まだまだゆっくり休んでいられない
疲れた様子を見せているのはフィリーナだけじゃなく皆もだし、戻ったらゆっくり安心して休んで欲しい。
赤い光で周辺の魔物は完全に、それこそ今回の事に関係ない魔物も含めていなくなっているし、ロジーナはともかくレッタさんも気を失っている状態だし、今すぐ何かある事はないはずだから。
俺が意識を飲み込まれる直前でも、ロジーナやレッタさんからはこれ以上何かがあるような感じは一切なかったっぽいし。
とはいえ、休んだあとはちょっとした事後処理で、全てが終わるってわけでもないんだけどね……。
「とにかく、街に戻って休みましょ。フィリーナが疲れているのもわかるし……私達もね。ユノちゃん達もまだ目が覚めないし。まぁ私やリクさんは、無事な事を報せたり話さないといけない事があるから、すぐには休めそうにないけどね」
「それは仕方ないわよ。リクが無事だった事だけでも伝えれば、少し休めるくらいはできるでしょうけどね」
モニカさんに言われ、お疲れ気味のフィリーナも連れて石壁にいるワイバーンと合流して街に戻るため、ゆっくりそちらに移動する。
俺はあの時何があったのかとか、隔離結界や赤い光に関してとか話さないといけない事が多いし……多少休む時間はもらえるだろうけど、しばらくは忙しくなりそうだ。
それに、俺の所に来るまでとか、隔離結界の外の様子などはモニカさん達から報告しなきゃいけない事もある。
ある程度今の状況は把握しているけど、モニカさんが俺の所に来るまでがどうだったのかを、俺は知らないからね。
「でも、話す事以外に休めない理由もあるのですけどね……」
そう言って、隔離結界の外に目を向けるフィネさん。
「え、まだ何かあるの? 今リクが、もう何も来ないって言っていたけど……?」
「何も来ないだろうというのは確かだと私も思いますが……今の状況を解消しないといけませんから」
「フィリーナも結界越しに見たでしょうけど、今、外の地面は完全に凍り付いているわ。それはリクがやった事なんだけれど……」
目を剥くフィリーナに、外の状況とこれからやらなければいけない事を伝える、フィネさんとモニカさん。
凍てついた地面を、一部は自然解凍に任せるとしてもある程度は溶かさなければいけない事などだね。
赤熱していた時よりは全然マシだけど、今のままじゃセンテが孤立したままだし、隔離結界も解けないし。
元々あまり人や物の流れが少なかった南側はともかく、魔物が一番大量にいた東側と繋がる村などの確認、それと一番近い街である西のヘルサルとの間は優先しないといけないと思う。
「……それって、かなりの広範囲よね? しかも凍った地面を溶かすって、絶対魔法が必要じゃない」
「そうなのよねぇ。でもまぁ、触れればソフィーみたいに靴が溶かされる、赤くなった地面を冷やすよりは楽だと思うわ。あ、そういえばソフィーはどうしているのかしら?」
「そりゃまぁ、凍っている方が楽なのはわかるけど……はぁ。あぁ、ソフィーは宿で治療を受けているわ。傷としては深くないけど足だからね、本人は問題ないと言っていてもやっぱり動き回れないわよ。顔を歪ませているのに、ジッとしていられないとか言って痩せ我慢していたから、宿に放り込んでおいたわ」
愕然とした様子のフィリーナ……まぁ全てが片付いたと思ったら、まだ大変な後片付けが待っているとわかったんだから仕方ないか。
あと、ついでのようにモニカさんが聞いたソフィーは、宿にいるのか。
無事というのはモニカさんから聞いていたけど、それでも動こうとしていたというのはなんともソフィーらしい。
ただ怪我をしたのが足の裏だから、歩くだけでも痛みがあっておかしくないし、無理をすれば怪我がさらに悪くなるからね……ちゃんと治療せずに、化膿したらいけないし。
宿に戻ったら、すぐに治癒魔法をかけてあげないと。
……ソフィーを休めるためには、もう少し怪我はそのままにした方がいいのかも? まぁ、戻ってからだね。
「はぁ……魔力の限界まで使って、散々、体も頭も酷使して……まだゆっくり休めないのね」
「私達もそうよ。それでも、これまでと違って危険はないから、気分は楽よね」
「そうだけどね……最近ちょっとどころじゃなく、私達働き過ぎだと思うのよ。そりゃ、魔物が襲って来ていたのだから、頑張らなきゃいけなかったのだけど。エルフはそもそも、毎日あくせく何かをするような種族じゃないってのに……」
石壁の内側に入り、フィリーナが乗って来ていたワイバーンの首を撫でながら愚痴るように言う。
エルフは長寿だからか、イメージ的にも優雅な生活をしている感じだったからなぁ……住んでいたエルフの村も、魔物がなくなった後は長閑な雰囲気だった。
最近は村に訪ねて来る人が多くて、エヴァルトさんは忙しそうにしていたし、魔法の研究をしているエルフからはあまりそういった雰囲気は感じられかったんだけどね。
「もし疲れているなら、侯爵様達に言えば断れる……というか休めると思うわよ?」
「そうだね。シュットラウルさんやマルクスさんは、そういった部分で無理をさせるような人じゃないと思うから……」
「父さんはまだしも母さんからは、やらされそうで私は休めそうにないけどね」
「ははは、確かにマリーさんならそうかもね……」
モニカさんには時折厳しいマリーさんだったら、休まず働きなさいとか言いそうではある。
けどさすがに、ここまで頑張ったモニカさんを無理させるかどうかは……とそこまで考えて、王城の兵士さん達相手に鬼軍曹のように訓練させていたマリーさんを思い出し、口には出せなかった。
とはいえ、マリーさんもモニカさんが可愛い娘である事には間違いないから、倒れる程ではないと思うけどね。
「そうねぇ。休めないわけじゃないのは、私もわかっているわ。でも……」
そう言って、顔をしかめる……というよりはやれやれとといった雰囲気の表情になるフィリーナ。
休めない理由でもあるんだろうか?
「今、エルフは……少なくとも私やアルネ、カイツが暮らしていたエルフの村出身の者達は、だらけていられないわ。ようやく老いたエルフの考えも変えられて、国にも認められたのよ? 珍しいからと注目もされるだろうし、ここで協力的な種族として溶け込まないといけないの」
そう言って、さっきまで愚痴るようだった雰囲気はなんだったのか、と思う程の笑顔でワイバーンの背中に乗ったフィリーナ。
俺達もそれにならい、リーバー達の背中にそれぞれ乗っていく。
フィリーナが気にするよりも、エルフは受け入れられているしもうこれまででも十分に頑張って来ていると思うけど、それはセンテや王都など限定的な場所。
国全体でエルフが珍しいという意識を失くすためには、まだまだやらなきゃいけない事もあるし、見ていてもらわないといけないのかもしれない。
「……私達もそうだけど、一部ではフィリーナやアルネと接して慣れてはいても、やっぱりまだ奇異の目はあるものね」
寝ているユノを抱えてワイバーンに乗るモニカさんが、少しだけ悲しそうにそう言った――。
まだまだ、エルフが珍しい種族として見る人は多いようです。
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