大きな危険は避けるのが基本
「その音を聞いて、ただならなぬ魔物がいるのでは? と考えて冒険者達は離れているんだ。森に入るための心得として、できる限り予想される危険には近付かないというのもあるからな」
「この森に入った冒険者の多くは、長年冒険者をしている者ばかりです。センテでの戦いも経験していますので、分不相応に手柄を立てようと、危険に自ら進んで近付くという考えはあまりないでしょう。もちろん、昨日までにほとんどの人がソフィーが言うような、森に入る心得を叩きこまれているのもありますが」
「……それじゃもしかして、これまで俺が木を斬り倒していたから。その音を聞いて、とんでもない魔物がいる……みたいに思われていたって事?」
森の中で大きな音、木が斬り倒される音が何度も聞こえたうえ、それが自分たちに近づいて来るんだ、強力な魔物がいるかもと考えるのも、無理はないのかもしれない。
昨日は、森に入ったのは俺以外に回収班の兵士さんしかいなかったし、その人達には目印として木を斬り倒すって伝えていたから、特に問題はなかった。
けどそういえば、冒険者さん達には木を斬り倒したのを目印に……とかっていうのは伝えていなかったなぁ。
モニカさんとかフィリーナには、昨日センテに戻った時に話していたし、もちろんヤンさんやエレノールさんにも伝えていたけど。
ソフィーとフィネさんは、獅子亭で夕食を一緒にした時にレムレースの話がほとんどで、木を斬り倒す事に関しては話していなかったっけ。
まぁ二人はなんとなく予想できたみたいだけど、他の冒険者さん達からすると、森の奥から聞こえる謎の轟音。
木が倒れる音だとわかっても、それが何度も聞こえたら警戒するのは当然か。
血気盛んに危険へと飛び込むような人がいなければ、危ないと感じて避けるし、森を出た後に報告したり慎重に調査をするよね。
「そうだ。まぁ私やフィネはこんなことをするのはリクだろうな、と推察できたから特に恐れる事はなかったし、それでリク達が居場所もわかったんだが……フィリーナ達もわかっているだろうな」
「一部の冒険者も、気付いていたかもしれませんが……嫌われているのではなく、単純にリク様の邪魔をしないように離れた、という人もいるでしょうね」
二人が、俺のいるだろう場所を正確に掴んでここまで来て合流しているんだから、音が聞こえて場所がわかるっていうのは冗談でもなんでもないんだろう。
「ともかく、あれだけの大きな音を立てていたら、気にするって事よ」
「そ、そうだったんだ……」
結局、冒険者さん達と会えなかった理由は、俺が原因だったって事だ。
「でもそれなら、モニカさんはわかっていたみたいだし、もう少し早く教えてくれても良かったんじゃないかな?」
「私はリクさんの近くにいたから、はっきりとわかっていたと言う程じゃないわ。大きな音は間違いなかったけど、どこまで響いているのかまでわからないし……だから、もしかしてってくらいだったわ。ソフィー達が来てくれて、はっきりとわかったけど」
つまり、これまで何度かモニカさんが俺の斬った木の跡を見ていたのは、確証はなかったけどもしかして? と考えていたからって事か。
近くにいるからこそ、大きな音に耳を塞ぐくらいでどれだけの影響があるか、判然としなかったのかもしれない。
「あと……さっきのラミアウネ。そのなりかけのせいかしら。ちょっと耳が大きな音に慣れ過ぎているのよね」
「あー、そういえば……」
「ラミアウネと戦うまでの場所までは、距離もあったから大きな問題もなかったでしょうけど」
ラミアウネのなりかけは、マンドラーゴ程でなくても大きな叫びを発していたし、引き抜く時にその音を間近で聞いていた。
作業をしながら会話ができるくらいだったし、大きな音に耳が慣れてしまっていた。
だから、時間が経って元に戻りかけてから、ようやくもしかして? という推測がモニカさんの頭に浮かんだってところかな。
ラミアウネと戦うまでは、冒険者さんの方を目指していなかったし、かなり距離もあったからその前までの木を斬り倒した音は問題にならなかったんだろうけど。
「ラミアウネのなりかけと音、というのはなんだ?」
「ラミアウネはラミアウネ、ではないのですか?」
「えっとね、ここに来る前にリクさん達とラミアウネを見つけて倒したんだけど、その時にね……」
ソフィーとフィネさんに、ラミアウネのなりかけがいた事などをモニカさんと一緒に伝える。
二人共、既に森の中でラミアウネと遭遇して戦っていたみたいだけど、同じような事はなかったらしい。
あと、遭遇した数も二、三体程度で数も少なかったとか。
とにかく、二人にももしラミアウネを発見したら、近くになりかけがないか注意深く見てもらうようお願いしておいた。
広い森の中だし、俺達が見つけた場所以外にもラミアウネの拠点というか、棲み処があってもおかしくないわけだから。
倒したのに、まだまだ増え続けるのは嫌だからね。
「では、私達はこのまま北東を目指してみよう。リク達が東から来たのなら、同じ場所を通る事になるからな」
「うん、わかった。気を付けて」
「はい。リク様達もお気をつけて」
ラミアウネの事も含め、ある程度話してからソフィー達と別れる。
二人は、俺達が通ってきた場所と被らないようにするみたいだ。
まぁ、同じ場所を通っても魔物がいる可能性は低いからね。
別れる前の話で、木を斬り倒す以外の目印についても考えていた。
大きくわかりやすい目印としては、やっぱり木を斬り倒す事だけど……それで同じく森に入っている冒険者さん達に迷惑を懸けちゃちゃいけないからね。
ソフィーとフィネさんも、他の冒険者さんと会った時には事情を話してくれるみたいだけど、それはともかくだ。
とりあえず、目星をつけた木のいくつかにわかりやすいように大きく傷をつける事、それから俺達が進む方向の矢印を付ける事にした。
大きな傷に関しては、俺が剣に魔力を通さず、できるだけ加減をすればできる。
方向を示す矢印に関しては、モニカさんが槍の穂先を使って器用にやってくれた。
回収班の兵士さん達は、急に目印が変わって戸惑うかもしれないけど……どこかで会う事があったら、伝えておこう。
多分、わかってくれると思うんだけどね。
「……リク様、ここから西南へと向かった先に人と魔物がいるようです」
「人と魔物って事は、戦闘中ですかね? とりあえず行ってみましょう」
目印の付け方を変えて、再びカイツさんの木々からの情報を頼りに移動を開始してしばらく、近くで戦っている冒険者さんがいるらしい。
ちなみに、ソフィー達と別れてからは、俺達のいる場所から冒険者さん達が離れてくような事はなくなったようで、やっぱり木を斬り倒して轟音を響かせていたのが原因だったみたいだ。
それはともかく、植物をかき分けて、狭い木々の間を縫って移動した先で、戦闘音らしき音が聞こえてきた。
カイツさんの情報通り、冒険者さん達が魔物と戦っている最中らしい……危険な様子が見られたら、加勢するかな――。
ようやく本来の目的である冒険者さんの様子見ができるようです。
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