すんなり王都へは行けなかった
「男性なのに女性……そういう方もいる、というのは聞いた事があります。でも、リク様を可愛がりたいというのはその……?」
「それは、本人にしかわからないけど、多分そういう意味なのかしら? リクさんにはその気はないと思うんだけど……そうよね、リクさん?」
「そ、それはもちろん。ララさんは悪い人じゃないけど……」
モニカさんに問いかけられて、ブンブンと頭を上下に振る。
二人共決定的な言葉は口にしていないけど、何を考えているのはなんとなくわかる。
別に人それぞれだし、嫌悪感とかまではないんだけど……俺にそういう趣味はない。
「ふぅ、良かったわ……あ、でね、カーリンさん。そのララさんがリクさんの事を可愛いって言っていたんだけど、わかる気がするのよね」
小さく息を吐いたモニカさん、なんだかホッとしている様子だけど……まぁそれはともかく、何故だかカーリンさんと話して盛り上がろうとしている。
それは、俺の前で話していていい事なのだろうか? 無理に話しを変えようとしていないかな?
とりあえず、獅子亭で働いていたからっていうのがあるのか、それとも料理ができる人同士という部分でなのか、モニカさんとカーリンさんは仲良くなれているみたいだ。
「あ、それはわかります。私はあまりリク様と一緒にいたわけではありませんが……なんとなく放っておけない感じがするというか、抜けている部分がありそうな……あ! すみません、リク様! わ、私がこんな事を!」
「い、いやぁ、うん、自分でも抜けている所があるとは思っているか……いいんですけどね……」
色々と失敗したところを目の当たりにしたモニカさんはともかく、カーリンさんにまでそんな事を言われるとは。
べ、別に気にしていないし……これからは失敗しないよう細心の注意を払うからいいけど。
……何度もそう考えて、失敗してきた俺だから抜けていると言われてしまうのかもしれない。
「そうなのよねぇ。あ、そうそう、このままリクさんと一緒に王都に行くと驚く人と会う事になるでしょうけど……ヴェンツェル将軍の親類だから大丈夫かしら?」
「え、伯父様と関係があるんですか? その、驚く人って……」
「まぁ、なんというか……本当は雲の上の人、かしら? ヴェンツェル将軍とは関係あるようなないような。まぁでも、改まった場ならともかく、普段は気さくな人で多少失礼でも気にしない人よ」
「く、雲の上の人、ですか……なんだか緊張してきました」
「今からそれだと、身が持たないかもしれないわね……ちょっとはやまったかしら……」
なんて、モニカさんとカーリンさんが話しているけど、その驚く人というのはもしかしなくても姉さんの事だろうか?
まぁ、エルサで王都……というか王城に行くならお城の中庭に降りる事になるだろうし、そうなると必ず姉さんに伝わる。
忙しくて迎えに出て来るかどうかまではわからないけど、確実に対面する事になるだろなぁ。
王城での俺の部屋が、不在時にどう使っているのかは知らないけど、俺がいる時は基本的に毎日来ていたし、結構間が開いてしかもできるだけ早く戻って欲しいという要請まで来ているんだから、姉さんが来ないわけがない。
「でもね、その人もリクさんの事を……」
「へぇ~、そうなんですね。でもなんとなくわかる気がします」
「そうよね。多くの人を救って、大量の魔物を殲滅して、貴族からも一目どころか称賛されているのに気取ったところがない。でもどこか放っておけなくて……」
「……えっと、俺の目の前で俺の事を話すのはちょっと……って、聞いていないよね、うん。わかってた」
話が盛り上がった女性達というのは、俺が小さく声をかけた程度では止まらないものらしい。
ともかく、王都へ向かってエルサで空を飛んでいる中、モニカさんとカーリンさんが何故か俺の話で盛り上がって、近くで聞いている俺はひたすら照れるというか恥ずかしかった。
こういう話って、本人の目の前でする事じゃないと思うんだけど……。
あと、可愛いとか放っておけないとかっていうのは、人によるかもしれないけどあまり男にとっては誉め言葉じゃないからねモニカさん。
……もっと、頼りがいのある男になろう、と心の中で決意する。
これから先も、クランの事があるからモニカさんに多くを頼ってしまうだろうし、これまでも散々頼りにしてきたのに関しては、頭の隅に追いやる事にした――。
「今日中に王都に到着したかったけど、仕方ないか」
あれから、完全に日が落ちてしばらく、野営の準備を手伝いながら一人呟く。
アルケニーとの戦いで多少時間取られてしまったため、暗くなってから到着かなぁ……という予想に反し、まだヘルサルから王都へ三分の二程度来た辺りにまでしか来れていない。
このまま王都へ向かったら、到着は日の出近くになってしまいそうなので、断念して野営をしているというわけだ。
夜通し飛んでいたらワイバーン達も、乗っている兵士さん達も疲れてしまうから仕方がない。
疲れて、乗っているワイバーンから落ちたら大変だし。
それにエルサもさすがに嫌がるからね……飛ぶ事は好きでもやっぱり疲れとか、魔力の消費とかもあるし。
まぁ大きな理由はお腹が減ってしまうからなんだけど。
「それと魔物の素材は、ちょっと惜しかったかなぁ。運べないから仕方ないんだけど……色々と活用できたかもしれないし。俺じゃなくて、国の方がこれから色々と物入りになるのになぁ」
到着が遅れた理由は、別に道に迷ったとか飛ぶ速度が遅かったとかではない。
そもそも、空を飛んで山や川、森などを無視してヘルサルから一直線に王都へむかっているため、道に迷う事なんてないし。
単純に、アルケニーと戦って再出発した後、モニカさんとカーリンさんが俺の話で盛り上がっていたのはともかくとして、あれからすぐに別の魔物の集団を発見したからだ。
正直、ずっと二人の話を近くで聞いていられなかったので、助かったという気持ちが大きいけど。
ともかく、その魔物の集団……今度はゴブリンが上位種含む数十……百体近くを発見して放っておけないからと、戦った。
さすがに、ゴブリンジェネラルとかゴブリンキングみたいなのはいなかったけど。
アルケニーよりは、ゴブリン自体がそれぞれ大きな魔物じゃないし、こちらの人数も多いのでワイバーンにも協力してもらって空から急襲して楽に殲滅した。
あとは討伐証明部位を手早く回収するだけで、かかった時間は体感で数十分程度。
今度こそ王都にと再々出発したんだけど……また途中で別の魔物の集団を発見し……という事が数回あった。
その全てが、通常時よりも数が多い集団で、放っておいたら近隣の村などが危険だろうと、見逃す事はできなかったんだよね。
数体くらいなら、冒険者ギルドに依頼して討伐してもらう事もできるだろうけど、数が多いとそれだけ緊急性が上がるし、依頼をして冒険者が来るまでに多少時間がかかるから。
ともあれそうこうしているうちに、王都へ到着する予定が大幅に遅れてしまい、獅子亭が営業終了してで遅めの夕食を食べるよりも、さらに遅い深夜に野営準備をしているってわけだ――。
何やら魔物の集団が王都への途中に点在していたようです。
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