リーバーと話しながら休憩
「結構、俺自身もぎりぎりだったんだなぁ。魔力が多いからって、絶対的な防御ってわけでもないし……」
まぁ、おかげで深い傷はなく、ほんの少し血がにじむ程度の怪我がいくつかあるって程度で済んではいる。
けどそれだって、直撃を避けて対処を続けていたおかげだからね。
なんとなく、これは危ないとか感覚でわかるようにはなった、というのはこのレムレース戦での収穫かもしれないけど……過信は禁物って事だ。
とはいえ、レムレースくらいの強力な攻撃をしてくる相手なんて、そうそう戦う事はないだろうけども。
「攻撃自体は、ヒュドラーの方が強力だったかな。あっちは避けやすかったけど……おっとそうだ。おーいリーバー!」
なんて呟きながら、いつの間にか頭上の高い場所に戻って来ていたリーバーに向かって、手を振りながら呼びかける。
俺が見下ろせる場所で待機、というの忠実に守ってくれているんだろう……かなり小さく見えるけど、先程のレムレースが発した音によってフラフラとしていた影響はほぼなく、元気に飛んでいるように見える。
「って、ここから邪声は届かないかな? あ、気付いたみたいだ」
おそらく、俺が呼ぶ声ではなく手を振っているのが見えたんだろう。
周囲に木々がなくて見やすいおかげだと思うけど、とにかくリーバーがゆっくりと高度を落として来てた。
「こっちこっち! 降りて来てもいいよー!」
「ガァ!」
大分高度が落ちて、声が届くくらいになったあたりで俺から降りてくるよう伝える。
リーバーからも返答があり、しばらくして俺のすぐ傍へと着陸した。
真っ直ぐ降りて、そのまま着陸できるのは、魔力を使っているとかその辺りはともかくとして、自力で飛んでいる生き物としての利点だよね。
俺の知っている飛行機だと、離着陸には十分な滑走路を走らないといけなかったし……似たような事ができる一部の戦闘機やヘリでも、周囲は音や風が凄いらしいし。
なんて、降りてきたリーバーを見ながら、益体もない事を考える。
あぁこれ、自覚している以上に疲れてるっぽいな俺……。
「ご苦労さん、リーバー。結構長い間戦っていたけど、そっちは大丈夫だった?」
「ガァ、ガァウガァ!」
羽や足を使って、何やら主張するリーバー。
はっきりとはわからないけど、多分リーバーのいる空にも流れ弾的な魔法が飛んで行ったり、あの不快な音が聞こえたって事のようだ。
確認するために聞いてみたら、頷いていた。
「だから、あんなに高く飛んでいたんだな」
「ガァゥ!」
魔法にうっかり当たってしまわないよう、音も届かないくらい高い場所を飛んでいたんだろう。
変になんとかしようと、降りて来ていたら俺もそちらに意識を取られていたかもしれないし、悪くない判断だと思う。
まぁ、危険だと思ったら離れて避難していても良かったんだけどね。
それだけ、俺の言いつけを守って空にいてくれたと思うと、感謝の気持ちが湧いてリーバーの体を優しくなでた。
「……はぁ、モフモフが恋しい」
「ガァゥ……」
「あぁごめんごめん。リーバーが悪いわけじゃないから。これだって、ツルツルしててちょっと面白いよ」
撫でていたら、思わず口をついて出た言葉にリーバーが申し訳なさそうにする。
いつも撫でるといえばエルサのモフモフなので、ついつい言ってしまったのを反省。
リーバーに謝り、改めてツルツルした硬いうろこの感触を確かめるように撫でた。
これはこれで、戦闘で火照った体にはひんやりしていてちょうどいいかも……リザードマンみたいに湿っていたら別だけど、そうじゃないし。
「そういえば、なんで最後レムレースは魔力が吸収できなかったんだろう?」
「ガァ?」
「いや、えっとね……」
リーバーを撫でながら、疑問にだったレムレースに話す。
エルサの通訳がないため、細かい事をリーバーからの意見とかわからない可能性が高いけど、こうして話すだけでも俺の中で整理がついたりするからね。
……結局わからないって結論になる事もあるとは思うけど、休憩も兼ねている。
「リーバーにも聞こえたと思うけど……」
「ガァガァゥ」
あの不快な音、魔力を吸収するために大音量で周囲に撒き散らされていたあれは、リーバーにも聞こえていたそうだ。
そのため、リーバーも音から逃れるように高度を取ったとか。
まぁ最後のはこれまで以上の大音量で、リーバーにも届いたからちょっとだけ離れたみたいだけどね……俺が見ていた通りに。
「それで最後は、音だけで魔力は吸収されなくてね。それで、倒せたんだけど」
音と共に魔力を吸収するはずなのに、その音が発せられても吸収されなかったのはなぜなのか。
リーバーにもその時やそれまでのレムレースの状況も含めて、話してみる。
「ガァ、ガァガァゥ」
「あー、あれは俺がやったんだけど……」
リーバーが身振りも含めて鳴き声で主張するのは、俺が放った魔力弾。
それで何かしらの影響がレムレースに残ったんじゃないか、と言いたいらしい。
うーん、確かに魔力弾は以前、ロジーナと戦った時にロジーナの攻撃を吸収しながら突き進んだけど、直撃はともかく、なんども触れているロジーナ自身には、その後に何も影響がなかった。
干渉力を使っているらしい攻撃は吸収したけど、ただそれだけ。
どうして吸収するのかはわかっていないけど、あの魔力弾がその後に何かしらの影響を残すようなものとは、思えないんだよね。
それだと、一番初めにエルフの村近くの森で出会ったアルセイス様、その時に試されて初めて使ったものだけど……その後の影響、後遺症のようなものを残すんだったら使わせなかっただろうし。
……アルセイス様、あの時直撃したからね。
「ガァゥ、ガァ! ガァゥ!! ガァ?」
「えっと、段々音が大きくなっていったって事かな? 成る程、それは確かに……」
俺が首を振って、魔力弾の影響はおそらくないだろうと伝えると、今度は段階的にリーバーが鳴き声を大きくして主張。
レムレースの魔力吸収のために発生する音が、回を重ねるごとに大きくなっていっていた事に着目したみたいだ。
確かに、最初に発見した時、戦っている最中に魔力吸収をされた時と、考えてみれば大きくなって行っていた気がする。
近くで耳を塞いでいたし、音の大きさについてはあまり考えていなかったけど、空を飛んで離れていたリーバーはわかりやすかったのかもしれない。
「体感的には、音が大きくなっていっても魔力吸収が早まった、とまでは感じなかったし……なんで音が大きくなったのかわからないね。でも、それだったら最後に一番大きな音を発していたのに、魔力吸収ができていなかった理由にはちょっと遠いかな」
「ガァゥ……」
「気にしないでリーバー。こうして一緒に考えてくれるだけでありがたいから」
音の大きさは、魔力吸収となんらかの関わりがある可能性は高いけど、それでも魔力が吸収されなかった理由とはまた違う気がする。
否定ばっかりしてしまい、落ち込んでしまったリーバーを撫でて慰める。
いけないいけない、せっかく一緒に考えてくれるんだから否定ばっかりされたら、落ち込んじゃうよね。
俺も、何か意見を出さないとね――。
リーバーも頑張って考えてくれていたようです。
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