勘違いアマリーラさん
結局、まだ魔力を意識するって言った理由が聞けていなかったのを思い出した。
おかげで、俺を覆っている分厚い自分の魔力が原因で、力加減に影響が出ていた事や活用法……と言えるのかはわからないけど、放出する事もできるようになったからね。
慣れるまでは、意識しながら戦うのが結構辛かったけど、それに対する成果みたいなものはちゃんとあった。
ただ、魔力の放出に関ては途中で注意されて、ゴブリン戦後は禁止されたからロジーナとしてはそれが目的というわけではないんだろうけどね。
「空中で蹴られてビックリする、で済ませられるのはリクさんくらいよね……私達からも見えたけど、あれができるのもロジーナちゃんやユノちゃんくらいかしら……」
「私は、特にとまでは言わなかったけれど。そうね……」
少しだけ呆れが混じっているモニカさんの言葉はまぁいいとして……というか、見えてたんだ。
まぁ地上に降りるまでほんの数秒くらいだったし、エルサが移動を開始していたにしても、そんなに遠くまでは言っていないだろうから見えていてもおかしくないか。
ともあれロジーナは、少し考えるような仕草。
「少なくとも、リクが戦っている最中にやっていた魔力の噴射は、私の意図とは違うわ。あとは……まだユノとも話せていないから、それからにするわ。話せないとかではないけど、私としても確認したい事とかがあるから」
「そうなんだ……うん、わかった。というか噴射って……」
「簡単に私の事を信用するのね。でも、あれは噴射と言うしかなかったわよ。薄っすらと魔力が視認できるくらいの量を、全身から周囲一帯に出していたんだから。そこらの人間、どころかエルフでさえもすぐに魔力を枯渇させてしまうくらいよ」
目で見えるくらいの魔力を常に放出している程の状態だったのか……俺自身は気付かなくとも、傍から見ていたロジーナやユノからは、薄っすらとでもやっぱり見えていたらしい。
言い方からすると、ロジーナ達が特別ってわけではないとは思う。
「あれは凄かったの。ロジーナが止めなかったら、リクが霞んで見え始めるくらいの魔力が立ち込めかけていたの」
「ぐぅ……」
ユノにまで言われて、ぐうの音も出ないどころかぐぅという言葉くらいしか出ず、言い返せなかった。
俺が霞むくらいの魔力が辺りを包みかけていたようなので、まぁそりゃ噴射って言われてもおかしくないよなって、自分でも納得してしまったし。
「と、とりあえずじゃあその事は明日教えてもらうのを待つよ。うん」
魔力噴射とかはともかく、ロジーナの事はある程度信用している。
まぁレッタさんに対してと同じく、ユノがいるからというのも大きいけど。
ロジーナがいる以上その近くにユノがいて、レッタさんがもし何か企んでいたり変な行動を起こすのならユノが止めるなりなんなりしてくれるだろう、という信頼。
さらに、ロジーナに対して対抗心みたいなものがあるユノだから、ロジーナが何か嘘を言ったり悪い影響を及ぼすような事をするのなら、それもユノが注意してくれるだろうと思っている。
結局、ユノありきでの信用かもしれないけどね。
見た目通りの幼い女の子のような言動と行動をするユノを見ていると、そこまでの信頼を寄せていいものか少し不安になったりはするけど……。
やる時はやるというか、大事な時はちゃんとしてくれると知っているからね。
「そういうわけだから……ちょっとユノ、こっちに来なさい」
「えー、ロジーナ強引なの」
「ロジーナ様、私もご一緒します!」
ロジーナがユノを引っ張って、部屋の隅に行く。
レッタさんはそれについて行くようだけど……レッタさんのロジーナ信奉は相変わらずだなぁ。
むしろ、捕まえて目を覚ました時より信奉する心が強くなっている気がしないでもない。
傍から見ていると、子供を可愛がる母娘にしか見えないから別にいいんだけど、ちょっと過保護かもしれないってくらいだ。
何やら俺達に聞こえないように話を始めたロジーナ達だけど、そこにレッタさんがいてもいいのかな? と少しだけ疑問。
まぁ、誰にも聞かせられない話なら、皆がいるこの部屋でしないからいいんだろう。
とりあえず、他の人が話に入らないようユノと何かを確かめ合いたいだけみたいだし。
「ロジーナ達の方はあのまま話してもらうとして……アマリーラさんは、なぜソワソワしているんですか?」
ロジーナ達と話すよりも前、姉さんと話していた頃からか。
いや、部屋に今いる皆が集まった時からかな? ずっとアマリーラさんがなんとなく落ち着かない様子で、獣人特有の耳や尻尾を動かしていた。
視線も俺や姉さんを行ったり来たりしているようだし……何かを気にしているような?
まさか、姉さんというこの国の女王陛下が同席しているとか、その場で同じくソファーに座っている事とかを気にしているってわけではないと思うけど。
気にするなら、王城に戻って来た時既に気にしていただろうし、アマリーラさんはあまりそういった事を気にしていないようだったからね。
「い、いえその……先程から妙に女王陛下とリク様が親しい様子でしたので。お二人は、特別親密な関係なのかな……? と、思ったり思わなかったりです……はい」
「話し方がちょっと妙な感じになっているけど……そう言えば、アマリーラさんも含めて新しくセンテから一緒に来た人達にははなしていなかったっけ」
姉さんとの関係性というか、俺自身が異世界からとか、日本にいた時は実の姉弟だったとか……そういう話はまだできていなかったはず。
戻って来てからは、魔物の集団や帝国に関する話ばかりだったからね。
姉さんがいない所では、訓練に関してだったし。
「ふふーん。気になる、気になるー?」
「は、はい! き、気になります……! もしその……お二人が特別な関係なのであれば、リク様は将来この国の重鎮になられる方という事に。いえ、もちろん現在でも名実ともに英雄として、重鎮であらせられるのですが……! ですがその場合、私としましてもリク様との接し方と言いますか……獣王様にご報告などを差し上げねばと……」
ニヤニヤとしながらアマリーラさんを見る姉さんに、たじたじというかどう反応していいのかわからず、喋り方とかがおかしくなっている気がする。
「俺が国の重鎮って……というか、アマリーラさんをからかうような、もったいぶった事はしないでよ」
「えー、だってちょっと面白そうだったから。私の楽しみみたいなものよ」
「俺やその周囲の人達で遊ばないで欲しいなぁ……はぁ……」
さすがに姉さんに対して、直接注意ができるのは俺とヒルダさんくらいなのか、事情を知っている他の皆は苦笑している。
ともかく、英雄と呼ばれているのは以前からだからいいとして、重鎮というわけではないんだけど……姉さんと特別な関係で将来の重鎮というのは、おそらく王配だったかな?
女王様の夫になる人の称号だけど、その王配になるとかってアマリーラさんは勘違いしているのかもしれない。
姉さんが俺の事をりっくんと呼んでいるのも、関係性を間違える要因なのかもだけど。
方向性は違えど、俺と姉さんが元は姉弟だったと知ったエフライムと似たような反応かもしれないね――。
リク自身は特別な血筋というわけではありません。
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