グリンデさんは情熱的
「あ、あぁ。私も会いたかったよ」
そんなグリンデさんを受け止め続けているルギネさん、お腹の痛みのせいだろう、やっぱり若干顔が引き攣ってはいるけど決め顔でグリンデさんの背中を撫でていた。
うーむ、こういうのがイケメンって言うのかな? ルギネさんは女性だけど。
「あぁ、お姉様、お姉様……ふへへ……」
「……ちょ、ちょっとグリンデ。こんな所では」
「うんもう、お姉様ったら。でもそんなところも、素敵でうぇへへへ」
何やら雲行きが怪しいというか、グリンデさんが抱き着いたままのルギネさんに対し、両手が怪しい動きをし始めた。
漏れている怪しい笑いもあって、そろそろお子様には見せられないよ的な状態になりかけている。
こちらからは見えないけど、グリンデさんが見てはいけない笑みを浮かべてそうなのは、想像に難くない。
「……これは、とりあえず触れない方が良さそうだね」
「そうね……」
モニカさんと顔を見合わせて、溜め息交じりに頷き合う。
二人の世界、というかグリンデさんの世界に入り込んだようだから、俺達には止められそうにないし。
「ん……グリンデはいるけど、アンリはどうしたの? あと、お肉や干し肉も」
「そう言えばそうね」
「あぁ、それなんだけど、少しだけまだ話をしているんだ。レッタさんがなんだけどね」
ルギネさんとグリンデさんはさておき、部屋にもう一人いるミームさんが、アンリさんを連れていない事に気付いて聞いてきた。
ただ、とりあえずいつもの事だけど、肉とか干し肉を付け加えるのはどうなんだろう? もう、エルサのだわじゃないけど、語尾みたくなっているし。
まぁ、ミームさんがそれでいいならいいのかもしれないけども。
「さっき、レッタさんが連れて来られていたわね……それに、何か騒ぎもあったみたいだけど……」
「うん、それがさ……」
まずミームさん……だけでなく、体をまさぐられながらもこちらを気にしている、というか耳を傾けているルギネさんに対して、アンリさんを連れていない理由を話す。
アンリさんは、レッタさんがまだ少し話したいという事なので、拘束を解いてから二人で話を始めた。
まぁ、帝国に関しての事みたいだけど、組織とか軍事とか、クズ皇帝の事とかではなく、単純に帝国での生まれや暮らしについての話だった。
レッタさんもアンリさんも、色々あって暮らしに関してとかの話をする機会がなかったようなので、いい機会だとそのまま残して、グリンデさんだけ連れて出て来たってわけだ。
念のためと、そういった話の中でも帝国に関する有益な何かの情報があるかも、とベリエスさんや男女のギルド職員さんは残っている。
とりあえず、グリンデさんも含めて何か罰せられるような事はなく、すぐに解放されると伝えると、ミームさんもルギネさんも安心した様子だった。
いや、ルギネさんはグリンデさんにずっと体をまさぐられていて、燃えるような赤い髪に負けないくらい、顔を真っ赤にさせていたから安心とは程遠いかもしれないけど。
モニカさんの目が気になったのと、なんとなく見てはいけないと思って、ルギネさんの方は絶対に見ないよう気を付けた。
「そんな事があったのね。アンリさん、大丈夫かしら?」
「多分、大丈夫だとは思う。レッタさんとのわだかまりはあるとは思うけど、俺が離れる頃にはそれなりに話していたからね」
一度はグリンデさんが俺を睨むように、いやそれ以上にレッタさんに対して憎しみを向けていたアンリさんだけど、ある程度話をしているうちにそれも薄れて来ていた。
まぁ一番は、レッタさんがもう帝国に戻るつもりはなく、あちらに協力する気はない事を伝えたからだろう。
それまでの話で、一応はレッタさんがアンリさんを助ける行動をしていた、というのを理解したからかかもしれないけど。
俺が、できれば仲良くとは言わないまでも顔を会わせる事が増えるだろうし、話くらいはできるようになって欲しい……なんて言ったからじゃないと思う。
なんにせよ、アンリさんはもうすっかり落ち着いてくれているし、レッタさんとの話を終えてルギネさんと合流すれば、もっと安心してくれると思う。
もちろん、魔力が回復してからはある程度見ておく必要があるとは思うけど、何もなければしばらく大丈夫だろうね。
「アンリさんはともかく、俺としては他の人達の方が心配かな?」
「他の人達?」
「ツヴァイとか、クラウリアさんとかね。まぁツヴァイはガチガチに抵抗できないように固めて、捕まえていたから大丈夫だろうけど……」
というか、もしかしたら処罰とか既にされているのかもしれない。
センテに来てから大分経っているから、王都での事はわからないけど……ヴェンツェルさんとか、マルクスさんに聞けばわかるかな?
それはともかく、アンリさんは魔力貸与されていても悪い事に使わなさそうだし、暴走しないように気を付けていればいいと思うけど、クラウリアさんはどうだろう。
ヘルサルの建物にはそれなりに被害は出たけど、人的被害はほぼなかったみたいだし、ゴブリンの事があるとはいえ……あれはあれで、裏でレッタさんとロジーナが色々画策していたみたいだけど。
そにかく、一応俺やモニカさんがミノムシよろしく拘束していたけど、クラウリアさん自身からは抵抗の意思はなかった。
だからツヴァイと比べて、罰するにしろ捕まえておくにしろ緩いんだよね。
王城で連れていかれてから、その先どうなったかはわからないけど。
ただまぁヘルサルでの事があるから、ある程度の罰や制約はあるとしても、帝国側の人間だったってだけで何も考慮されずに厳しく罰するという事は、姉さんはしないと思うから。
「だから……まぁ、そういった事があるとはあまり思えないけど、もしかしたらアンリさんみたいになるんじゃないかってね?」
「そうね。クラウリアさんは、短慮で思い込みが激しい方だと思うから、何かのきっかけで迷惑をかけていてもおかしくないわね」
「迷惑、というくらいで済めばいいんだけど。まぁ、ヴェンツェルさんやマルクスさんが、俺に何も言ってきていないという事は、問題が起こっていないからだとは思うんだけどね」
何か起きたとしても、王城には兵士さん達もいるわけだし……捕まっている状態で武器が与えられるわけもなく。
魔法は当然、ツヴァイのように封じられているとしたら、まぁ暴走してもなんとかなるか。
魔力貸与に関してはレッタさんと話してから色々と判明した事だけど、何らかの理由で魔力が多いというのもわかっているから、当然それを踏まえて見張っているだろうし。
「ここで心配ばかりしていても、何も始まらないか。とにかくセンテ周辺の片づけをしてから、王都に戻ないとね。あ、そうだ……」
わからない事を、離れた場所で考えたところであまり意味はないし、心配ならできるだけ早く戻れるようにした方がいい。
そう考えなおして、クラウリアさんに対する心配を打ち切った。
それよりも、話しておかないといけない事があるからね――。
クラウリアさんに関しては、王都に戻ってからじゃないとわからない事が多いようです。
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