それぞれの目的で別れて行動
「さて、それじゃ俺は冒険者ギルドに行くけど、他の皆は……」
小さくなったエルサを頭にくっつけ、東門からヘルサルに入ってワイバーンを衛兵さんに預ける。
その後、全員でこのまま移動するのもなんだしと、俺以外がどうするのか意見を聞いてみた。
人数も多いし、冒険者ギルドに用があるのは俺だけだからね。
あと、またしても俺以外全員女の子もしくは女性のため、俺が悪目立ちしそうだと思っているのもある。
「私はリクさんに付いて行くわ。お金に関わる事だから、一応見ておきたくて」
「それなら、私も行こう。少し前にヘルサルにはいたが、冒険者ギルドには行っていないからな」
「少し街を見て回りたいわ。大きな街だし、意外と掘り出し物があったりするのよね」
「では私は、フィリーナさんと一緒に行きましょう。ある程度慣れている人たちも多いみたいですが、エルフが一人で歩くと目立ちますから」
「私は、お婆ちゃんの所に行くの! リクに昨日聞いて会いたくなったの! ロジーナも行くの!」
「なんで私が強制的にユノと一緒なのよ……まぁ、他に行く所もないし、街を見て回る気分でもないから、いいけど」
「ロジーナ様のいる所に、私はいます。ですのでもちろんついて行きます!」
「私達は、もちろんリク様のお傍に」
「名目とはいえ、護衛ですからねぇ。必要あるかはともかくとしてぇ、少なくともセンテやヘルサルにいる間は、一緒にいた方がいいでしょうねぇ」
ふむふむ……えっと、皆の意見をまとめると、モニカさん、ソフィー、アマリーラさんとリネルトさんは、俺と一緒に冒険者ギルドに。
フィリーナとフィネさんはヘルサルの観光みたいな感じかな。
ユノ、ロジーナ、レッタさんは小物売りのお婆さんの所か……なんとなく心配なので、ずっとじゃなくてもいいけどある程度は一緒か近くに、とフィリーナ達に頼んでおこう。
ロジーナとレッタさんが、今更変な行動を起こすとは思えないからいいんだけど、ユノがはしゃいで回りそうだからね。
レッタさんはロジーナに対してくらいしか動きそうにないし、監督役が欲しかった。
「それじゃ、また後獅子亭でー!」
そう言って、それぞれに別れて行動を開始する。
センテを出発前にお昼を食べて来たから、昼食はいらないけど、適当に回ったりやる事をやって、夕食は獅子亭で取る事になったので、集合もそこだ。
まぁ俺達は営業後の食事になるだろうから、少し遅めになると思うけど、帰りはエルサやワイバーンでひとっ飛びだからね。
こういう時、昼夜問わず自由に移動できる手段があるのはありがたい……これまでも散々利用しているけど。
ってまぁ、エルサを移動手段って言ったら怒りそうなので、口には出さないよう気を付けないとね。
「えっと、エレノールさんはいますか?」
「これはリク様。少々お待ちください」
「はい」
皆と別れた後、モニカさん達と冒険者ギルドに入り、受付でエレノールさんがいるかの確認。
奥に行った職員さんを見送って、待つ間に建物内を見渡してみると……見知った顔がちらほら、こちらに手を振っていたり、頭を下げていたり、様々な反応を見せてくれている。
昨日と比べて、かなり冒険者の数が多いなぁ。
「リク、どうやらこれから冒険者達にクランへの参加意思について、最終確認が行われるみたいだ」
「成る程、だから見知った冒険者さんが多いんだね。でもそれじゃ、副ギルドマスターのエレノールさんも忙しいかな? タイミングが悪かったかも」
と思ったけどそうでもないみたいで、エレノールさんが奥の部屋で待っていると、戻って来た職員さんに通された。
特に忙しいという意程じゃなかったのかな? まぁ、冒険者さん達に色々な話をする前に、俺への対応って事かもしれないけど。
ちなみにソフィーは、そちらに興味があるというか他の冒険者さん達と交流したり、ヘルサルでの依頼状況の確認などのため、受付に残った。
本人曰く「金の算段や手続きなのだろう? だったら、私は役に立たないしモニカに任せておけばいいからな」との事だったけど、情報収集をするつもりもあったのかもしれない。
意思確認が終わって、それでもクランに参加するのであれば、後々仲間になるという意味でもあるからね。
交流というのも嘘ではなく、今のうちにある程度知っておこうというつもりなんだろう。
……俺ももう少し、冒険者さん達と交流した方が良いのかもしれない。
まぁそれは、クランができてからにしようかな。
「失礼します」
「お待ちしておりました、リク様。必要な手続きの書類は全て、ご用意しております」
通された部屋、ギルドマスターのヤンさんがいる部屋とは別の部屋だけど、そこでは数十枚はあろう紙束を持ったエレノールさんが待っていた。
……もしかして、昨日の今日であの書類全てを作ってくれたとかなのかな? だとしたら、仕事が早いというだけでなく随分頑張ってくれたんだなと思う。
「ありがとうございます。けど、冒険者さん達への説明会みたいなのが開かれるようですけど、エレノールさんはそちらに行かなくて大丈夫なんですか? なんなら、待つなり改めて来るなりしますけど……」
急いで作ったであろう書類の束に視線をやりながら、念のため聞いてみる。
「いえ、あちらはギルドマスターと他の職員に任せてありますから。リク様のクランとリク様への対応、どちらも我が冒険者ギルドヘルサル支部にとって、最重要事項ではありますが、リク様本人をお待たせするわけには参りません。それに、申し訳ありませんが少々量が多くなってしまい……」
そう言いつつ、俺に書類の束を渡してくるエレノールさん。
「確かに、思っていたよりも多いですね……」
「はい」
枚数も多いし細かい文字が並んでいるから、確認する量も多そうだから、待たせる時間を考えると遅くなる……という事だろう。
「手続きが終わる頃には、意思確認も終わっていると思われますから、ちょうど良いのです」
書類などの確認で時間がかかるから、冒険者さん達の意思確認が終わった報告もついでにやれそうなのか。
説明会が終わるまで俺が待っていたりすると、時間がずれてさらに手間になるってところかな。
「成る程、わかりました。それじゃモニカさんも……」
「任せて、私も確認するわね」
話しながらエレノールさんに促されて、部屋にあるテーブルに書類を並べて椅子に座り、モニカさんと一緒に確認を始める。
びっしりと書かれている内容は、規約とかそういう感じではあるけど、申し訳程度に俺への守るべき内容が書かれている以外は、ほとんどエレノールさんなり協力してくれる人に対してのものだった。
「この協力してくれる人、というのは見つかったんですか?」
「まだ、話しを通した程度です。ですが、私一人で全てを扱うには規模が大きくなりそうでしたので、一部信頼のおける者も、関われるようにと」
「そういう事ですか」
規模が大きくなるというのは、昨日も言っていたけどエレノールさんの読みでは必ず売れる、という事と俺が出せる資金の多さからだろうと思う。
まぁエレノールさんは本業の副ギルドマスターの業務があるし、全部一人でやってもらうわけにはいかないだろうし、信用できる人が関わってくれるなら助かる、かな――。
もしかしたら多くの人が関わるようになるのかもしれません。
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