ギルド職員さんとの話
「リク様、おかえりなさいませ。お待ちしておりました」
モニカさんとカイツさんも一緒に撫でていたら、人混みの中から俺に声をかけて来る男性が一人。
ちなみにモニカさんは、俺と同じように撫でているだけなんだけど、カイツさんの方はしげしげとワイバーンの表面、皮の部分を観察しながら撫でていたのは、研究のためだろうか。
なにやら、しばらく飛んでいる、もしくは疲労から、多少の変質のようなものが見られる……とか、魔力の関係か? などブツブツと言っていた。
それはともかく、話しかけてきた男性だね。
「あぁはい。どうも……えっと?」
「申し訳ありません、冒険者ギルドの者です。ギルドマスター達は忙しく、手が離せないようでしたので」
「あぁ成る程、そういう事ですか」
見た事のない……いや、もしかしたら見かけた事くらいはあったのかもしれないけど、誰かはわからず首を傾げた俺に、男性が自己紹介。
冒険者ギルドの職員さんだったらしい。
その人が示す方を見ていると、ヤンさんとエレノールさんが他の職員さんと話したり、書類などを見ていたりしていた。
戻ってきた冒険者さんの確認や、その他の作業などで忙しいんだろう。
王軍の兵士さんの手も借りる程だから、仕方ない。
「全ての確認が済んだわけではありませんが、リク方のおかげで、冒険者の中に大きな被害が出ている者はいません。多少の怪我くらいはありますが……」
「そこは仕方ないですかね。魔物と戦うわけですし……でも、人死にとかはないのなら良かったです」
「魔物と戦う前に、怪我を負った未熟な冒険者もおりましたが……ともあれ、リク様方、それからワイバーン達の協力のおかげです。冒険者達も、感謝する声が多かったですよ」
そう言ってくれるギルド職員の男性。
大きな怪我や被害が少なかったという報告は、森を見て回り、ワイバーン達にも協力してもらった甲斐があったと俺も嬉しくなる。
ただ、無茶をしない冒険者が減るため、それはそれで森の奥までの魔物討伐をする速度が減るという事でもあるけど。
それはまぁ、焦らずゆっくりやればいいか。
「それでなのですが、リク様。少々気になる事が……」
「ん、何かあったんですか?」
「何かあった、と言うよりこれから何かあるかもと言いますか……リク様が戻ってこられた前後で、ワイバーンや冒険者の帰還は途切れております。ですが、まだ戻ってきていない冒険者のパーティが一つだけあるようなのです」
「戻ってこないパーティ?」
「はい。ここに戻って来た際には、必ずあちらで受付する事になっています。出発前に登録した冒険者と照合し、無事に戻って来たかの確認のためですが。示し合わせた結果、まだ戻って受付をしてないパーティが一つ確認されています。忘れて、もう街の中に入ったとかであればいいのですが……」
ワイバーン達は、センテから連れてきたのはもうすべてヘルサルの東門前に集まっている。
森の外に自力で出たり、一旦ワイバーンに乗った冒険者さん達も、俺達が戻って来た後に到着していて、今は森や兵士さんの駐屯地の方からくるような人はおらず途切れていた。
この状況で、一つのパーティが戻ってきていないとなると、まだ森にいるか、それとも確認の受付を忘れて街に入ってしまったかのどちらかだろう。
けど、これだけ人が多い状況で、受付を忘れるだろうか?
人が少ないうちに戻って来ていたのなら、冒険者ギルドの職員さんたちが見逃すはずはないし……。
平常時なら、センテとつながっている街道を行きかう人が多い場所ではあるけど、今センテとは氷の大地を境目に途絶した状態だ。
今ヘルサルの東門は、王軍の兵士さんか森に入る冒険者さんくらいしか出入りしていないわけで。
「遅れて戻ってくるような気配は……ないですね。あれは……王軍の兵士さん達でしょうし」
東門から森の方を見渡して呟く。
人が多くいるとはいっても、見晴らしのいい場所なので遠くまで見えるけど、冒険者さん達がこちらに向かってくるような影は見えない。
森の中はともかく、遮るものがほとんどないので多少暗くなっても遠めに兵士さん達の駐屯地、それからさらに遠くに、森のものだろう木が見えるくらいだ。
他には、馬に乗ってこちらに向かう複数の人がいるくらいだし……馬に乗っているって事と、なんとなく見える騎乗している人の装備から、兵士さんだろう。
「王軍の兵士……駐屯地の方に、冒険者が残っていないかの照会をしたのですが、もしや。申し訳ありません、少し失礼します」
「はい」
そう言って、こちらに向かう馬に乗っている兵士さん達の方へ駆けていく男性職員さん。
駐屯地は森とヘルサルの間にあり、ヴェンツェルさんの協力のもと、簡易的な避難所というか怪我をして森から出てきた際に簡単でも手当などができるようにしている。
ワイバーンに助けられて、森を出た人なども含めて一旦駐屯地に行っていた冒険者さんもいるようなので、もしかしたら戻ってこない冒険者パーティはまだそちらにいるのかもしれない、という事だろう。
「どうかされましたか、リク様?」
「あぁ、アマリーラさん。いや、それが……」
俺達と同じく、森から戻って来ていたアマリーラさんが、難しい表情をしていたんだろう、気遣うような面持ちで俺に声をかけてきた。
先程俺が尻尾や耳を不用意に触ってしまった時の恥ずかしそうな感じは、既にないようで良かった……とはいえ、尻尾は隠そうとしているから忘れたとかそういうわけではないみたいだけど。
アマリーラさん達は、俺達のすぐ後にここへ戻ってきており、ワイバーン達を撫でて労いながら多少話をしていたからね。
カイツさんとフィリーナは、森の中と同じように、二人で何やら話しているけど……どんな事を話していたのか、森の移動中に聞いたら、木々の生育に関してらしかった。
エルフの森との木々の違いを考えていたとからしい。
ともかく、声をかけてきたアマリーラさんだけでなく、モニカさん達にもギルド職員さんとの話を伝えて、戻ってくるのを待った。
「お待たせして申し訳ありません、リク様」
「いえ、大事な事ですから気にしていません。それで、戻ってきていない冒険者パーティというのは、駐屯地には……?」
しばらくして、確認の終えた男性職員さんが俺の所へ来る。
その表情から、なんとなく答えは察しているけど……一応聞いてみた。
「駐屯地の方にも行っていないようです。特徴から、目立つので間違いという事はないのでしょう。先に戻った冒険者にも情報を募りましたが、戻っているという情報はありませんでした」
「という事は、まだ森の中にいる可能性が高い……と」
「はい。王軍の方も森の周囲を見張ってもらっていますが、特徴に合う冒険者を見かけてすらいないとの事です」
特徴的と言うなら、見間違いとか忘れているという事もないのだろう。
森から出てきた様子も見られないのなら、まだ森の中にいるのはほぼ確定的だ。
そうこうしている間にも、ほとんど日が沈んでしまっているので、周囲はかなり暗い……まぁ門の近くには篝火などの明りがあるため、不自由はしないけど。
でも、明りもない森の中、微かな夕日や月明かりは届かず、真っ暗になっているはず……もしかしたら、森の中で迷っているというの事も考えられるか?
帰ってきていない冒険者パーティがいるようです。
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