爆炎の発生理由
「そ、そう。リーバーがやったわけじゃないんだね。だったらどうして……って、そんな事を悠長に言っている場合じゃない! リーバー、消火消火!」
「ガ、ガァ!」
どうしてこんな事に……なんて考えを巡らせようとしたけど、火柱……というか正しくは炎の爆発みたいだったけど、それが収まった後には、地上は結構な勢いで燃えていた。
すぐにリーバーに言って、消火作業を開始してもらう。
残していた切り株は、かなりの勢いで燃えていて、その周辺にも燃え広がっている。
これは多分、ラミアウネやチビラウネの残骸が燃えているんだろう。
そちらは目的通りだからいいとして、爆発の余波だろう、広場の外側にあった斬り倒された木々と、大量のラミアウネの残骸、さらにその外側の無事な木々の枝葉が、チリチリと燃えていた。
不幸中の幸いか、爆炎の範囲は俺が作った広場よりも小さかったため、派手には燃えていないから木の全体が燃えているわけじゃない。
けどこのまま放っておいたら、燃え広がってしまう可能性が高い。
「ごめんリーバー、ちょっと大変だと思うけど頑張って!」
「ガァ!」
空から広場の外周を回るように、水の魔法を降り注がせるリーバー。
ホースで水を放出している程度だけど、強く燃えていない木々はそれだけで消火されていくのがわかる。
勢いよく切り株やラミアウネの残骸、チビラウネの残骸が燃えている広場の中心辺りには、焼け石に水だろうけども。
まぁ木の延焼を食い止めていれば、そのうち燃える物がなくなって鎮火するはずだ。
燃える勢いがあるって事は、それだけ燃え尽きるのも早いって事だから。
危険もあるけどね。
「はぁ、とりあえず大丈夫そうか。リーバー、ありがとう」
「ガァ……」
引き続きリーバーに水を放出してもらって、消火作業を続けながらだけど、大分広場以外の場所で火の手が見えなくなっているため、一安心。
俺がお礼を言うと、リーバーは申し訳なさそうに鳴いた。
多分、自分がやった事だと感じているんだろう……さっきのあれは、多分リーバーのせいじゃないからと、乗っている背中を撫でておく。
「それにしてもさっきのは……」
とりあえず、大惨事は免れそうだと安心しつつ、さっきの火柱……もとい爆炎の発生理由を考える。
リーバーの落とした火球は、探知魔法などでどれくらいの魔力かはわからなかったけど、そこまで多くの魔力が込められているようには思えなかった。
俺が調整するように言っていたし、リーバーもそれは理解してくれていたようだからな。
そもそも、リーバーにあれ程の火の魔法を使ったのを見た事がないし、できないはず……できるんだったら、センテに迫った魔物達との戦いの時にやっているだろうからね。
あの時は、調整する必要もなく全力で戦うようにしていたはずだし。
俺が意識を乗っ取られてモニカさん達と救出に来る時、緑の光による植物内部で焼き払うために火の魔法を使ってくれて助かった、と後でモニカさん達から聞いた。
でもその時ですら、さっきのような爆炎が発生するような魔法は使っていなかったはず。
俺は話を聞いただけだし、もし使ったらモニカさん達が巻き込まれるから、使えても使えなかった可能性が高いけどね。
ともかく、リーバー自身が驚いてもいたし使えないという方向で考えるとして、だとしたらなんであんな爆炎が巻き起こったのか……。
そういえば、火球が落ちていく中でチリっと何やら火花のようなのがあったっけ。
石や金属製の何かがぶつかったわけではないし、火球は放電とは違うから、本来そんな事が起こるわけがない。
だったら、火花を見た瞬間にも考えた通り、花粉が火球の熱で引火したと考えるべきか。
「散布されていた花粉、しかも微小な粒子なのに目でなんとなく見える気がする程濃く……それに引火……ん~? 何か引っかかるような……?」
確か、細かい粒子が散らばってそれに引火する……。
「あぁ、粉塵爆発か!」
「ガゥ!?」
「ごめんごめんリーバー。なんでもないから、そのまま火を消していてくれるかな?」
「ガァ」
現象に思い当たって、思わず大きな声を出すとリーバーが驚いてしまった。
謝り、消火作業を続けてもらう。
「まぁ、わかったからって何かあるわけじゃないけど……」
粉塵爆発は、可燃性の粉塵に引火して燃え広がる現象だったはず。
ラミアウネやチビラウネ、さらに散布された花粉も火に弱いという事だから、可燃性の物と言えるだろうし、かなりの量が散布されていたからね。
多分だけど、リーバーの落とした火球の近くで、一瞬だけチリっとした火花が見えた気がするのは引火する瞬間の物だったんだろう。
とはいえ、起こってしまった事は仕方ないし、本当に粉塵爆発だったとしてもやり直す事はできないからね。
せいぜいが、これから先またラミアウネと遭遇した時に、気を付けるくらいか。
「一応、街に戻ったらエレノールさんか誰かに言って、注意だけはしてもらおう。ラミアウネがまだどれだけいるかわからないけど」
俺とは違い、明日以降森に入る予定の冒険者さん達は、当然魔法が使える人も入る。
だから、延焼には気を付けてくれるとは思うけど、ラミアウネの弱点である火の魔法を使う事だってあるはずだ。
可燃性の粒子を散布する魔物なんて、この森にはラミアウネくらいしかいないだろうけど、一応気を付けてもらった方がいいよね。
不意に爆発を起こして、冒険者さん達が巻き込まれてしまったら大変だし。
「ガァーゥ!」
「ん、終わったんだね。ありがとうリーバー」
考えている俺に、リーバーからの鳴き声が届く。
どうやら、消火作業は粗方終わったみたいだ。
地上を見てみると、森の木々はいたるところに燃えた跡があるけど、火の手は上がっておらず火事は防げているみたいだ。
俺が木を斬り倒して作った広場では、まだ少しだけ炎が上がっているけど、勢いもかなり弱まっているようだし、もう少ししたら燃え尽きるだろう。
一応、完全に火が燃え尽きるまで見ておかないと、燻っていた火から燃え移るなんて事も考えられるため、放っておく事はしない。
「うん、もう大丈夫そうだね。ありがとうリーバー、助かったよ」
「ガァ~」
空から見下ろす限りで、完全に燃え尽きるのを待ってから、リーバーに適当に水を撒いてもらって、地上に降りる。
少しどころではなく、かなり焦げ臭かったし、火を水で消した時の独特な臭いも充満していたけど。
あと、水をかけたから当然だけど、湿った空気がムワッとしている。
火が燃えていたからね、広場一帯だけ温度が高いのも当然か。
「それじゃリーバー、もし疲れたようだったら休んで。俺はまた森に入るから!」
「ガァ!」
空で待機してくれているリーバー手を振る。
リーバーは高度を上げて、森の外へと向かった。
結構魔法を使ったからね、ずっと空を飛んでいてもらっているし疲れたんだろう。
リーバーがまた戻ってくるまでは、火の魔法とかで協力してもらう事はできそうにないね……粉塵爆発らしい現象の火柱というか爆炎を見た後だと、魔法を使ってもらう気はなくなっているけど――。
リーバーの魔法に頼るのは、これっきりにするつもりのようです。
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