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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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先制攻撃と皆の様子



「私とカイツに続いて! ウィンドブラスト!!」

「こちらも全力で行くぞ! ウィンドバースト!!」


 まだ数十メートル前後離れている、禍々しいというか聞いていた通りの姿を見せるアルケニーの集団に、フィリーナとカイツさんが同時に魔法を放つ。

 二人の魔法が炸裂し、暴力的な風が巻き起こったのだろう……こちらに向かう集団の先頭にいるアルケニー達の巨体が巻き上げられた。

 フィリーナ達の役目は、アルケニーにダメージを与える事よりもまず、弱点である腹部を狙えるようにする事。

 そして、二人の魔法に続くように、兵士さん達が魔法を解き放った……。


「フレイムランス!」

「アイスアロー!」

「ウィンドスラスト!」

「アースダンプ!」


 炎の槍、矢、氷の槍や矢……さらに風や土などの魔法が兵士さん達それぞれから放たれる。

 今回は属性を合わせず、とにかく皆が使える魔法で貫通力があるような魔法を全力で放つ事にした。

 それぞれの魔法は、巻き上げられたアルケニーを的確に捉え、いくつかの魔法がアルケニーの腹部を貫通していくのが見えた。

 本当に、腹部が弱点のようであっさりと言う程ではないにしても、魔法で貫けるのは間違いないみたいだ。


 それでも虫だからなのか、腹部を貫かれた状態で何かの液体を漏らしつつ、それでも地面に落ちた後は動いてこちらに向かおうとしているけど。

 遠いからよく見えないけど、あの液体がエルサが嫌っていた緑色の液体ってところだろう……アルケニーの血ってところかな。

 ちなみに、聞いた話通りアルケニーの外皮、お腹以外に当たった魔法は傷をつけるくらいはしたのかもしれないけど、貫くどころか突き刺さる事もななかったようだ。

 お腹以外は硬い、というのは本当のようだね……離れて魔法よりも、近付いて次善の一手で斬り裂く必要があるみたいだ。


 ともあれ、今の魔法による先制攻撃で二体から三体くらいは倒せたっぽい……他のアルケニー達に紛れてはっきりとは見えないけど、数個の魔法が突き刺さって地面に落ちたから。

 でも、少し数が減らせただろうとしても、油断しちゃいけない……。


「次は私の番ね!足止めするわ。収まる頃に突撃して! フレイムウォール!!」


 最後はモニカさんの魔法が解き放たれる。

 それは、アルケニーと俺達の間の広範囲に炎の壁を作り出す。

 さすがに一直線にこちらへと向かっていたアルケニーだけど、多少炎に強くても驚いたのかなんなのか、様々な音に紛れて聞こえる足音が小さくなった。


「何度も言うようだけど、油断しないように怪我には気を付けて!」


 戦闘という意味では既に先制攻撃で開始しているけど、とりあえず念のためもう一度注意をするように叫ぶ。

 俺の声を聞いた皆が、それぞれに持つ武器を握り混みつつ、それぞれの班で話すのが見えた。


「まさか、空の旅をするだけでなくアルケニーなんかと戦う事になるとは……」

「厄介な罠を張る魔物で、Bランクとはねぇ。でもまぁ、やるしかないでしょうね」


 と話しているのはルギネさんとアンリさん。

 リリフラワーの人達は元ギルドマスターの指導やマリーさんの特訓、さらにセンテでの戦いを経て、冒険者ギルドのヤンさん達はBランク相当の実力を備えているという評価だった。

 まだランクはCランクだけどアルケニー相手には引けを取らないだろう。

 王都に行ったら、クランが開始される前にはBランクに昇格するかもしれないね。


「全力で魔法を放った後に、突撃とは……人使い、エルフ使いが荒い」

「まぁでも、私達は魔法で援護だからね」

「あぁ。フィリーナ達は少し距離を取りつつ、私達と近くにいる人達の援護を頼む」

「魔法を使えて、広い視野を持つフィリーナさん達だから安心して任せられます」


 そんな話をしながらアルケニー達の方を、収まり始めた炎の壁を睨んでいるのは、ため息混じりのカイツさんとフィリーナ、ソフィーとフィネさんだ。

 四人が一つの班だけど、フィリーナとカイツさんは近接戦闘が得意ではないため、魔法で援護をする役目になっている。

 ヴェンツェルさんとツヴァイの研究所に乗り込んだ時に少し近いけど、二人には距離を取ってもらって兵士さん達などの援護も少しは担ってもらう。

 とはいっても、基本的にはソフィーとフィネさんの近くにいるように、とはしているけどね。


 次善の一手を使えないリリフラワーのメンバーとは違い、使えるソフィー達はアルケニー相手でも戦えるだろう。

 フィネさんは元からBランク冒険者で、経験も豊富だからね。


「はぁ……こうしてなし崩しに協力させられるのね」

「文句言わないの! 魔物なんてさっさと倒すに限るの。暴れられるの」

「ユノはただ暴れたいだけじゃない……」

「はぁ……ロジーナ様の雄姿、目に焼き付けなければ」


 などと話して、ため息交じりどころか本当に溜め息を吐いているロジーナと、楽しそうなユノとレッタさん。

 レッタさんの楽しそうという様子はユノとはまた違った意味だろうけど。

 ……まぁ、あっちの三人はアルケニーだろうと難なく戦うだろうから、特に問題はなさそうだね。

 ユノとロジーナで、ヒュドラーとレムレースの足止めができるくらいだし。


 レッタさんの実力とかは……わからないけど。

 ちなみに、レッタさんの魔力誘導でアルケニーをある程度誘導できないか、特に復元された魔物だとしたらやりやすいのでは? と思ったんだけど、興奮状態のような感じでこちらに向かって来ているのでそれは難しいのだとか。

 落ち着いた状態でなら、向かう方向を変えたりはできるみたいだけどね。


「なんというか、本来はあれだけの魔物の集団を見たら恐れる方が一般的だとは思うのだが……」

「あれ以上、なんて生易しい言葉では済まされない経験をしていますからね。リク様がいて下さる事もありますが……あの程度ならなんとでもなる気がします」

「まぁ、センテでの戦いを経た人からすれば、あれを見ても恐れはないでしょうけど、油断は禁物よ?」

「……アルケニーか。足なのに刃にもなっているという。何かに使えないものか……?」


 そう話しているのは、ソフィーとフィネさんとフィリーナ、あとカイツさん……は話というより別の事に意識が向いているようだけど。

 一応フィリーナが注意をしているけど、四人とも体の力が抜けているようで、油断なくアルケニーの方を見て構えている。

 センテが囲まれた時や、ヒュドラーが迫って来ている時など、アルケニーが約二十体……さっきの魔法による先制攻撃で少し減ったから、二十体未満か。


 それくらいなら、隙間なくひしめく魔物が押し迫っていたセンテの経験があれば、非常事態であっても平常心を保てるんだろうね。

 四人とも大丈夫そうだ。


「油断するなよ……アルケニーの刃はワイバーンの鎧すら斬り裂く可能性がある。そしてどんな鎧を身に着けていようと、糸に絡め取られたらどうしようもない。いや、鎧を着ている分特に厄介だ」

「「「はっ!」」」


 兵士さん達の方は半分以上がヴェンツェルさんの連れて来た王軍兵士さんで、センテでの戦闘を経験していないから、少し緊張気味のようだ――。




兵士さん達はセンテでの戦闘経験のない人の方が多いようです。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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