門に集結する冒険者達
「でも、いつもあれだけ食べていると、大変じゃないですか? 支払い、大変そうでしたし」
モニカさんが、アマリーラさんに聞く。
食べたのだから、その分はちゃんと払う……と、俺だけでなくモニカさんもその様子を見ていた。
マックスさん達は、気持ち良く食べてくれたし、俺やモニカさんの知り合いだからと遠慮しようとしたけど、そこはきっちりするのがアマリーラさんらしい。
俺に対してとか色々あるけど、最初に会った時のイメージから生真面目そうというのは、間違っていないみたいだ。
「そうですね、獣人には私くらい食べる者もよくいるのですが……」
「よくいるんですね……それはまた」
アマリーラさん曰く、大食いなのは獣人では多くみられる事のようで、むしろ小食なリネルトさんがかなり珍しいらしい。
それはともかく、今日は獅子亭の料理が美味しかったから特に多く食べたらしいけど、当然食べる量が多くなるとそれだけ食費がかかる。
大食いなのは主に、戦闘ができる獣人に多いらしく、そのため食費を稼ごうと冒険者や傭兵になる理由の一つだとか。
特に傭兵は、シュットラウルさんのような貴族、他に軍属の人に雇われると多少なりとも食事が出るため、食いっぱぐれがないとかなんとか。
それでも、大量に食べるとなるともちろん自費の部分が多くなるみたいだけど、それでもないよりはかなり助かるみたいだ。
……食べるために傭兵って、間違ってはいないけどあの積まれたお皿の量を見ると、何か間違っているような気がしなくもない。
気のせいだろうとは思うけど。
「獣人は魔法を使う者は多くありませんが、その代わり身体能力に優れています。そのため、食べるために優れた働きをするのです」
「食欲はぁ、獣人にとって原動力の一つですからねぇ」
という事らしく、人間以上に強い食欲を満たすため、優れた身体能力を生かして成果を上げる獣人は多いとか。
そのため、冒険者で言うとAランクとまでは行かなくともBランク相当になって、多くの報酬を得たりする事も多々あるとか。
Bランクは一人前以上の活躍と報酬が期待できるし、依頼によっては多くの報酬を得る可能性も出て来るけど、そのほとんどが食費になるんだろうな。
傭兵としても、Bランク相当の実力ならかなり優遇されて、報酬も高く雇ってくれるだろうし……詳しくないけど、軍で言うと最低限小隊長以上、中隊長クラスでもおかしくないとか。
ちなみに、アマリーラさんとリネルトさんは実力が冒険者に照らし合わせると、Aクラス相当とされているため大隊長クラスの扱いだったらしい。
シュットラウルさんという貴族直属というのもあって、かなり稼いでいたんだろう……獅子亭での支払いも、俺なら十日以上の食費になりそうな額を、問題なく支払っていたようだし。
まぁそんなこんな、獣人のちょっとした内情のような話を聞きつつ、俺達六人は連れ立ってヘルサルの東門へ到着。
そこでは、さっき話していたヤンさんが多くの冒険者を前に、話をしているところだった。
「決しては無理はせず、危険と感じたら離脱する事。これだけの冒険者が森に入るのです。近くに他の誰かがいる事も多いでしょうから、そちらに助けを求めるのでも構いません。また、絶対に単独での行動は控えるように。無茶をして成果を得ようとしても、帰って来れなくなればそれらは全て意味がなくなります。魔物を討伐し、その報酬を受け取ってこその冒険者です……」
などなど、森に入るうえでの諸注意などを伝えているようだ。
要約すると、無茶をせず、もしもの時は魔物から逃げても構わないし、他の冒険者に助けを求める事。
一人で行動せず、絶対に二人以上で行動し、周囲の警戒を怠らずという事みたいだ。
多少の怪我をするくらいならともかく、死んでしまえばせっかく頑張って魔物と戦っても、報酬を得るどころではないから当然とも言える注意だね。
あ、話を聞いている人達の中に、ソフィーとフィネさんがいる……他にも、ルギネさん達リリーフラワーのメンバーや、トレジウスさん達のパーティもいた。
センテにいた冒険者さん達の多くはここに集まっているようで、さらにヘルサルで見知った冒険者さん達もいる。
見た事がない人もいるけど、他の街などから駆け付けた冒険者さんだったり、俺と顔を会わせなかっただけの人もいるんだろう。
総勢で、約二百人近くの人が真剣な表情でヤンさんの話を聞いていた。
ここで、ふざけて話を聞き流しているような人は、ここにはいないみたいだ。
不真面目な人っていうのも冒険者にはそれなりにいるけど、一応ヤンさん達冒険者ギルドの方で選別もしているようだからね。
それに、センテでの戦いを経た人達の大半は、森の中に入る大規模討伐作戦で、油断するような人もいないか。
過酷な戦いを切り抜けて来た人達でもあるわけだからね。
「皆、いい顔をしている。実力的には未熟なのもいるのだろうが、頼もしい限りだ」
「またアマリーラさんはそんな事を……侯爵様の所にいた癖が抜けませんねぇ。今の私達は、リク様の護衛で、ここにいる冒険者と同じ扱いですからね? 唐突に訓練を課すなんて止めて下さいよぉ?」
「まぁ、兵士たちの教練も一部担っていたからな。どうしてもそういう見方になってしまう」
なんて、ヤンさんの話を聞く冒険者さん達の顔ぶれを見て、アマリーラさんとリネルトさんが話している。
そういえば、侯爵軍の兵士さん達と演習をする時、教え込むような戦いや言動をしていたっけ。
シュットラウルさんは、俺達との演習のおかげで押し寄せる魔物から耐えられた、と言っていたけど……アマリーラさん達の功績もあるんじゃないかなと思う。
「……魔物は追われている状況と見られますので、必死で抵抗してくるでしょう。常と変わらぬ警戒態勢、油断は禁物です。しかし、安心させるわけではありませんが、森にはリクさんを始めとした魔物をものともしない方々も入ります。皆の安全のために協力してくれますので、もしもの際はそちらを頼ってください。また、空には我々の味方をしてくれるワイバーンがおりますので……」
などなど、俺達が到着した事に気付いたヤンさんが、こちらを示しながら話を続ける。
一部、ソフィー達などを除いて、冒険者さん達から歓声が上がった。
ちょっと気恥ずかしい紹介だなぁ。
あと、空を示しながらワイバーンについても説明するヤンさん。
今は飛んでいないけど、俺達が森に入るのと合わせて乗せてもらったリーバー達ワイバーンが、森の上空を飛んでくれる。
そちらに助けを求めれば、ワイバーン達が空から来てくれる手筈になっているわけだ。
魔物を倒すか、それとも乗せて緊急脱出するかは、ワイバーン達に任せているけど。
まぁ通常の森の魔物なら、昨日のラミアウネのように大量に出て来るとかでなければ、再生能力に優れたワイバーン達の敵じゃないっぽいから、倒す方が多くなるとは思うけど。
昨日戦った魔物の中では、レムレース以外にワイバーンがやられる可能性はかなり低いはずだ――。
リク達だけでなく、ワイバーンもいる事でかなり安全に森の魔物掃討ができるかもしれません。
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