厳しい言葉をかけるマックスさん
現在はCランクパーティのリリフラワーだけど、全員がBランクになると見込まれれば、置いて行かれるのはトレジウスさん。
いや、競っているわけじゃないと思うけど。
というかトレジウスさんって、今ランクはどうなんだろう? 俺は聞いていないから知らないけど、少なくともBランクではないようだ。
「誰かに師事する事が駄目だとは言わん。そうして先人の教えを受ける事で、若くして様々な経験を得る事もできるからな。だが、それは自分の成長、仲間の成長が行き詰ってからだ。さっきは自分で燻っていると言ったが、実のところ大きな壁にはまだぶちあたっていないのだろう?」
「……いえ、ですがそれは……リク様やアマリーラさんを見ていて、自分がどれだけ未熟かがよくわかってしまったので……」
「上を見て羨むだけなら誰でもできる。そもそも、リクやアマリーラ殿がこれまでどのような努力を重ねてきたか、お前は知らないだろう。それと同じと言わん。アマリーラ殿は獣人で、リクに至っては他の人間が達する事はできない高みにいるからな」
アマリーラさんはともかく、俺が高みにいるって……ちょっと大袈裟なのではないでしょうかマックスさん?
俺から魔力を取ったら、多分トレジウスさんにもすぐ追い付かれそうなんですけど。
……勝てない、とまでは思わない。
ドラゴンの魔法やら、尋常じゃない魔力のおかげでよくわからない強さが発揮できているのもあるけど、それで多くの強力な魔物と戦ってきた事、それからエアラハールさんの訓練を受けて来てもいるから。
これまでの経験は、確実に俺にとっての自信になっている。
エアラハールさんを紹介してもらう前だったら、絶対勝てそうにないと考えていただろうけど。
「そもそもだ、お前は俺に師事して一体何を学ぼうと考えていたのだ? 誰かに教えを請えば、それだけで楽に強くなり、大成できるものでもないだろう」
「そ、それは……も、元Bランク冒険者としての、知識などを教えて頂ければと……」
「知識なぞ、誰かに教わるよりも経験する事が一番だ。冒険者になり立て、もしくはなる直前の奴に心構えや多少の知識を教える事はあるが……冒険者であれば、それは自分の力で経験し、生き残って勝ち取るものだろう」
「うぅ……」
マックスさんに言われて、再び俯いたトレジウスさん。
周囲で見守っている人達……多分、トレジウスさんのパーティメンバーじゃない野次馬的な人達だろう、その人達が深く頷いている。
トレジウスさんのパーティの人達は、考えさせられる内容だったようで俯きはしていないけど、何やら思案している様子が見て取れた。
予想だけど、パーティの人達はトレジウスさんに言われて、一緒に師事させてもらおうとここにいるんじゃないだろうか? なんというか、トレジウスさん程の必死さが薄い気がするから。
まぁ、誰かに師事する事が正しいとは言えないマックスさんの理論からすると、必死だからいいという物でもないけど。
でもちょっと言い過ぎじゃないかな? と思ったので、トレジウスさんはフィネさんに見てもらって、マックスさんを呼んで少しだけ離れた場所に。
「マックスさん、ちょっと言い過ぎじゃないですか? 断りたいっていうのはわかりますけど……トレジウスさん、すっかり自信をなくしたようで動けなくなっていますよ?」
「あれくらいで自身を失くす程度なら、そもそも冒険者として長くは続かんだろう」
俯き、膝と手を突いてしまっているトレジウスさん方に視線をチラチラと向けながら言うと、そう言って鼻を鳴らすマックスさん。
うーん、マックスさんの言いたい事もわかるけど、大成するかはともかく冒険者として生き残って、続けられるようになるために師事したいと言うのもあるんじゃないだろうか?
「俺やモニカさんの時は、色々と教えてくれたじゃないですか? まぁ、モニカさんはマックスさんの娘だからというのもあるんでしょうけど」
「モニカはまぁそうだな。だがリクに関しては事情が事情だからな。さっきもあいつに言ったが、冒険者になろうとしている奴にちょっとした知識を教えるくらいはするさ。何も知らずに冒険者になっても、ただ命を無駄にするというのもいるからな」
「まぁ、それはそうかもしれませんけど……」
「リクは特に、こちらの知識について……魔物に関してや冒険者のシステムなど、知らない事が多かっただろう? 剣の握り方すら知らなかったしな」
「ははは、それは確かに」
マックスさんは俺が別の世界からきたという事は知っているから、こちらの世界での知識として色々教えてくれたんだろう。
剣もまともに握った事がなかったんだから、それは仕方ない。
なのに、エルサと契約してから……いや、する前から冒険者に興味を持ってしまっていたからなぁ。
今考えると、危なっかしいことこの上ない。
実際には、剣が握れなくとも魔力量のおかげで、早々危ない目には合わなかったんだろうけど、それは結果論みたいなものだ。
マックスさんからすると、右も左もわからない青二才が何もわからず暢気な顔をして、危険に飛び込もうとしているように見えたに違いない。
そう考えると、多少ロジーナとレッタさんによって好奇心を刺激されたとはいえ、以前の俺はかなり危なっかしかったんだなぁ。
「でも、なんでそんなにトレジウスさんを拒もうとするんですか? とりあえず、マックスさんが知っている知識を教えるとかでもいいと思うんですけど……」
マックスさんならそれでも、トレジウスさんが身の丈に合わない危険に飛び込もうとはしないようにもできると思う。
むしろ、知識やら何やらを教えてあげておいた方が、トレジウスさんにとってはこの先のためになるんじゃないかとすら。
マックスさんには獅子亭があるから、片手間というか空いた時間にとなるだろうし、マックスさん自身が大変になるからってのもあるかもしれないけど。
「俺が知っている知識なぞ、別に特別でもなんでもない。多少長く生きて、運よく冒険者ランクが高くなっただけだからな。まぁそれでも、若造に何も教えられないわけではないが……一番の理由はあれだな。トレジウスの身なりだな」
「トレジウスさんの身なり? えっと……」
マックスさんは実力が伴っているから、Bランクになったのはただの運じゃないと思うけど……。
とにかく、マックスさんに言われてトレジウスさんを観察。
細身で清潔感のある服に身を包んでおり、今は落ち込んでいるからあまり感じられないけど、間違いなく好青年と言える爽やかさを持っている人だ。
身なりとは関係けど、対ヒュドラーの時も一部で逃げた冒険者がいる中、魔物と戦ってしかも最前線で一番危険なアマリーラさんやユノ達の所にもいた。
だから、度胸もあるし人となりも悪い人物じゃないと思う。
……色んな人に師事しようと頼み込むのは、別の意味で度胸あると思うけど。
「悪い人には見えませんが……」
「いやまぁそうなんだが、実際に評判としては真っ当な冒険者と聞いているし、間違ってはいないんだろう」
そう言いながら、マックスさんは視線をトレジウスさんへと向けた――。
マックスさんには、師事されるのを断る理由があるみたいです。
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