半魔法発動状態
ただ拠点防衛用になら使えるかもしれない、とは考えられても、フィリーナはまだ結界の形を細かく調整できないようだから、完全に覆う形になってしまって、中の空気なども含めて長期的にはジリ貧になったり、内側にいる方から外に向けて攻撃もできないという、完全に殻にこもった状態になるってのは問題かな。
まぁ、援軍を待つ籠城のためとかなら一考の余地はあるだろう。
フィリーナ本人も言っているように、結界に使う魔力を別の魔法……例えば、拠点を攻めて来る敵を攻撃するために使った方が、有益な時も多いだろうけどね。
「まぁ使い道は今はいいのよ。それより固定化についてだけど……」
「魔力を固定化するのは、半魔法発動ってとこなの。それが必要なの」
「半魔法発動?」
フィリーナの言葉を継ぐように、ユノが言うけど……半魔法発動って一体なんだ?
ユノが今作ったような言葉みたいだけど。
「半分だけ魔法が発動しているような状態? とかそんな感じなの」
「うーん……」
「ユノが言うのは間違っていないわ。厳密に言うと、私の作った結界は魔法とはっきり言えないの。じゃあ魔法じゃないのか? と言われるとそちらも首を傾げるのだけどね」
「だから、半魔法発動ってところなんだね」
「魔法は魔力で本来そこにないはずの現象を引き起こすの。それを途中で止めるような感じと考えればいいの」
「わかるようなわからないような……?」
理屈はともかく、はっきりとした魔法を発動させるのではなく半分だけ発動したような状態にする事で、固定化、物質化して結界ができるってとこだろう。
俺やエルサが使う結界は、原始の魔法とやらだから多分概念というか成り立ちが違うんだろうけど。
あっちは、間違いなく魔法が発動しているからね。
「実はリクが使う探知魔法なの? あれも似たようなものなんだけど……今は省くの」
「何それ、すごく気になるんだけど……」
「今は結界の話なの。それがリクには重要なの」
ユノに押し切られて、疑問を振り払う事になったけど……探知魔法が使えるようになったら便利なんだけどなぁ。
まぁ探知魔法に関しては今関係ないようだから、後で聞く事にしよう。
似たようなものらしいから、もしかすると結界が使えるようになったら探知魔法もまた使えるようになるかもしれないし。
「とにかく、魔法が発動するまでの手順を考えるの。それは、原始の魔法も人間やエルフも大きく変わりはないの」
「原始の魔法は、イメージをするからそこが違いだけど……それ以外なら、魔力を変換して、それが魔法になるってとこかな?」
「そうね。魔力を込める量とか細かい事は色々あるけど、大まかに言うと必ず魔法はその手順を踏まないと発動しないわ。でも私が作った結界は、変換を途中で止めているの。要は……」
フィリーナ曰く、俺から魔力を練るという話を聞いた後の色々な研究をする中で、魔法発動までに変換される魔力を止めたらどうなるか、なんてのも試したらしい。
変換されるはずの魔力を完全に止めると魔法は不発……だけど、魔力を練って濃くしながらだと、魔法は威力を弱めた状態で発動したとか。
そしてその発動する瞬間に、魔力の供給を止めたら一瞬だけ練った魔力が重さを持ったらしい。
ならば、これまでできそうでできなかった魔力の固定化、そして物質化をさせ、その場に留めるにはと考えて、発動させる魔法に改良を加えた。
「単純な魔力を固定化し、硬質化させられれば……というのはエルフの間でも研究されていたの。一瞬だけ触れられるようにするくらいならできていたんだけど、できるようなものでもなかったわ。それを改良して、私と魔力的なつながりを保つようにしたの」
つまり、魔法を改良する事でまず変換される魔力が固定化や物質化に近い状態に向かう。
変換を途中で止める事で起こる、練った濃い魔力が重さを持つ具現化らしき現象からの補助を受けて、今のプニプニな結界を作りだすってところかな?
完全に魔法は発動させない、魔力の変換も最後まで行わない中途半端な状況にする事でできあがった結界……確かに半魔法発動と言えるのかもしれないね。
ちなみに長々とした呪文は、そもそもの固定化させるための魔法を発動させる前準備で、固定化させるためにとフィリーナが言っていた通りみたいだ。
それを、魔法名と同時に発動を止める必要があるんだとか。
その前に魔力の変換を止めたりなどもあるわけで……クォンツァイタからの魔力供給を受けながら魔力の放出、呪文の詠唱、魔力を練りつつ、途中で変換を止めつつ更なる魔力放出と練る作業。
ゴブリンと戦いながら、魔力を意識していた俺が、マルチタスクでなんとなく疲れたり辛いみたいな事を考えていたけど、それと比べたら全然簡単な事に思えるくらい大変な作業だ。
そりゃ、数分の深い集中が必要になるよなぁと。
「まぁ私の結界に関してはこのくらいね。これがリクにどんな関係をするのか、わからないけど」
「ここからは私が話すの」
「ありがとうフィリーナ。それでユノ、今の話を踏まえるととてもじゃないけど俺に使えるとは思えないんだけど……」
フィリーナにお礼を言って、自分がと主張しながら手を挙げているユノに意識を向ける。
変換を途中で止めるくらいならできるだろうけど、そもそも原始の魔法の場合はイメージをしてから、それを具現化するために魔力が変換される。
イメージの段階でノイズが走ってしまう俺には、できそうにないんだけどなぁ。
ちなみに、ノイズが走って気持ち悪くなってしまうのは魂の防衛本能みたいなものなのだとか。
魂が傷ついて魔力が漏れている状態で、魔法を使って大量に魔力を溢れさせたら、傷が広がり修復不可能にまでなる可能性があるらしい。
修復不可能になるくらいならまだしも、下手をすると生命が保っていられないくらいの損傷を受けるだろうとも予想されるので、無理には使わない方がいいだろうとの事だ。
現状で魔法を使うという事は、文字通り命を削ってになるわけだから、そんな無茶はしたいと思わないけどね。
「フィリーナのように使うのはリクでも不可能なの。あれは、魔法に造詣が深いエルフだから実現できた事なの。人間だと、クォンツァイタで補助するにしても多分できないの」
「まぁそうだろうね」
よくわからない、俺が理解できない部分もあったけど……それは抜きにしても、魔法に詳しく研究までしているフィリーナ達エルフだからこそという印象受けた。
でも、さっきの話のように俺が結界を作れるのでなければ、他にどんな方法があるのだろうか?
魂の修復されて行っても、魔法としての結界が使えるのなら他の魔法も使えるようになるだろうし……ロジーナは、結界だけ使えるようにと限定的な事を言っていたから、多分違う方法なんだろうとは予想できる。
「リクは、意味が分からないくらいとんでもなく大量の魔力があるの。それに頼るの」
創造神にまでとんでもないとか、意味が分からないとか言われる俺の魔力って……
いやいや、なんだかんだ言って、これまでもその大量の魔力に助けられて来たんだから、あまり気にしなくてもいいよね、うん――。
リクの魔力量は既に誰から見ても意味がわからない領域に達しているようです。
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