女性冒険者行方不明事件の解決
「リク様、迅速な救出ありがとうございます」
「いえ」
女性を降ろして体を伸ばしつつ、リーバーを撫でたりしていると、俺と一緒に戻って来たリーダーさんからも話を聞き終えたのか、後から来た女性から話しかけられた。
革製の鎧を身に着けて、背中に槍を持っているので、付き添いの冒険者さんだろうか?
もう一人の男性の方は、顔見知りらしく何やらリーダーさん達と談笑しているけど……そちらは特に何の変哲もない服を着ているくらいなので、あちらが冒険者ギルドの職員さんだろう。
と、思っていたら……。
「全員の生存を確認しましたので、ギルドにもいい報告ができそうです。あちらの冒険者達には、我々ギルドから注意をしなければいけないでしょうが……」
「そうですね。って、我々って事は……ギルドの職員さんですか?」
「え、あ、はい。そうですが……」
俺に話しかけてきた女性で、冒険者風の人が冒険者ギルドの職員さんだったらしい。
知らない人が見たら、装備とかで絶対勘違いするよね……。
ともかく、そのギルド職員さんから軽く話を聞くと、元冒険者で怪我がもとで引退して職員になったらいく、槍とか鎧はその時の物だとか。
リーバーが戻って、カイツさんがフィリーナからのメッセージを受け取り、無事だという確認は取れたけど森に行くのだからと現役時代の装備でここに来たという事らしい。
ちなみに、本当の付き添いの冒険者さんはリーダーさん達と談笑している方の人で、森に入るような装備ではない見た目ながら、服の下など各所に投げナイフなどの色んな武器を隠し持っている暗器使いだとか。
……紛らわしい。
その付き添いの冒険者さん、「華麗なる一輪の花」パーティとは顔見知りらしく、親しそうに話している。
奥さんと子供が待っているから早く帰りたい……という事を言っているから、妻子持ちで変な粉かけをしているとかではないみたいだ。
まぁこんなとこでそういうことをする人を、ギルドの職員さんが連れてこないと思うから、心配する必要は全くなかったんだろうけど。
それから、さらにしばらく……ラミアウネから助け出して来た女性冒険者二人の意識が戻るのを、それぞれとなんとなく話をしながら待つ。
ワイバーン達に乗せて、さっさと帰ればと思うかもしれないが、意識のない女性を乗せると危ないからなぁ。
以前、俺を救出した後ユノやロジーナが寝ている状態で連れ帰ったけど、あの時はワイバーンに何度か乗った事のあるソフィーとかが同乗した事と、ユノもロジーナも子供の大きさだからなんとかなっただけだし。
成人女性、それも意識を失っている人を不慣れな人がワイバーンに一緒に乗るのは、夜なのもあって危険だから。
今俺は魔法を使えないし、もしもの時に結界を使って落下阻止とか、受け止めるなんてこともできないわけだし。
森から抜けるため、最低限でも木の高さ以上で飛ばないといけないから、落ちたらちょっとした怪我で済まない可能性もあるからね。
「ん、んん……」
「お、起きたみたいだね?」
何故か、俺が女性を抱えていた事を他の女性冒険者さん達や、ギルド職員さんに色々言われたり、付き添いの冒険者さんからは生暖かい目で見られたりとしているうちに、意識を失っていた二人が目を覚ました。
フィリーナは、広場の端で木に手を当てて魔物が来ないか、近くにいないかなどの確認をしてくれていたけど……ありがたいね。
それから、意識を失っている間の事を簡単に説明、土下座に近い形で「華麗なる一輪の花」パーティ全員から感謝されつつ、焚き火の後始末やら街に戻る準備を手早く済ませ、ワイバーンに分乗して飛び立つ。
その際、大まかにラミアウネに襲われた時の状況を聞くと、二人共広場に戻ろうとしたところで襲われたらしい。
気付いた時には、周囲に花粉が撒かれていて吸い込んでしまい、咳き込んでいるうちに急襲、ラミアウネが巻き付いて締め付けられ、身動きが取れなくなったんだとか。
花粉の毒などは、目を覚ましてから元気な様子を見ている限り大きな影響はなさそうだし、体にはほとんど残っていないんだろう……最初に咳き込んだから、多く吸い込まずに済んだのかもしれない。
俺とリーダーさんが助けに行った時もそうだけど、ラミアウネは罠を張るのが得意なのかもしれない……姿を見せず、こっそり花粉を撒いておいて網にかかるのを待っていた、とも考えられるから。
ギルド職員さんは、そんな習性があったというのは知らなかったみたいだけど。
もしかすると、一定以上の数が集まって群れになった時に罠を仕掛けるようになるのかもしれない。
少数や単独の時と、集団になった時で行動が変わるっていうのは、魔物でもよくある事みたいだから。
ちょうど森でラミアウネが増えたから、見られた行動ってわけだね。
危険な目に遭った女性冒険者の二人がいるので、見られて良かったとは言えないし思わないけども――。
「んー……! ふぅ……なんとか無事に終わったってところかなぁ」
「お疲れ様、リクさん」
行方不明になっていた女性冒険者さん達を連れてヘルサルに戻り、各種の手続きなんかを済ませ、後の事は冒険者ギルドに任せた。
他に大きな問題らしい問題はなかったようで、今日のところは森の魔物掃討作戦は終わり、となってなんとなく体を伸ばして大きく息を吐く。
そんな俺を見て、苦笑しながらモニカさんが労ってくれた。
「これからどうする? 結構遅くなっちゃったから、センテに戻る? 獅子亭で父さん達に会って行くのでもいいけど」
「んー……」
ソフィーやフィネさんは、今日も獅子亭に泊まるらしく、リリーフラワーのメンバー達と一緒に先に戻っているけど、俺やモニカさんはどうするか。
夕食にはもう遅い時間で、夜食と言えそうだけど俺もモニカさんも、それからフィリーナやカイツさんも、それからアマリーラさんやリネルトさんも空腹なのは間違いない。
まぁエルサみたいに騒ぐなんて事はしないので、我慢してセンテに戻ってから食事というのでもいいんだけど……。
「今から向かえば、ちょうど獅子亭も忙しくない……というか店じまいくらいだろうから、迷惑じゃなければ獅子亭に行こうかな」
「父さんや母さんが、リクさんを迷惑だなんて思う事はないわよ。それじゃ、決まりね」
モニカさんとしては、お昼の弁当を受け取った時に獅子亭に行っているので、無理にマックスさん達の顔を見に行く必要はないようだけど、どうせなら美味しい食事をしたいからね。
センテの宿でももちろん美味しい食事が出て来るんだけど、ちょっと上品過ぎるというか……。
ボリューム満点、質も高いけど量でも攻める! みたいなマックスさんの料理が、一日動いた後に食べるのにはちょうどいいんだよね。
いや、食べられるなら宿でもお腹いっぱいになるくらい、ちゃんとした量の食事を出してくれるんだけど。
「ついでと言ったらなんだけど、アマリーラさんやリネルトさんにも、本場? の獅子亭の料理を食べてもらいたいし」
「それと、昼にも言っていたお弁当の話も父さんにしないとね」
「あぁ、そうだね」
なんて話しつつ、「リク様とであれば、どこまででも付いていきます!」と大袈裟に言うアマリーラさんを連れて、皆で獅子亭へと行くためリーバー達を衛兵さんや冒険者ギルドの職員さん達に任せて、ヘルサルの中へと入った――。
今日やる事は全て終わったので、ようやく食事ができるようです。
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