体と魂の適合による影響
ユノとロジーナに協力した時の状況を聞いてみると、ワイバーンに乗ったまま手を片手を繋いで左右対称になるように身振りをしつつ、世界に干渉するための呪文……言の葉を紡いだのだとか。
言の葉は言霊になり、魔力だけではない力を伴って紡ぐ事で意味を成す……とか言っていたけどわかるようなわからないような。
ともかく、呪文とはちょっと違う言葉って事だろう、言の葉とか紡ぐとかで詠うロジーナが言った理由が、なんとなくわかった。
根本的に、魔法を使うための呪文とは違うんだろうな。
それはともかく、今は小学生高学年と低学年(四、五年生と一、二年生くらい)のユノとロジーナ。
さらにロジーナは見た目も変えているから、姉妹にも見えづらいのだけど……元々が創造神と破壊神で同じ姿だったと考えれば……。
あの巨大怪獣が戦う有名な映画、それに出てきた双子を思い出した。
そもそもの性質が違うから、性格も違って見た目だけしか双子的な要素はないし、今はその見た目も違うけど。
単に俺の想像の中で、そう感じたってだけだね。
「……お腹が減ったのだわ。ユノ達の事はいいからまず食事を始めるのだわ」
「エルサ……まぁ、そうだね。色々疑問はあるけど、とりあえず食べながら話そう」
ともかく、話しがかなり脱線したけど、ユノとロジーナが協力した事でどうして魔法が使えなくなったのか、詳しく聞こうと思ったらエルサがテーブルに乗って、多くの料理、そしてキューを前にして不満そうに言った。
口からは今にも涎が垂れそうだ……あ、垂れた。
話を無視して、自分だけ食べ始めなかったエルサを褒めるべきところかな……俺もそうだけど皆お腹が減っているだろうに、待たせちゃったし。
そうして、念のためソフィーの怪我の具合も聞きながら、食事を進めつつユノ達の話の続きを聞いた。
「つまり、元々人間の体に適合する事で、ようやく魔力を自由に扱う事ができるようになるの」
「概念的だけど、リクにわかるように言えば人間の体と魂がちゃんと一つになるってところね。それからやっと、魔法が使えるのよ」
「空っぽの器、だけど魔力では満たされているの。その中に無理矢理魂を押し込むから、すぐには適合しないの。でも、私達の魂は強大で強固だから、絶対に適合せずに離れたりはしないの」
「そもそも、自分が入る体を作るのに適合しない体なんて作らないわよ。ただ、大きな魂に小さな体だから、どうしても適合するのに時間がかかるのよね」
ユノとロジーナが交互に説明してくれる……お互いの説明で不足している部分を、もう片方がフォローするような形だ。
その姿からは、いつも険悪に言い合っている仲の悪さは窺えず、実は仲がいいんじゃないかと思えるくらいだね。
まぁ、今はユノとロジーナの仲の良さはともかくとして、話してもらった内容だね。
大きな魂に小さな体というのはまぁ、見た目の物理的な事ではなく単純に神様の魂にとって、人間の体が小さいという事なんだろうと思う。
神様が魂を持っているのか、という部分は考え方によって様々だからとりあえず置いておこう……目の前のユノ達がそう言うんだから、そうなんだと思う事にする。
それで、魂が人間の体に適合して初めて、体に充実している魔力を自由に扱う事ができるようになって、魔法が使える。
要は全身の、それこそ内部的な部分も入り込んだユノ達の魂が掌握するってところだろう。
それで、人間の体に入り込んでそれなりに経っているユノと、俺を戦う方向へと導くためにユノよりも早く人間の体に入り込んでいた事もあるロジーナ。
まぁロジーナはしばらくすると、俺の影響とやらを受けるまでは離れていたみたいだけど、期間としてはそれなりみたいだ。
そうして、体と魂の適合がもう少しで……というところで今回の事件。
「あんなの人間の体でやるものじゃないわね。言の葉を紡いで謡っている時、何度も意識が離れそうになるのを感じたわ」
「持っていかれなくて良かったの。門を開いて、突入の手助けもできたの」
「割と軽い感じで言っているけど、結構重大な事じゃないかなぁ?」
意識が離れそうになったとか、持って行かれそうになったとか……俺にはその感覚がわからないけど、かなり危険だったんじゃないかと思う。
俺と違ってそれは、体と意識というか魂が分離するってわけで。
まぁ、通常の人間ならともかく、ユノ達はもしかしたら平気だとか元の神様に戻るってだけかもしれないけど。
そもそも、通常の人間ならそんなことできないからね……と考えると俺ってなんなんだろうと思わなくもないので、深堀はしない方が良さそうだ。
「一応無事でここにいるからね、こんな事深刻に話すのは気が滅入るわよ。ともかく、それで適合しようとしていた体と魂が離れたから、また一からやり直しね。ただ魔力を無秩序に放つ、くらいならできるかしら……一部の人間がやっているのを見たけど、粗末な使い方しかできないわ」
早い話が、また魂と体の適合と魔力を含めた掌握するのを、待たなきゃいけなくなったってところか。
次善の一手みたいに、魔力を放出する事はできるんだろうけど……粗末な使い方って。
まぁ特に変換もしない魔力を、ただ武器に這わせるだけで魔法を使うような、緻密な操作みたいなのとは違うんだろうけどね。
あと、魔法が使えない人にも魔力で戦力を上げる、という目的の技でもあるから、どうしてもそういう使い方しかできないというのも当然だと思おう。
「完全に一からじゃないの。初めてよりは短期間だと思うの。けど、またしばらく魔法を使えないのは変わらないの。……せっかく、思いっ切り魔法を使ってリクみたいな事をしたかったのに、なの」
「俺みたいな事って……」
「あんた、私とは逆の性質なのに、時々過激な事を言うしやるわよね。本来の役割、逆じゃないかしら?」
「今回の事、その原因を作っておいてその言い方はないの」
「いや、そもそも俺みたいな事が過激とは限らないんじゃ……」
「「リクがやっている事は、過激な事で間違いない」」
過激というのを否定したかったけど、ユノとロジーナに声を揃えてきっぱり否定された。
食事をしているモニカさん達も、うんうんと何度も頷いている……むぅ。
というか、やっぱりユノとロジーナって仲がいい気がする。
今はお互い協力した後で、同じく人間の体を使っているからかもしれないけど。
「……それはともかく、魔法がまたしばらく使えないのなら、これまでと変わらないって事でいいんだよね?」
もっと強く否定したかったけど、深く考えたら自分でも認めてしまいそうだったので、とにかく誤魔化そうと話を戻す。
「少しだけ、違うの。体に適合するのに合わせて、身体能力も上がっていたはずなんだけどそれも少し後退しているの」
「体の掌握ができなければ、それだけ動きも鈍るって事」
「え、それじゃあユノって……ロジーナもだけど、もしかして段々と強くなっていたって事なの?」
魔力も含めて、体の掌握が進むごとにその体を存分に使えるようになる……というのはなんとなくわかる。
でもそれじゃ、最初から強いと思っていたユノもロジーナも、適合していくにしたがって強くなっていっていたって事になるわけで――。
最初からずっと同じというわけではないようです。
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