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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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アンリさんが暴れた理由



「はんっ!?」


 ほら、アンリさんが頭から床に落ちちゃった……。

 アンリさんは、変な声を出してそのまま体を折り曲げるようにして、足も床に落ちた。

 結構な勢いで膝が床に打ち付けられた気がする、痛そうだ。


「うぅ……一体、何が? ~~っっ!」


 床に落ちた衝撃か、それとも魔力が出て行ったおかげなのか、さっきまでと違い理性的? なアンリさんの声。

 けどすぐに、痛みを感じたのか床に転がって頭を押さえて悶え始めた。


「良かった、無事みたいねアンリ……」

「いや、グリンデさんが乱入してこなかったら、最後の一撃というか、頭や膝を打つ事はなかったんだけど……」

「うるさいわね! あんたがあんな持ち方をするのが悪いんでしょ!」

「えぇ……そんな事言われても……」


 ほっと息を吐くグリンデさんだけど、とどめの一撃とも言える落下はグリンデさんが原因だ。

 痛みに苦しんでいるアンリさんを見ていると、とても無事とは言えない気がするけど……まぁ怪我はないっぽい。

 膝頭ひざがしらが両方とも赤くなっているくらいか。

 一応、自分の事を棚に上げたグリンデさんの文句をスルーしつつ、ベリエスさん達と確かめたけど、小さなたんこぶができるくらいで大した事はなさそうだし、意識ははっきりしていた。

 

 そんなこんなで、とりあえずいくつかの質問をして完全に正気に戻ったと確認後、念のためアンリさんを座らせて手足を拘束しておく。

 また、さっきみたいにレッタさんに向かって飛び出されたらいけないからの処置だ。

 アンリさん自身、自分でもあんな事をしたのに対しては不思議がってはいたけど、おぼろげながら何をしていたかはわかっていて、拘束を受け入れてくれた。


「……それで、レッタさん。さっきのは一体何だったんですか? 何か、知っているような口ぶりでしたけど」

「あれは、魔力貸与で本来の魔力量より多くなった弊害ね。一方向の感情が沸き上がると、それに魔力が反応して制御できなくなるって報告が上がっていたわ。さっきの様子を見るに、憎しみとかそういった感情に支配されたってところね。おそらく、備わっている魔力許容量を超える魔力を持つがゆえに、抑えが効かなくなる、と私は見ているわ」


 溢れかえっていてもおかしくない程の魔力量になったから、一つの感情に魔力が反応。

 本来の魔力だったらそんな事はないけど、膨大な魔力量になったせいで許容限界を超えてしまい、その感情に支配されしまうってところかな?


「一方向の感情に染まった魔力は、自身の体内にある他の魔力も浸食するわ。そして、魔力と感情がお互いを増幅させて、理性を失うってとこね」

「感情と魔力が増幅……」


 感情と魔力が密接な関係、というのは俺自身が負の感情に支配されたからなんとなくわかる。

 魔力そのものが、感情からできている部分もあるんだろう、多分。

 だから親和性が高くて、激情に駆られたら全身の魔力がそれ一色に染まると考えて良さそうだ。


「それじゃ、レッタさんがさっきやったのは?」

「魔力誘導で、その子の魔力を抜いたのよ。まぁ、血の気が多い人の血を抜いて、冷静にさせたようなものね」


 そんな、魔力と血液を同じ物みたいに。

 いやでも、魔力貸与に失敗した研究者は、フィリーナ達の前で魔力なのか血なのかわからないものを噴き出したって言っていたっけ。

 もしかしたら、体を巡る魔力は血液と同じように血管を通して全身を巡っているとかなのかもしれない。


「体は大丈夫? ちょっと怠さとかは感じると思うけど」


 可視化された魔力が大量に滲み出ていたから、相当な量の魔力を失っているんだろう。

 枯渇まで行かなくても、疲労感や怠さはあってもおかしくない。

 痛みはもう引いているようだけど、頭を打った事も疲労している原因かもしれないけどね。


「……激しい戦闘後みたいに、全身が疲れていて気怠くはあるわ」


 アンリさんに質問を投げかけるレッタさんを睨みながらも、不承不承答えるアンリさん……さっきまでとは違って冷静みたいだけど、それでもやっぱり実験の時や捕まえた時に、苦しめた相手とは認識しているみたいだ。

 実行犯ではなくても、関係者だからまぁ仕方ないっちゃ仕方ない。

 レッタさんがいなければ、魔力貸与という実験も行われなかった……かは微妙だけど、アンリさんが標的になる事はなかったかもしれないんだし。

 その事をアンリさんは、知る由もないけども。


「そう。私を憎む気持ちはわからなくはないわ。実際、あなたが苦痛を感じた場面に、私はいたし協力もしていたんだからね。でも、わかってとは言わないけど、私がいたから酷い扱いを受けずに済んだ部分もあるのよ?」

「……そんな事、信じられるわけがないわ。けど、今ここであなたをどうにかする事ができないのは間違いないわ。何やら、リクさんと協力しているみたいだし、全身を包む疲労感と、拘束されている現状ではね」


 溜め息交じりに俺を見るアンリさん。

 帝国にいた事を話していた時と違って、俺を睨んでいる。

 どうやら、俺もレッタさんの仲間だと思われているらしい……まぁ暴走した時の事はなんとなくでも覚えているみたいだし、レッタさんに襲い掛かろうとしたのを止めたのは俺だからね、そう思われても仕方ない。


 ……持ち上げて簡易的な拘束のためとはいえ、背中からだけど抱き締めた事とか、変なとこに触れてしまったり、顔の位置とかのせいではないと思いたい。

 もしそうだったら全力で謝ろう、うん。


「私はどちらかというと、あなたを助けた側でもあるのだけれど……まぁいいわ、暴れないでくれるなら」

「……」


 そういえば、アンリさんが捕まった時にレッタさんはクズ皇帝に何かされないようにとか、魔力貸与に失敗したとして捨てたとか言っていたっけ。

 あまり褒められた方法ではないとは思うけど、帝国というか組織の中枢に入り込んでいたからこそ、あまり怪しまれるような行動はできなかったのかもしれない。

 一歩間違えば、アンリさんが生存していたか微妙な線だったとは思うけど……結果的には助けていたと言ってもいいのかも?


 もしかすると、リネルトさんに話した時に復讐以外はどうでもいいというような事を言っていたけど、レッタさんにも微かに良心みたいなの残っているのかもね。

 とはいえ、壮絶な苦痛を与えられたアンリさんにとっては、その協力者だったレッタさんに対して、すぐに納得して仲良く、なんてできないだろうと思う。


「それでレッタさん、今は落ち着いていますけどアンリさんがまたさっきのようになるのは、もうないんですか?」


 レッタさんの能力で、魔力の多くが霧散させられた。

 だから感情的には納得していなくても、さっきのように正気を失って暴れるような事はないみたいだ。

 それなら、これから先もアンリさん自身も周囲の人達も安心、と言えると思うんだけど……。


「それは、その子の心がけ次第ね。さっきみたいに、憎しみとか何かの感情に大きく傾けば、同じように暴走するわ」

「え、でももう魔力は……」


 レッタさんが魔力誘導で、大量の魔力を消費させたから大丈夫なんじゃないの……?




魔力を霧散させてそれですべて解決、というわけではなさそうです。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

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