王軍駐屯地へ
「センテとヘルサル周辺の近況を記した報告書です。今から送るより、リク様に持って行ってもらった方が早いと思いましたので」
「成る程、わかりました。必ず届けます」
報告書って事は、重要書類でもあるのか。
まぁ、早く確実に届くのだから、俺に任せようと思ったんだろう。
「私からは、特にないが……そうだな、アマリーラとリネルトの事を頼む」
「はい。二人共、俺なんかよりしっかりしている……しっかりしているかな? うん、多分。だと思いますけど、任されました」
「まぁ、リネルトはともかく最近のアマリーラ、少々不安になる気持ちはわかるがな。それにしても、リク殿がいなくなるのは、少々寂しいと思ってしまうな……」
「何を言っているんですかシュットラウル様、寂しいなんて思えないくらい、これから忙しくなりますよ? センテ周辺の整備がまだまだ残っているんですから」
「う……む。それはそうなのだが……マルクスはリク殿を追いかけるように王都へ戻るのだから、また会えるだろうが、私はしばらく会えないからな……」
「ははは……」
シュットラウルさんが、寂しいと思ってくれるくらい親しくさせてもらっている、というのは光栄だし嬉しい。
ここしばらく、毎日のように話していたからね……時間が合わない時もあったけど、実は結構俺達の宿に来たり、夜にお風呂へ入った時に一緒になった事も何度かある。
宿の大浴場は広さで王城に負けるけど、窓から見晴らしのいいセンテの街並みを見るのは楽しかったし、お風呂を満喫する一つの要素だ。
そういう意味では、俺もセンテを離れるのは少し寂しく感じるかも……エルサもあのお風呂は気に入っていたし。
「なんにせよ、またヘルサルやこのセンテに来る事もあるでしょうから、会えますよ。まぁ、その時シュットラウルさんがこちらにいれば、ですが」
「むぅ、私の住居をこちらに移すか……いや、爺が何を言うかわからんな。しかし……」
シュットラウルさんは侯爵様なわけで、今はセンテで色々な事があったからいるけど、本来は別の場所から領内を治めているからね。
俺が来た時にまた、シュットラウルさんがいるかわからない、というような事を言ったら、真剣に移住を検討し始めた。
いや多分冗談のつもりなんだろうけど……冗談ですよね? もしシュットラウルさんがセンテに移住したら、代官さんがかわいそうな気がしますよ?
街や領地を治める人が近くにいないからこそ、代官という役職の人がいるんだから。
「んんっ! シュットラルウ様が移住を考える場合、陛下にもお伺いを立てなければならないでしょうから、この話はいずれ。――それでリク様、ワイバーン達の事なのですが」
「えぇ、はい。それは……」
貴族だから、勝手に住む場所を変えるのにも一人では決められないのか……それはともかく、マルクスさんから振られたワイバーン達の事。
ヘルサルとセンテが繋がったため、地上から人や物の行き来はできるようになったから、空輸便は必要なくなる。
馬車や馬よりも、ワイバーン達の方が早く行き来できるから利点がないわけじゃないけどね。
ともかく、そのワイバーン達はあくまでリーバーを頂点とした群れで、俺やエルサに従ってくれる存在となっている。
だから、俺がセンテを離れて王都に戻るというのなら、連れていくのが一番だろう。
ある程度街の人や兵士さん達も慣れてくれて、お互いにいい関係を築いてはいるようだけど……この先の事を考えると、有効活用するなら王都にいてくれた方がいいとも思う。
解氷作業も進んで、アイシクルアイネウムもここ二、三日は発生していないし、一応念のため今日も哨戒作業にあたってもらっているけど、大丈夫そうだからね。
アイシクルアイネウム自体も、兵士さん達が対処に慣れてくれて、正面からぶつかっても難なく倒せるようになっているらしいし。
多少の怪我人は出るかもしれないけど。
というか、センテにいる兵士さん達……いつの間にか結構強くなっているんじゃないかな?
俺がロジーナに隔離されている間、魔物を一切街に侵入せずに守っていたし。
ヒュドラー戦の事もあるけど、モニカさん達とも協力して隔離結界に穴を開けたり……いろんな経験をしたから、それだけ鍛えられたって事かもしれない。
ともかく、マルクスさんとワイバーンに関する話をした後、まだ何か考えている様子のシュットラウルさんに苦笑しながら、庁舎を後にする。
王都に出発する際には見送りをしてくれるらしいから、しばらく会えなくなるわけじゃないみたいだけども――。
――シュットラウルさんやマルクスさんと話した後は、解氷作業のお手伝いがなくなったエルサと一緒に、ヘルサルへ。
アマリーラさん、リネルトさん、モニカさんも同行してくれている。
王都へ戻るという事で、こちらでもいろんな人に挨拶をしておこうと思って、こちらに来た。
「えーっと、ここにヴェンツェルさんがいるって聞いたんですけど……?」
「これはリク様! ようこそおいで下さいました!!」
ヘルサルの東門から、少し森へ近づいた場所……テントが乱立している王軍の駐屯地、そこにヴェンツェルさんを訪ねた。
簡易的な仕切りをされたその場所の、入り口を見張っていた兵士さんに尋ねると、その場で膝立ちの最敬礼。
騎士の礼ってやつだと思うけど……それ、本当は姉さんというか女王陛下にやるやつでは?
なんて考える俺に対し、近くにいた全ての兵士さんが同じように膝立ちになって最敬礼をしていた。
「うむ、リク様に跪く者達……これが当然の光景ですな」
「当然にはして欲しくないんですが……えっと、とりあえず立って下さい。それと、ヴェンツェルさんは……」
満足そうに頷くアマリーラさんはとりあえず置いておいて、敬礼している兵士さん達に立つようお願いしつつ、ヴェンツェルさんの事を聞く。
「はっ! ご案内いたします!!」
「お、お願いします」
やたらと気合の入った言葉と共に、数人の兵士さんに促されてヴェンツェルさんの所へと案内してもらう。
その途中、俺を見た兵士さん達がそれぞれ最敬礼をしていくという、奇妙な光景が見られたけど……逐一立つよう言っていたら、時間がかかってしまうので平静を保つようにしておいた。
モニカさんやリネルトさんは苦笑していたけど、アマリーラさんがどんどん調子に乗っている様子になっていくのは、ちょっと面白かったかもしれない。
おかげで、アワアワしなくて済んだというのもあるかな。
「ヴェンツェル閣下、リク様がお見えになられました!!」
「リク殿が? 入ってもらえ!」
「はっ!」
駐屯地の真ん中あたりに大きな天幕があり、その入り口に向かって敬礼をしながら声をかける兵士さん。
周囲にいた他の兵士さん達は、ここに来るまでと同じように、俺に対して最敬礼している……もう少し楽にしていいんですよ? 言葉とかも崩していいのに……。
なんて考えつつ、天幕から聞こえるヴェンツェルさんの許可を得て中に入った――。
リクはどこでも過剰に歓迎されてしまうようです。
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