二体目の処理も完了
「うん、考えた通りだ」
剣身が輝きを放ち始め、魔力を吸収しているのがわかる。
少しずつ、握っている柄を通して俺にも魔力が供給され始めた。
それと一緒に、大きなアイシクルアイネウムの体が所々崩れ始め、少しずつ小さくなっていく。
「……っとと!」
ズン……と、まだそれなりの氷の体が残っている状態で、重い音を立てて落ちたアイシクルアイネウム。
体を支えていた柱、というか足がくずれたんだろう。
ピキ、とかパキなんて割れるような音がしていたから。
末端の維持をする魔力がなくなったと思われる。
「よし、このまま……ここ!」
しばらく剣を突き刺したままにしていると、体も端の方から段々と崩れて、乗っている俺の足場も危うくなりかけたくらいで、半透明の体の中に見えていた核というか本体のあたりまで亀裂が入る。
亀裂が大きくなり、本体周辺の氷が崩れた瞬間を見極めて、突き刺していた剣を抜いて本体を斬る!
「うん、上手くいったね……おっと」
本体を魔力吸収モードのままの剣で斬り裂き、氷の地面に着地する。
維持する事ができなくなった、アイシクルアイネウムが作った氷の体はバラバラに崩れ去り、地面に降りた俺の頭上から降り注ぐのを避ける。
当たっても多分ほとんど痛くないだろうけど、冷たくはあるからね。
ただ、避ける時に足が滑りかけたので、次からは着地する場所も考えないといけないかもしれない。
「とりあえずこれで良しっと。ちょっとだけ時間がかかるのが難点だけど……まぁ、痛いよりはマシかな? 急ぎでもないし、確実に倒して行った方がいいよね」
独り言を呟きながら、剣を鞘に納める
剣身の長さが変わっても、鞘に簡単に収まってくれるのは不思議だけど助かる。
そもそも、黒い剣だった時のままの鞘なんだけど、妙にしっくり納まるように感じるくらいだし、もしかしたら鞘にも何か仕掛けがあるのかもしれない。
「おーい、リーバー!」
剣の事を考えるのはまたいずれ、といういわけで空を見上げて手を振ってリーバーを呼ぶ。
このままここにいると、寒いからね。
「まさか、空から飛び降りるとは思いませんでした……」
「まぁ、直接倒すならこれが一番手っ取り早いかなって」
降りて来てくれたリーバーに、さっきと同じように飛び乗って再び上昇してもらうと、空で待機していた兵士さんに呆れとも驚きともつかない表情と口調で迎えられた。
地上が凍ってなくて、戦いやすい環境だったり寒くなければ、降りて戦うでも良かったんだけど……さっさと対処するには空から落ちるのが一番早いからね。
そもそも、土の地面とかだったらアイシクルアイネウム自体出て来ないんだけど。
「それじゃ、またアイシクルアイネウムを見つけらた、合図で教えて下さい」
「「はっ!」」
兵士さんにそう言って別れ、空からの捜索に戻る。
それから日が傾いて、日光の温かさが薄れた頃に本日のアイシクルアイネウム捜索を終わらせ、街に戻った。
二体目以降、他のアイシクルアイネウムは発見できなかったけど、まだ発生していないだけでこれからの可能性もあるし、明日からも続けないとね――。
――アイシクルアイネウムの捜索開始から数日、俺はそちらにかかりきりになり、エルサやモニカさんは解氷作業を続けていた。
予想通り、エルサから俺がリーバーに乗って飛び回っている事に文句を言われたけど、おだててキューを上げて事なきを得た……計画通り。
ヘルサルからはヴェンツェルさんがセンテに来て、シュットラウルさんと話し合ったりなどしている。
他にも、ヘルサルの方ではまず先にヴェンツェルさんの連れてきた王軍による、魔物討伐が大規模に行われ、森からヘルサルに寄って来る魔物もほぼいなくなったらしい。
その間に、グラシスニードルを量産して耐久性を高めた方を、ヘルサル側に。
ニードルの鋭さを上げた物……最初に俺達が受け取った物と同じ物を、センテ側に行き渡り、作業の効率も上がった。
物資の運搬も上手くいっていて、ヘルサルに行くワイバーンとアイシクルアイネウムを捜索するワイバーンの数を調整。
リーバーに乗る俺以外に、ワイバーンで捜索をする数が二十に増えた……単純に、範囲も広がるし捜索の目が多くなるのは大歓迎だ。
大体、一日に二体から三体程度のアイシクルアイネウムが発生するようで、近場だったら俺が。
離れた場所ならワイバーンと兵士さんが、複数集まって協力して倒すようになっていた。
他にも、空を飛ぶワイバーンに乗る兵士さん同士で、魔法による合図の伝言ゲームみたいな事も行われるようになった……ほとんどが、合図を見た他の兵士さんが返事代わりに魔法で合図をしつつ、さらに発見場所から反対方向などのさらに遠くへ合図を送る、みたいな事だけど。
その流れで、俺が最初の合図が見えないくらい遠くにいても伝達されるようになったし、距離があり過ぎた場合は兵士さん達の方で集まって対処するようになった。
空でのワイバーンの活用法が、着実に育っているようで何より……という事にしておこう。
交代でワイバーンに乗る兵士さん達も、空を飛ぶ事に慣れてきたみたいだし。
そんな兵士さん達の、アイシクルアイネウムと戦う方法だけど……。
「フレイムレディエイション!」
「フレイムブラスト!」
「今だ、核を目掛けて攻撃を集中しろ!」
「「「はぁっ!!」」」
火炎放射の魔法と、小規模の爆発を起こす炎弾で氷を削り、薄くなった場所に次善の一手で斬りかかって、内部の核を破壊するという方法だ。
アイシクルアイネウムは、標的が氷上にいると滑って体当たりを仕掛けて来るけど、腕や足っぽい物を生やしているわりに、構造上の問題なのか空への対処ができてないみたいだ。
なので、ワイバーンに乗って複数で近くを飛び回って標的を定めないよう翻弄しつつ、時には一気に近付いて次善の一手、または離れた場所から魔法で攻撃を加えるという方法が確立されたわけだね。
アイシクルアイネウムの捜索をする中で、これまで以上にワイバーンと仲良くなって連携できるようになったおかげだろう。
最初の頃は、ワイバーンが体当たりをしたりとかもあったみたいだけど、それじゃ乗っている兵士さんが落とされてしまって危険だからね。
それなりの人数でも、すぐに連携して戦闘ができるのはさすが訓練された兵士さん達だなぁ。
あと、アイシクルアイネウムの発生はそんなに多くないので、捜索する人数とワイバーンが増えた事により、発見から討伐した後の対処もしてくれるようになった。
とはいっても、目印を付けてアイシクルアイネウムが出てきた大きな穴がある、という目印を立てて簡易的に木材で囲むくらいだけどね。
そんなこんなで、アイシクルアイネウムの対処と時折暇を見ては解氷作業の手伝いをしていたある日、モニカさんと一緒に庁舎のシュットラウルさんが使っている部屋に呼び出された。
解氷作業も、アイシクルアイネウムの対処も上手くいっているのに、何か問題が起こったとかだろうか?
と疑問に思いながら、解氷作業をしていたモニカさんと合流して、庁舎に向かった――。
何やらモニカさんと一緒に呼び出される用事があるみたいです。
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