リクは魔力噴霧器
「さて、とりあえずは考え付く事は粗方試したかな……」
後になって何か思い付くかもしれないけど、とりあえず魔力を意識してでできるようになった事、戦いながら試せる事などは大体やってみたと思う。
そろそろゴブリン達を殲滅して、戦いを終わらせないとね……モニカさん達の方も気になるし。
……エルサが迎えに来ないと、俺達がすぐに駆け付けるのは難しい距離だけども。
ともかく、自分が特殊なんだというのはもう間違いないけど、ちょっとした可能性みたいなものが見えてきた気がするので、ロジーナには感謝だ。
できれば蹴り飛ばす前にもうちょっと親切に教えて欲しかったけど……ツンデレのロジーナだから、そんなに素直に教えてくれたりはしないか。
それで、この魔力を意識する、それでできる事を増やしたり、覆っている魔力を霧散背たりする事で、力の調節を補助するっていうのが、ロジーナが言っていた「助言くらいはできる」なのだろうか? なんて考えていると……。
「リク、魔力を好き勝手に放出していないでさっさとゴブリンを倒しなさい! そんな事じゃ前に言った助言を実行する事もできないわよ! それとも何? 魔力を意識するだけなのが、そんなに動きを鈍らせるって言うの? だったら、技術を習得するなんて無謀な事は諦めなさい!」
なんて、遠くからロジーナによるお叱りの声が響いた。
どうやら、魔力を意識するのはロジーナの言っていた「助言」とはまた別だったらしい……その前段階みたいなものかな?
ちなみにロジーナとユノは、そちらにもゴブリン達が行っているはずなんだけど、あいつらは見境ないからね。
そう思って視線を巡らせると、数体のゴブリンの攻撃を身軽に避けているのが見えた。
まるでダンスを踊っているかのように、華麗に、ゴブリンの攻撃を一切服の端にすら触れさせず、延々と避け続けている。
一切の攻撃を加えていないのは、あくまでこのゴブリンの集団と戦って殲滅するのは俺の役目だと思っているからだろうか?
数体くらいなら、倒してくれて全然かまわないんだけどなぁ。
というかロジーナはゴブリンとはいえ魔物を俺が倒す事に何も思わないのかな? 一応、魔物と言うのは破壊神だった頃のロジーナが創ったはずのなのに。
まぁ……今更かな? センテではロジーナ自ら魔物と戦っていもいたわけだし、何も思わないかはともかく、魔物であっても必要なら倒すのに躊躇は一切ないとかだろう。
破壊神だし、自分が創った存在だとしても破壊する事に躊躇いはないとかかもね……。
なんて考えつつ、ロジーナの言葉に尻を叩かれたというわけではないけど、とりあえずゴブリン達を殲滅するために本腰を入れて剣と鞘を振るい始め……。
「あと、その噴射している魔力はもっと抑えなさい! このままじゃ、ここに変な魔力が溜まってしまうわよ。魔力溜まりになるかはともかく、おかしな事が起こっても不思議じゃなくなるわ!」
なんてまた叱られてしまった。
魔力を噴射って……俺はただ自分の体を覆っている魔力の分厚い膜の一部を霧散させて、自主的に力を抑えるようんしているだけなんだけども……。
「離れていると、魔力が見えるくらい濃いの! リクがどんどん魔力を放出しているの、全身からブシャーッて!!」
今度はユノからの言葉だけど、それはどんな魔力を出す時の擬音なんだろう……いや、俺の魔力か。
あと全身からって、俺を魔力噴霧器みたいにいうのは止めて欲しい。
魔力量が多くて濃いから、近い俺よりも離れて見ているユノやロジーナ達には魔力そのものが少しくらいは見えているのかもしれない。
俺自身は覆っている魔力を剥がして、空気中に霧散させるような感覚だったんだけど、傍から見たら噴射とかしているようになるのかな。
ともあれ、ロジーナが言うように魔力がこの場所で変に滞ったり固まったりして、魔力だまりにはならなくとも変な現象が起こってはけないので、自重しよう。
それこそセンテで渦巻く感情が魔力のようになり、俺の体や意識を乗っ取ったみたいな事が起きても不思議じゃないし。
まぁ、俺が短時間で出した魔力と、ゴブリン達の魔力くらいではそこまでの事にはならないだろうけど。
「それじゃ、全力……はさすがにやりすぎだし、加減とか技術のための実践訓練でもあるんだから、そこまではやらないとして。とりあえずゴブリンとの戦いを終わらせますかね――」
「GIGI……!?」
「GYA!!」
「GAAAAAA!!」
短く嘆息して、魔力の噴射……もとい霧散させるのを止めて、両手に持つ剣と鞘を持ち直してゴブリン達を倒す事のみに専念する。
一応、先程までと同じく魔力を意識する事は止めていないけど、色々となれたのか戦い始めよりもマルチタスクを難しく感じる事や、頭の疲労感などは少ない気がする。
これも、俺が魔力をある程度理解できたからかもしれない、というのは言い過ぎかな。
そうして、しばらくの間ゴブリン達の怒号や悲鳴が平原に響き渡った……その声が全てなくなるまで……。
ユノとロジーナは避けるだけで、ゴブリンを攻撃しているのは俺一人だけど、これって傍から見たら虐殺に見えないかなぁ? といらぬ心配を頭の片隅でしながら――。
「それで、リクさんの方はどうだったの?」
「うん、ロジーナのおかげもあるけど、少しだけ何かをつかんだ気はするよ。ロジーナから言わせると、まだまだ初歩段階らしいけどね」
あれからゴブリン達を殲滅した後、空を見てもエルサが戻って来なかった……というか遠くの空、オークの集団がいる場所の上空に留まっているだけだった。
なので、俺達の方から様子を見にブツブツと「なんで私が走らないと……」なんて呟いていたロジーナを連れて、ユノと一緒にモニカさん達の所へ駆けつける。
その頃には、オーク達も全て倒されており、多少息切れとか疲れは見られたものの、モニカさんやソフィー、フィネさんに怪我などは見られず、ホッと安心しつつエルサに回収してもらった。
さらにエルサに乗って移動する途中で、モニカさんからの問いかけに答えつつ、ゴブリンと戦いながら掴んだ事というか、試してみた事などを話す。
「なんというか、魔力を放出するだけで飛来する魔法を防ぐとはな……フィリーナ達エルフが聞いたら、なんと言うのか……」
「ま、まぁ、ゴブリンマジシャンの魔法って弱いものばかりだからね。危険がないわけじゃないけど、あれ以上の魔法だったら防げるかどうかはわからないよ」
「確かにゴブリンマジシャンの魔法は、覚えたての人が魔法を使うくらい弱々しいものが多いですが……打ち払う、盾などで防ぐ、避けるなどではなく単純な魔力を使って目の前で消し去るというのはさすがに……」
「さすがリク様です! 他の者には絶対できない事をやってのけるのは、リク様以外にありません!」
などなど、ゴブリン戦の話をしたらただただ褒めるアマリーラさんを除いて、ほとんどの人が呆れ混じりになってしまった。
そんなにおかしい事をしたかな? とは思うけど、大量過ぎる魔力量のなせるわざだから、こうなるのも無理はないかなとも思う。
ちなみに呆れていないのは、最初から分かっていた風のロジーナとユノ、それからレッタさんとエルサくらいだ。
まぁレッタさんは、ロジーナに執心で俺が何やっても呆れるよりどうでもいいと言った感じだけどね――。
やっぱりリクがやる事はどこか斜め上の事なのかもしれません。
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