クラン所属希望者のリスト確認
エレノールさんへの信頼云々に関しては、実はヤンさんからもお墨付きをもらっていたりする。
なんでも、エレノールさんはお金回りの事も含めて、結構神経質というか真面目で細かい性格らしく、ほんの少しの数字の違いすら許さない人なんだとか。
まぁ、経理とかには必要な素質を持っているってわけだね……会社とかの経理なんて、日本ではまだ学生だった俺にはよくわからないけど。
エレノールさんが着服をするとは思っていないけど、もしやったらやったで罰するとかはもちろんながら、そこまで警戒していなかったりもする。
こういう考えはあまり良くないのかもしれないけど、元々お金を使って減らすための手段だったからね、惜しくない。
信頼しているから、任せられるというのが一番大きな理由なのは変わらないけど。
「はぁ……なんかちょっと疲れた……。モニカさん、ヤンさんそちらの話はどうなりましたか?」
エレノールさんが、共同口座や今後のための手続きの書類を作るらしいので、エルサを回収して頭にくっつけて溜め息を吐きながらモニカさん達の所へ戻る。
同じ部屋の中だから、そこまで離れていたわけじゃないけど。
手続きのために、王都に戻る前にもう一度ここに来ないといけなくなりそうだ……もし間に合わなければ、エレノールさんが王都の冒険者ギルドに送ってそこでという事らしい。
できればこういう事は顔を突き合わせてやりたいらしい、モフモフ開発もあるし副ギルドマスターとしての仕事もあるんだから、あまり無理はして欲しくないけど。
「おかえりなさい、リクさん。随分と白熱していたけど? あ、これがリストアップしたクラン参加してもらえそうな冒険者パーティのリストね。できるだけこれまでにトラブルの少ない、けど実力も性格も評判良さそうな人達をヤンさん達と選んでおいたわ」
「ありがとう、モニカさん。まぁ、ちょっとお金の事で色々とあってね……」
「エレノールでしたら、お金の事は全て任せて問題ないでしょう。私より……少なくとも、そこらのどんぶり勘定な冒険者よりも、全然信頼できます」
「ははは……」
まぁ、冒険者の人達はお金勘定が苦手な人が多いらしいと聞くからね。
モニカさんは獅子亭で商売をする両親の元で学んでいたけど、そういう教育みたいな事を経験してこなかった人が多いみたいだ。
識字率は姉さんの働きかけで高いらしいけど、計算に関しては加算と減算は一応できても、乗算、除算といった四則演算が全てできる人は、そもそもにあまり多くないとか。
この辺りは、姉さんもどうしたらもっと浸透するか、教育をどうするかとか、頭を悩ませているらしい。
「ふむふむ……大体、森の魔物掃討で活躍したパーティなんですね?」
エレノールさんの事はとりあえず置いておいて、ひとまずクランに所属してもらう冒険者パーティ。
渡された書類にはそれぞれ、パーティ名、人数、得意な戦闘法や依頼達成の履歴等々の詳細が書かれている。
初めて冒険者登録をしたギルドの場所なども書かれているけど、こういうのも記録されているのか。
思っているより、冒険者ギルドは細かい事も活動履歴として記録しているみたいだ。
「えぇ、皆様にはそれとなく職員の方からクランについて伝えていたのですが、センテとヘルサルにいる冒険者パーティのほとんどが希望しています。ギルドやリクさん達で選別するとも伝えてあるので、森の魔物掃討依頼はそのための評価をする場だった、と認識している冒険者も多かったのです」
「成る程……」
評価される場だと思っていたため、参加するイコールクランへの所属希望みたいになっていたわけか。
それで、評価点を良くしようと森の中で頑張って結果を出した……と。
「ん、リリーフラワー……ルギネさん達もいますね」
「リクさんの方から誘っていたから、ルギネさん達が希望すれば所属は確定だけど、一応確認するために私がお願いしたの。ソフィーは以前からの知り合いだし、獅子亭でも働いてくれているから信頼できる人達なのはわかるけど、私達は以前のあの人達の事を知らないでしょ?」
「確かにそうだね。ふむふむ、地道に依頼をこなす堅実なパーティとして頑張っていたみたいだ」
ルギネさん達と知り合ってからの事はともかく、それ以前にどんな活躍をしていたかなんて全然知らない。
アンリさんの過去は聞いたけど、パーティとしての話ではなかったからね。
書類によると、冒険者になった場所はそれぞれ違うようだけど、パーティ結成はセンテの冒険者ギルドみたいだ。
ランクにこだわらず、できる依頼をできる時に確実にこなしているようで、魔物討伐だけでなく困って依頼を出した人を助けたり、俺もやった事のある薬草採取などの依頼もやっている。
他パーティ、特に男性相手のトラブルが何度かあったみたいだけど、それは男性側がルギネさん達女性パーティをナンパする目的とかが原因らしい。
基本的にルギネさん達は悪くなく、原因となるトラブルはほぼないと……まぁ、俺が最初に会った時のルギネさんの恰好、露出の多い恰好でそれがトラブルを招く要因になっていたような気はするけどね。
今は、マリーさんの厳しい指導によって矯正されて、一般的な格好になっていたりする。
あと、他の女性冒険者からの評価は高いらしい、グリンデさんを見ていたらなんとなくわかるけど、ルギネさんは女性にもてるタイプというか、自覚してやっている節があるから、そこも納得。
さすが百合の花……。
「ん、えーっと、この利敵行動の可能性、というのはなんでしょうか? 全部×が書かれていますけど」
書類の中から【華麗なる一輪の花】のパーティも見つけつつ、確認する中で冒険者各自の項目の中で「利敵行動の可能性」という項目があるのが気になった。
利敵行為……つまり敵の利益になる行為をするかどうか、みたいな事だろうか?
ざっと見てみると、渡された書類に書かれている人は全て×と記されている。
「それは、帝国との関わりが疑われていないか、実際に向こうへ情報を流すなどの行動を行っていないか、という確認事項ですね。ヘルサル、センテでは今いる冒険者を調べ、確認しています。そのうえで、疑わしい者は排除するようにしていますが、リクさんに渡したリストの者達は全てその疑いのない信頼のおける人物たちという事になりますね」
つまり、帝国からのスパイではないかの確認事項って事か。
×と記されているから、疑わしい時や確実に向こうと通じている人には〇と書かれたり、何かメモ書きのように疑わしいなどと書かれるのかもしれない。
ともあれ、全て確認済みで信頼できるのであれば安心だ。
まぁ、少し前に一斉に調べたからね……ちなみに、帝国出身者のアンリさんやグリンデさんも、以前俺が直接話を聞いたのもあるからか、×になっている。
「一応確認項目として残してありますが、基本的にリクさんに渡すリストやモニカさんに確認してもらう人の中には、疑わしい者は除外するようにしています。まぁ、他のギルド支部などでは、多少疑わしい者も混じるでしょうが……こちらは、あの大規模で本来なら絶望的な戦いがあったおかげと言うべきか、調べやすかったのです」
ヘルサルとセンテにいる冒険者は、身元の保証がすんでいるようです。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。






