人手不足の王城
「そうですね、何事にも備え、不足なくお世話できると断言できる程ではありません。現在、王城では色々と人手が足りない事が多いので。平時ではありますが、冒険者ギルドの事も含めて忙しくなっておりますので」
「成る程……」
俺も今日行ってきたけど、簡易的でも冒険者ギルドの機能を王城の敷地内に設置しているからね。
それに関わる仕事が使用人さん達も増えているんだろう、マティルデさんも含め、一部のギルド職員さんを王城で受け入れているというのもある。
他にも、帝国と事を構えるための準備や、まだ完全に解消されていない王都周辺にいる魔物の集団などの問題で、兵士さんや冒険者さんだけでなく、王城にいる全員が忙しくしているようでもある。
そう考えてから思い出してみれば、先程通った使用人さん達の居住区でも、皆忙しそうにしていた気がする。
居住区を通ったのは初めてだったけど、以前は王城内ですれ違う使用人さん達は皆、もっとゆっくり廊下を歩いていたはずだ。
それが今は、ヒルダさんや俺を見るまでは基本的に早歩きだったし、雰囲気なども慌ただしく感じた。
このラウンジ……休憩室として使われている広間も、俺達や女性達の他には誰もいないくらいだし、のんびり休憩している暇というのがないのかもしれない。
……俺に感謝を述べたい女性達を集める場にするため、ヒルダさんが他の人が来ないよう手配している可能性もあるけど。
「ですので、初期教育を終えたこの者達もその人手に加える事になったのです。本来なら、王城で働くためにもう少し教育しておきたいところだったのですが……」
「……っ!」
チラリ、とヒルダさんが女性達の方へ視線を向ける。
その視線を受けた女性達が、全員一斉に体をビクッとさせていた。
ここに来るまでもそうだったけど、ヒルダさんの教育ってやっぱり厳しいのかもしれないね。
場所が場所だし、厳しくして立派な使用人にというのもわかるから、厳しくなっても仕方ないのかもしれないけど……女王陛下がいるうえ、貴族などが集まったりする事もあるから、失礼な事はできないし。
「そういう事だったんですね。――あ、すみません話の途中で」
「いえ……ですのでその、是非リク様方には私達を使っていただけないかと。そう、私達は考えています」
「私達はリク様に命を救われました。であれば、リク様のお役に立ちたいと考えています」
「救国の英雄と称されるリク様のお役に立てるのであれば、つまりそれは国に貢献するという事でもありあます!」
「私達ごときが、畏れ多いのかもしれませんが……」
ヒルダさんの話に納得し、女性達に話の続きを促すと……堰を切ったかのようにそれぞれの女性が言いつのっていく。
救国の英雄って……結果的には国を救ったのと同等なのかもしれないけど。
ヒュドラーやレムレースを倒した後とかに、色んな人に似たような事を言われたし。
「ごときって事は全然ありませんよ。俺はまぁ、ヒルダさんがいてくれるので困っている事はないんですが……」
「当然です。私がリク様の全てをお世話しているのですから、不足する事はあり得ません」
「いや本当に、もう少し休んでもいいと思うくらい、色々やってくれて助かっています」
女性達にどう答えるべきかを考えながら、珍しく少しだけ得意気な様子のヒルダさんに感謝する……自負みたいなものがあるんだろう、自信を持つのはいい事だね、うん。
ともかく、俺のお世話係というのはヒルダさん以外にももちろんいるんだけど、基本的にすぐ近くにはいつもヒルダさんがいてくれて、何かお願いした事も、お願いしていない事も先回りして全てやってくれているからね。
むしろ、そこまでしなくてもいいから少し休んで欲しい、と思うくらいに良くやってくれていて、ありがたい。
「私は……多分ソフィー達もだけど、もう少しお世話がなくても不便はしないし、今でも行き過ぎなくらいなんだけどね」
「色々やってくれるヒルダさんの前でこういうのもなんだけど、俺もそうなんだよねぇ。だからむしろ、全体的に人手が足りないのなら、他に回してもいいと思うくらいだよ」
やっぱりモニカさんも、お世話されるというのはあまり慣れないようだ。
「そ、そうなのですか……」
俺とモニカさんの話を聞いて望みが薄い感じたのか、気弱な女性が落胆したように肩を落とす。
うーん、落ち込ませるつもりはなかったんだけど……。
「あ~……でも、ヒルダさんも人手が足りないと言っていますし、何人かにはお世話してもらっても……」
「そうですね、リク様のお世話は私で間に合っていますので、モニカ様や他の方々にとなりますが」
「「「「「ほ、本当ですか!?」」」」」
激しく反応する、女性達八人のうち五人。
全員じゃないのは少し気になったけど、ともあれ望みが出てきた事で落胆していた気弱そうな女性も、落胆から持ち直したようだ。
「とはいえさすがに八人全員というのは多すぎます。人手が増えすぎるのはそれはそれで……」
「まぁ、そうですよね」
人手が足りないとはいえ、ここにいる全員だと逆に多すぎるのは問題か。
なんだか、流れ的に今この場で俺が選ぶような方向に進んでいる気がするけど……ヒルダさんに任せたはずなのになぁ。
「なら、モニカさんに……」
「そう言われても、こんな事は初めてだし……ほとんど初対面の人を選ぶなんてできないわ」
「だよねぇ」
俺もそうだけど、女性達とこうして面と向かって話すのが初めてに近いから、それぞれどんな能力を持っているのか、とかわからない。
どういう人がいいかとかもあまりないので、俺もモニカさんも選ぶのは難しいと思う。
まぁ、そこまで深く考えて選ばないといけないかと言われたら、首を傾げるけど。
もしお世話係として不足している部分があるのなら、後々ヒルダさんや他の使用人さんが教え込んでいってくれるだろうし……なんて思いつつ、助けを求めるようにヒルダさんを見た。
「……そうですね」
ヒルダさんは、俺の視線の意味を読み取ってか、少しだけ考えて女性達へと顔を向けた。
「八人中五人。それが限度でしょうか」
「この中から、五人だけ……ですか」
ヒルダさんの言葉を受けて、女性達が少しだけ怯んだ様子になった。
皆同じく野盗に攫われていたのを助け出されて、保護された後は王城で雇われる事が決まり、今日まで使用人としての教育を受けていたんだ。
仲間みたいな意識もあるのかもしれない。
「もちろん、あなた達に選べと言うつもりはありません。リク様はお優しい方なので、おそらくあなた達それぞれに相応しい場を考えて下さると思いますよ」
「え? え、えーっと……」
優しいと言われるのはともかく、相応しい場を考えるなんて俺にできるとは思えないんだけど……というか、どうにかする事に決まっている気がする。
ヒルダさん、もしかしてこうなる事がわかっていて、皆を集めた場所に俺を連れて来たんじゃ? と疑ってしまうくらいだけど、考え過ぎかな――。
もしかしたら リクが女性達を前に悩みながらも女性達の事を考えるよう、仕向けられていた可能性があるのかもしれません。
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