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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1752/1949

急遽用意されたらしい冒険者ギルド王城支部へ



 魔力が減っている感覚と共に、体を包む疲労感は、魂の損傷とかとはまた違う。

 けど特に激しく動いたわけでもないのに、運動した後のような疲れを感じるのは不思議だよなぁ……なんて考えつつ呟いた。


「だわぁ……だわぁ……」


 俺が一人って考えたように、廊下を歩きながら呟いても返って来るのはエルサの寝息だけ。

 俺の頭にくっつくなり、寝入ってしまったようだけど……まぁ頭にモフモフがくっ付いている満足感があるからいいか。

 そう言えば、エルサにも手伝ってもらう事があるみたいなのをロジーナが言っていて、だから今日はモニカさん達の方じゃなく、エルサは俺と一緒だったんだけど、結局何もやらなかったなぁ。

 多分、俺がもし結界を作る事ができたらだったんだろう。


「その辺りは追々かなぁっと……お、ここだここだ。――リクです、今大丈夫ですか?」


 ロジーナ達が何をするのか気にはなるけど、いずれわかるだろうと考えを打ち切り、廊下を歩いて一旦王城の外へ。

 そこから少し歩いて運動場近くにある一軒家くらいの大きさの建物……新しいんだけど、急いで作ったからなのか王城にある物としては、違和感のある建物。

 その表口は人が多かったので、裏口に回ってノックをして声をかける。


「あぁリク、待っていたわ。入って」

「はい、失礼します」


 中から女性の声がして、入室の許可が下りる。

 扉を開けて入ると、大体八畳から十畳くらいの大きさの部屋で、向かい側の部屋の端にもう一つ扉が……こちらが本来の正規の出入り口なんだろう。

 その扉に行くまでの間に、簡素な長テーブルと複数の椅子があり、テーブルには雑多に書類と見られる物が散らばっていた。

 椅子には誰も座っていないけど、お茶がなみなみと入ったカップが一つ置かれている。


 湯気が一切立っていないのを見るに、用意したはいいけど飲まずにそのままにされているようだ。

 それが、この部屋に一人で忙しくしている人がいる事を教えてくれた。


「マティルデさん、やっぱり忙しいですか?」

「はぁ、そうね。忙しいなんて言葉で片付けられる気すらしないくらいよ」


 俺の言葉に反応したのは、部屋の隅に置かれている棚の前で書類の束を持って見ていたマティルデさん。

 その表情は、いつもの年齢不詳でミステリアスな色香は一切なくなり、目の下にはっきりと隈があるね……要は、見るからに疲れている様子がわかる。

 ここは、破壊されて使えなくなってしまった中央冒険者ギルドの代わり、急遽用意した冒険者ギルドの機能を有した建物の、マティルデさんの執務室らしい。

 なぜ、執務室から直接外に出られる裏口が用意してあるのか理由はわからないけど、とりあえず魔力調節などの練習を終えた俺を、ここに来るよう呼び出したのはマティルデさんだ。


 表は人が多いから、裏口から入るようにとも伝えられていた。

 近い場所にいるんだし、用があるならマティルデさんの方から俺の所に来るんじゃ? と呼ばれた時は少し気になったけど……部屋の中を見ればすぐに理由がわかった。

 忙しすぎて、ここを離れられないんだろう。

 今も、俺に答えながら少し待ってと手をかざし、書類を持って椅子に座りながらそれを読んでいるくらいだ。


「……冷たっ。はぁ、もう冷め切っているわね……いつ用意した物かも忘れたけど。ふぅ……」


 書類の束を読みつつ、カップに手を伸ばしてお茶を一口飲んだマティルデさん。

 すっかり冷めていたため、少し驚いたようだけど……お茶を飲む余裕がないくらい、忙しくしていたって事なんだろうな。


「えーっと、なんなら俺が淹れなおしましょうか?」

「英雄リク様に淹れてもらったお茶、ね。ありがたいし、それだけで凄い価値になりそうだけど……今は遠慮しておくわ」


 幸い、部屋の中にお茶を淹れるためのセットはあるようで、お湯を沸かすための火を使える小さなかまどっぽいのもあったから、と思ったんだけど、マティルデさんは首を振った。


「リクが飲みたいのなら、申し訳ないけど自分で用意してね。今、他の職員に頼もうにも忙しくて手が離せないから」

「いえ、大丈夫です」


 マティルデさんだけが忙しいわけではなく、冒険者ギルドの職員全体が忙しいんだろう。

 そんな中、わざわざお茶を用意してもらうのも悪いし、さっき休憩中にヒルダさんが淹れてくれたお茶をたっぷり飲んだからね。

 あまり喉は乾いていない。

 疲れとかはまぁあるけど……練習で、魔力もかなり減っているのを自覚するくらいに。


「それで、俺に用っていうのは?」

「持ち帰って来た、魔物素材の報酬についてよ」

「あぁ、そう言えば」


 王都に戻る際、アルケニーを始めとした現在発生している魔物の集団を、いくつか殲滅して素材を持ち帰った。

 そのほとんどを、マティルデさんに渡して任せていたんだけど……それの買い取り査定が終わったとかそういう事だろう。

 もちろん、カーリンさんの料理道具を作るためのアルケニー素材の一部は、冒険者ギルドではなく王城の方で保管してもらっているけど。


「昨日報告のあった魔物討伐に関してはまだなのだけどね。はぁ、ほんとやる事が多くて嫌になっちゃうわ。こんな時、ミルダはいないし……」


 中央冒険者ギルドで、副ギルドマスター……要はマティルデさんの補佐をしていたミルダさんは確か、ロータ君の所に行っているんだったか。

 人手が足りないだけでなく、ミルダさんという補佐がいないのも忙しさに拍車をかけているのかもしれない。


「昨日の今日ですし、数も多いですからね。討伐証明部位などは持ち帰っていませんが、それでも討伐したと信じてくれるだけでありがたいですよ」

「リク達を信じないなんて、この冒険者ギルドではあり得ないわ。それだけの事をしてきたんだし」


 報酬とかは急いでいないし、お金が今すぐ必要とかでもないんだから、とりあえずマティルデさん達の手が空いた時でいい。


「それで要件の方だけど……素材の方は確かめさせてもらったのだけど、今すぐ買い取る事はできそうにないの」

「そうなんですか?」


 いつもなら、すぐに買い取ってくれたんだけど……どうしてだろう?


「冒険者ギルドの建物が壊されちゃったでしょ? それで、今ここに買い取りできるだけの余裕がないの」


 大変な時だから多くのお金を用意できないか、そりゃそうだ。

 おそらくだけど、一部冒険者ギルドが所有していたお金は建物と一緒に吹っ飛んでいる可能性もあるんだしね。


「だから、また余裕ができた時に買い取るか、後払いになるかのどちらかね。後者はリクが冒険者ギルドを信頼してくれないと成り立たないけれど」

「成る程。それくらいなら、問題ありませんよ。それに、冒険者ギルド……少なくとも俺が知っているギルドの人達が、そういった事で騙したりはしないと思いますし」


 帝国に与した冒険者ギルドがあるように、全てを信頼するというのは難しいかもしれない。

 けど少なくとも、今まで俺が出会った冒険者ギルドの人達は、誰かを騙そうという人はいなかったし、信頼できると思っている。

 まぁ冒険者ギルドが存在する場所、国が違うというのも大きいかもしれないが――。




王都の冒険者ギルドは、信頼を担保するしかないくらい余裕がないようです。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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