ルギネさん達ともう一人の同行者
「歓迎しますよ。まぁ、まだクランそのものも作る前段階ですけど……」
「それでも、ルギネはリクさんのクランにどうしても参加したかったのよねぇ。ふふふ。もちろん私も、過去の清算ではないけれど、協力できればと思っているわよ」
「ど、どうしてもとか、そんなわけないだろうアンリ! ただ私は、アンリやグリンデを苦しめた帝国に対して、何かしたいと思っただけ……だ……」
最後は何故か、俺の方をちらちらと見て尻すぼみになるルギネさん。
まぁ動機はどうあれ、ルギネさん達は現時点で帝国に対するためにクランを作る事情を少しは知っている人達だ。
それでも、参加意思を固めてくれたのは、協力してくれる人がいるというのは、単純に嬉しい。
「まぁまぁ、とりあえずですけど……」
とりあえず、ヤンさんと話していた事などを伝え、もう少し獅子亭で働きつつ準備をして、王都に来るくらいでいいという話をした……んだけど……。
「いや、できればリク達が王都に行く時、付いて行こうと考えている。リクに断られなければ、だが……準備も既にできているんだけど……」
こちらを窺うように、上目遣いで見ながら言うルギネさん。
隣でモニカさんが、成る程あざとい……なんて言っているのは気にしない方がいいだろう、多分ルギネさんの素だろうし。
ともあれ、俺達と一緒にか……まぁエルサに乗るなり、連れていくワイバーンに分乗するなりすればいいし、余裕はあるから問題ないだろう。
「うん、大丈夫ですよ。ワイバーンかエルサに乗ってもらうか、どちらかになりますけど……」
ワイバーンは数十体いるし、人だけなら俺やモニカさん達だけでなく、ルギネさん達全員乗せても余裕はある。
持って行く荷物とかもあるだろうから、それはワイバーンに分けて持ってもらえばいいだろうし。
エルサもワイバーンも、特に嫌がる事はないだろうからね。
「良かった。それじゃ……」
「あ、でも。来てもらうのはいいんですけど、早く王都に行ってもやる事がなくて……さっきも言いましたけど、まだクランそのものができる前なので。しばらくは、王都で他の冒険者さんと同じように活動してもらうようになるかと」
王都に行ってすぐ、クランとして活動できるわけじゃないというのは言っておかないとね。
「それで構わないわ。元々王都には行こうと思っていたし、王都なら依頼にも困らないだろうから」
「もしもの時は、この獅子亭で学んだ事を生かして、適当な場所で働く事もできそうだからねぇ」
頷くルギネさんの言葉を継いで、アンリさんがそう言った。
まぁ確かに、獅子亭で仕込まれた接客術? みたいなのがあれば、働く場所には困らないかな。
人手不足かどうかはわからないけど、王都はヘルサル以上にお店が多いからね。
まぁ、リリーフラワーのメンバーは皆方向性は違っても見目麗しい人ばかりで、看板娘とかになっていざクランが開始されたときに辞めづらくなったりするかもしれないけど。
「それじゃあ、明後日王都に向けて出発する予定ですから……準備はできているんでしたね。それじゃ明後日センテで。あ、でも、ヘルサルで拾う方がいいのかな?」
獅子亭があるから難しいかもしれないけど、マックスさん達も見送ってくれるならヘルサルの方がいいのかな?。
ルギネさん達も、わざわざセンテに来るのは手間だし。
「そんな、こちらが連れて行ってもらう立場なのだから、センテまで赴こうと思う」
「そうですか、わかりました。それじゃ明後日センテで」
「了解した」
「了解したわぁ」
ルギネさん、アンリさんが了承して頷き、グリンデさんやミームさんもそれに続く。
グリンデさんは、アンリさんの事情を聞いた時の事もあってか、俺への態度がこれまでより幾分か軟化しているようだ。
いつまでも突っかかられるのは困るから、少しは仲良くなれたって事でいいのかな。
ミームさんは相変わらずマイペースに「干し肉をいっぱい用意しないと」なんて言っていて、妙な干し肉への執着を見せるのはいつもの事だったけど……でも、半日もあれば王都に到着するから、干し肉はあまり必要ないんだけどなぁ。
というか、何故そこまでミームさんは干し肉にこだわるのか。
肉類全てに対してっぽくもあるけど、特に干し肉への執着が凄い。
……まぁ、その辺りは追々知って行けばいいかな? クランに所属してくれるんだから、そのうち話す機会もあるだろうし。
話してくれればいいけど。
「そうそう、ルギネ達がセンテに行くならあの子もついでに連れて行ってくれるかい?」
「あの子?」
「そうですね。ヘルサルとセンテの間は現状危険がありませんが、どうせなら一緒の方がいいでしょう。私達も、気心が知れた相手ですし、必要かはともかく護衛もかねて連れていきます」
「頼んだよ」
首を傾げる俺を他所に、マリーさんとルギネさんの間で何かが決まった。
センテに連れていく人って誰だろう?
「えっと……?」
「……私もよくわからないわ」
マリーさんはすぐにマックスさんのいる厨房の方へ行ったし、ルギネさん達はすぐにセンテへ行くための話をアンリさん達と始めたので、とりあえずモニカさんの顔を見た。
けどモニカさんも、当然ながらよくわからないと首を振る。
一体、誰をセンテに行かせたいのだろうか……?
まぁ教えてもらえないという事は、俺が気にする必要がないのかもしれないけど、気になるものは気になるよね……。
なんて考えていたら、マックスさんが作ってくれた料理が並べられて、それぞれ食事を開始してから判明した。
というより、本人から教えてもらった。
「うまうま、なのだわ~」
「えっと、リク様……その、私も一緒に王都に行きますので、明後日ですか。センテに行ってお待ちしております」
「カーリンさんも、ですか?」
どうやら、さっきマリーさんがルギネさん達にセンテへ一緒に、と言っていたのはカーリンさんの事だったみたいだ。
でも、王都へも一緒にというのは……?
「リクが言っていた事だろう? クランの食事事情を良くするために、料理をする人が欲しいとな」
「それは確かに言いましたし、誰か心当たりがないかってマックスさんに聞きましたけど……って事は、カーリンさんが?」
そういえば、マックスさんに聞いた時に心当たりがある様子だった。
それがまさか、カーリンさんの事だとは思わなかったけど。
「まぁな。カーリンは料理人としてもう一人前だから、任せられる。獅子亭の料理も教え込めたしな。獅子亭の二号店を出すのも視野に入れて、任せられるくらいだ。だがまぁそちらはルディ達がいるからな」
「成る程……」
カーリンさんは、最初から料理人の基礎というかちゃんと料理ができる人だったからね。
だから、獅子亭の味を教えるのはマックスさんとしても楽だったというか、簡単に終えられたってところだろう。
いや、獅子亭で働き始めてからの短い期間を考えて、簡単そうに思えるだけで実際には厳しかったんだろうけどね。
マックスさんが妥協するとは思えないし、それだけカーリンさんが頑張ったって事でもあるかな――。
美味しい料理を作れて信頼できる人が見つかったようです。
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