料理をする人はマックスさんにお任せ
「さすがリク様……自分の配下にそこまでのご配慮をなさるとは……」
俺が考えているクランでの食堂などについてを皆に話し終わると、アマリーラさんが感動して涙を流している。
いや、泣くほどではないと思うんだけど……。
他にも、リリーフラワーのメンバーも喜んでいるようなので、美味しい食事というのは十分に特典となり得るようだ。
……ルギネさん達の反応を見るに、クランに加入する方向で話はまとまっているんだろうね。
ともかく美味しい料理、というのは探せば色々とあるけど……それが安く毎日でも食べられるというのは、重要な事なのかもね。
王都では獅子亭と同じくらい美味しいお店はあっても、値段が高かったりするからね。
特にルギネさん達は、しばらく獅子亭で働いていてマックスさんの料理に慣れて、舌が肥えているからなぁ。
「それでリク、その事を今ここで話したのは?」
「元冒険者だったマックスさん達や、他の人達に意見を聞きたかったのもあるんですけど……」
それはまぁ皆の反応を見て、悪くない案だってのがわかったからいいんだけど。
あとは、実際にその食堂を始めたとして、料理を作ってくれる人だ。
それに関しての当てが俺達にはないので、何年も飲食店をやっているマックスさんにどうしたらいいかと聞くのが一番だろう。
王都だと、それなりに色んな店に行ったりはしたけど、こういう話ができるほどの所ってないからなぁ。
まぁどうしてもって時には、姉さんに相談して城の料理人さんから話を聞いたりとかもできるかもしれないけど。
ただそれは最終手段というかなんというか……。
「できれば、王都にいる料理人さんとか……美味しい料理を誰かに教えてくれる人とか、働いてくれる人なんかを知らないかなぁって。まぁ、マックスさんやマリーさんは、王都でのお店も知っていたので聞いてみるだけ聞いてみようと思ったんです」
ともあれ誰か紹介してくれればいいかな、くらいだ。
さすがに全てを頼るのは気が引けるし、マックスさんだって困るだろうからね。
「ふぅむ……王都にいる何人かの知り合いには聞いてみよう。だが、王都で探さなくとも王都に連れて行く、というのもできるだろう?」
「それはまぁ。ただ、冒険者みたいに色々と街や村を移動するのと違いますから……料理人さんがわざわざ別の街や村から来てくれるかどうか……」
「まぁ、一部の物好きだろうがな。そういったのもいないわけじゃないが、かなり少ないだろう。探すのは大変だ」
「ですよね? だから王都でって思ったんですけど……」
移動するのも時間がかかるし、その人が王都に来てくれるかどうかから交渉する必要があるからね。
まぁ、エルサや今ならワイバーンに乗ってもらって迎えに……という方法もあるにはあるけど。
「成る程、話はわかった。ちょうど心当たりもある事だし、リクやモニカ達もいるのなら安心して任せられるし本人も……」
「マックスさん?」
頷いたマックスさんが何やら小さく呟いているけど、よく聞こえなかった。
心当たりがある、というのは聞こえたけど。
「いや、気にするな。とりあえず、こちらでも探しておくようにしておこう。味に関しては保証できる人材をな。全てを賄える人数になるかはわからないが……悪い話ではないはずだからな」
「はい、よろしくお願いします」
やっぱり、マックスさんに話して正解だったね。
餅は餅屋と言うけど、冒険者さんの知り合いや兵士さんの知り合いなどは増えている俺でも、さすがに料理人さんのツテみたいなのはないからなぁ。
こういうのは、長年料理人として頑張って来た人に任せた方がいいだろう。
……マックスさんは元冒険者で、今でも現役と言えるくらい魔物と戦えたりする人だけど、美味しい料理を提供する人気なお店で料理をしているんだから、料理人という区分で間違いないと思うから。
「それじゃ、すみませんがまた明日もお願いします」
「またね、父さん、母さん」
「あぁ、明日も準備して待っておく」
「気を付けて、というのはリクがいるから大丈夫だろうけど……」
マックスさんとの話を終えて、満腹になった俺達は挨拶をして獅子亭を離れる。
マリーさんだけでなく、カーリンさんやルディさんなどの獅子亭で働く人達、リリーフラワーのメンバーも手を振って送ってくれた。
東門に向かいながらの道中、アマリーラさんが「さすがリク様」とクランでの食堂の件や獅子亭の事をしきりに褒めていたけど、食べた夕食が美味しかったからだろう。
食堂の案はともかく獅子亭は俺じゃなく、マックスさんの腕のおかげなんだけどね。
あと、食べたばかりなのに先程の夕食を思い出して、よだれを垂らすような勢いだったのは……アマリーラさんの名誉のために見なかったことにしておいた方がいいだろう。
獣人だから、美味しい肉系料理が好きなのだろうか、と思うのは偏見かな。
何はともあれ、エルサやユノに続いていっぱい食べる人が増えたみたいだ――。
翌日、昨日の戻って来なかった女性冒険者の事があったからだろう、二度目の魔物掃討のための森へ冒険者さん達を送る前に、ヤンさんを始めとした冒険者ギルドの職員さん達が厳重に注意をしていた。
それを面倒そうにしている人はいるけど、話半分だったり、適当に聞き流すような人がいないのはセンテで魔物と戦った人が多いからだろうか?
なんて考えていたら、女性冒険者さん達を連れ戻すときワイバーンと一緒に迎えに来た職員さんが、俺が見ているからだと教えてくれる。
俺が見ていたら、何故皆真面目になるのだろうか? とよくわからなくて首を傾げていたけど、そういうところはリクさんらしいとモニカさん達に笑われてしまった。
うーん、やっぱりわからない。
ともあれ、再び冒険者さん達は森へと出発。
昨日と同じく、アマリーラさんとリネルトさん、フィリーナは冒険者さんに少し遅れてから、追いかけるように出発した。
昨日と違うのは、多くの冒険者さんが森に入る場所だ。
ヘルサル近くの森西側は昨日のうちに大まかに魔物の掃討を終えたので、今日はそれぞれの冒険者さんが昨日進んだ場所からの出発。
さすがに森の中からというわけにはいかないので、その近くから森に入るといった具合だけどね。
俺とモニカさん、カイツさんも昨日とは違い、今度は東側のセンテ近く……というより、凍った大地の方から森へと入る事にした。
進行具合から、今日中に森東端に到達する冒険者さん達も出るだろうし、南からよりも逆側から見て行った方がいいと判断したからだ。
以前の森なら端から端まで魔物と戦いながら辿り着こうとしたら、もう数日かかるはずだけど、半分くらいはなくなってしまっているからね。
おかげで、森全体を見て回るのが楽になったのはいい事と言えるのかどうなのか……。
ともかく、リーバーとワイバーン達に分乗して、俺とモニカさん、カイツさんの三人は凍った大地の方から、というか荒野になって見晴らしのいい場所へと向かった――。
もうしばらく、森の魔物掃討をする人達を見守る必要がありそうです。
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