もしかしたらの可能性
「あのねリクさん。本当に私達には何もなくても、できる事がなかったとしても、今リクさんが言ったようにリクさん自身が悪い事だったとしても、私は申し訳なく思うわ。だって、一緒にいる……仲間だもの」
「仲間……」
「リクさんはもう少し、頼りないとは思うけど私達を頼っていいと思うのよ。そりゃ、戦闘に関しては絶対リクさんには敵わないし、同じ事はできないわ。でも、気持ちや思いを話して、心を軽くする事くらいはできる。そうありたいと思っているの」
モニカさんの言葉を聞いて、エルサがよく俺に「もっと誰かを頼るのだわ」と言っていたのを思い出した。
魔力量だとか、ドラゴンの魔法だとかで、皆にできない事が俺にはできる。
だから驕りもあったのだろう、本気で誰かを頼ろうとはしていないかったのだと、モニカさんの言葉で気付かされた。
もちろん、できるだけ皆と協力して、俺一人じゃできない事をやってもらう事だってあったし、そうするようにしていたけど……本当の意味で頼る、という意識にはなっていなかったんだと思う。
「だから、これはリクさんに対する申し訳なさと、リクさんが一人でなんでもやろうとしてしまう事に対してなの。本当にごめんなさい」
「……モニカさんは厳しいね。でも、優しい。ありがとう。うん、俺からもごめんなさい」
モニカさんの謝罪は、俺から頼られない不甲斐なさと、何かできたのではないかという後悔だけでなく、誰も本気で頼ろうとしない俺への戒めの意味もあるんだろう。
俺が一人でなんでもやってしまう事で、頼られないモニカさん達が申し訳なく思ってしまう事。
だから、もし何かできる事があるのなら相談して欲しいし、力になりたいと思っている……そう伝えたいのかなと思う。
たらればになってしまうけど、もし俺がもっとモニカさん達を頼って、心の拠り所にしていたら、と思考する。
俺は無理にロジーナを連れてレッタさんの所へ行かず、とりあえず態勢を整えるために皆の所へ戻ったかもしれない。
相談して、モニカさんを連れて行っていったかもしれない……そうすれば、俺に心の拠り所があれば、もしかしたら負の感情に飲み込まれる事もなかったかもしれない。
レッタさんに、負の感情を誘導させずに解決できたかもしれない。
そうすれば、被害の大きさはどうあれ、ユノとロジーナに無理をさせずに済んだかもしれない。
もしかしたら、こうだったら、かもしれない……という可能性の話しで、結果が変わるかはわからないけど、変わる可能性はあったような気がする。
それは、俺がこれまで両親や姉さんがいなくなって、いなくなった原因も含めて、俺が一人でいる方がいいと、心のどこかで考えていたからエルサの忠告を素直に聞いて、誰かを頼れなかったのかもしれないけど。
「ふふ、私はあの母さんの娘なのよ? ただ黙って甘やかすだけじゃないわ……多分」
「多分なんだ。でもそうだね、マリーさんの厳しさはある程度見ているから、ちょっと納得だよ」
俺がモニカさんの謝罪を受け入れ、俺からも謝罪した事で、ようやくふんわりとした柔らかい雰囲気になったモニカさん。
厳しい一面……というか、その部分が表面的に出やすいマリーさんの娘だと思えば、確かにモニカさんも優しいだけの人じゃないんだろう。
ただマリーさんも時折、マックスさんに甘さというか甘やかすというか、単純に夫婦の甘さみたいなものを見せる時があるけど……まぁそれはここでは言わないでおこう。
モニカさんも知っている事だし、マリーさん達にとってはあまり話題にされたくない事かもしれないからね。
「あ、リクさん。私も母さんみたいになるって思っているでしょ!」
「えー、だってモニカさんからそう言ったんだよ? あーでも、モニカさんがマリーさんみたいに、厳しく誰かを鍛えている姿は、ちょっと想像できないかなぁ」
冗談めかして言うモニカさんの言葉に乗り、俺も冗談めかして応える。
「でしょ? 母さんみたいに、甘いだけじゃないけど……母さんみたいに厳しいばっかりじゃないの」
そう言って、胸を張るモニカさん。
今更ながらに、部屋の中でモニカさんと二人きりという状況に気付いて、少し視線を逸らした。
エルサはいるけど寝ているし……モニカさん、獅子亭のお客さんの目を引く大きな胸部装甲を持っているわけで。
寝る前だからか、薄着だしで。
真面目な雰囲気じゃなくなったらすぐそれか、と自分でもどうかと思うけど、妙に意識してしまって気恥ずかしさが勝ってしまう。
「……」
だけどモニカさんは、急に視線を落とし俯いた。
俺の考えている事が伝わったとか、そう言う事じゃないみたいだ……気付かれていたら、怒られそうだし。
それに、体も少し震えている?
「モ、モニカさん?」
「……う、うぅ……良かった。本当に良かった……!」
「え?」
どうしたんだろうと声を掛けると、体の震えを大きくしたモニカさん。
声も震えている。
というか、泣いている?
「リクさんが無事で、ちゃんと戻って来てくれて。……私、怖かったの。全てが包み込んだ結界、あんな事リクさん以外にはできないし。でも、リクさんからはそんな事をするって聞いていなかった。だから何かあったんじゃないかって。どうにか、なんとかしないとって焦燥感だけが募って……エルサちゃんみたいに、慌てる事もできなくて」
口早に話すモニカさん。
ポタ、ポタとソファーに液体が……モニカさんの涙が落ちるのが見えた。
「私にできる事なんて、多くないから。でもそれでも、なんとかしないとって。今リクさんに何か起こっているのなら、私がどうにかしないとって。だから、慌てるなんて事もできずにひたすらどうするかを考え続けてて……そうしたら、外が急に赤く染まって。魔物がいなくなって。あぁ、リクさんだって。でもリクさんが何も言わずに、あんな事をするとは思えなかったから……リクさん以外にはできるはずがなくても、リクさんじゃないのかなって。絶対、リクさんには何かが起こったんだって、わかってしまって……」
「うん、うん……」
まとまっているような、まとまっていないような……モニカさんの心情の吐露を聞く。
それには、モニカさんがあの時感じていた感情だけでなく、俺への信頼、信用も感じられて少しうれしかった。
いやいや、嬉しがっている場合じゃないな。
こういう時、どうするのが正しいのかがわからない自分が情けない……泣いているモニカさんを抱き寄せるとか? そんな事をして、嫌われないだろうかなんて思いも湧いて来る。
これまで、この世界に来るまで人とあまり深くかかわろうとしなかった事での、自分の経験値不足が恨めしい。
ただ俺には、泣いているモニカさんを慰める方法がわからない。
「急に相談もなく、結界に閉じ込められて、そのうえ魔物を殲滅する赤い光。それを間近で見たんだから、怖かったよね……」
かろうじて、俯いたままのモニカさんの頭に手を伸ばし、できるだけ優しく触れるようにして撫でる事くらいしかできない――。
泣いているモニカさんに、リクの脳内も混乱状態に入りかけているみたいです。
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