒になってお腹が空いたと合唱している姿があった。
その姿、声を聞いて少々頭痛がするのは気のせいじゃないかもしれない……。
というか、ユノとエルサはこういうことをよくやるので今更だけど、姉さんまで一緒になってやるなんて。
……俺が心配する事かどうかはわからないけど、本当にこの国は大丈夫なんだろうか?
両手の人差し指を箸や棒に見立てて、テーブルの端をトントンとリズミカルに叩く女王陛下のお姿を見ていると、どうしても心配になってしまう。
少し前にヒルダさんからこってり絞られたらしいのに……凝りていないらしい。
あ、ヒルダさんの眉が吊り上がった。
「りっくんー、お腹が……げ! ヒ、ヒルダ……!?」
「陛下、何か申し開きはございますでしょうか?」
入って来た俺に気付いて、こちらに目と声を向けた姉さんが途中で、俺の後ろから入って来たヒルダさんに気付いたようだ。
ヒルダさんはゴゴゴゴ……という地鳴りのような効果音を背負っているような雰囲気で、妙にゆっくりした動きで姉さんへと近づいていく。
「こ、これは違うのよ、ヒルダ!? あ、あのね? 落ち着いて聞いてね?」
「えぇ、私は落ち着いておりますよ? 陛下がこの部屋の中でだけは、普段とは違い女王という重荷を降ろして、気を楽になされている事は承知の上です。陛下にも、そういう場所などは必要でしょう」
「そ、そうよね。私が私らしく、国を正しく導いていくためにも必要よね? ってそうそう、これはね、その……ユノちゃんとエルサちゃんが、お腹が空いたらしくてね? でもリクが戻って来ないと夕食がはじまらないじゃない? だから、気を紛らわせるためにね? 必要だったの!」
「確かに、夕食はリク様が戻って来られてからとなっています。ですが、むしろ陛下は率先して騒がしていたと思うのは、私の気のせいでしょうか……?」
一応、この国の最高権力者であり、王城でも当然全てに対して決定権や命令権のある姉さんだけど……公の場では、凛々しく女王様という呼び名に負けない姿を見せている姉さんなんだけど……。
今はその姿の片鱗すら窺わせず、ただただ笑顔なのに妙な迫力を醸し出すヒルダさんにたじたじで、少しずつ後ろに下がっているだけだった。
ちなみにだけど、確かにこの部屋は俺が使っているのもあって、ここで食事をするときは基本的に俺が戻って来てからとなっている。
けど、姉さんが言えば俺が戻って来なくても夕食は始められたはずだ……最高権力者だし、あくまで俺が戻ってきたらというのは基本なだけで例外は認められているしね。
まぁ一緒に食べたいから待ってくれていた、というのもあるのかもしれないけど……。
でもだからといって、羽目を外し過ぎと言わざるを得ないユノやエルサに混じっての合唱は、あまりにもなので助け舟を出す気にはなれない。
今のヒルダさんに対して、俺が助け舟を出せないだけっていうのもあるけど――。
――ユノやエルサとの合唱に参加した姉さんが、目を吊り上げたヒルダさんに連れて行かれ、戻って来ていたソフィー達と今日あった事などを話してしばらく。
夕食の準備なども終えて、エルサやユノが我慢の限界に達しそうな頃に、姉さんとヒルダさんが戻って来た。
その際の姉さんは、完全に意気消沈している様子だったけど……ともあれ、この部屋で一部の人のみに限定されている状況の姉さんは、リラックスモードで素のままだけど、だからこそヒルダさんは色々言える部分もあるようだ。
姉さんもそれでいいと思っているみたいだし。
誰からも注意や苦言などを受け付けない、という独裁者になってしまわないようにという、姉さんなりの戒めみたいなものなんだろう……多分。
ともかく、そんなこんなで最近加わったばかりのレッタさんや、アマリーラさんがどんな反応をしていいのかわからないといった複雑な様子を見せつつ……かなり呆れが混じっていたような気がするけど、夕食が開始される。
エルサがよだれを垂らして、他の話なんてできそうになかったのもある。
ちなみにレッタさんは、姉さんやヒルダさんの様子を見て「国内に限りだけど、それでもこの国が帝国と比べるとよっぽど平和で、和やかな空気を感じる事が多い理由がよく分かったわ」なんて呟いていた。
女王様である姉さんの合唱や、侍女のヒルダさんに連れて入れて叱られるのって、平和な証になるのあかなぁ?
「ごほん……ちょっと色々あったけど、りっくんに話しておきたい……というか相談したい事があるの」
「俺に?」
なんて、食事を進めながら考えている俺に、意気消沈から復活した姉さんから相談を持ち掛けられた。
「えぇ。まぁ管轄がりっくんだからというのもあるんだけど。その、持ち帰ったワイバーンの皮なんだけどね? あれを、売ってもらえないかなって」
「それはそのつもりだったよ。ワイバーン達は、あまり多く食べないから手間とか費用は予想していたよりかからないかもしれないけど……それでも、ワイバーンが独自でお金を稼ぐと言うか、そういうのも必要かなって思っていたからね」
まさに、この部屋に戻る前に考えていた事でもある。
ワイバーンの皮はほとんど無限と言えるくらい、採取する事が可能なので、それを換金できればワイバーン達にとっての収入となるからね――。
ワイバーンの素材は需要が高いようです。
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